外国貨物の蔵置と他所蔵置許可制度

0 はじめに―具体的な相談事例の紹介

本日は、輸入取引における貨物の保管場所に関する例外的な制度である他所蔵置について解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた、大規模な機械設備の輸入をめぐる相談事例をご紹介いたします。輸入実務において、保税地域の容量不足や貨物の特殊性に直面している企業様にとって、非常に重要な内容となっております。

【相談者】

愛知県内で大規模なプラント建設を手掛ける株式会社G 代表取締役H氏

【相談内容】

「当社は今回、ドイツのメーカーから全長20メートル、重量50トンを超える超大型の産業用ボイラーユニットを輸入することになりました。貨物を積んだ船はまもなく名古屋港に到着予定ですが、提携している通関業者の保税蔵置場を確認したところ、現在他の貨物で満杯であり、これほど巨大な重量物を安全に保管できるスペースが確保できないと言われてしまいました。一方で、ボイラーの設置先である建設現場には十分な空き地があり、そこに直接搬入して輸入許可を待ちたいと考えています。しかし、外国貨物のままで保税地域以外の場所に置くことは法律で禁じられていると聞き、困り果てています。何か例外的に、保税地域以外の場所で保管を認めてもらう方法はないのでしょうか。」

このような事例は、重工業やインフラ関連の輸入実務においてしばしば発生いたします。原則として外国貨物は保税地域に置かなければなりませんが、特定の条件を満たし、税関長の許可を得ることで、保税地域以外の場所に置くことが可能となります。本日は、この他所蔵置許可制度の概要と、実務上の法的留意点について解説いたします。

1 外国貨物の蔵置場所に関する原則と法的根拠

外国貨物は、難破貨物、他所蔵置貨物、特定郵便物、特例輸出貨物等を除き、原則として保税地域に置く必要があります。これは関税法第30条に明確に規定されている義務です。

【関税法第30条】

外国貨物(中略)は、保税地域以外の場所に置いてはならない。ただし、次に掲げるものについては、この限りでない。

①沈没、難破等により本邦に引き揚げられた貨物で、保税地域に置くことが困難なもの

②他所蔵置(保税地域以外の場所に置くことについて税関長の許可を受けたものをいう。)に係る貨物

③特定郵便物

④特例輸出貨物

このように、保税地域に外国貨物を置くことは、関税の徴収を確保し、不法な国内流入を防ぐための大原則です。もっとも、一定の条件の下で、外国貨物を保税地域以外の場所で保管することも可能であり、このことを他所蔵置といいます。外国貨物を保税地域に保管できない場合には非常に便利な制度といえます。

外国貨物の保管に関しては、基本的に業者に依頼しているため、保税地域に保管されているか、それともそのほかの場所に保管されているか全く知らないという方も多いものと思われます。もっとも、通関業者や税関とのやり取りをスムーズに行うという観点からは、保税地域以外の場所で外国貨物を保管できるケースについてもご認識いただいた方がよいと思われます。

2 他所蔵置許可の対象となる貨物の要件

他所蔵置ができる場合としては、外国貨物の特殊性により、保税地域に置くことが困難又は著しく不適当であると税関長が認めた上で、期間及び場所を指定して許可したものについては、例外的に他所蔵置を行うことが可能であると認められております(関税法第30条第1項第2号)。

具体的には、以下の4つのケースが代表的です。

(1)巨大な重量物であって、保税地域にこれを置く設備がない場合

冒頭の相談事例のような、超大型の機械設備、航空機部品、船舶のエンジンなどが該当いたします。これらは通常の保税蔵置場の床耐荷重を超えていたり、入り口を通過できなかったりするため、現場での直接保管が認められやすい傾向にあります。

(2)大量の貨物であって、保税地域に置くことができない場合

短期間に膨大な量の原材料や資材が到着し、近隣の保税地域の収容能力を一時的に大幅に上回ってしまうような状況です。

(3)貴重品、危険物、生鮮食料品であって、蔵置保管に特殊な施設を要するもの

爆発物などの危険物で、専用の貯蔵庫が保税地域内にない場合や、極めて特殊な温度管理が必要な薬品、生体などが含まれます。

(4)その他貨物の性格、保税地域の設置状況等から、税関長が保税地域以外の場所に置くことが誠にやむを得ないと認められたもの

例えば、災害による保税地域の損壊や、ストライキ等による機能停止など、輸入者の責めに帰すことができない特別な事情がある場合です。

3 他所蔵置の管理に関する実務チェック表

企業が他所蔵置制度を利用する際、管理体制を維持するために確認すべき項目を以下の表にまとめました。

【他所蔵置制度利用時における法的確認事項一覧】

項目|具体的な確認内容|

許可理由の妥当性|貨物の重量、容積、性質が保税地域に不適当か|

保管場所の特定|住所、敷地内の具体的な位置が指定されているか|

保管期間の管理|許可された期間内に輸入許可を受けられるか|

場所の監視体制|外部からの侵入や貨物の持ち出しを防止できるか|

移動の制限|許可された場所以外に無断で動かしていないか|

手数料の納付|規定の手数料が適切に支払われているか。|

5 他所蔵置に伴う法的リスクとペナルティ

他所蔵置許可を受けた貨物は、依然として外国貨物であるという性質に変わりはありません。そのため、保税地域内にある貨物と同様の、あるいはそれ以上に厳しい管理責任が輸入者に課されます。

(1)貨物の亡失・滅失による関税の徴収

他所蔵置中に貨物が盗難に遭ったり、火災等で焼失したりした場合、その瞬間に輸入があったものとみなされ、直ちに関税が徴収されます。

関税法第45条

この規定は他所蔵置貨物にも準用され、許可を受けた者が納税義務を負うことになります。保税地域以外の場所は、保税地域に比べて監視の目が届きにくいため、紛失事故への対策は極めて重要です。

(2)許可条件違反による処罰

指定された場所以外に貨物を移動させたり、許可期間を超えて放置したりした場合、それは関税法違反となります。

6 専門家としての視点と具体的な運用アドバイス

具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

他所蔵置制度を安全に運用するための実務的アドバイスを3点申し上げます。

①通関業者への丸投げを避け、自社での場所選定に関与することです。通関業者はあくまで書類上の手続を代行する立場であり、実際に他所蔵置される場所(例えば自社工場や提携先の資材置き場)の防犯体制や法的適合性まで完全に把握しているとは限りません。輸入者自身が、その場所が税関の許可基準を満たしているかを現地で確認すべきです。

②次に他法令との調整です。他所蔵置する場所が、食品衛生法や家畜伝染病予防法、あるいは消防法などの規制対象となる場合、それらの他法令に基づく検査や保管基準も同時にクリアしなければなりません。関税法の許可だけでは貨物を動かせないケースがある点に注意が必要です。

③最後は税関事後調査への備えです。他所蔵置を行った取引は、その特殊性から税関の関心を惹きやすく、後の事後調査において「なぜ保税地域に入れられなかったのか」「保管中の管理状況はどうだったか」を厳しく問われることがあります。当時の許可申請書の写しや、保管場所の写真、警備記録などは、輸入許可後も数年間は厳重に保管しておくべきです。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。

弁護士でありながら通関士の専門知識を持つことで、他所蔵置許可申請のようなテクニカルな手続においても、税関当局との論理的な交渉が可能です。特に、巨大貨物や危険物の輸入に伴う損害賠償リスクや、他所蔵置中の事故に関する責任の所在の明確化など、法務と実務の両面からサポートを提供いたします。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

8 まとめ:他所蔵置制度の戦略的活用と安全性の両立

他所蔵置は、輸入ビジネスにおける物流のボトルネックを解消するための強力な手段です。しかし、その根底には関税法という厳格な規律があることを忘れてはなりません。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法的知識に基づき、他所蔵置許可制度を適切に活用することで、貴社の物流はより柔軟で強固なものとなります。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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