会社のパソコンを従業員が私的に利用していた場合

「会社が従業員に対して業務用に貸与したパソコンを、当該従業員が私的利用していたことが発覚したのだが、会社としては懲戒等の処分を行ってよいか?」というご相談をいただくことがあります。
結論として懲戒等の処分を行うことは可能ですが、手続等注意が必要な点がありますので、以下、ご紹介いたします。

 

1 懲戒処分について

パソコンの私的利用を禁止する社内規程が存在する場合には、規程違反を理由とした懲戒処分を行うことを検討することになります。
仮に、そのような規程が会社に存在しない場合には、懲戒処分を行うことが出来ないかというと、一概にそのようなことはありません。

そもそも従業員は、会社との間の労働契約上、就業時間中は職務に専念すべき職務専念義務を負っています。
就業時間中に、会社が従業員に対して業務用に貸与したパソコンを私的に利用することはこのような職務専念義務に違反する行為と考えられます。

したがって、仮に、会社に上記のような社内規程が存在しない場合でも、職務中にパソコンを指摘に利用することが、原則許されないものと考えられ、そのような行為をした従業員に対して懲戒処分を行うことは可能であると考えられます。

 

2 裁判例

パソコンの私的利用が問題となった裁判例を2つご紹介いたします。

①グレイワールドワイド事件(東京地判平15・9・22労判870・83)
1日に2通程度の私用メールを従業員が行っていたケースにおいて、職務遂行の支障とはなっておらず、かつ、会社側に対して過度の経済的負担を掛けないといった社会通念上相当と認められる程度であることから、従業員が職務専念義務に違反したものとまでは認められないと判断されました。

②K工業技術専門学校事件(福岡高判平17・9・14判タ1223・188)
学校の教員が、業務用のパソコンおよび業務用のメールアドレスを使用して、出会い系サイトに登録し、当該サイトで知り合った女性たちとの間で約5年間に約800通のメールのやり取りを行っていた事案において、当該教員に対する懲戒解雇が有効と判断されました。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

社内規程が存在しない場合、パソコンの私的利用に対する懲戒処分等が有効であると判断されるかどうかは、当該私的利用が業務の妨げとなっているかどうかなどを総合的に判断し、社会通念上相当といえるかどうかという視点で判断されます。
そのため、パソコンの私的利用に対して一律に懲戒処分をすることにはリスクがあり、慎重な対応が必須です。
当事務所では人事労務を幅広く取り扱っておりますので、ご不明な点、ご不安な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

 

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