懲戒解雇前に自主退職した従業員の退職金の取扱いについて

「懲戒解雇をする予定の従業員に対して、懲戒解雇をする旨伝えたところ、当該従業員が自主退職をした。このような場合、懲戒解雇の場合には退職金の支給はないところ、懲戒解雇を予定していた以上、退職金を支給する必要はないものと考えているが、問題ないか。」というご相談をお受けすることがあります。
結論としては、ケースバイケースであり、一律結論が定まっているものではありませんので、慎重な対応が必要です。
なお、退職後に、懲戒解雇事由が判明することもありますので、退職金の支給時期について、退職後直ちに支給することを予定している場合には、これを一定期間経過後と変更しておいた方が安心です。

本日は、懲戒解雇前に自主退職した従業員の退職金の取扱いについてご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 懲戒解雇前に地涌退職した従業員の退職金について

懲戒解雇は、労働契約の存在を前提とするものです。
そのため、従業員が自主退職をし、労働契約が終了した後は、懲戒解雇することはできません。
そうすると、理論的には、懲戒解雇したことを理由とする退職金の不支給という取扱いをすることができないこととなります。

このような、考え方については、裁判例でも同様の考え方をしたものがあります。
広島地判平成2.7.27では、懲戒解雇した場合に退職金を支給しないという規定しかない場合において、懲戒解雇前に従業員が自主退職をした以上は、原則として、退職金を不支給とすることはできないと判示しました。

これに対して、裁判例の中には、退職金規程上、懲戒解雇による場合は退職金を不支給または減額にすることができる旨の条項があったものの、対象者が自主退職してしまい、懲戒解雇することができなかったという事案において、当該条項により退職金を不支給または減額とすることはできないが、退職金の性格(特に功労報酬的性格)に照らすと、それまでの勤労の功を抹消または減殺する程度にまで著しく信義に反する行為があったと認められるときは、元従業員による退職金請求は権利濫用になるとし、実際に権利濫用に該当すると判断したものがあります(大阪地判平成21.3.30)。

 

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