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仕入価格と申告価格の乖離が問題視される理由

2025-08-09

輸入ビジネスにおいて、商品の仕入価格と税関への申告価格が異なることは実際問題として珍しくありません。

しかし、この「乖離」があると、税関から「過少申告ではないか」、「正しい関税評価がなされていないのではないか」と疑念を持たれ、税関調査の対象や追徴課税の原因となるおそれがあります。

本記事では、仕入価格と申告価格の乖離がなぜ問題になるのか、その法的根拠と実務上のリスク、対策について解説します。

 

1 関税評価の基本ルールとは?

関税評価とは、関税を課す基礎となる価格(=課税価格)を算定する手続です。

原則として輸入取引で実際に支払ったまたは支払うべき価格が課税価格の基本となります(いわゆる現実支払価格)。

ただし、その取引価格に「加算すべき要素(ロイヤルティ、無償供与部材など)」がある場合には、それらも含めて関税評価されることになります。

 

2 「仕入価格」と「申告価格」が一致しない原因とは?

実務上、両者が乖離する原因にはいくつかのパターンがあります。

①複数のインボイスが存在する(プロフォーマと商業インボイス)

②値引きやリベートが実際に存在するが、申告価格に反映されていない

③輸送費・保険料等が申告に含まれていない

④サンプル品・無償品を有償価格と一緒に申告している

⑤グループ企業間で取引価格が調整されている

これらは意図的な不正でなくても、税関にとっては「価格の妥当性に疑義がある」対象として調査の引き金になるのです。

 

3 税関が問題視するポイント

税関は以下のような観点から乖離をチェックします。

①同種・類似品と比べて著しく価格が低い

②系列会社・関連会社間取引で価格調整が疑われる

③価格変更の理由が不明確

④過去の申告価格と継続性がない(急に下がっている)

こうした事案では、関税評価ルールに基づき「取引価格以外の方法(類似価格法、再販売価格法等)」により再評価され、追徴課税が行われる可能性があります。

 

4 問題を防ぐための社内チェックポイント

以下のような対策が、税関調査での指摘リスクを軽減します。

①インボイス・契約書と実際の送金額の整合性確認

②ロイヤルティや役務提供費用が含まれていないかのチェック

③同種品目の価格一覧の整備(平均単価管理)

④関連会社取引については移転価格文書の整備も検討

⑤変更があった場合は理由や経緯を記録・説明できるように

「なぜこの価格で輸入しているのか?」という説明責任を果たせる資料の準備が鍵になります。

 

仕入価格と申告価格が乖離していると、税関から不適正な申告と疑われ、調査や追徴課税のリスクが高まります。

申告価格の妥当性を支える証拠を日頃から整備し、取引の透明性を確保することが重要です。

当事務所では、価格評価リスクの診断、税関との交渉、修正申告や異議申立てまで、専門的に対応しております。価格関連で不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

 

過少申告加算税と重加算税の違いと防止策

2025-08-04

税関からの調査の結果、追徴課税が発生した際、多くの輸入者が驚くのが「関税とは別に加算税も課される」という点です。

加算税は、輸入申告の誤りに対して課される追加的な税金であり、悪質性の有無によりその税率や評価が大きく変わります。

今回は、「過少申告加算税」と「重加算税」の違いと、それらを防ぐために企業として講じるべき対策について解説いたします。

 

1 加算税とは何か?

加算税とは、関税法上の申告ミスに対して科される行政的なペナルティであり、主に以下の2種類が存在します。

①過少申告加算税(10%):単なるミスや過失によって課税価格等が低く申告されていた場合

②重加算税(35%):意図的に虚偽申告や隠蔽を行ったとされる場合

いずれも、関税・消費税に加えて課税されるため、事実上の「追徴金額」はかなりの金額に膨らむ可能性があります。

 

2 過少申告加算税の適用場面

過少申告加算税は、以下のような「過失に基づく誤り」が典型例です。

①HSコードの誤適用(類似品と取り違えた)

②インボイス価格の入力ミス

③原産地証明書の形式不備

④複雑な関税評価方法の理解不足による申告ミス

申告内容に明確な虚偽や隠蔽の意図がない場合でも、「結果的に関税が不足していた」として加算税の対象となります。

 

3 重加算税の適用場面

重加算税は、より重大な違反があった場合に適用されます。具体的には、

①故意にインボイス価格を低く改ざん

②複数のインボイスを使い分けて虚偽申告(いわゆる「二重価格」)

③本来の原産地を偽って関税を免れようとした

④税関調査時に帳簿や資料を隠蔽、破棄した

これらの行為は、税関側から「隠蔽または仮装行為」と認定され、通常よりも厳しい税率(35%)が課されるほか、刑事告発の可能性も生じます。

 

4 防止策:社内体制と申告チェックの強化

加算税を回避・軽減するためには、日頃から以下のような取り組みが有効です。

①商品ごとのHSコードと関税率の社内台帳整備

②原産地・インボイスの内容と申告価格の照合ルール化

③輸入部門と経理部門の連携強化

④定期的な専門家(弁護士・通関士)によるレビュー

⑤税関からの照会に対する速やかな対応

特に、重大な問題になる前に自主的な修正申告を検討することも非常に重要です。

 

過少申告加算税と重加算税は、どちらも企業にとって大きな経済的・信用的ダメージとなります。

ただし、その発生には明確な違いがあり、適切な社内管理と早期対応によって、十分に防止・軽減が可能です。

当事務所では、申告ミスのリスク診断、加算税対応、修正申告支援、不服申立てなどを一貫してサポートしております。税関からの指摘や加算税の通知にお困りの際は、ぜひ早めにご相談ください。

海外メーカーと輸入業者間の契約トラブル

2025-07-15

海外メーカーと取引を開始したものの、「納期が守られない」、「商品が仕様と違う」、「代金を払ったのに発送されない」といったトラブルに悩まされる輸入事業者は少なくありません。

こうした契約トラブルの多くは、契約書が存在しない、もしくは不十分な内容のまま取引を開始してしまったことに原因があります。

今回は、輸入取引における海外メーカーとの契約トラブルと、トラブルを回避・解決するためのポイントを解説いたします。

 

1 典型的な契約トラブルのパターン

以下のようなケースが特に多く発生しています。

①納期遅延:予定納期より数週間、ひどいときには数か月遅れて商品が届く

②仕様不一致:注文した仕様と異なる素材・サイズ・パッケージの製品が納入される

③数量不足・破損:インボイス上の数量と実物が一致しない。あるいは不良品が混入

④代金支払い後の音信不通:前払いを済ませたのに発送連絡がないまま連絡不能に

これらはいずれも「契約書があれば回避または解決しやすい」類型のトラブルです。

 

2 口頭・メールベースの合意の限界

日本では、「相手が信頼できる」「長年の付き合いがある」といった理由で、契約書なしでの取引が続けられることも少なくありません。

しかし、海外メーカーとの取引では法的文化や商習慣が異なり、口頭合意やメールのやり取りだけでは証拠として不十分とされる場合があります。

また、言語の壁、タイムゾーンの違い、商慣習の違いにより、トラブル発生時にスムーズな交渉ができず、解決が困難になることも多く見られます。

 

3 争いになった場合の準拠法・裁判管轄の考え方

紛争が発生した際、「どこの国の法律で」、「どこの裁判所で」争うかが重要になります。

契約書にこの点が定められていない場合、以下のような問題が生じます。

①相手国の法律が適用され、日本の法律と全く違う解釈がされる

②相手国で訴訟を起こす必要があるが、現地に弁護士もおらず対応困難

③証拠書類が現地語で作成されており、反論ができない

事前に準拠法・管轄裁判所を日本と定めておくことが、重要なリスク管理となります。

 

4 トラブル発生時の対応

①まずはメール等で冷静に事実確認・要請

②支払い記録・契約書・やり取り履歴の整理

③通信が途絶えた場合は内容証明郵便(国際郵便)や弁護士通知の検討

④国際仲裁条項がある場合は、仲裁機関に申し立て

⑤最終的には日本または相手国での訴訟提起を視野に

トラブルの初期段階から弁護士の関与によって、交渉力を強化し、実害拡大を防ぐことが可能です。

 

海外メーカーとの契約トラブルは、事前の契約内容の整備と証拠確保によって、大きくリスクを軽減することができます。

輸入ビジネスの安定化のためには、「契約書はビジネスの保険」として、法的整備を怠らないことが重要です。

輸入品が破損していた場合の法的責任と対応策

2025-07-10

海外から輸入した商品が到着したものの、一部が破損していた、または全体的に損傷していたというケースは少なくありません。

このような事態に直面したとき、輸入者として「誰に、どのように責任を求めるべきか」、「はたして損害補償は受けられるのか」といった問題に直面することになります。

そこで、本日は、輸入品の破損が発生した場合の法的整理と実務上の対応策について解説いたします。

 

1 輸入品破損の主な原因

輸入品の破損は、以下のような複数の原因が考えられます。

①輸送中の物理的衝撃・振動

②荷役作業中の事故(積み下ろしミスなど)

③梱包不良(海外メーカー側の原因)

④通関・検査時の取り扱い不備

⑤保管中の湿気・温度管理の不備

原因の特定が不明確な場合もありますが、損害の責任の所在を巡って複数の関係者(輸出者、輸送業者、保険会社等)が絡むため、法的・契約上の整理が必要です。

 

2 インコタームズによる危険負担の分担

国際取引における「インコタームズ(Incoterms)」により、商品の損傷に対する危険負担の所在が定められます。

①FOB(Free on Board):本船積込時点で買主にリスクが移転

②CIF(Cost, Insurance and Freight):保険付き、港到着時点でリスク移転

③DDP(Delivered Duty Paid):輸入者の手元に届くまで売主が責任を負う

契約書でどのインコタームズが適用されているかにより、どの時点で破損が発生したかが責任を判断する際の出発点になります。

 

3 輸送保険(貨物海上保険)の確認

多くの輸入取引では、万一の破損に備え「貨物海上保険」が付保されています。

この保険によって補償される場合、以下の手続きが必要となります。

①到着時にすぐに破損の有無を確認(写真・動画記録)

②船会社やフォワーダーに「事故報告書」提出

③保険会社に「損害証明書(サーベイレポート)」を依頼

④補償請求に必要な書類(B/L、インボイス、保険証券等)を準備

破損品を廃棄・転売する前に、保険会社の指示を受けることが重要です。

 

4 契約相手への責任追及

破損の原因が海外メーカー側(梱包不備等)にあると判断される場合、売主に対して契約上の瑕疵担保責任(契約不適合責任)、債務不履行責任を追及することを検討することになります。

交渉が難航する場合には、弁護士による通知書送付や、仲裁・訴訟手続を視野に入れる必要もあります。

 

輸入品の破損は、放置すれば大きな損失となり、トラブルの長期化にもつながります。

契約内容・保険・インコタームズなどを正確に把握し、原因ごとに適切な対応を取ることが必要です。

 

輸入通関手続における検査に時間がかかる理由とその対処法

2025-07-05

輸入通関手続においては、スムーズに終わる場合もあれば、「検査のために時間がかかる」との連絡を通関業者から受けることがあります。

予定していた納品や販売に支障が出る場合もあり、事業者にとっては頭の痛い問題です。

本日は、税関検査に時間がかかる主な理由と、輸入者として取りうる対策について解説します。

 

1 税関検査には「書類審査」と「貨物検査」がある

税関での検査は、大きく以下の2段階に分かれます。

①書類審査:インボイス、パッキングリスト、輸入申告書などの内容を確認する

②貨物検査:必要に応じて、実際にコンテナや商品を開封して中身を確認する

貨物検査が実施される場合、検査予約・開披・検査立ち会い・結果待ち等といった工程が発生し、数日から1週間以上かかることもあります。

 

2 税関検査が実施される典型的な理由

①ランダム抽出

一定割合でランダムに選ばれるもので、問題がなくても検査対象となることがあります。

②商品・価格に不審点がある

インボイス記載内容が曖昧、同種商品の平均価格より極端に安い、商品名が抽象的(例:”accessory”)など

③規制品目や過去にトラブルのあった品目

薬機法や電波法などの規制対象品目は、内容確認のため優先的に検査されやすくなります。

④過去に誤申告や違反歴がある業者

一度指摘を受けた輸入者や貨物は、リスク要注意先としてマークされる可能性があり、以後の検査頻度が上がることがあります。

 

3 検査が長引いた場合の輸入者の対応

①通関業者との密な連絡

進捗状況を逐一把握し、必要書類があれば速やかに提出

②納期への影響の社内共有・得意先への説明
遅延が予想される場合、あらかじめ取引先に説明して信頼関係を保つ

③検査立会や資料提出の準備

税関から問い合わせがあった際に即応できる体制を整えておく

 

税関検査の遅延は、輸入ビジネスにとって避けがたいリスクのひとつです。

しかし、正確な申告とリスク管理の体制を整えておくことで、検査の発生頻度を減らし、対応の効率化を図ることが可能です。

また、トラブルが発生した場合にはその都度適切な対応を取る必要がありますので、何かトラブルが発生した場合には速やかに対応を取ることができるように万一の際のシュミレーションを日常的に行うことも重要です。

当事務所では、輸入ビジネスにおける通関リスクや税関対応に関するアドバイスを行っております。事前の備えやトラブル発生時の対応について、お気軽にご相談ください。

輸入時における知的財産権侵害トラブルへの対応方法

2025-06-30

海外で販売されている商品を日本に輸入する際、商標権・著作権・意匠権・特許権などの知的財産権を侵害していないかどうかは、重要なチェックポイントです。

仮に侵害があった場合、税関で差止を受けたり、正規の権利者から訴訟提起されたりするおそれがあります。

本日は、輸入時に知的財産権の問題が生じた場合の具体的な対応方法と、事前に取るべき予防策を解説します。

 

1 税関での通知に対する対応

輸入手続きの途中で、税関から知的財産権侵害に関する通知が届いた場合、それは「権利侵害の疑いがある」と判断されたことを意味します。

この段階で取るべき対応は以下の通りです。

①税関からの通知内容を正確に読み取る

②対象となっている知的財産権(商標、意匠など)を確認する

③商品の正規性を証明する資料(契約書、インボイス、ブランドオーナーからの許諾書など)を準備する

④意見書を提出する期限を確認し極力遵守するように努める

期限内に意見や証拠を提出しない場合、自動的に差止処分がなされる可能性が高くなりますので、仮に期限内に間に合わない場合には税関側に連絡をする必要があります。

 

2 並行輸入が認められるかどうかの検討

輸入品が「正規品」であっても、商標権侵害とされることがあります。

いわゆる「並行輸入」が合法と認められるためには、以下の3要件をすべて満たす必要があります。

①日本国内の商標権者と、外国の商標権者が同一または支配関係にあること

②国内外で使用されている商標が実質的に同一であること

③国内商標権者が輸入品について品質保証等の統制ができること

これらを証明できる資料がない場合、商標権侵害と判断されるリスクが高くなりますので注意が必要です。

 

3 正規品であることの立証が重要

また、そもそも正規品ではないという疑いを掛けられる場合もありますが、「偽物ではない」という主張だけでは不十分です。以下のような立証資料をそろえることで、正規輸入品であることを主張できます。

①海外サプライヤーとの正式な契約書

②輸出元が正規メーカーまたはライセンス保持者であることを示す証拠

③商品の製造証明書、シリアルナンバー、ラベル等の識別情報

④輸入時の通関記録・インボイス・支払証明書類

 

4 権利者との交渉・和解の可能性

差止処分がなされた後であっても、正規の権利者と交渉し、使用許諾契約や輸入許可を得られる場合もあります。

この場合、交渉の窓口として弁護士を活用することで、損害賠償リスクの軽減や今後の安定供給の確保にもつながります。

 

知的財産権の問題は、たとえ故意で行ったものでなくとも重い責任が問われることがあります。輸入ビジネスにおいては、事前の法的チェックとトラブル発生時の冷静な対応が鍵を握るといえるでしょう。

当事務所では、知財トラブルへの対応や交渉支援、輸入前のリーガルチェックまでサポートいたします。お気軽にご相談ください。

通関業者任せは非常に危険です

2025-06-25

輸入ビジネスにおいては、自主通関を行っている方もいるでしょうが、多くの企業は通関手続を通関業者に委託しています。

そして、通関業者に所属し実際に通関手続を行うのが「通関士」です。

しかしながら、すべてを通関業者や通関士に「丸投げ」してしまうことには、重大なリスクがあります。

今回は、通関実務における「業者任せ」に潜むリスクと、輸入者として必要な対応について解説します。

 

1 輸入申告の最終責任は「輸入者」にあります

通関手続きは外部に委託できても、法律上、輸入申告者=納税義務者はあくまで輸入者本人です。

つまり、仮に通関業者が誤ったHSコードを適用したり、価格・数量を誤って申告したりしても、それによって発生した追徴課税や罰金等は輸入者が負担することになります。

 

2 よくある「通関業者任せ」のリスク事例

① HSコードの誤分類

業者が判断したHSコードが実際の商品と合っておらず、税率が大幅に異なる場合、税関から過少申告と判断されてしまうおそれがあります。

②原産地や価格の確認不足

インボイスや契約書の記載内容が曖昧でも、業者がそのまま申告してしまい、後日税関調査で否認される場合があります。

③規制品目の見落とし

薬機法や電波法の対象となる商品でも、業者が気づかずに申告してしまうことで、輸入差止や廃棄の対象になることがあります。

 

3 「プロに頼んだのに通関でトラブルに」は防げるか?

多くの輸入者は「専門家に頼んでいるから大丈夫」と思いがちですが、通関業者は輸入品の真の内容・取引背景・契約条件までは把握できないことが多いのが実情です。

通関業者は、あくまでも輸入者が提供した情報に基づいて申告手続を行いますので、輸入者が以下のような基本情報の提供と内容確認を怠ると、輸入申告においてトラブルに発展しやすくなります。

①商品仕様書・写真・カタログを業者に正確に提供する

②HSコードや税率の根拠を確認し、疑問があれば相談する

③規制対象か否かを事前に弁護士等に相談する

④修正インボイスや追加書類が必要な場合は速やかに対応する

⑤通関後の書類は必ず保管・再確認しておく

これらを徹底することで、「通関業者任せ」によるトラブル発生のリスクを最小限に抑えることができます。

 

4 弁護士の活用場面

「通関の専門家=通関士」と思われがちですが、法的トラブルに関しては弁護士の領域です。法令違反のリスクを防ぐには、通関士との連携とあわせて、法務面からの確認も不可欠です。

例えば、弊事務所では、以下のようなサポートを提供しております。

①税関から照会や調査が入ったときの対応支援

②通関士とのコミュニケーションサポート

③契約書やインボイス等の法的確認

④輸入スキーム全体のリスク診断

 

繰り替え利子になりますが、通関士や業者に任せていても、最終的な責任は輸入者に帰属します。「お任せ」で済ませず、自社でも内容を理解・確認する姿勢が重要です。

トラブルを未然に防ぐため、通関業務の外注管理と、法務リスクの把握体制を構築しましょう。輸入手続きに関する法務チェックや税関対応のアドバイスをご希望の方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

インボイスの誤記と修正手続き

2025-06-20

輸入手続きにおいて提出が求められる代表的な書類のひとつが「インボイス」です。

インボイスは、輸入申告時に貨物の価格・数量などを示す最も重要な資料の一つですが、記載ミスや情報不足があると、通関手続きの遅延、課税評価の誤り等の問題につながります。

今回は、インボイスの誤記がもたらすリスクと、その修正手続きの実務について解説いたします。

 

1 インボイスに盛り込むべき基本項目

インボイスには、以下のような情報が盛り込まれている必要があります。

①輸出者名・輸入者名

②商品の品名・数量・単価・総額

③原産地(Country of Origin)

④輸送条件(FOB、CIFなど)

⑤発行日

これらの情報は、課税価格の算定を行うための重要な情報となりますので、誤った情報が記載されると脱税等の自体が発生する可能性がありますのでくれぐれも注意が必要です。

 

2 インボイス誤記の典型例

以下は、実務でよく見られる誤記例です。

①数量・単価・通貨の記載ミス

②原産地の誤表示(例:実際は中国製だがベトナム製と記載)

③商品名の不明瞭な記載(例:”accessory” のみではHSコード判定が困難)

④実際の支払い金額とインボイス金額が異なる(値引きや無償提供の未記載)

こうした誤記があると、輸入事後調査で過少申告(アンダーバリュー)と判断され、過少申告加算税や重加算税の対象となることがあります。

誤記が判明した場合には資料の差し替えを行うことが考えられますが、仮に申告手続きが終了していた場合には、修正申告を行う必要があります。

 

3 輸入事後調査でのチェックポイント

税関の輸入事後調査では、インボイスの記載の正確性が厳しくチェックされます。

特に以下のような点がある場合には注意が必要です注目されます。

①継続的に不自然な価格での取引がある

②関連会社との間で価格が恣意的に設定されている

③サンプル品・ノベルティ等が未申告になっている

適正な価格・内容でインボイスを発行してもらうことが重要であり、輸入者としては各データ(発注書・見積書・送金証明など)を保存しておく体制が求められます。

 

インボイスは単なる「送り状」ではなく、関税申告の根拠となる法的文書です。

誤記や説明不足は税関とのトラブルの原因となり、追徴課税や信用低下にもつながります。

当事務所では、インボイスや通関書類の法務チェック、税関からの照会対応などのご相談を総合的に対応しております。ミスのない体制づくりをサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

原産地に関する虚偽申告のリスクと罰則

2025-06-15

国際取引において「原産地(Country of Origin)」は、関税率の適用、輸入制限の有無、統計分類等に大きな影響を与える重要な要素です。

しかしながら、誤った原産地を申告してしまった場合、たとえ意図的でなくても重大な法的リスクを招く可能性があります。

今回は、原産地に関して虚偽申告をしてしまった具体的なケースと、その法的リスク・罰則について解説いたします。

 

1 そもそも原産地とは何を意味するのか?

「原産地」とは、商品の実質的な『生産が行われた国』を指します。

単に出荷された国や中継地ではなく、実質的な価値が形成された場所が『原産地』となると考えることになります。

例えば、中国で生産された商品を一度ベトナムに移し、そこから日本に輸出しても、実質的な加工が一切行われていなければ「中国」が原産地となります。

 

2 原産地を偽るとどうなるか?

関税法では、輸入申告に際して虚偽の記載を行った場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されると定められています。

たとえば、FTAやEPAを利用する際に、原産地証明書を偽造・誤記して関税免除を受けると、それ自体が関税法違反となることは改めて留意が必要です。

 

3 誤った原産地に基づく申告の典型例

①三国間取引での誤解

ベトナムから商品が届いたが、実際の製造は中国だったケース

②梱包・ラベリングの国を原産地と誤認

実際の加工は別の国であったケース

③委託加工による原産地の錯誤

部品は日本製だが、組立はタイで行われていたケース

 

4 輸入税関事後調査で発覚するリスク

原産地に関する虚偽の申告は、輸入時には見逃されていても、後日の輸入税関事後調査で発覚するケースが多いです。

この際、仕入契約書・製造工程・インボイスなどを求められ、証明できない場合には過去数年分にわたる未納税分と追徴課税を課されることがあります。

これだけでも、場合によっては高額になり、ビジネスのその後に大きな悪影響が発生することになり得ます。

 

5 防止策:実態確認と記録の保存

原産地の申告ミスを防ぐためには、次のような体制を整備することが重要です。

①仕入先からの製造工程の情報・証拠を取得

②原産地証明書の真偽や発行機関を確認

③社内での品目別原産地管理台帳の作成

④不明点があれば、税関の「事前教示制度」を利用して原産地を確認する

 

原産地の虚偽申告は、知らずに行っていたとしても重い責任が問われる可能性があります。輸入事業においては、形式上の書類だけではなく実態に基づいた確認と記録の保存が求められます。

原産地に関するリスクを事前に回避したい方や、調査対応でお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。輸入法務の視点から、正確で安全な輸入体制づくりをお手伝いします。

税関での輸入差止~突然の通知にどう対応するか?~

2025-06-10

ある日、輸入予定の商品について「税関から差止に関する通知が届いた」経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな突然の事態に、輸入事業者の多くは戸惑い、不安を抱えながら対応を迫られます。

税関による輸入の差止は、知的財産権(商標権・著作権など)の侵害が疑われる場合に行われる措置であり、正しく対応しなければ、商品は廃棄され、損害が膨らむおそれもあります。

 

1 税関での差止とは?

税関は、特定の知的財産権(商標権・著作権・意匠権など)を侵害する物品の輸入を未然に防止するため、輸入通関前に貨物を差止める権限を有しています。

商標権者などがあらかじめ税関に「輸入差止申立」をしていた場合、それに該当する貨物が通関されようとすると、税関が内容をチェックし、該当の可能性があれば輸入者に対して通知書等を送付してきます。

 

2 通知が届いたときに取るべき初動対応

通知を受け取った場合、焦って自己判断で対応するのは非常に危険です。まずは以下の手順で冷静に対応しましょう。

①通知書の内容を確認する

すなわち、対象商品は何か?差止申立人(商標権者など)の氏名・権利名は?回答期限(通常は10日~14日以内)は?

②輸入した商品に関する権利関係を再検討する

並行輸入か否か?そもそもの真贋の確認?海外取引先との契約内容は?

③提出資料を準備する

 

3 弁護士に相談することの重要性

①権利侵害があるかどうかの法的評価

②提出書類の作成支援

③必要に応じた税関への同行対応

 

4 回答を怠るとどうなるか?

期限までに意見書や資料を提出しない場合、税関は輸入者に争う意思がないものと判断し、原則として差止を行うことになります。

この場合、対象貨物は返送や廃棄の措置となり、関税・消費税の返還が認められないこともあります。さらに、継続して同様の輸入を試みても、税関から都度詳細なヒアリングが行われることもあり得ます。

 

5 今後の再発防止策

税関からの差止通知は、輸入事業者にとってはその後のビジネスにうまく生かすことができる貴重な契機でもあります。特に、再発を防ぐためには、

①事前に税関の「知的財産情報検索システム」で権利の有無を確認

②新たな商品を扱う前に弁護士等の専門家にチェックを依頼

③海外取引先に「権利侵害のないこと」の保証条項を求める

 

輸入差止は、放置すれば損害が拡大する重大な法的トラブルです。しかし、正しく対応すれば、差止解除や将来の予防につなげることも可能です。

当事務所では、輸入差止対応に関する相談・書類作成・税関への対応支援などを幅広く行っております。突然の通知にお困りの際は、どうぞお早めにご相談ください。

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