Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category
該非判定の基本的な流れに改めてご注意ください
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
1 貨物の該非判定の基本的な流れ
貨物を輸出する場合には、外為法上の規制該当性を判断するための該非判定を行う必要があります。
ここでは、形式的に貨物の表面上の内容を検討するだけでは不十分であり、例えば機械の場合には、装置内部に弁やポンプ、制御装置などがある場合にはそれぞれを個別に検討する必要が生じる場合もありますし、機械に使用されている技術として、内部プログラムやマニュアルなどについて個別に検討する必要が生じる場合もあります。
貨物等省令を前提に、運用通達や役務通達を踏まえて判断していくことになりますが、単に形式的な用語を判断するだけでは不十分であり、実質的な機能などに着目する必要がある点は改めて留意が必要です。
マトリクス表の利用等、該非判定に慣れている方も改めて検討の順序や方法をご確認いただくことをお勧めいたします。
2 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
また、外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為であるといわざるを得ません。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在しますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。
知的財産権を侵害する輸入差止物品の品目
知的財産権保護は世界中で広く求められている権利保護ですが、実際問題として、知的財産権を侵害する事例は後を絶ちません。
昨今では、PCやプリンター、生成AI等の発展によって、知的財産権を侵害する物品を作成することは従来よりも大幅に容易になりました。
このような状況の中で、税関の水際で知的財産権を侵害する物品として差止を受ける商品も年々増加しております。
1 令和5年における知的財産権を侵害する輸入差止物品の品目
税関の公表資料によれば、
①輸入差止件数は、衣類が1万401件、次いで財布やハンドバッグなどのバッグ類が9028件、靴類が4448件、携帯電話及び付属品が3373件でした。
②輸入差止点数は、煙草及び喫煙用具が31万7764点、次いで医薬品が11万8190点、衣類が8万4403点、イヤホンなどの電気製品が6万8976点でした。
件数としては、近年通りの傾向であり、衣類やバッグ類、靴類が多くの割合を占めております。他方で、点数としては、煙草及び喫煙用具が圧倒的に多く、これはこれまでの年度にはなかったことでした。点数については、1度の輸入で大量に輸入しようとする事業者がいると大きく割合が変わってきますので、件数とは異なり毎年点数ベースでの品目の割合は異なってくる印象です(なお、令和4年度は、医薬品や電気製品の方が煙草及び喫煙用具よりも点数ベースで多かったです。)。
2 知的財産権を侵害する物品の輸出入には十分ご注意ください
知的財産権を侵害する物品を輸出入してしまった場合、単に行政罰が課されるだけではなく、悪質なケースでは告発が行われて刑事事件となるリスクもございます。
物品を輸出する以上、日本での知的財産権の侵害には該当しない等、都合のよい解釈を行って問題と誤解していた場合でも、法律に違反していれば違法となってしまいます。
また、意図的ではなかったとしても、意図的ではなかったということを証明することは難しい場合が多く、意図的だったか、それとも単なる不注意だったのか、ということは言葉で言うほど判別は簡単ではありません。
一度このような形で違法な輸出入を行ってしまうと、その後、輸出入を事業として継続することが難しくなる可能性もありますので、知的財産権を侵害する物品の輸出入にはくれぐれもご注意ください。
当事務所では、輸出入をめぐるトラブルのご相談を幅広くお受けしておりますので、既にトラブルが発生している場合や、事業を開始する前のリーガルチェック等、お気軽にご連絡ください。
知的財産権を侵害する輸入差止物品の種類
知的財産権保護は世界中で広く求められている権利保護ですが、実際問題として、知的財産権を侵害する事例は後を絶ちません。
昨今では、PCやプリンター、生成AI等の発展によって、知的財産権を侵害する物品を作成することは従来よりも大幅に容易になりました。
このような状況の中で、税関の水際で知的財産権を侵害する物品として差止を受ける商品も年々増加しております。
1 令和5年における知的財産権を侵害する輸入差止物品の種類
税関の公表資料によれば、
①輸入差止件数は、偽ブランド品を含む商標権侵害物品が3万448件、偽キャラクターグッズを含む著作権侵害物品が863件でした。
②また、輸入差止点数としては、商標権侵害物品が50万824点、次いで加熱式たばこ用カートリッジを含む意匠権侵害物品が44万2073点、著作権侵害物品が7万9221点でした。
件数ベースでは、商標権侵害が9割を超えており大半を占めておりますが、点数ベースでは、商標権侵害は5割弱であり、意匠権侵害も4割強を占めております。
商標権侵害が件数ベースでも点数ベースでも1番多い割合を占めることは最近の傾向ですが、著作権侵害と意匠権侵害については、どちらの方が件数や点数が多いかは年度によってまちまちであり、一概には判断できないところです。
貨物を輸入する事業者にとっては、商標権や著作権は馴染みのある概念ですが、意匠権についてはあまりなじみがない方も多い印象ですので、改めて意匠権についても留意する必要があります。
2 知的財産権を侵害する物品の輸出入には十分ご注意ください
知的財産権を侵害する物品を輸出入してしまった場合、単に行政罰が課されるだけではなく、悪質なケースでは告発が行われて刑事事件となるリスクもございます。
物品を輸出する以上、日本での知的財産権の侵害には該当しない等、都合のよい解釈を行って問題と誤解していた場合でも、法律に違反していれば違法となってしまいます。
一度このような形で違法な輸出入を行ってしまうと、その後、輸出入を事業として継続することが難しくなる可能性もありますので、知的財産権を侵害する物品の輸出入にはくれぐれもご注意ください。
当事務所では、輸出入をめぐるトラブルのご相談を幅広くお受けしておりますので、既にトラブルが発生している場合や、事業を開始する前のリーガルチェック等、お気軽にご連絡ください。
知的財産権を侵害する物品の仕出国等の状況
知的財産権保護は世界中で広く求められている権利保護ですが、実際問題として、知的財産権を侵害する事例は後を絶ちません。
昨今では、PCやプリンター、生成AI等の発展によって、知的財産権を侵害する物品を作成することは従来よりも大幅に容易になりました。
このような状況の中で、税関の水際で知的財産権を侵害する物品として差止を受ける商品も年々増加しております。
1 令和5年における知的財産権を侵害する物品の仕出国等の状況
税関の公表資料によれば、
①輸入差止件数は、3万1666件にのぼり、その内件数が多い順に、中国を仕出しとするものが2万5271件、ベトナムを仕出しとするものが2690件、韓国を仕出しとするものが751件となっております。
②また、輸入差止点数としては、105万6245点であり、その内件数が多い順に、中国を仕出しとするものが92万1579点、ベトナムを仕出しとするものが6万6487点、香港を仕出しとするものが2万7720点となっております。
仕出国の9割以上を中国が占めていた時期もありましたが、最近は8割前後となっており、ベトナムの割合が1割前後と増加している印象です。また、かつては韓国を仕出国とする貨物が非常に多かったようですが、最近では韓国が占める割合は少なくなっております。
自分としては正規品を輸入しているつもりであっても、知的財産権を侵害する物品を輸入してしまっているケースも相当程度あるようですので、これらの国からブランド品等を輸入する場合には、知的財産権を侵害していないかどうかについて改めてご確認いただいた方が良いでしょう。
2 知的財産権を侵害する物品の輸出入には十分ご注意ください
知的財産権を侵害する物品を輸出入してしまった場合、単に行政罰が課されるだけではなく、悪質なケースでは告発が行われて刑事事件となるリスクもございます。
物品を輸出する以上、日本での知的財産権の侵害には該当しない等、都合のよい解釈を行って問題と誤解していた場合でも、法律に違反していれば違法となってしまいます。
一度このような形で違法な輸出入を行ってしまうと、その後、輸出入を事業として継続することが難しくなる可能性もありますので、知的財産権を侵害する物品の輸出入にはくれぐれもご注意ください。
当事務所では、輸出入をめぐるトラブルのご相談を幅広くお受けしておりますので、既にトラブルが発生している場合や、事業を開始する前のリーガルチェック等、お気軽にご連絡ください。
知的財産侵害物品の差止状況について
知的財産権保護は世界中で広く求められている権利保護ですが、実際問題として、知的財産権を侵害する事例は後を絶ちません。
昨今では、PCやプリンター、生成AI等の発展によって、知的財産権を侵害する物品を作成することは従来よりも大幅に容易になりました。
このような状況の中で、税関の水際で知的財産権を侵害する物品として差止を受ける商品も年々増加しております。
1 令和5年における知的財産権を侵害する物品の差止状況
税関の公表によれば、
①輸入差止件数は、3万1666件にのぼり、前年比17.5%増です。
②また、輸入差止点数としては、105万6245点であり、前年比19.7%増でした。
③そして、輸入差止価額は、推計で約171億円となります。
私の実感としては、やはり偽ブランド品や偽キャラクターグッズ(いわゆる海賊版等)が非常に多い印象です。
海外で製作したものだから日本の知的財産権の侵害には該当しないのではないか、というような言い訳を行う方もいらっしゃいますが、知的財産権を侵害する物品を日本に持ち込むことは違法となりますので、どこで製作した物品であるかということは関係ありません。また、キャラクターグッズとして正確に作成している以上、問題ないのではないかという質問もたまにありますが、著作権上は、無断で複製をすること自体が違法となりますので、権利者の許可なくグッズを製作している段階で違法となってしまっていることには十分に注意が必要です。
2 知的財産権を侵害する物品の輸出入には十分ご注意ください
知的財産権を侵害する物品を輸出入してしまった場合、単に行政罰が課されるだけではなく、悪質なケースでは告発が行われて刑事事件となるリスクもございます。
物品を輸出する以上、日本での知的財産権の侵害には該当しない等、都合のよい解釈を行って問題と誤解していた場合でも、法律に違反していれば違法となってしまいます。
一度このような形で違法な輸出入を行ってしまうと、その後、輸出入を事業として継続することが難しくなる可能性もありますので、知的財産権を侵害する物品の輸出入にはくれぐれもご注意ください。
当事務所では、輸出入をめぐるトラブルのご相談を幅広くお受けしておりますので、既にトラブルが発生している場合や、事業を開始する前のリーガルチェック等、お気軽にご連絡ください。
電子取引情報の保存方法について
輸入や輸出を業とする個人、法人は、該当の貨物に関する品名、数量及び価格等を記載した帳簿を備え付け、帳簿、書類及び電子データを保存する義務を負います。
ただ、実際のところ、このような各書類の保存を適切に行うことができていない事業者も多く存在するように思います。
また、一概に電子データといっても、どのようなデータとすべきか、よくわからない、保存方法が分からない等、実務としての対応に不安がある方も多いのではないでしょうか。
本日は、電子取引情報の保存方法に関して、税関の実務上の考え方をご紹介いたします。
1 電子取引情報の保存方法について
①電子メールに請求書等の書類が添付された場合の保存方法について
請求書等の書類が添付された電子メールそのものを自社システム上に保存する必要があります。または、添付された請求書等をサーバ等に保存する必要があります。
②発行者のウェブサイト上で領収書等をダウンロードする場合の保存方法について
まず、PDF データ等をダウンロードできる場合には、ウェブサイトに領収書等を保存する、又はウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する必要があります。
次に、HTML データで表示される場合には、ウェブサイト上に領収書を保存する、又はウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし、サーバ等に保存する必要があります。また、ウェブサイト上に表示された HTML データを領収書の形式に変換し、サーバ等に保存することも可能です。
2 輸入や輸出の手続には様々なルールが存在します
関係書類や電子データの保存義務は、あくまでも様々な手続の中の一つであり、これ以外にも様々なルールが存在します。
これらのルールを適切に遵守しない場合には、輸入や輸出の手続が停止してしまうことや、脱税、密輸等の行政事件、刑事事件に発展するリスクも十分あります。
いずれにしても、ビジネス上は大きな支障となりますし、また、そもそも人生そのものに対しても大きな悪影響となり得ます。
これまで問題なく輸入や輸出をすることができたから問題ないと過信することは非常に危険です。一度問題が発生した場合には上記のとおり、取り返しのつかない状況となってしまうからです。
まずは、自社のビジネス上の各手続が問題ないかどうかをしっかりとチェックすることが重要ではありますが、様々なルールを正確に理解することが前提となりますので、ご不安な点がある場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
電子データの保存方法のよくある疑問点
輸入や輸出を業とする個人、法人は、該当の貨物に関する品名、数量及び価格等を記載した帳簿を備え付け、帳簿、書類及び電子データを保存する義務を負います。
ただ、実際のところ、このような各書類の保存を適切に行うことができていない事業者も多く存在するように思います。
また、一概に電子データといっても、どのようなデータとすべきか、よくわからない、保存方法が分からない等、実務としての対応に不安がある方も多いのではないでしょうか。
本日は、よくある疑問点について、税関の実務上の考え方をご紹介いたします。
1 よくある疑問点
①書類をスキャンする際のプリンタ等の性能について
規則上は、電磁的記録は、ディスプレイ等に出力して視認できるような状態である必要があります。プリンタやディスプレイの性能や設置すべき台数について必要要件はありません。
ただし、規則第 10 条第1項第2号及び同条第4項第4号において、電磁的記録は「速やかに出力することができる」ことが要件とされている点には注意が必要です。
②該当のデータを複数の媒体で保存することができるかどうか
原則として、データに関する検索機能については、関係帳簿書類を保存すべきこととなる期間内の関税関係帳簿書類に係るデータを通じて任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができる必要があります(令第 83 条第6項(同第8項)、通達 12 の 2-12/通達 94 の 2-28)。
しかしながら、法定の保存期間を通じて検索をすることが困難であることについて合理的な理由があるときには、該当のデータを複数の媒体で保存することができるとされています。例えば、データ量が膨大である等、複数の保存媒体で保存せざるを得ない場合等が、『合理的な理由』に該当すると考えられております。
③データは、事務所内のサーバで保存する必要があるかどうか
電磁的記録については、ディスプレイや書面に、法定の要件に従った状態で速やかに出力することができることが義務付けられているのみであり、データが保存されたサーバの設置場所についての決まりはありません。
そのため、クラウドサービスを利用することも可能ですし、海外にサーバーが置かれていても問題ありません(通達 94 の 2-7 注書き)。
2 輸入や輸出手続には様々なルールがありますのでご注意ください
輸入や輸出を事業として(あるいは副業として)行っている法人、個人の方は非常に多くおり、増加傾向にあります。
その一方で、輸入や輸出の手続に関しては様々なルールが存在しますので十分注意が必要です。ルールを正確に把握しない場合には、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあり、事業の存亡にかかわりかねません。
正確にルールを把握し、適切な輸入、輸出手続を行うことがビジネス上非常に重要ですので、万一、手続やルールに不安がある場合には、ご相談ください。
輸入事業者の書類保存義務
輸入や輸出を業とする個人、法人は、該当の貨物に関する品名、数量及び価格等を記載した帳簿を備え付け、帳簿、書類及び電子データを保存する義務を負います。
ただ、実際のところ、このような各書類の保存を適切に行うことができていない事業者も多く存在するように思います。
そこで、本日は、輸入者が保存すべき各書類をご紹介いたします。輸出者が保存すべき書類と大枠では同様ですが、保存期間が異なりますので、十分注意が必要です。
1 保存義務がある書類
(1)帳簿
まず、輸入者は、輸入許可が下りた日の翌日から7年間、帳簿を保存する必要があります。
帳簿における具体的な記載事項としては、該当の貨物の品名、数量、価格、仕出人の氏名(名称)、輸入許可年月日、許可書の番号を記載する必要があります。ただし、必要な事項が網羅されている場合には、既存の帳簿や仕入書等に追記したものでも代替可能であるとされております。
(2)輸入関係書類
輸入者は、輸入許可が下りた日の翌日から5年間、輸入関係書類を保存する必要があります。
輸入関係書類とは、
①輸入許可貨物の契約書、②仕入書、③運賃明細書、④保険料明細書、⑤包装明細書、⑥価格表、⑦製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類、⑧その他税関長に対して輸入の許可に関する申告の内容を明らかにすることができる書類、
のことを指します。
(3)電磁的記録
輸入者は、輸入許可が下りた日の翌日から5年間、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存する必要があります。
電磁的記録の具体的な内容としては、電子取引(インターネット等による取引、電子メール等により取引情報を授受する取引等を指します。)を行った場合における当該電子取引の取引情報、のことを指します。
2 輸出や輸入に関する不明点はお気軽にご相談ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち安易な対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
その一方で、輸出や輸入に関する知識を詳しく教えてもらうことができるケースは限られており、また、なんとなく輸出や輸入の手続を進めたとしても、手続自体は一見すると問題なく進む場合も多くあります。これは、輸入においては申告納税制度という制度が取られていることも多きない要因ではありますが、法律上は、輸入事業者は、輸入制度を適切に理解し、手続を行うことを前提として考えられております。
以上から、輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。
最新の裁判例その5
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判平成29年12月8日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
Xが、Yに対し、Yから納入された有名ブランド品のバッグ等の商品についてYが真正な製品であると保証したにもかかわらずその後に偽物であることが判明し、商標法違反によりこれらの商品が廃棄没収された結果、Xが同商品販売代金相当額の損害を被ったことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である。
2 裁判所の判断
裁判所は、以下の諸要素を総合的に踏まえ、XはYから本件商品が偽物であることを認識して購入し、転売していたものと認められると判断した上で、XとYとは、有名ブランドの偽物を継続的に売買していたにすぎず、XとYとの関係において、同売買は不法行為を構成するものではないと判断した。
①Xは、Aに対して有名ブランド品の廉価販売をしているBの販売価格のその65パーセントの値段で有名ブランド品を納入していること、
②Yから正規品の販売価格の2割程度の値段で購入していること、
③それにもかかわらず本件商品をブランド品メーカーの工場から直接に仕入れた物であると称していること、
④本件取引をするに当たって、正規価格と仕入価格の差が半分以下であり、商品によっては7、8割引きのものがあることを知っていたこと、
⑤Yから本件確約書の提供を求める以外には、本件商品が正規品であることを確認することは行っていないこと、
⑥Yから納品された本件商品の中の添付文書がいずれも至る箇所に誤字があり、一見して正規品ではないことが明らかな文書であったこと、
⑦Yに対し、納品時には同添付文書を除去して納品するよう指示したこと、
⑧本件商品を購入した顧客に対して、X独自の「保証書」を作成して、商品に内包して納品していたこと、
⑨同保証書には正規代理店の修理業者ではない業者名が記載されていたこと、
⑩原告の販売する商品を購入した顧客から商品がおかしいという苦情が寄せられたことがあること、
⑪修理等のクレームがついた場合に正規代理店の指定する修理業者ではないFという商号の修理業者に、クレームがついた商品を修理させていたこと
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。
最新の裁判例その4
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判平成30年2月20日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
Xが、輸出入代行業等を目的とするYとの間で、①XがYから株式会社A製の農業用トラクターを購入し、Xを輸出者とする旨の合意を締結し、②本件契約に基づき,Yが取引業者に指示して、農業用トラクターをイランへ輸出する旨の合意をしたところ、Yが、本件個別合意に反して、船荷証券の記載を偽るなどして、農業用トラクターをイラクへ輸出しようとしたこと等に関し、Yに対して本件契約及び本件個別合意の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①前記認定の事実によれば、本件製品の売買契約は、当初より本件製品をイラクへ輸出する目的で締結されたものであると認められる以上、本件製品が、本件製品をイラクへ輸出することを前提とした手続がとられたことに関し、Yに本件個別合意の債務不履行又は不法行為が成立する余地はなく、Xの主張には理由がない。
②XとYとの間で、本件製品の輸出先がイランであると合意されたとは認められず、これに関するXの主張は採用できない。そのため,その余の争点について検討するまでもなく、本件個別合意に関する債務不履行及び不法行為に関するXの請求には理由がない。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出代行や輸入代行の利用は拡大しておりますが、それに伴い様々なトラブルが発生しております。便利なサービスである一方で、利用する際には適切な対応を期待することができるかどうかを慎重に検討する必要がある点には注意が必要です。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。
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