Archive for the ‘コラム~人事労務・労使トラブル~’ Category

テスト出勤における賃金支払いの要否について

2023-02-20

休職期間中に、復職できるかどうかをテストするために出勤して一定の作業を行った場合に、会社は当該従業員に対して賃金を支給する必要があるでしょうか。
復職の可否の判断のための作業であることから労働ではないとして賃金を支給する必要はないという考え方もある一方で、このような場合に、賃金の支給義務があると判断した裁判例があります。
以下、ご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 NHK名古屋放送局事件(名古屋高判平30・6・26労判1189・51)

【判示の概要】
本件テスト出局中、控訴人はその上司であるD部長の指示に従って、編集責任者から割り振られたニュース項目について、送られてきたラジオニュース用原稿を編集担当者と打ち合わせながらテレビ用に作り替えるとともに、使用する映像を確認し、原稿に基づいてテロップ(スーパー)を発注し、ニュース放送中は、自分が担当したニュース項目の放送にスタジオ外で立ち会うなど、被控訴人の業務であるニュース制作に関与し、控訴人が関与したニュースは放映され、その成果を被控訴人が享受しており、控訴人が出局していた時間は使用者である被控訴人の指揮監督下にあったものと見られるから、この時間は労働基準法11条の規定する労働に従事していたものであり、無給の合意があっても最低賃金の適用により、被控訴人は控訴人に対し、その労働に対し最低賃金額相当の賃金を支払う義務を負うこととなる(労働基準法11条、13条、28条、最低賃金法2条、4条1項、2項)。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

三六協定に基づかない残業命令の有効性について

2023-02-06

会社の業務の繁閑に応じて、従業員には残業を命じる必要がある場合も多いものと思います。
もっとも、このような残業命令については、無制約で行うことができるわけではありませんので注意が必要です。
本日は、三六協定に基づかない残業命令の有効性が問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 宝製鋼所事件(東京地判昭25・10・10民集1・5・766)

【判示の概要】
従業員が割増賃金要求のための、交渉をなすことについては、組合において明示の承認を与えていたのであるから、申請人等が、その要求貫徹のためになした行為は、もとより正当な組合活動である。
もつとも、申請人等が、被申請人会社との交渉をもつことなく、直ちに産業拒否の態度に出たことは、信義則に背くといえないこともないが、その残業は、被申請人会社と前記労働組合との協定に基くものではなく、会社の慣行によつて行われてきたものであるから、申請人等に法律上そのような残業を強制するということはできないのであつて、それゆえ、残業拒否を違法とする前提要件を欠いているというベきであり、七の信義則違反ということも問題とならない。

上記裁判例はやや古いものですが、仮に会社内で慣行として残業命令が行われ、従業員が従っていたとしても、三六協定がない以上は、法律上強制力をもつ形で残業命令を行うことはできないと判示しており、当然といえば当然ではありますが、改めて念頭に置いておくべき重要な裁判例であるものといえます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

みなし労働時間制の適用が認められるかどうかが問題となった裁判例

2023-01-30

本コラムにおいては、労働者の労働時間に関する裁判例をいくつかご紹介してまいりました。
本日は、みなし労働時間制の適用が認められるかどうかが問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 ハイクリップス事件(大阪地判平20・3・7労判971・72)

【判示の概要】
みなし労働時間制は、単に労働者が事業場外で業務に従事しただけでなく、労働時間を算定し難い場合に適用されるところ(労働基準法38条の2第1項本文)、被告は、タイムシートを従業員に作成させ、始業時刻や終業時刻を把握していただけでなく、どのような業務にどのくらいの時間従事したかも把握していたこと、に電子メール等の連絡手段を通じて業務上の連絡を密にとっていたものと認められること、タイムシートには、みなし労働時間制の適用を前提とした画一的な始業時刻と終業時刻を記載するよう指示するのではなく、原則として実際の始業時刻と終業時刻を記載するよう指示していたことからすると、原告について、労働時間を算定し難い状況があったとは認められない。
よって、みなし労働時間制、(労働基準法38条の2)の適用はない。

以上のとおり、本裁判例においては、労働時間を算定しがたい状況にあったといえるかどうかを、客観的な資料、状況を踏まえて判断し、結論としてみなし労働時間制の適用を否定いたしました。
他の事案でも考え方が参考となる裁判例といえます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

賃金制度の変更と黙示の承諾について

2023-01-23

本コラムにおいては、労働者の賃金に関する裁判例をいくつかご紹介してまいりました。
本日は、会社が歩合給制を導入した後に、退職した従業員から歩合給制への変更は無効であり、変更前の賃金制度に基づく退職金の請求がなされた事案に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 大阪地判平14・7・19(労判833・22)

【判示の概要】
歩合給制の導入には合理的な理由があり、またこれの導入によって賃金額が上がった従業員もおり、歩合給制の導入が直ちに従業員に不利益な賃金体系であるということもできないし、歩合給制が導入され、これに基づく賃金が支給された後も原告らを含む従業員から苦情や反対意見が述べられたとの事情はうかがわれず、むしろ、営業社員の中には成果主義導入を歓迎する者もいた(被告本人兼被告会社代表者松岡)のであるから、原告らは歩合給制導入を認識し、歩合給制に基づいて計算された賃金を受領することにより歩合給制の導入を黙認していたというべきである。
また、平成12年11月の基本給減額についても、賃金を使用者が一方的に減額することは認められるものではないが、原告らはいずれも減額された賃金を受領しており、基本給の減額については黙示に承諾していたものというべきである。
この点、原告らは、生活のために賃金を受領していたにすぎない旨主張するが、原告らが基本給減額時に被告会社に抗議した等減額を拒絶した等の事情を認めるに足りる証拠は全くない。
したがって、歩合給制導入及びその後の基本給減額が無効であるとの原告らの主張は採用できない。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

賃金支払確保法における基準退職日について

2023-01-16

以前のコラムにおいて、賃金支払確保法における未払賃金の立替払制度をご紹介いたしました。
この点関連して、基準退職日に関する判断を示した裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 豊中管財・茨木労働基準監督署長事件(大阪地判平10・7・29労判747・45)

【判示の概要】
未払賃金立替制度は、労災保険の適用事業に該当する事業の事業主が破産の宣告を受け、その他賃確令で定める事由に該当することとなった場合において、当該事業に従事する労働者で、賃確令で定める期間内に当該事業を退職した者に係る未払賃金を一定の範囲内で国が労働者に対して支払う制度である。

そして、企業倒産等に伴う労働者の保護という賃確法の立法趣旨からするときは、右基準退職日の退職とは、契約期間満了による自然退職や労働者の意思に基づく任意退職のみならず、解雇その他により雇用契約が終了する場合や、法律上は雇用契約の明確な終了原因が存しない場合であっても労働者が事実上就労しなくなった場合も含まれると解すべきである。けだし、このような場合には、労務提供の受領拒絶は事業主の責に帰すべき事由によるものであるから、労働者が自ら解約の申出をしない限り、未払賃金は増大してゆくのであって、これを全て立替払の対象にすることは、現に就労していない労働者の保護として明らかに行き過ぎであり、ひいては未払賃金立替払制度の健全な運営を阻害することとなるからである。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

年次有給休暇の自由利用の原則について

2023-01-09

本日は、年次有給休暇の自由利用の原則に関する判例をご紹介いたします。
年次有給休暇は、労働者にとって非常に重要な制度ですので、経営者の方は、年次有給休暇を適切に労働者に取得させることが現在では求められております。
以下、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 林野庁白石営林署事件(最判昭48・3・2労判171・10)

【判示の概要】
年次有給休暇の権利は、労基法三九条一、二項の要件の充足により、法律上当然に労働者に生ずるものであつて、その具体的な権利行使にあたつても、年次休暇の成立要件として「使用者の承認」という観念を容れる余地はない(労基法の適用される事業場において、事実上存することのある年次休暇の「承認」または「不承認」が、法律上は、使用者による時季変更権の不行使または行使の意思表示にほかならないことは、原判決説示のとおりである)。年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である。

 

繰り返しになりますが、年次有給休暇は労働者にとって非常に重要な制度であり、適切に取得させない会社は、インターネット上等で非難を受ける等、企業の評判、ひいてはびじねすそのものにまで大きな悪影響を与える可能性がある問題といえますので、対応には十分注意することが必要です。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

退職勧奨が適法であると判断された裁判例

2022-12-26

本日は、退職勧奨が適法であると判断された裁判例についてご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 日本IBM事件(東京地判平23・12・28労経速2133・3)

【判示の概要】
退職勧奨は、勧奨対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動であるが、これに応じるか否かは対象とされた労働者の自由な意思に委ねられるべきものである。したがって、使用者は、退職勧奨に際して、当該労働者に対してする説得活動について、そのための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り、使用者による正当な業務行為としてこれを行い得るものと解するのが相当であり、労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる限度を超えて、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、又は、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって、その自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されず、そのようなことがされた退職勧奨行為は、もはや、その限度を超えた違法なものとして不法行為を構成することとなる。
被告は、退職勧奨の対象となった社員がこれに消極的な意思を表明した場合であっても、それをもって、被告は、直ちに、退職勧奨のための説明ないし説得活動を終了しなければならないものではない。
本件における具体的な事実関係を踏まえると、本件退職勧奨が違法であるとは認められない。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

退職勧奨を断った従業員に対する子会社への出向命令が無効であると判断された裁判例

2022-12-19

本日は、退職勧奨を断った従業員に対する子会社への出向命令が無効であると判断された裁判例についてご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 リコー退職勧奨拒否事件(東京地判平25・11・12労判1085・19)

【判示の概要】
そもそも、業務上支障のない余剰人員の割合を六%とする客観的、合理的な根拠自体が明らかとはいえない。各部門一律に同じ割合で余剰人員を人選するよう割り振られていることからみても、六%という割合は、事業実績や将来の経営予測に基づくきめ細やかな検討によって算出されたものではなく、競合他社と比較した、売上げに対する人件費率の目標値から機械的にはじき出された数値であることがうかがわれる。
余剰人員の人選が、人事グループによる依頼後わずか一か月強で終了していること、一般の従業員が第一七次中計の大規模な人員削減方針を知った時点では、既に余剰人員の人選が相当程度進行していたと思われること等も併せ鑑みれば、被告における余剰人員の人選が、基準の合理性、過程の透明性、人選作業の慎重さや緻密さに欠けていたことは否めない。
以上の点及びその他の事情を踏まえると、余剰人員の人選は、会社側が主張するような事業内製化を一次的な目的とするものではなく、退職勧奨の対象者を選ぶために行われたものとみるのが相当である。
したがって、本件出向命令は、人事権の濫用として無効というほかない。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

退職願の撤回が認められた裁判例について

2022-12-05

先日のコラムにおいて、退職願の撤回が認められない場合に関する裁判例をご紹介いたしました。
本日は、これとは反対に、退職願の撤回が認められた裁判例をご紹介いたします。
併せてご参照いただけますと幸いです。

 

1 山陽電機軌道事件(岡山地判平3・11・19労判613・70)

被用者による雇用契約の合意解約の申込みは、これに対して使用者が承諾の意思表示をし、雇用契約終了の効果が発生するまでは、使用者に不測の損害を与えるなど信義に反すると認められるような特段の事情がない限り、被用者は自由にこれを撤回することができるものと解するのが相当である。
原告(被用者のこと。以下同様。)の撤回届が本件退職届提出から一週間経過して到達しているが、その間、常務や営業部長には原告の退職届の撤回について打診があり、また、労働組合が原告の撤回の意思を伝えて被告と団体交渉を継続していたことが認められ、結局、本件退職届による雇用契約の合意解約申入れの意思表示は、被告の承諾以前に撤回されたものといえる。
なぜなら、原告が本件退職願を提出するに至った経過に照らしてみれば、常務が専務取締役との協議を経ることなく単独で即時退職承認の可否を決し、その意思表示をなしえたということはできないからである。

上記の裁判例では、退職願を受理した常務が、当該従業員についての人事権を有していなかったことから、退職願の撤回が認められました。
先日ご紹介した裁判例と同様に、退職願を受理したものが、当該従業員の人事権を有しているか否かが重要な判断基準となるものと考えられます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

4要素を軽視して整理解雇を実施した場合について

2022-11-28

整理解雇の有効性の判断においては、4要素を中心に判断される点については、これまで本コラムにおいてご紹介してまいりました。
本日は、このような4要素を軽視して整理解雇を実施した場合に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 山田紡織事件(名古屋高判平18・1・17労判909・5)

【判示の概要】
控訴人(会社側のこと)は、本件解雇が、民事再生法に基づく再生手続申立後の解雇であり、控訴人には、紡績業の廃止以外に選択肢はなかったから、選択可能な複数の経営判断が成立する場合の「整理解雇」の概念には該当するものではなく、権利濫用の法理が適用されるべき前提としての「雇用者の専横」が認めらないし、やむを得ない理由に基づいて行われたもので有効であると主張するが、いずれも独自の見解であり、にわかにこれを採用することはできない。
本件解雇は整理解雇であって、整理解雇の有効性を判断するための4要素を具備していない本件解雇は解雇権の濫用として無効である。

控訴人は、再生計画案提出時の経営状況に関して、その実情は破産状態であったし、現時点での経営状態も破産原因を内包していることに変わりはないと主張するが、債務超過や破産状態であるか否かは、整理解雇の効力を判断するに当たり、4要素の一つである「人員削減の必要性」の一事情として考慮されることは当然としても、そのこと自体で、4要素の履践の要否や解雇の正当性の有無の判断を不要としたり、またその判断に直接影響を及ぼす事情ではなく、この点に関する控訴人の主張も採用できない。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

« Older Entries

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー