Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category
EPA活用は諸刃の剣:メリットの裏にある追徴リスク
EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)は、締結国・地域の間の貿易において、特定の商品に関税を撤廃または大幅に引き下げる特恵関税を適用するための強力なツールです。これにより、輸入事業者は大幅なコスト削減と競争力強化を実現できます。
しかし、特恵関税の適用は、その貨物が協定で定められた厳しい原産地規則を満たしていることが条件です。この規則の解釈や運用を誤ると、税関の事後調査で特恵適用が遡及的に否認され、過去数年分の関税差額が一括で追徴されるという重大なリスクを負います。
EPAのメリットを安全に享受するために、輸入事業者が理解し、実行すべき原産地規則に関する重要チェックリストと注意点を解説します。
1 原産地規則の基礎知識と主要な判定基準
原産地規則とは、「その貨物がどの国で生産されたか」を特定するためのルールです。輸入者がEPAの特恵税率を適用する場合、以下の主要な判定基準を満たす必要があります。
(1)完全生産品
その国・地域で完全に獲得または生産された貨物(例:鉱物、農産物、漁獲品など)に適用されるシンプルな基準です。
(2)実質的な変更基準
輸入された非原産材料を使用して生産された貨物に適用されます。以下のいずれかの基準を満たすことが求められます。
①関税分類変更基準(CTC): 最終製品のHSコードと、製造に使用された非原産材料のHSコードが、協定で定められたレベル(類、項、号)で変更されていること。
②付加価値基準(VA): 最終製品の価格に占める、原産国・地域での**付加価値(原産材料費+人件費など)**の割合が、協定で定められた基準(例:40%以上)を満たしていること。
2 EPA適用を確実にするためのチェックリスト 5項目
税関調査で原産地規則の不備を指摘されないために、以下の5つの事項を確認・準備しておく必要があります。
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No. |
チェック項目 |
対応のポイント |
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1 |
適用する協定と規則の特定 |
輸入貨物のHSコードに基づき、適用すべき判定基準を協定の付属書から正確に特定しているか。 |
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2 |
原産性の証明文書の確保 |
輸出者から特定原産地証明書(または自己証明)を受け取っているか。また、その証明の根拠となる書類(部品表、原価計算書、製造工程資料など)も確保しているか。 |
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3 |
付加価値計算の正確性 |
付加価値基準を適用する場合、協定ごとの原価計算方法(控除方式、積み上げ方式)に従って、計算が正確に行われ、証明書発行時点の根拠資料があるか。 |
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4 |
輸出者による保証の確保 |
輸出者との契約書に、原産地情報の正確性に関する輸出者の保証、および税関調査時の資料提供協力義務を明記しているか。 |
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5 |
事前教示制度の活用 |
原産性の判断が複雑でリスクが高い貨物について、事前に税関の事前教示制度を利用し、原産地認定に関する回答を得ているか。 |
3 弁護士による監査と予防法務の重要性
原産地規則の適用は、HSコードの分類、会計処理、製造実務のすべてに関わる複雑な作業です。弁護士によるサポートを受けることで、例えば、
①原産性判断の法的レビュー: 貴社のサプライチェーンと製造プロセスに基づき、最も有利かつ安全な原産地規則の適用方法を提案します。
②輸出者のサポート: 輸出者から提出される原産地証明の根拠資料が、協定の要件を確実に満たしているか、弁護士の視点で検証します。
③追徴課税への防御: 事後調査で原産地適用の誤りを指摘された場合、法的根拠に基づき、原産性の正当性を主張・立証し、追徴リスクの回避・軽減を交渉します。
EPAの活用は、企業の成長に不可欠です。しかし、リスク管理なくして利益の最大化はありえません。特恵関税の適用については、必ず専門家のサポートを得て、盤石な体制を構築しましょう。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
サプライヤーリスクの管理:輸出者の「無申告」や「虚偽申告」への備え
1 輸入者の知らないところで発生する関税リスク
輸入事業者は、日本の関税法に基づき、自らが輸入者として関税・輸入消費税の申告納税責任を負います。しかし、実際問題として輸入申告の基となる情報(貨物の価格、構成、原産地など)は、海外の輸出者やサプライヤーから提供される情報に大きく依存しています。
これは、輸出者側のリスクが、日本の輸入者に転嫁されてしまう構造的な問題です。
本日は、輸入者がコントロールできないサプライヤーリスクに対し、どのように備えるべきか、弁護士的視点から解説します。
2 輸出者のミスが引き起こす追徴課税のメカニズム
輸出者の申告や提供情報に誤りがあった場合、日本の輸入者にリスクが及ぶ主なケースは以下の通りです。
(1)価格(関税評価)の誤り
輸出者が日本の輸入者以外にも請求すべき費用(例:ロイヤルティ、金型費用の一部負担など)を、インボイス価格に含めずに請求した場合、日本の税関は「課税価格の過少申告」*と認定します。
リスク:輸入者はインボイス通りに申告していても、輸出者が他の名目で支払いを受けていた事実が発覚すれば、追徴課税の対象となります。
(2)原産地の虚偽記載(EPA/特恵関税の適用否認)
EPA(経済連携協定)の適用を受けるために、輸出者が「特定原産地証明書」を発行しますが、この証明書が輸出者側の計算ミスや虚偽に基づいていた場合、税関調査でEPAの適用が否認されます。
リスク:低い特恵税率が遡って否定され、本来の関税率に基づいた差額の関税が一括で追徴されます。
(3)貨物情報の不正確さ(HSコードの誤り)
輸出者が提供した製品仕様書や構成情報が不十分であったために、輸入者が誤ったHSコードで申告し、税関調査でより高い関税率のコードに訂正された場合。
3 サプライヤーリスクを最小限に抑える3つの防御策
輸入者がサプライヤーに依存するリスクを管理するためには、契約と監査の仕組みが必要です。
(1)防御策1:契約書による義務の明確化(予防法務)
海外の輸出者との契約書(売買契約、代理店契約など)に、関税コンプライアンスに関する以下の条項を必ず盛り込む必要があります。
①関税情報提供義務:輸出者は、HSコード分類、原価計算、製造プロセス、ロイヤルティなど、関税評価に必要なすべての情報を、正確かつタイムリーに提供する義務を負うこと。
②原産性に関する保証:EPA適用を前提とする場合、輸出者は「貨物が規定の原産地規則を満たしている」ことを保証し、輸入者が税関調査で不利にならないよう、協力義務を負うこと。
③補償条項(インデムニティ):輸出者の提供した情報に虚偽または誤りがあり、その結果として輸入者が追徴課税やペナルティを受けた場合、輸出者がその損害全額を輸入者に補償する義務を負うこと。
(2)防御策2:定期的な監査(デューデリジェンス)
重要なサプライヤー、特にEPAを適用するサプライヤーに対しては、契約に基づき、定期的な現地監査(関税デューデリジェンス)を実施することも有効です。
(3)防御策3:複数サプライヤー戦略と文書管理の強化
リスクを特定のサプライヤーに集中させないため、可能であれば、複数の国・地域のサプライヤーと取引を行う「複数調達戦略」を検討します。
また、サプライヤーから提供された関税関連の書類(インボイス、価格根拠資料、原産地証明関連書類)は、関税評価の正当性を示す最重要証憑として、厳重に保管・管理します。
サプライヤーリスクは、輸入ビジネスの避けて通れない課題です。しかし、弁護士による適切な契約設計と予防的なリスク管理を組み合わせることで、その影響を最小限に抑えることは可能です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
「事前教示制度」を賢く活用する:税関からの回答を最大限に活かす
1 事後調査のリスクを低下させる防御策
輸入事業者が抱える関税評価やHSコード(品目分類)に関する不確実性は、数年後の事後調査で多額の追徴課税という形で顕在化するリスクを常に伴います。
この不確実性を低減させるための方法の一つが、税関の「事前教示制度」です。
事前教示制度とは、輸入申告を行う前に、輸入者が具体的な取引や貨物について税関に照会し、その取り扱い(HSコード分類、関税評価など)に関する文書による回答を事前に得ておくことができる制度です。税関は、この回答に従って実際の申告を取り扱うため、追徴課税のリスクを低下させることができます。
2 事前教示制度の最大のメリット:法的拘束力
事前教示制度の回答は、回答から3年間、税関の実務においてその内容が遵守されます。
これは、企業が獲得できる強固な防御手段の一つです。
特に以下のようなケースで活用すべきでしょう。
①複雑な複合品・新製品のHSコード:関税率表の解釈通則や類注の適用が難しく、複数のコードに該当しうる場合。
②複雑な取引構造の関税評価:ロイヤルティ、金型提供、仲介手数料など、加算要素の有無が論点となる複雑な取引の場合。
③EPA/特恵の原産地規則:「実質的な変更」の要件を満たすかどうか、加工工程が複雑な場合。
3 税関の判断を導く「照会文書」作成の3つのコツ
税関が事前教示の回答を出す際、その判断材料となるのは、提出された照会文書と添付資料のみです。税関が正確な判断を下せるよう、以下の点に留意して文書を作成する必要があります。
(1)事実関係の完全な開示と明確化
照会対象となる取引や貨物の事実関係は、一切隠さず、かつ明確に記載する必要があります。不確実な点や不足がある場合、税関は「回答不能」とするか、事実誤認に基づいた回答を出してしまうリスクがあります。
①関税評価の場合:契約の全体図、当事者間の関係図(資本関係、取引関係)、貨物代金以外の全ての支払い(ロイヤルティ、手数料、サポート費用など)の流れと使途を、証憑に基づき図示することが有効です。
②HSコードの場合:貨物の材質、機能、用途を詳細に記載し、カタログや図面を添付するだけでなく、製造工程や原理まで技術的に解説することが求められます。
(2)企業側の「法的見解」と論拠の提示
単に「このHSコードで合っていますか?」と質問するだけでは、税関任せの回答になりがちです。賢い活用法は、「企業側はこう考える」という主張と、その法的根拠を提示し、税関の判断を正確に導くことです。
(3)税関が疑問に思う点を先回りして伝えておく
税関職員がどこに疑問や懸念を持つかを予測し、照会文書の中で先回りしてその疑問を解消しておくことが重要です。
例えば、ロイヤルティの件であれば、「このロイヤルティは貨物の販売とは独立した技術指導の対価であり、関税評価上加算が不要とされる非加算要素であると考えます。その根拠として、ライセンス契約書と売買契約書を添付し、支払い条件が異なることを示します。」など、税関が最も問題視する論点を明確にする資料と主張を用意します。
4 弁護士によるサポートの必要性
事前教示は行政手続きであり、その照会文書は「法的文書」としての正確性が求められます。関税法、関税評価、HSコードの解釈に精通した弁護士(通関士)のサポートを得ることで、回答の取得可能性を高め、かつその回答が最大限に有利になるよう導くことができます。
当事務所は、予防法務としての事前教示制度の活用を最も重視しています。曖昧な通関手続は、貴社の将来の収益を脅かします。
複雑な輸入を始める際は、必ず事前教示制度をご活用ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入貨物が税関で留められた!「検査通知書」が届いた時の冷静な対処法と弁護士への相談タイミング
1 「税関留置」はなぜ起きる?緊急時の正しい初動
輸入手続の過程で、税関が特定の貨物に対して「検査」を行うことを決定し、輸入者のもとに「検査通知書」やその旨の連絡が届くことがあります。
この通知は、単なる通関の遅延ではなく、貨物の輸入が許可されないかもしれないという深刻なトラブルの始まりを示すサインともいえます。
貨物が税関で留め置かれる(留置される)主な理由は、以下のいずれかに該当する疑いがあるためです。
①輸入禁制品・規制貨物:覚醒剤、武器、ワシントン条約対象物、食品衛生法、薬機法などの他法令に違反する疑い。
②知的財産権侵害の疑い:商標権、著作権などを侵害する模倣品(ニセモノ)である疑い(水際取締り)。
③申告内容の確認:申告されたHSコード(品目分類)や関税評価(価格)が適正であるか、現物を検査して確認する必要がある場合。
2 検査通知書が届いた時の冷静な対処法
輸入貨物に関する検査通知書を受け取ったら、まずは焦らず以下のステップで対応を進める必要があります。
ステップ1:通知内容の確認と事実把握
通知書には、どの法律(関税法、知財法、他法令など)に基づいて留置されているのか、そして留置の理由(疑い)が記載されています。
これらの情報を正確に把握することが、その後の対応方針を決定する出発点となります。
ステップ2:税関への情報提供と主張の準備
税関は、輸入者に対し、貨物に関する追加資料の提出や質問への回答を求めてきます。この情報提供が、最終的な税関の判断を左右します。
①知財侵害の疑いの場合:貨物が真正品であり、適法な並行輸入であることを裏付ける、海外の正規ルートからの仕入れを証明する書類(契約書、インボイス、ライセンス証など)を迅速かつ論理的に整理します。
②品目分類・価格の疑いの場合:申告したHSコードや価格の妥当性を裏付ける、製品仕様書、製造工程資料、価格決定の根拠となる契約書などを提出します。
3 弁護士への相談タイミングと役割
「検査通知書」が届いた時点、または税関から検査を予告する連絡があった時点こそ、弁護士に相談すべき最適なタイミングです。
(1)知的財産権侵害の疑いの場合
知財侵害の判断は、特許法や商標法といった専門的な法律知識が必要です。弁護士は以下の役割を担います。
①迅速な意見書作成:税関の定める短い意見提出期間内に、知的財産権の解釈に基づいた法的根拠のある意見書を作成し、輸入が適法である旨を主張します。
(2)品目分類や評価額の確認の場合
弁護士(通関士)は、関税評価やHSコードの専門知識に基づき、申告内容の正当性を主張します。
①法的論点の整理:貨物の特性や取引条件について、関税法上の解釈通則や規定を引用しながら、税関の疑問を解消する法的・技術的な説明を行います。
②今後の行政処分への備え:検査の結果、税関が輸入許可を与えない処分(関税法上の違法審査や事後調査への移行など)を下した場合に備え、後の再調査の請求や行政訴訟を見据えた戦略的な対応を行います。
輸入貨物の留置は、ビジネスの機会損失に直結します。不安な状況で単独で対応するのではなく、関税法、知財法、そして実務に精通した弁護士を「水際の防御壁」として活用し、迅速かつ最善の解決を目指しましょう。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
「並行輸入」と「模倣品対策」:知的財産権侵害で税関に差止・没収されないための事前準備
1 水際で止められるリスク:知的財産権侵害と税関
貿易において、商品が海外から日本に到着したとしても、輸入者が自由に引き取れるわけではありません。
税関は、関税の徴収や輸入規制のチェックに加え、知的財産権(知財)の侵害物品が日本国内に入り込むのを阻止する重要な役割を担っています。いわゆる「水際取締り」です。
輸入しようとした商品が、商標権や著作権などを侵害する「模倣品(ニセモノ)」と判断されると、税関により輸入が差し止められ、最終的に没収される可能性があります。
特に並行輸入を行う事業者は、この知財侵害のリスクを常に意識し、万全の対策を講じる必要があります。
(1)「真正品」と「侵害品」の判断基準
税関が取締る対象は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などを侵害する物品です。
一番侵害しやすいものとしては、商標権侵害でしょう。
①並行輸入と「真正商品の輸入」
並行輸入とは、正規代理店ルートとは別のルートで、商標権者またはその許諾を受けた者が製造・販売した「真正商品」を輸入することです。真正商品の輸入自体は、特定の条件を満たせば適法とされています。
しかし、税関が差し止めを行うのは、その商品が「真正商品ではない」、すなわち模倣品である疑いがある場合です。
②税関による差止めのプロセス
税関は、輸入貨物に模倣品の疑いがあると、輸入者に対して「意見提出の機会の通知」を行います。この通知を受けた場合、輸入者は、輸入商品が真正品であり、知的財産権を侵害していないことを税関に対して立証しなければなりません。
この立証が不十分であると、権利者側からの輸入停止申立てが認められ、商品の没収や廃棄という最悪の結果につながります。
(2)並行輸入事業者が取るべき3つの事前準備
合法的に並行輸入事業を行うためにも、税関による差止めのリスクを最小限に抑える事前準備が必要です。
①事前の権利調査と真正品の証明準備
権利情報収集:輸入を予定している商品の商標権が、日本国内で誰に、どのような商品・役務(サービス)で登録されているかを正確に調査します。
取引履歴の確保:輸入する商品が、商標権者またはその許諾を受けた者によって製造・販売された真正商品であることを証明できる取引書類(仕入先の正規性を示す証明書、売買契約書など)を事前に確保しておきます。
②「認定手続き」の活用(権利者側対策)
知的財産権を侵害されるリスクを持つ権利者側は、税関に対してあらかじめ「輸入差止申立て」を行っておくことができます。この申立てが税関に受理され、取締りの対象として登録されると、税関はより積極的に水際取締りを行います。
(3)差し止め通知を受けた際の迅速な対応
もし輸入者として差止め通知を受けた場合、時間との勝負となります。
①弁護士への相談:通知を受けたら、直ちに関税法と知財法に精通した弁護士に相談します。
②立証資料の準備:弁護士は、輸入者が提出すべき真正品の証明資料を精査・補強し、法的・論理的な意見書を作成して税関に提出します。この意見書を通じて、商品が真正品であり、輸入が適法である旨を強力に主張します。
2 まとめ
知的財産権侵害をめぐるトラブルは、商品の没収だけでなく、企業イメージの失墜にも繋がりかねません。輸入を計画する段階から、関税法と知財法の両面からリスクを検証し、防御体制を構築することが重要です。当事務所は、輸入者が安心してビジネスを展開できるよう、知財リスクを含めた包括的なコンプライアンスをサポートします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
【輸入者のためのリスク管理】海外業者との契約書で確認すべき関税・通関に関する重要条項
1 トラブルは「契約書」から始まる:輸入者視点での関税リスク管理
輸入トラブルや事後調査での問題点の指摘の多くは、海外の売主や製造委託先との契約書の不備、あるいは関税・通関に関する条項の認識不足に起因します。
契約書は、取引が円滑に進んでいる時には大して問題になりませんが、トラブルが発生した際、または税関調査が入った際の「企業の防御壁」となります。
輸入事業者が自己のリスクを最小限に抑えるため、海外業者との売買契約書や製造委託契約書で特に確認し、明確化しておくべき重要条項を、弁護士の視点から解説します。
(1)課税価格決定の根拠:「支払いの全容」の明確化
関税評価における最大の論点は、輸入者が海外に支払った費用のうち、どこまでが輸入貨物の課税価格に算入されるか(加算要素)という点です。これを曖昧にしておくと、事後調査で追徴課税を招きます。
①ロイヤルティ(ライセンス料)に関する条項:契約書内で「ロイヤルティの支払いが、輸入貨物とは無関係であることを明確にする」ことが重要です。関税評価上、ロイヤルティが貨物の「輸入販売の条件」であると認定されると、課税価格に加算されることになります。支払いの根拠を明確に分離する記述が必要です。
②手数料に関する条項:支払う手数料が、関税評価上加算不要とされる「買付手数料」に当たるのか、加算が必要な「仲介手数料」に当たるのか、その業務内容と対価を明確に区別して記述します。
(2)HSコードと原産地:情報の提供義務
関税率やEPA適用に直結するHSコードや原産地証明書の情報は、輸入者が申告責任を負うにもかかわらず、その情報源は海外業者に依存しています。
①HSコードの提供義務:輸出者が輸出時に適用するHSコード(輸出国のコード)を、輸入者に対して事前に提供する義務を契約書に明記します。また、輸入者側でのHSコード分類(輸入国のコード)を海外業者に通知し、その相違点に関する認識を共有しておくことが望ましいです。
②原産地規則関連の協力義務:EPA(経済連携協定)を適用する場合、輸出者に対し、原産地証明書の発行および原産性を証明するための製造工程やコストに関する資料の提供に協力する義務を明確に負わせます。この資料提供が滞ると、特恵関税の適用が否認され、多額の追徴リスクに繋がります。
2 弁護士による契約書レビューの必要性
海外業者との契約書は、取引開始前の予防法務の最前線です。
関税法や関税定率法は国内法であり、その解釈は海外業者には理解されにくいものです。当事務所のような関税・通関実務に精通した弁護士(通関士資格保有)は、海外の契約書を日本の関税法、関税評価ルール、および事後調査の実務経験に基づきレビューし、輸入者のリスクを最小限に抑えるための修正案を提案します。
契約前のわずかな手間で、将来発生しうる数億円規模の追徴リスクを回避することができます。海外との取引を始める際は、必ず契約書を精査しましょう。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
事後調査で3年分の価格修正を求められた~継続取引の落とし穴~
「毎回同じ条件で輸入していたはずなのに、『過去3年分の価格が過少だ』と指摘され、追徴課税されました…」
これは、長年同じサプライヤーからの輸入を続けていた企業が、税関の事後調査で価格評価に問題があるとされ、遡及して修正を求められた実例です。
今回は、継続取引ゆえに見過ごされがちな関税評価の見直しポイントと、調査対応の注意点を解説します。
1 実例:割引条件の見落としで課税価格を否定
ある企業は、特定の海外メーカーから3年以上にわたって部品を継続輸入していました。
インボイスの単価は常に一定で、過去に税関から指摘を受けたこともありませんでしたが、事後調査の際、以下の点が問題視されました。
①継続取引の中で、リベート(事後的値引き)が付与されていた
②無償提供された部品の存在が一部確認された
③サプライヤーとの契約に「支払調整条項」が含まれていた
これにより、実際に支払うべき価格が申告価格より高かったとして、税関は3年分の申告価格を修正し、追徴課税および過少申告加算税を課しました。
2 「実際に支払うべき価格」とは?
関税評価においては、「実際に支払った又は支払うべき価格」が評価の基本です。
この「支払うべき価格」には、次のような要素も含まれます。
①リベートの取消し
②支払義務があるが申告に反映されていない費用
③無償供与品や技術指導などの加算要素
つまり、単に「インボイスに書かれた価格」だけでなく、実質的に取引の対価として支払うものはすべて評価対象になるという考え方です。
3 継続取引こそ『定期見直し』が必要
継続的な輸入であっても、以下のような変化があると、評価の見直しが必要です。
①支払条件や割引制度の変更
②販売インセンティブや目標達成ボーナスの追加
③関連会社間での価格調整
④サプライヤーとの契約改定(役務・ライセンス追加など)
こうした変更があっても、申告価格を据え置いたままだと、「過少評価」として税関に指摘される可能性が高まります。
4 調査対応のポイントと対策
①継続取引でも年1回は契約書・価格条件・実際の支払記録を点検
②会計記録と輸入申告データの整合性をチェック
③サプライヤーとの価格調整・リベート等のやり取りを明文化
④調査時には、税関に先回りして資料を提示・説明
⑤不安な点があれば、弁護士や通関士のレビューを受ける
継続的な輸入取引こそ、見直しや点検を怠ると大きなリスクにつながります。
税関は“これまで指摘されなかった”ではなく、“現在が適正かどうか”を見ているという視点を持ち、取引条件の変化に対応できる体制を構築しましょう。
当事務所では、契約・価格構成・税関評価のレビュー、調査対応支援も行っております。長期的な輸入管理に不安がある方は、ぜひご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
模倣品と誤認され税関で差止、廃棄処分~商標チェックと説明対応の落とし穴~
「正規品のつもりで輸入したのに、“模倣品の疑いあり”として差し止められてしまった…」
これは、税関の知的財産権侵害調査で“模倣品”と判断され、商品が廃棄処分となった実例です。
本日は、輸入者が正規品だと信じていたにもかかわらず差し止めに至った事案をもとに、商標チェックの重要性と税関対応のポイントを解説します。
1 実例:正規仕入れのはずが「模倣品」と判定
ある企業が海外EC業者から輸入したアパレル商品に、有名ブランドのロゴが印刷されていました。
輸入者は「正規品と聞いていた」と主張しましたが、税関は商標権を保有する国内企業からの申立てを受け、輸入差止を実施。
輸入者が証明資料を十分に提出できなかったため、輸入不可と判断され、全品が廃棄処分に。関税・送料も返還されませんでした。
2 税関による差止のしくみ
税関は、関税法に基づき、商標権・著作権・意匠権などを侵害している疑いのある貨物を、職権で差止めることができます。
差止対象となると、以下の書類が輸入者に送付されます。
①輸入差止通知書
②意見提出・資料提出の依頼書(期限付き)
期限内に正当性を説明・証明できない場合、一方的に「侵害品」とみなされ、廃棄処分が確定してしまいます。
3 よくある「誤認・差止」の原因
①輸出業者が「正規品」と虚偽表示していた
②並行輸入品だが、日本では許諾が必要な商品だった
③ブランドのロゴや図柄が類似しており、税関で疑義が生じた
④商品の出所証明書や販売許諾書を入手していなかった
税関は「真正品」と「模倣品」を、外観・商標表示・製造情報・証明書類等に基づき判断します。外見が似ているだけでも、権利者が疑義を申し立てれば差止の対象になります。
4 実務対応と証明のポイント
①商品画像、ラベル、商標表示部を明確に示した資料を提出
②正規販売店・ブランドホルダーとの取引契約書・発注書を提示
③商標使用許諾が明文化されていることを証明書類で立証
④並行輸入品の場合は、商標権侵害にあたらない理論構成を明記
⑤回答期限内に、弁護士名義の意見書を添えることで信頼性を高める
税関とのコミュニケーションでは、感情的な反論ではなく、法的根拠と証拠に基づいた冷静な説明が求められます。
模倣品と疑われた場合、たとえ正規ルートで入手したと主張しても、証明できなければ差止・廃棄のリスクは極めて高くなります。
輸入者としての慎重な確認と、税関対応の初動を誤らないことが、ダメージ最小化の鍵です。
当事務所では、税関差止対応、ブランド権利確認、意見書作成などの対応を多数手がけております。模倣品リスクに不安を感じたら、早めにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
無償提供した金型が申告漏れで追徴対象に~加算要素の見落としに注意~
「えっ、提供した金型の価値まで申告に含めなければならないんですか?」
これは、実際にあった金型の無償供与を申告価格に含めなかったことにより、税関から関税評価の修正と追徴課税を受けた事例です。
今回は、輸入時に見落とされがちな「加算要素」のひとつである無償供与品について、注意点と実務対応を解説します。
1 実例:海外委託先に提供した金型が評価漏れに
ある日系メーカーが、アジアの製造委託先に対し、製品製造用の金型を自社負担で製作・提供しました。
その後、完成品を輸入する際、インボイスには製品価格のみが記載されており、金型の提供価値は申告価格に含まれていませんでした。
税関の事後調査でこの事実が判明し、「無償供与の加算漏れ」として、関税評価額の修正と3年分の追徴課税、過少申告加算税が課されたのです。
2 関税評価における「加算要素」とは?
関税法第4条第1項では、輸入価格(課税価格)には、以下のような「加算要素」を含めるべきと定められています。
①無償供与された材料・部品・金型・設計図
②製造用の役務提供(技術指導など)
③ロイヤルティ・ライセンス料
④海上運賃・保険料などの輸送費
これらがインボイス価格に含まれていない場合でも、実質的に対価として提供されているならば加算対象となります。
3 無償供与品の加算要件
金型や部品が加算要素として扱われるためには、以下の要件が一般的に必要です。
①輸入者が製造委託先に直接・間接に提供していること
②提供された物が、製品の製造に用いられていること
③提供に対する対価が申告価格に含まれていないこと
金型の提供が明らかであっても、それを価格評価に反映していなければ、申告価格が過少と見なされるリスクが生じます。
4 実務での対応策
①金型や試作品など、製造支援物の提供有無を社内で明確に管理
②加算対象となる場合は、製造単価あたりに案分して評価価格に加算
③金型や図面の提供契約書を整備し、税関向けに説明可能な資料として保管
④不明な場合は、税関の事前教示制度や専門家の意見を活用
⑤加算漏れが判明した場合は、修正申告を検討し早期対応
5 加算漏れが発覚すると…
無償供与の加算漏れは、意図的でなくても過少申告加算税(10%)の対象となり得ます。
さらに、税関は過去5年(重加算事由があれば7年)にわたり遡及して追徴課税を行うことができます。
一度調査対象となった企業は、以後も継続的な監視対象になりやすいため、初動の誠実な対応と体制整備が非常に重要です。
「インボイスに書かれていないから申告不要」という考え方は、無償供与や役務提供が絡む取引では通用しません。
加算要素を正しく理解し、通関前に申告価格が適正かを検証する体制の構築が、トラブル回避への第一歩です。
当事務所では、関税評価のリスク分析、加算要素の整理、税関との折衝支援まで対応可能です。お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
原産地証明書の不備でFTA適用が否認された~形式ミスが命取りに~
FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を活用することで、本来かかる関税をゼロにできる。この魅力から、FTA制度を利用した輸入は年々増加していますが、その一方で「原産地証明書の不備」により特恵関税が適用されず、追徴課税されてしまったという事例も少なくありません。
今回は、形式的な記載ミスでFTA適用が否認された実例をもとに、輸入者が注意すべきポイントを解説いたします。
1 実例:日EU・EPAの特恵申請が否認されたケース
ある企業は、EUから輸入した繊維製品について、日EU・EPAに基づく0%関税の適用を受けようとしました。
提出した原産地証明書は、輸出者による自己申告方式の原産地声明(Statement on Origin)でしたが、以下のような形式不備がありました。
①文書に必要な定型文言が一部抜けていた
②日付欄が記入されていなかった
③商品明細と証明書の記載内容にズレがあった
この結果、税関は「証明書としての要件を満たさない」と判断し、特恵関税の適用を否認。通常税率(10.9%)が適用され、加算税付きで追徴課税が行われてしまいました。
2 よくある原産地証明の不備例
①日付・署名・文言が欠落している
②証明書とインボイスでHSコードや品目名が一致しない
③原産地基準が記載されていない、または間違っている
④コピーやスキャンデータが不鮮明
こうした形式不備は、「悪意がない」場合でも無効とされる可能性が高く、結果として高額な追徴課税が課される事例もあります。
3 輸入者が取るべき実務対応
①仕入先(輸出者)に対して、証明書の記載方法を明確に指示
②受領した証明書は、輸入前に社内での内容チェックを徹底
③商品と証明書の内容(品名・数量・価格)を照合・記録保存
④複数ロット・複数商品に共通の証明書を用いる場合の整合性確認
⑤不明点があれば、税関や専門家へ事前確認を依頼
また、定期的に原産地証明に関する社内研修やチェックリスト整備を行うことも、トラブル予防に有効です。
FTA/EPAの活用はコスト削減に直結しますが、原産地証明書の不備によって「制度を使ったつもりが使えていなかった」という事態は決して珍しくありません。
形式ミスひとつで大きな損失につながるからこそ、証明書の確認と社内管理体制の構築が不可欠です。
当事務所では、FTA・EPAの活用支援、原産地証明書のレビュー、税関からの指摘対応まで一貫してご支援しております。ご不安な際はお気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
