Author Archive

ご注意ください!~労働基準法違反には付加金が課される可能性があります!~

2021-02-19

本日は、付加金(労働基準法114条)の概要について、ご紹介いたします。
使用者が労働基準法に違反した場合にはこの付加金を課される可能性がありますが、付加金の存在自体を知らない使用者の方も多くいらっしゃいますので、十分ご注意ください。

 

1 付加金の概要について

裁判所は、労働基準法20条(解雇予告手当)、26条(休業手当)、37条(割増賃金)、39条7項(年休手当)等で支払義務のある金員を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、支払義務のある未払金に加えて、上限として同一額までの付加金の支払いを命じることが出来ます。
なお、労働者は、この請求を2年以内に行う必要があります(労働基準法114条ただし書)。
また、使用者に対して付加金を支払わせるかどうかは裁判所の裁量によるものなので、裁判所は使用者の行為の悪質性を勘案して、同一額の一部のみの支払いを命じる場合もあります。

 

2 付加金に関する裁判例

裁判所が使用者に対して付加金を課した裁判例としては以下のようなものがあります。

①日本マクドナルド事件(東京地判平成20・1・28労判953・10)
この裁判例は、いわゆる名ばかり店長の管理監督者性が問題となった事案ですが、結論として、付加金として未払割増賃金の半額の支払いを命じました。

②オフィステン事件(大阪地判平成19・11・29労判956・16)
この裁判例は、解雇された従業員が時間外労働、深夜労働に伴う割増賃金の請求をした事案ですが、結論として、41万円の未払賃金に対して25万円の付加金の支払いを命じました。

このように、付加金は、使用者の未払によって当然に発生するものではなく、労働者が請求することにより裁判所が支払いを命じることにより発生するというところに特色があります。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
付加金に関してご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

建物賃貸借契約の更新拒絶に必要な正当事由とは

2021-02-18

建物賃貸業を営む方から、「建物賃貸借契約の期間満了に伴い更新をせずに、立退きを求めたいのですが、更新拒絶を借主側に通知しただけで認められるわけではなく、正当事由が必要である、という話を聞きました。正当事由の有無はどのように考えればいいでしょうか。」、というようなご相談をお受けすることがあります。
そこで、本日は、賃貸人側が期間の定めのある建物賃貸借契約の更新を拒絶する場合の正当事由の概要をご紹介いたします。

 

1 正当事由の考え方

上記のとおり、賃貸人側が、期間の定めのある建物賃貸借契約の更新を拒絶する場合には、正当事由が必要とされています(借地借家法28条、26条1項等)。
そして、この正当事由は、概ね以下の①から⑤の各要素を総合考慮することになります。

①建物の使用を必要とする事情
正当事由の判断においては、これが中心的な要素となります。
賃貸人側と借家人側の当事者双方の建物の使用の必要性を比較衡量し、賃貸人側の必要性の方が大きいという判断とならなければ、②以下の判断結果に関わらず、正当事由は認められないと考えられます。なお、建物の転借人がいる場合には、転借人の建物の使用の必要性も借家人側の建物使用の必要性の事情として考慮されます。

②建物の賃貸借に関する従前の経過
建物の賃貸借契約締結の経緯や事情、また、賃貸借期間中の借家人の契約上の債務の履行状況(例えば、賃料は毎回期日通りに支払っているか、迷惑行為等は行っていないか等です。)のことを指します。

③建物の利用の状況
例えば、建物の種類、用途に則った利用がなされているか、また、建物の用法違反となるような使用はなされていないか等を指します。

④建物の現況
例えば、建物の経過年数及び残存耐用年数、建物の腐朽損傷の程度、大修繕の必要性、修繕費用、当該地域における土地の標準的使用に適った建物であるか等を指します。

⑤財産上の給付
例えば、賃貸人から借家人に対する立退料の提供を指します。

 

2 弁護士にご相談を希望の方へ

建物からの立退きに関して、お困りの方も多くいらっしゃるものと思われます。
当事務所は、建物からの立退きを含む賃貸借におけるトラブルへの対応に関するご相談もお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

原産地証明書について

2021-02-17

原産地証明書とは、輸出入貨物について、一国の政府や公的機関が、その国が原産地であることを証明して発行する文書のことを指します。
輸出入をビジネスで行っている方にとっては、このような原産地証明書という書類はどこかで聞いたことがある書類なのではないでしょうか。
もっとも、原産地証明書というものは何となく知っているが、どのような効果のある書類であるかについてまではあまりご存知でない方も多いものと思われます。

そこで、本日は、原産地証明書の概要をご紹介いたします。

 

1 輸出貨物の原産地証明書

日本では、輸出通関の際に原産地証明書を提出する必要はありません。
他方で、輸入国や輸入者からの要請に基づき発行する必要が生じる場合があります。
日本からの輸出貨物についての原産地証明書は、日本では、商工会議所法9条6号によって、商工会議所が発行することになっております。なお、EPAの特定原産地証明書は日本全国の21の商工会議所に限り発行することが可能ですのでご注意いただく必要があります。
なお、上記のような輸入者でも輸出者でもない第三の機関が原産地証明を発行する場合を、第三者証明制度といいます。

他方で、オーストラリアとの間のEPAや、TPPにおいては、輸入者や輸出者が自ら原産品であることを証明する自己証明制度が採用されている点には、注意が必要です。

 

2 輸入貨物の原産地証明書

輸入者が税関に対して原産地証明書を提出する必要がある場合の代表例は以下のとおりです。

①EPA税率の適用を受ける場合
この場合、それぞれの国において原産地証明書を発給する権限を有する機関が発給する締約国原産地証明書で、発給日から1年を経過しないものを、税関に提出する必要があります。なお、輸入貨物の種類、形状により原産地が明らかであると税関が認めるもの及び1つの輸入申告の課税価格の総額が20万円以下のものについては、提出する必要はありません。

②特恵関税の適用を受ける場合
特恵関税の適用を受けることを希望する場合は、原産地の税関、または発給の権限を有する官公署又は商工会議所が発給する「特恵原産地証明書(様式A)」で発給日から1年を経過しないものが必要となります。
ただし、輸入貨物の種類、形状により原産地が明らかであると税関が認めるもの及び1つの輸入申告の課税価格の総額が20万円以下のものについては、提出する必要はありません。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入や通関に関する手続き上のトラブル、税関との間のトラブル等を幅広く取り扱っております。
輸出入や通関上のトラブルや、税関との間のトラブルに関してご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

ご存知ですか?~解雇予告手当について~

2021-02-16

「今日で君はクビだから、明日からは会社に来ないでいい」、等と社長が部下に言っている場面を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしながら、解雇に関しては、ある日突然従業員に対してその旨伝え、その日に効力が発生するというものではなく、一定の規制がありますので注意が必要です。
そこで、本日は、当該規制の概要をご紹介いたします。
なお、本事務所HPの別の記事では、従業員を解雇する場合の注意点等も整理しておりますので、併せてご参照いただけますと幸いです。

 

1 解雇予告手当について

労働基準法20条では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない」と規定されております。
ここからわかる通り、労働基準法上は、企業側は従業員を解雇する場合、解雇に際して30日前の予告を要求しています。
もっとも、この解雇予告期間は、企業が従業員に対して予告手当の支払いをすることにより短縮することができます。例えば、解雇予告を10日間短縮して20日前にする場合には、平均賃金10日分の予告手当支払いが必要となります(労働基準法20条1項、2項)。また、解雇予告手当として30日分を支給した場合には、解雇予告をすることなく対象の従業員を解雇することも可能となります。

 

2 即時解雇が可能な場合について

上記1の解雇予告手当に関する規定の適用がなく、即時解雇が可能な場合としては、以下の①から⑤の場合が規定されております(労働基準法20条、21条)。
特に、①の場合は、行政官庁の認定を受ける必要がある点には注意が必要です。

①天災事変その他のやむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合等で行政官庁の認定を受けた場合
②日々雇入れられる者
③2か月以内の有期契約で使用される者
④季節的業務に4ヶ月以内の有期契約で雇用される者
⑤試用期間中の者

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
従業員の解雇に関してご不明な点等ございましたら、お気軽にご連絡ください。

従業員へのお祝い金、賃金に該当する可能性があることをご存知ですか?

2021-02-15

賃金は、従業員の業務への対価であるため、例えば、従業員が結婚したことに対して、会社が当該従業員に対してお祝い金を給付したとしても、当該お祝い金は従業員の業務への対価ではないため賃金に該当するはずはない、とお考えの方は非常に多いものと思います。
しかしながら、お祝い金を含めて、直接的には従業員の業務への対価ではないように思われるものに関しても、労働基準法上、賃金と扱う必要がある場合もありますので、注意が必要です。

そこで、本日は、このような場合として、①慶弔禍福の給付金、②退職金、③賞与に関してご紹介いたします。
なお、賃金に関しては、別のコラムでもご紹介しておりますので、併せてご参照いただけますと幸いです。

 

1 慶弔禍福の給付金について

結婚祝い金、災害見舞金、弔慰金等のいわゆる恩恵的給付は、原則として従業員の労働の対価とはいえず、基本的には、その給付の法的性格は、贈与に該当するものと考えられております。
もっとも、これらの給付であっても、労働協約、就業規則、労働契約等でその支給基準が明確化され、かつ、当該基準に従って企業側に支払義務が存在する場合には、労働の対価として賃金に該当すると考えられています(昭和22・9・13発基17等)。

 

2 退職金について

退職金は、支給基準が就業規則等で規定されておらず、その支払が企業側の裁量に依存する場合は、労働基準法上の賃金には該当しないと考えられております。
他方で、退職金について就業規則等に規定があり、その支給基準が明記され、それに従って企業側に支払義務が生じている場合は、賃金に該当します。

 

3 賞与について

退職金同様に、就業規則等で支給基準が規定されておらず、その支払が企業側の裁量に依存する場合は、賃金には該当しないと考えられております。
他方で、労働協約、就業規則等に規定があり、その支給基準が明記され、それに従って企業側に支払義務が生ずる場合は、賃金に該当します。

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
従業員に対して支給する金員に関の賃金該当性が不明確な場合も含めて、賃金に関してご不明な点等ありましたら、お気軽にご連絡ください。

ご注意ください!~貨物の輸入申告価格は、売買代金と思っていませんか?~

2021-02-14

輸入貨物の輸入申告価格について、「売買代金とすれば問題ない」、と誤解されている方が多くいらっしゃいます。
そこで、本日は、輸入貨物の輸入申告価格(課税価格)の考え方の概要をご紹介いたします。

 

1 輸入貨物の課税価格の考え方

輸入貨物の課税価格は、当該貨物の「現実支払価格」に、その含まれていない限度において、運賃等の「加算要素」の額を加えた価格によることを原則として規定されています(関税定率法第4条第1項等)。
この「加算要素」は、関税定率法第4条第1項の第1号から第5号までにおいて限定列挙されています。これらの要素の現実支払価格への加算は、客観的で、かつ、数値化された資料に基づいてのみ行われます。

 

2 具体的な「加算要素」について

具体的な加算要素は、以下の①から⑦のとおりです。

①輸入港までの運賃等(関税定率法第4条第1項第1号)
輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用を指します。

②仲介料その他の手数料(関税定率法第4条第1項第2号イ)
買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付にかかる業務の対価として支払われるものを除きます。

③容器の費用(関税定率法第4条第1項第2号ロ)
「容器」とは、関税定率法別表に規定する関税率表の解釈に関する通則5により「当該物品に含まれる」ものとされるケースその他これに類する容器及び包装容器をいいます。

④包装に要する費用(関税定率法第4条第1項第2号ハ)
輸入貨物の包装及び梱包に要する材料費の他、包装及び梱包に要する人件費その他の関連する費用を指します。

⑤買手が無償で又は値引きをして提供した物品又は役務の費用(関税定率法第4条第1項第3号)
輸入貨物の生産又は輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務の内、同号で規定されているものを指します。

⑥特許権等の使用に伴う対価(関税定率法第4条第1項第4号)

⑦売手帰属収益(関税定率法第4条第1項第5号)
買手による輸入貨物の再販売その他の処分又は使用により得られる売上代金、賃貸料、加工賃等の収益が売手に帰属する場合、当該売手に帰属する収益の額は輸入貨物の課税価格に加算されます。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の考え方は技巧的な面が強く、なかなか正確に理解することが難しいといえますので、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所は、輸入に関するトラブルや輸入手続き、税関対応等、輸出入に関する問題について幅広くご相談をお受けしておりますので、輸入貨物の課税価格に関してご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくご相談ください。

ご注意ください!~兼業(副業)と労働時間の考え方~

2021-02-13

従業員の労働時間について、労働基準法等において様々な規制が存在することはご存知の方も多いのではないでしょうか。
昨今、従業員の兼業(副業)(以下、単に「兼業」といいます)を認める企業が増えてきておりますが、従業員が兼業する場合の労働時間の算定方法、考え方については明確に理解できていない方も多いのが実情であるように思われます。
そこで、本日は、従業員が兼業する場合の労働時間の考え方をご紹介いたします。

 

1 労働基準法38条1項について

労働基準法38条1項は、事業場を異にする場合の労働時間の通算を規定しております。
そして、通達を踏まえますと、労働基準法の労働時間に関するすべての規定が、通算した労働時間に基づいて適用されることとなります(昭和61・6・6基発第333号等)。

 

2 労働基準法38条1項の「事業場を異にする場合」について

労働基準法38条1項における「事業場を異にする場合」の意義については、行政解釈(昭和23・5・14基発第769号)および通説によると、同一使用者に属する複数事業場で労働する場合だけでなく、異なる使用者の下で労働する場合を含むと考えられております。
そのため、例えば、事業主Aの下で所定労働時間1日5時間として勤務している従業員Xが、新たに、事業主Bとの間で、所定労働時間1日4時間として勤務を開始する場合には、1時間が法定時間外労働となりますので(労働基準法32条2項)、労働基準法33条や36条等の手続と割増賃金の支払(労働基準法37条)が必要となります。

注意すべき点としては、これらの法定時間外労働に関する義務を負うのは、実労働時間を最初から起算して法定労働時間を超えた時刻の使用者ではなく、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した使用者(すなわち、事業主B)とされます。
すなわち、1日の中で、先に事業主Bの下で4時間勤務をし、その後事業主Aの下で5時間勤務をした場合には、法定時間外労働となるのは、事業主Aの下での勤務ですが、あくまでも法定時間外労働に関する義務を負うのは、従業員Xとの間で後から労働契約を締結した事業主Bとなるということです。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

兼業と労働時間の考え方については、わかりづらい面がありますが、使用者側として是非正確に理解いただきたい内容となります。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、労働時間に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくお問合せください。

会社のパソコンを従業員が私的に利用していた場合

2021-02-12

「会社が従業員に対して業務用に貸与したパソコンを、当該従業員が私的利用していたことが発覚したのだが、会社としては懲戒等の処分を行ってよいか?」というご相談をいただくことがあります。
結論として懲戒等の処分を行うことは可能ですが、手続等注意が必要な点がありますので、以下、ご紹介いたします。

 

1 懲戒処分について

パソコンの私的利用を禁止する社内規程が存在する場合には、規程違反を理由とした懲戒処分を行うことを検討することになります。
仮に、そのような規程が会社に存在しない場合には、懲戒処分を行うことが出来ないかというと、一概にそのようなことはありません。

そもそも従業員は、会社との間の労働契約上、就業時間中は職務に専念すべき職務専念義務を負っています。
就業時間中に、会社が従業員に対して業務用に貸与したパソコンを私的に利用することはこのような職務専念義務に違反する行為と考えられます。

したがって、仮に、会社に上記のような社内規程が存在しない場合でも、職務中にパソコンを指摘に利用することが、原則許されないものと考えられ、そのような行為をした従業員に対して懲戒処分を行うことは可能であると考えられます。

 

2 裁判例

パソコンの私的利用が問題となった裁判例を2つご紹介いたします。

①グレイワールドワイド事件(東京地判平15・9・22労判870・83)
1日に2通程度の私用メールを従業員が行っていたケースにおいて、職務遂行の支障とはなっておらず、かつ、会社側に対して過度の経済的負担を掛けないといった社会通念上相当と認められる程度であることから、従業員が職務専念義務に違反したものとまでは認められないと判断されました。

②K工業技術専門学校事件(福岡高判平17・9・14判タ1223・188)
学校の教員が、業務用のパソコンおよび業務用のメールアドレスを使用して、出会い系サイトに登録し、当該サイトで知り合った女性たちとの間で約5年間に約800通のメールのやり取りを行っていた事案において、当該教員に対する懲戒解雇が有効と判断されました。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

社内規程が存在しない場合、パソコンの私的利用に対する懲戒処分等が有効であると判断されるかどうかは、当該私的利用が業務の妨げとなっているかどうかなどを総合的に判断し、社会通念上相当といえるかどうかという視点で判断されます。
そのため、パソコンの私的利用に対して一律に懲戒処分をすることにはリスクがあり、慎重な対応が必須です。
当事務所では人事労務を幅広く取り扱っておりますので、ご不明な点、ご不安な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

会社の経営が苦しくなった時に検討すべき手段

2021-02-11

昨今の社会情勢の下、会社の経営が非常に厳しい状態に陥り、資金繰り等でお悩みの経営者の方は非常に多く、実際に弁護士にご相談いただいている方も多くいらっしゃいます。
そこで、本日は、会社の債務の弁済をすることが非常に困難、又は不可能である場合に、経営者が主として検討する必要がある3つの方法である、任意整理、法人破産、民事再生の概要をご紹介いたします。

 

1 任意整理

任意整理とは、弁済することができない債務の債権者を中心に交渉を行い、主として債務の弁済期限の延長や弁済額の減額等(返済計画の組みなおしともいいます。)を求めていく方法を指します。
もっとも、債権者との交渉がうまくいく場合でも、弁済額の減額にまで応じてもらえることは非常に稀であることには注意が必要です。

 

2 法人破産

法人破産とは、会社の財産を全て清算し、最終的には会社の法人格を消滅させる手続のことを指します。
法人破産により、会社の債務を清算することはできますが、会社の債務の(連帯)保証人の債務は残ります。会社の代表者等が会社の債務の(連帯)保証人となっているケースは多いですので、法人破産を行う場合には、(連帯)保証人となっている代表者等の個人破産の手続きも同時に行うことが多いといえます。

 

3 民事再生

民事再生とは、平成12年4月から運用が開始された再建型の手続きであり、会社の債務を減額し、事業の存続を目指すものです。
民事再生手続きの結果会社の債務が減額となった場合でも、会社の債務の(連帯)保証人の債務は残ります。会社の代表者等が会社の債務の(連帯)保証人となっているケースは多いですので、民事再生を行う場合には、(連帯)保証人となっている代表者等の個人破産又は個人の民事再生の手続きも同時に行うことが多いといえます。

 

 

上記のご説明はあくまでも概要にとどまり、どのような対応をとる必要があるかは、会社ごとにケースバイケースと言えます。
会社の債務の弁済をすることが非常に困難又は不可能である場合には、お早めに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所のコラムでも、引き続き任意整理、破産、民事再生等に関して不定期ではありますが、取り上げる予定ですので、引き続きご覧いただきご参照いただけますと幸いです。

特別な事情がある場合の課税価格について

2021-02-10

原則的な課税価格の考え方は、「現実支払価格」をベースに考えるということは、以前のコラムにてご紹介いたしました。
しかしながら、輸入取引に係る特別な事情がある場合には、原則的な課税価格の考え方を適用することが出来ませんので、注意が必要です。
そこで、本日は、輸入取引に係る特別な事情の代表的な場合である、「特殊関係」の概要に関してご紹介いたします(関税定率法4条2項4号、同法施行令1条の8、同法基本通達4-18等参照)。

 

1 「特殊関係」とは

「特殊関係」とは、輸入取引における売手と買手との間に次の①から⑨に掲げる場合のいずれかに該当する関係があることをいいます。

①一方の者と他方の者とがその行う事業に関し相互に事業の取締役その他の役員となっている場合
この場合の「取締役その他の役員」とは、取締役、監査役、理事、監事等をいいます。

②一方の者と他方の者とがその行う事業の法令上認められた共同経営者である場合
「法律上認められた共同経営者」とは、それぞれ、その金銭、資産、労務、技術等を出資し、共同事業を営むものをいいます。

③いずれか一方が他方の者の使用者である場合

④いずれか一方が他方の者の事業に係る議決権を伴う社外株式の総数の5%以上の社外株式を直接又は間接に所有し、管理し、又は所持している場合

⑤上記④の場合を除き、いずれか一方の者が他方の者を直接又は間接に支配している場合
例えば、一方の者が法律上まあは事実上他方の者を拘束し、又は指示する立場にある場合には、当該他方の者を「支配」しているものとします。

⑥一方の者と他方の者との事業に係る議決権を伴う社外株式の総数のそれぞれ5%以上の社外株式が同一の第三者によって直接又は間接に所有され、管理され、又は所持されている場合

⑦一方の者と他方の者とが同一の第三者によって直接又は間接に支配されている場合

⑧一方の者と他方の者とが共同して同一の第三者を直接又は間接に支配している場合

⑨一方の者と他方の者とが親族関係にある場合
この場合の「親族」とは、6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族をいいます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の考え方は技巧的な要素が強く、なかなか理解が難しいものと思われます。
当事務所では代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入に関するトラブルを幅広く取り扱っておりますので、輸入貨物の課税価格に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー