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意匠権侵害貨物の輸入

2025-01-31

輸入ビジネスを営む際、意匠権侵害のリスクは避けて通れない問題です。意

匠権は商品のデザインに関する独占的権利を保護するものであり、これを侵害する貨物を輸入してしまうと、差止請求や損害賠償請求といった法的トラブルに発展する可能性があります。

そこで、本日は、具体例を交えつつ、意匠権侵害のリスクをご説明いたします。

 

1 そもそも意匠権侵害とは?

日本の意匠法は、意匠(デザイン)を独占的に使用する権利を保護するための法律です。

意匠法第2条では「意匠」を「物品の形状、模様または色彩若しくはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義しています。

さらに、意匠法第23条では、意匠権者が登録意匠を独占的に実施できる権利を有し、第37条には意匠権侵害に関する具体的な行為が規定されています。特に重要なポイントとして、「登録意匠と同一または類似の意匠を無断で使用する行為」が意匠権侵害に該当します。

 

2 具体例『海外製品の輸入と意匠権の問題』

例えば、ある輸入業者が海外の市場で人気のある家電製品を大量に仕入れ、日本で販売しようとしました。その家電製品は海外メーカーが独自にデザインしたものですが、日本では別の企業が同様のデザインを登録意匠として意匠権を取得していました。

この場合、輸入業者が販売を目的として商品を輸入した行為が、意匠法第37条に基づく「登録意匠と同一または類似の意匠を実施する行為」に該当し、次のような法的トラブルが生じる可能性があります:

①差止請求
意匠権者が輸入品の販売差止めを請求し、在庫が販売できなくなる恐れがあります。

②損害賠償請求
輸入品の販売により意匠権者に損害が生じた場合、その損害を賠償する責任を負う可能性があります。

③税関での差止め
税関での意匠権侵害申告により、輸入時点で商品が差し止められる場合もあります。

 

3 意匠権侵害を防ぐための対応策

輸入業者として意匠権侵害リスクを回避するためには、以下のポイントを押さえることが重要です:

①慎重な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で意匠権を侵害しないかどうか、特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用して事前に確認しましょう。

②デザインのライセンス確認
海外メーカーや仕入先に対し、輸入予定の商品のデザインが合法的に使用されているか確認し、必要であればライセンス契約書を入手することが必要です。

③税関への事前確認
輸入品が意匠権を侵害していないか税関に相談することで、輸入時点での差止めリスクを軽減できます。

④弁護士への相談
意匠権侵害は専門的な知識が求められるため、疑わしい場合は意匠法に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

⑤契約の整備
輸入元との契約書に、意匠権侵害が発覚した場合の責任分担や返品対応について明確に記載しておくことで、リスクを軽減できます。

 

4 意匠権侵害貨物にはご注意ください

意匠権侵害は、輸入ビジネスにおける深刻なリスクです。たとえ海外で合法的に購入した商品であっても、日本国内で意匠権を侵害する場合、輸入業者が法的責任を問われる可能性があります。

輸入業者は、事前調査と適切な契約管理を徹底し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、このリスクを効果的に回避できます。法律を遵守し、安全なビジネス運営を実現しましょう。

著作権侵害貨物の輸入

2025-01-26

輸入ビジネスを行う際、著作権法侵害のリスクを軽視することはできません。

輸入する商品が知らないうちに著作権を侵害している場合、輸入した事業者が法的責任を問われることになります。

本日は、具体例を交えつつ、著作権侵害のリスクをご説明致します。

 

1 そもそも著作権侵害とは

日本の著作権法は、著作者の権利を保護するため、著作物の無断使用を禁止しています。

具体的には、著作権法第2条では「著作物」を、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義しています。

さらに、著作権法第113条第1項は、次のような場合に著作権侵害とみなすと規定しています。

①著作物を日本国内に無断で頒布する目的で輸入する行為

②著作物を著作権者の許諾なく公衆に提供する行為

これに基づき、輸入業者が販売や配布を目的として著作権を侵害する商品を輸入した場合、著作権法違反とされる可能性があります。

 

2 具体例『海外製品の輸入と著作権の問題』

例えば、ある事業者が海外の市場で、アニメのキャラクターがプリントされたTシャツを仕入れ、日本国内で販売することを計画しました。

この業者は、現地では広く流通しているため問題ないと考えていました。しかし、日本国内では、そのキャラクターの著作権が特定の企業に帰属しており、許可なくそのデザインを使用することが著作権侵害に該当しました。

このような場合、以下のような法的リスクが発生いたします。

①著作権者からの警告および差止請求
販売前であっても、著作権者から商品の輸入および販売の差止めを求められるケースがあります。

②損害賠償請求
著作権者が損害賠償を請求し、輸入業者が損害を賠償する義務を負う可能性があります。

③刑事罰
悪質な場合には、著作権法第119条に基づき、刑事罰(懲役や罰金)が科されることもあります。

 

3 リスク回避のためのポイント

著作権侵害リスクを防ぐために、以下の対策を講じることをお勧めします。

①丁寧な事前調査
輸入予定の商品が日本国内で著作権を侵害しないことを確認することが重要です。特にキャラクターやロゴ、イラストが含まれる商品は注意が必要です。

②正規のライセンスの確認
輸入元の業者や製造元が、正規のライセンスを取得しているかどうかを確認しましょう。必要であれば、ライセンス契約書を提示してもらうことを検討してください。

③弁護士への相談
著作権の問題は複雑で専門的です。輸入予定の商品について不安がある場合は、著作権に詳しい弁護士に相談することで、リスクを事前に評価できます。

④契約書の見直し
輸入業者として、取引先との契約書に「著作権侵害が判明した場合の責任分担」について明記しておくことも有効です。

 

4 著作権侵害貨物の輸入にはご注意ください

著作権侵害は、輸入ビジネスにおける重大なリスクです。

海外で合法的に取引された商品であっても、日本国内では著作権を侵害する場合があるため、慎重な対応が求められます。

輸入業者は、事前調査を徹底するとともに、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。法令を遵守し、安全なビジネス運営を目指しましょう。

商標権侵害貨物の輸入にはご注意ください

2025-01-21

輸入ビジネスを営む事業者は、商標権侵害のリスクに十分注意する必要があります。

実際、輸入された商品が知らず知らずのうちに日本国内の商標権を侵害しているケースが多々あります。

そこで本日は、具体例を交えつつ、輸入貨物の商標権侵害に関してご説明いたします。

 

1 商標権侵害とは

日本の商標法では、登録商標が他人の許諾なく使用されることを防ぐため、商標権が保護されています。

例えば、商標法第25条には、商標権者は指定商品または指定役務に関して登録商標を独占的に使用できる旨が規定されています。

また、商標法第37条では、商標権侵害行為の具体例が挙げられており、次のような行為が侵害に該当するとされています:

①登録商標と同一または類似の商標を、指定商品や指定役務に使用すること

②指定商品と類似の商品に登録商標を使用すること

事業者が意図せずに商標権を侵害するケースでは、これらの規定が問題となることが多いです。

 

2 具体例『海外製品の輸入と商標権の問題』

例えば、ある事業者が海外の有名ブランドの衣料品を海外の市場で購入し、日本に輸入したケースを考えます。

この業者は「現地で合法的に購入した商品だから問題ない」と考えていました。しかし、日本国内では、そのブランドの商標が別の日本企業によって登録されていました。

この場合、業者が輸入した商品が商標法第2条に基づく「商標の使用」に該当し、日本側の商標権を侵害する可能性があります。

結果として、以下のようなトラブルが生じるリスクがあります:

①商標権者からの差止請求
輸入品の販売や流通が差し止められ、業務に大きな支障が生じる可能性があります。

②損害賠償請求
商標権者が損害賠償を請求することも可能であり、高額な賠償金が発生するケースもあります。

③刑事罰
悪質な場合には、商標法第78条に基づき、刑事罰が科されることもあります。

 

3 リスク回避のためのポイント

輸入業者として商標権侵害を防ぐためには、次の対応策が有効です:

①丁寧な事前調査の実施
輸入予定の商品について、国内の商標権登録状況を調査しましょう。特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用することで、商標の登録状況を確認することができます。

②契約内容の確認
海外のサプライヤーから購入する際、当該商品が輸入先国で商標権侵害のリスクがないことを明確にする条項を契約に盛り込むことが重要です。

③弁護士等の専門家への相談
商標権の問題は専門的で複雑です。輸入を検討している商品がある場合は、事前に弁護士等の専門家にご相談いただき、リスク評価を行いましょう。

 

4 商標権侵害貨物の輸入にはご注意ください

商標権侵害は、輸入業者にとって見過ごせないリスクです。

合法的に購入した商品であっても、日本国内では商標権侵害に該当するケースがあります。事前の調査と適切な対応を通じて、トラブルを未然に防ぐことができます。

輸入ビジネスを行う上では、法律の専門家と連携しながら慎重に対応することを強くお勧めします。商標権を侵害することなく、円滑で安全なビジネス運営を目指しましょう。

該非判定の重要性

2025-01-16

本日は、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)の概要と、「該非判定」の重要性について、経済安全保障の視点を交えてご説明いたします。

 

1 そもそも外為法とは?

外為法は、日本の国家安全保障や国際的な平和維持、経済的安定を目的として、外国為替や貿易を規制する法律です。特に、戦略物資や軍事転用が可能な技術・製品の輸出には厳しい管理が求められます。

外為法に基づく輸出管理制度では、輸出者に対して、自社の商品や技術が規制対象に該当するかどうかを確認する「該非判定」の義務が課されています。この判定を誤ると、重大な法的リスクが発生します。

 

2 該非判定とは?

該非判定とは、輸出しようとする製品や技術が、国際的な規制リストや日本独自の規制に該当するか否かを確認する手続きです。例えば、以下の2つの規制が代表的なものとなります。

①リスト規制

兵器転用可能な製品や技術を対象とした規制

②キャッチオール規制

特定の用途やユーザーに対する輸出規制

これらの判定が適切に行われないと、意図せず国家安全保障上のリスクを生じさせたり、国際社会からの信頼を損ねたりする可能性がありますので、慎重に行う必要があります。

 

3 具体的な事例

①事例1『技術輸出の誤判定による経済制裁』

ある企業が新型材料の輸出を行った際、該非判定を誤り、実際にはリスト規制に該当する製品を輸出していました。この製品は軍事用途への転用が可能であり、輸出先の国は国際的な制裁対象国でした。その結果、企業は罰則を受けたうえ、経済制裁違反として国際的な非難を浴び、取引先からの信用を失いました。

典型的なケースではありますが、該非判定が適切に行われないと、日本国内での法的責任だけでなく、そもそも将来的な事業継続にも大きな影響を及ぼすことがあります。

 

②事例2『技術提供の不適切な管理』

日本の企業が、海外の研究機関と共同研究を行う際、該非判定を怠り、規制対象の技術データを提供してしまいました。

その結果、当該技術が第三国の軍事計画に転用される可能性が浮上し、企業は日本政府から指導を受けました。

たまに勘違いをされている事業者の方がおりますが、外為法では物品の輸出だけでなく、技術情報の提供も規制対象ですので、技術に関しても慎重な確認が必要です。

 

4 該非判定を適切に行うためのポイント

①社内体制の整備
輸出管理に関する社内規程を整え、担当者の教育・訓練を徹底する必要があります。

②専門家の活用
該非判定は複雑なプロセスを伴うため、法律や技術の専門家によるサポートを活用することが有効です。

③最新の規制動向の把握
国際情勢や法改正に伴い規制内容は変化します。常に最新情報を入手し、適切に対応することが求められます。

 

5 適切な体制を整えることが重要です

外為法とそれを踏まえた該非判定は、企業が国際的な責任を果たし、事業を継続的に発展させるための重要な柱です。

経済安全保障の観点からも、該非判定を正確かつ慎重に行うことが求められます。このためには上記のとおり、輸出管理に関する社内体制の強化と最新情報の収集が不可欠です。

該非判定や外為法に関する疑問が少しでもある場合は、専門家にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

何か問題が発生してからでは手遅れとなる場合も多く、事前の対応が非常に重要です。

 

 

輸出事後調査の現状

2025-01-11

近年、経済安保の関係で外為法(外国為替及び外国貿易法)の重要性が高まる中で、輸出事後調査が注目されています。この調査は、過去に行われた輸出取引の適正性を確認し、法令違反のリスクを未然に防ぐための重要な手続きです。本記事では、輸出事後調査の概要とその意義についてご説明いたします。

 

1 輸出事後調査とは?

輸出事後調査とは、過去の輸出取引について、外為法や関連する輸出規制への適合性を検証するために行う内部的または外部的な調査です。特に以下の点を確認します:

①規制対象の確認(該非判定)
輸出した製品や技術が、輸出規制リストやキャッチオール規制に該当していないかを再確認します。

②輸出許可手続きの適正性
該当する場合、必要な輸出許可や申請が適切に行われていたかを確認します。

③輸出先や用途の妥当性
輸出先や最終用途が適正であり、軍事転用や不正利用のリスクがなかったかを調査します。

 

2 調査で確認対象となる主なポイント

輸出事後調査では、以下の項目が重点的に確認されます。

①該非判定の記録
輸出前に行われた該非判定が正確であり、その記録が適切に保存されているかを確認します。

②輸出先の調査
取引先が規制対象の国や人物ではないか、また再輸出のリスクがないかを確認します。

③輸出許可の取得状況
規制対象の場合、輸出許可が適切に取得されていたか、またその手続きが法的要件を満たしているかを検証します。

④関連文書の保存状況
輸出に関する契約書や申請書類、取引記録などが適切に保存されているかを確認します。

 

3 輸出事後調査の意義と専門家に依頼するメリット

輸出事後調査は、外為法や関連規制に基づいて輸出取引の適正性を確認し、法令違反や経済安全保障上のリスクを防ぐために欠かせない制度です。

輸出事後調査は単なる過去の問題点の洗い出しにとどまらず、企業のコンプライアンス体制の向上や信頼性の確保に直結しますので、輸出事後調査を機にしっかりとした輸出管理体制を維持することで、将来的に行政や取引先からの信頼を得るだけでなく、事業の安定と成長を支えることにもつながります。

輸出事後調査は、外為法をはじめとした様々な法規制を踏まえて行われることになりますので、専門的な知識が必要となるため、なかなか初回の調査の際にスムーズに対応することは難しい場合が多いのが実情です。

適切な対応や確認を行うために、日常的に専門家のアドバイスを受けることが有益です。

輸出管理や外為法の遵守に不安を感じている企業の方は、ぜひ弁護士などの専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入事後調査の現状

2025-01-06

本日は、輸入事業者の皆様にとって無視できない『輸入事後調査』についてご説明します。

この調査は、輸入事業者にとって避けて通れないものであり、正しく対応しなければ思わぬペナルティを受けるリスクがあります。以下では、輸入事後調査の概要、よくある指摘事項、また、適切な対応方法についてご説明いたしますので、ご参考となれば幸いです。

 

1 輸入事後調査とは?

輸入事後調査とは、輸入許可後に税関が輸入事業者の取引内容や書類を調査し、輸入申告内容が正確で適切であるかを確認する制度です。主に以下の目的があります。

①関税・消費税の適正な納付確認
輸入申告で申告した課税価格を踏まえて、納付した関税額や消費税額が正確かをチェックします。

②適法な輸入手続きの確保
禁制品や規制対象品が適切に取り扱われているかを確認します。

通常、税関は過去5年以内の輸入取引を対象に調査を行い、不適切な申告が見つかった場合には追加課税やペナルティが科されることがあります。

 

2 よくある指摘事項

輸入税関事後調査では、以下のような点がよく問題とされます。

①課税価格の過少申告
輸入品の価格を意図的または誤って低く申告し、関税や消費税を少なく納めるケースです。

たとえば、運賃や保険料を含めない形で価格を申告している場合や加算要素を適切に加算できていない場合には、課税価格が過少となる可能性があります。

②税率の誤適用
関税分類(HSコード)の誤りによる税率の適用ミスが挙げられます。

例えば、食品と工業用化学品で異なる税率が適用される場合、分類ミスが追加納税の原因となります。

③規制品の適正な取り扱い
輸入品が規制対象である場合、必要な許可や証明書を取得していないと指摘されることがあります。

⑤書類の保存不備
輸入事業者は、輸入取引に関する書類を5年間は保存する義務があります。保存が不十分だと、調査で適正な保存をするように指導される可能性があります。

 

3 税関事後調査への適切な対応

税関事後調査は、突然の通知で輸入事業者にとって大きな負担になることがあります。

しかし、適切に対応すれば負担やリスクを最小限に抑えることが可能です。

税関事後調査は法律的・技術的な知識が必要な場面が多くあります。関税法や輸入手続きに精通した弁護士や税関コンサルタントに相談することで、リスクを軽減できます。

改めてになりますが、輸入事後調査は、輸入事業者にとって避けられないプロセスですが、適切に準備し対応することでリスクを最小限に抑えることができます。不安や疑問を抱えたままでは、事業運営に支障をきたす可能性がありますので、ぜひ専門家にご相談ください。

輸入事業を安心して継続するためのサポートを全力で提供いたします。

お困りの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

該非判定は慎重に行いましょう

2025-01-01

外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」といいます)は、国際的な平和と安全を維持するための重要な法律です。

特に、日本から貨物を輸出するに際しては、輸出する貨物が戦略物資や軍事転用可能な技術に該当しないかどうか等を適切に判断(いわゆる、該非判定)する必要があります。しかしながら、この該非判定を軽視し、誤った輸出行為を行った場合、単なる法的リスクだけでなく、昨今話題となっている経済安全保障の観点からも深刻な影響を及ぼします。

そこで本日は、外為法の規定の順守を疎かにすることのリスクについて、概要とはなりますがご説明いたします。

 

1 該非判定を怠る場合の様々なリスク

該非判定を適切に行わずに輸出を行う場合、以下のようなリスクが発生します。

(1) 法的リスク

外為法違反に該当すると、例えば、以下の厳しい罰則が科される可能性があります。

①刑事罰

外為法第70条では、無許可輸出が判明した場合、最高で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は5億円以下)が科されます。

②行政処分

経済産業省から事業停止命令や輸出許可の取り消しを受けるリスクがあります。

(2) 経済的リスク

罰金や事業停止による直接的な経済的損失だけでなく、取引先からの信頼を失い、契約の破棄や市場からの排除といった二次的な損害も生じます。

(3) 国際社会での信用失墜

外為法違反が国際的に報じられると、日本全体の信頼を損ねる可能性があります。

特に輸出先国が敏感な技術や資材を輸入した場合、外交問題に発展する危険性すら存在することは改めて強調しておきます。

 

2 経済安全保障の観点からのリスク

経済安全保障は、近年注目を集めている分野です。

特に以下の点で、該非判定を怠る行為は日本の安全保障に直結する問題となります。

(1) 軍事転用のリスク

一見無害に見える技術や部品が、軍事目的で使用されるケースがあります。

たとえば、半導体や高精度機械は、ミサイルや監視技術の開発に利用される可能性があります。

(2) テロリストや制裁対象国への流出

該非判定を怠ると、意図せずにテロリストや国際的な制裁対象国に戦略物資を供与する結果を招きかねません。これにより、国際的な制裁や報復措置を受けるリスクがあります。

 

3 該非判定を怠らないための対策

輸出者としては、以下の対策を徹底することが求められます。

①適切な該非判定

対象物品や技術が輸出貿易管理令に定められた「リスト規制」に該当するかを確認し、必要に応じて専門家や弁護士の助言を受けること。

②社内コンプライアンス体制の整備

社内で輸出管理の専門部署を設け、該非判定を二重・三重にチェックする体制を整えること。

③定期的な教育と研修

社員に外為法の重要性を理解させ、違反行為を未然に防ぐための教育を徹底すること。

 

4 外為法のルールは非常に難しく、専門家も交えた体制作りが重要です

外為法に基づく該非判定を軽視する行為は、単なる法律違反にとどまらず、経済安全保障や国際的な信頼に深刻な影響を及ぼします。

輸出者は「知らなかった」「確認不足だった」という言い訳が通用しないことを認識し、法令遵守を最優先に行動すべきです。

万が一、該非判定に関する疑問や不安がある場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。違法行為を未然に防ぎ、健全なビジネス活動を維持するために、法令の遵守を徹底していきましょう。

若者が巻き込まれる密輸の現状

2024-12-27

近年、大学生などの若者が『簡単に稼げる副業』として禁制品や金地金の密輸入に関わるケースが増加しています。

特にSNSやインターネットを通じて、「海外旅行のついでに荷物を運ぶだけ」、「観光の帰りに簡単な副業」、「実質無料で観光に行こう」等の甘い言葉で勧誘されることが多いようです。しかしながら、このような行動がもたらすリスクは非常に深刻であり、一度関与すると人生を大きく狂わせる可能性があります。

本日は、その危険性について説明します。

 

1 若者が巻き込まれる現状

警察庁の2022年の統計情報によると、日本における薬物密輸関連の検挙者数は前年より約15%増加しており、そのうち20代以下の若者が占める割合は約30%と報告されています。こうした背景には、SNSや求人アプリを通じて「割の良いバイト」として勧誘されることが挙げられます。

この傾向は2024年の現在でも同様であり、犯罪組織にとっては、社会経験の浅い若者は「リスクを理解していない」、「違法性に鈍感」等と見られるため、非常に利用しやすく、問題が発覚した場合には簡単に見捨てることができる使い勝手のよい存在です。

 

2 密輸は人生を狂わせるので、絶対に行ってはいけません

日本の法律では、禁制品の密輸は極めて重い罪です。

たとえば、麻薬取締法や関税法に基づく罰則では、以下のような処罰が規定されています。

①麻薬取締法違反:最高で無期懲役、または10年以上の懲役に加え、数千万円規模の罰金が科されることがあります。

②関税法違反:密輸入を目的とした行為は、5年以上の懲役または罰金が科されます。

 

最終的な処罰の前には逮捕、勾留、刑事裁判と続き、経済的負担や社会的信用の喪失を招きます。

 

3 実際に起こりうるリスク

(1) 刑罰とその影響

先述の通り、禁制品や金地金の密輸に関与した場合、極めて厳しい刑罰が科されます。

一度有罪判決を受けると前科がつき、就職や進学といったその後の人生にも大きな悪影響を及ぼします。

(2) 知らずに「運び屋」にされる可能性

「ただ荷物を預かっただけ」といった場合でも、禁制品や金地金が入っていれば違法行為とみなされます。

「知らなかった」という弁解は通用しないことがほとんどであるとお考えください。

 

4 誘惑に負けないために

若者が犯罪に巻き込まれないためには、以下のポイントに注意することが重要です。

①安易な勧誘に乗らない:特に「高額報酬」「簡単」といった文言には注意を払いましょう。

②荷物を預かる際のリスクを認識する:他人の荷物を運ぶ場合、その内容物に責任が伴うことを自覚しましょう。

③法律知識を身につける:日本の厳しい法律について正確に理解しておくことで、違法行為を未然に防ぐことができます。

 

5 専門家に相談することもご検討ください

禁制品の密輸は決して「簡単な副業」ではなく、人生を台無しにするほどのリスクを伴う犯罪です。

もしも自分自身やご家族が誘いを受けたり、不安に思うことがあれば、弁護士や警察に相談してください。自分自身を守るためにも、軽率な行動を避け、慎重な判断を心がけましょう。

禁制品や金地金の密輸

2024-12-22

禁制品の輸入や金地金の密輸は、いわゆる関税法違反事件となり、刑事告発された場合には、懲役刑等の厳罰に処せられる可能性もあります。

禁制品の輸入を軽い気持ちで行うことはあまりないと思いますが、他方で金地金に関しては、簡単な運び屋の気分で安易に行われてしまうケースが散見されます。

本日は、令和6年上半期(令和6年1月から6月まで)において、関税法違反事件として取り締まりが実行された案件をご紹介いたします。

 

1 不正薬物関連

まず、不正薬物の内訳としては、覚醒剤、大麻、あへん、麻薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)、向精神薬及び指定薬物を指すものとします。

不正薬物全体の摘発件数は500件、押収量は約1301kgであり、摘発件数は増加し、押収量は減少した模様です。

具体的な内訳をみると、

①覚醒剤

摘発件数は85件、押収量は約814kgと、共に減少した。

押収した覚醒剤は、薬物乱用者の通常使用量で約2715万回分、末端価格にして約538億円に相当するとのことです。

 

②大麻

大麻草の摘発件数は96件、押収量は約103kgであり、前年比で大幅に増加したようです。

また、大麻樹脂等(大麻リキッド等の大麻製品を含む。)の摘発件数は61件、押収量は約46kgとなり、前年比で共に大幅に増加したようです。

 

③麻薬

コカインの摘発件数は30件、押収量は約235kgでした。

また、MDMA等の摘発件数は49件、押収量は約79kgでした。

 

④指定薬物

指定薬物の摘発件数は76件、押収量は約7kgでした。

 

2 金地金

金地金の摘発件数は228件、押収量は約937kgでした。

 

3 安易に貨物を日本に持ち込む行為にはご注意ください

上記のとおり、不正薬物関連や金地金等の密輸は非常に多く行われておりますが、特段罪の意識がない若者等が運び屋として利用されてしまうケースも多くあります。

自分では大したことがなく、単に土産物のようなものを運んで日本に持って帰ってくるだけで相当程度の報酬がもらえる、と思い安易な気持ちで関与してしまう方もおりますが、自分の一生を棒に振ってしまいかねない行為ですので絶対に関わってはいけません。

あくまでも関与しないことが一番ではありますが、万一関りを持ってしまった場合には、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入事後調査の現況

2024-12-17

輸入を事業として行っている事業者にとって、『輸入事後調査』という言葉はどこかで聞いたことがあるものかと思います。

日本の輸入通関においては、申告納税方式がとられておりますので、事後的に各輸入申告が適正なものであったかどうかを税関が判断することになります。

そこで、本日は税関が公表した資料を踏まえて、輸入事後調査の現況についてご紹介いたします。

 

1 輸入事後調査の現況

令和5事務年度(令和5年7月から令和6年6月)において、輸入事後調査の調査対象となった輸入者は3576者(前事務年度比108%)、その内申告漏れ等のあった輸入者は2678者であり、調査対象者全体の74.9%に上りました。

 

また、納付不足税額は128億2932万円(前事務年度比137.3%)であり、内関税額は8億5888万円、内国消費税額は119億7043万円でした。

加算税は総額6億2238万円、内重加算税は、4336万円でした。

 

いずれの統計情報でも、不足額は増加傾向にあります。

 

納付不足税額が多い上位5品目ですが。

①光学機器等(90類)で納付不足税額は26億4237万円、

②電気機器(85類)で納付不足税額は17億601万円、

③機械類(84類)で納付不足税額は14億8761万円

④医療品(30類)で納付不足税額は14億7569万円、

⑤自動車等(87類)で納付不足税額は12億6813万円

 

2 輸入事後調査に備えましょう

輸入事後調査は、貨物の輸入を事業として行っている場合にはいつ行われてもおかしくありませんので、日常的に輸入事後調査に備えておくことが重要です。

特別なことをする必要はなく、輸入を事業として行っている事業者であれば当然に実施していなければならない資料の整理等を日常的に行うことが重要です。

輸入事後調査を過度に恐れる必要はなく、日常的に行うべきことを適切に行っていただければ特段問題はないですが、なかなか後回しになり取り掛かることができないケースも多いでしょう。

既に輸入事後調査の実施が決まった、という事業者の方、将来的に事後調査が入っても問題ないように今から準備をしておきたい事業者の方、会社として準備は行っているけれどその準備が適切かどうかわからないので第三者の観点でチェックして欲しいとお考えの事業者の方等、輸入事後調査に関してご不安な点がある場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

弊事務所では、輸入事後調査に幅広く対応しておりますので、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。

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