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変質又は損傷した輸入貨物の課税価格の決定方法について

2021-03-15

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私はフランスから高級なヴィンテージワインを数百本輸入いたしました。しかし、本邦の港に到着して荷卸しをした際、輸送中の温度管理の不手際により一部のボトルで液漏れや品質の劣化が生じていることが判明いたしました。また、数ケースについては梱包の破損によりボトルが割れてしまっています。輸入契約の段階では、これらの不測の事態による値引き等は想定されておりません。このような場合、本来の購入価格のままで関税を支払わなければならないのでしょうか。損傷して価値が下がった分を考慮して、申告価格を下げることは可能でしょうか。法的な根拠と手続きの流れについて詳しく教えてください」

国際貿易においては、輸送中の事故や環境の変化により、貨物が本来の品質を維持できないまま到着することが稀にあります。このような場合、税関への申告価格をどのように設定すべきかは、輸入者にとって大きな関心事です。本稿では、変質又は損傷が生じた貨物の課税価格の決定方法について、法令に基づき詳しく解説いたします。

 

1 変質又は損傷があった場合の原則的な課税価格の考え方

輸入貨物の課税価格は、原則として実際の取引価格である現実支払価格を基礎として算出されます。しかし、輸入申告の時までに貨物が変質したり損傷したりしている場合には、その価値が低下していることを考慮する必要があります。関税定率法第四条の五の規定によれば、輸入申告時までに変質又は損傷があったと認められる貨物については、変質又は損傷がなかったと仮定して計算される課税価格から、その減価に相当する額を控除した価格を課税価格とすることができます。

この規定の目的は、輸入者が実際に受け取る価値に見合った適正な関税を課すことにあります。

 

2 適用を受けるための要件と注意点

この例外的な決定方法を適用するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。

(1)輸入取引の条件の確認

関税定率法第四条の五の適用を受けるためには、その輸入取引の条件から見て、変質又は損傷が想定外の事態であることが求められます。もし、輸入契約において「一定の割合で破損が生じることを見越してあらかじめ低価格で設定されている」場合や、「現状渡しの条件で、損傷のリスクが買手に全面的に帰属し、かつそれが価格に反映されている」ような場合には、本条の適用はありません。この場合、当初の契約価格そのものが課税価格の基礎となる点に注意が必要です。

(2)輸入申告時までの発生であること

本条が対象とするのは、輸入申告の時までに生じた変質又は損傷です。貨物が日本に到着した後、保税地域等で保管されている間に生じた損傷も含まれます。輸入許可が下りた後に発生した損傷については、別の規定である関税定率法第十条の減税措置の対象となるため、混同しないように整理しておく必要があります。

以下に、適用される条文の違いを整理した比較表を掲載いたします。

【表1 変質又は損傷の発生時期と適用法令の比較】

適用法令/発生時期の区分/課税価格・税額の処理方法

関税定率法第四条の五/輸入申告時まで/減価額を控除して課税価格を決定

関税定率法第十条第一項/輸入許可前(申告後)/算出された関税額から減税

 

3 減価に相当する額の算定方法

「減価に相当する額」とは、損傷等によって失われた貨物の価値を金額で評価したものです。

これを客観的に証明するためには、合理的かつ妥当な数値を用いる必要があります。実務上、以下の書類が有力な証拠資料となります。

①公認検定機関(サーベイヤー)が発行する損害検定報告書

②損傷部分の修繕に要する費用の見積書や請求書

③保険会社に提出した損害賠償請求の書類 ・売手との間で行われた値引き交渉の記録やクレジットノート

特に、第三者機関である公認検定機関による損害見積書は、税関に対する説明において非常に高い証拠力を持ちます。単に輸入者が主観的に「価値が半分になった」と主張するだけでは認められない可能性が高いです。

 

4 具体的な申告手続きの流れ

変質又は損傷した貨物を申告する際の実務的なステップは以下の通りです。

【表2 損傷貨物の輸入申告における実務フロー】

ステップ/実施内容/留意事項

1 損傷の発見と確認 貨物の荷卸し時に状態を写真等で記録、証拠の確保が最優先

2 損害額の算定 検定機関への依頼や修理見積の取得 客観的な数値の算出

3 税関への事前相談 決定方法の妥当性について担当官と協議 スムーズな審査のため

4 輸入申告の実施 減価額を控除した価格で申告 備考欄に事情を記載

このプロセスにおいて、当初のインボイス価格からどのように計算して申告価格を導き出したのか、その計算過程を明確に記した資料を添付することが重要です。

 

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の変質や損傷に伴う課税価格の決定は、事実関係の立証と法令の解釈が複雑に絡み合う領域です。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、法務と実務の両面からサポートを提供することが可能です。特に、高額な貨物や精密機器、品質変化の判断が難しい食品・化学品等の事案において、以下のような業務を通じて貴社のビジネスを支援いたします。

①関税定率法第四条の五の適用が可能かどうかのリーガルオピニオンの作成

②税関当局に対する合理的かつ説得力のある説明資料の構築支援

③公認検定機関や通関業者との連携による証拠資料の整備

④税関からの価格否認や更正処分に対する不服申立てや訴訟対応

⑤輸送契約や保険契約と連動した、トータルでの損害回避アドバイス

輸入通関上のトラブルや、損傷貨物の取り扱いに関してご不安な点がありましたら、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。専門的な知見に基づき、適正な納税と貴社の利益保護のために尽力いたします。

 

【お問合せは、こちらから】

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

製造原価に基づく課税価格の決定方法について

2021-03-12

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は、海外にある関連会社で特別に設計された特殊工作機械を輸入しようとしています。この機械は受注生産品であるため、本邦において同種の貨物や類似の貨物の輸入実績が全くありません。また、輸入後の国内販売価格を基礎とした計算を行おうにも、自社で直接使用する設備であるため、国内での転売予定もありません。このような場合、どのような方法で課税価格を算定すべきでしょうか。海外の生産者からは製造原価に関する詳細なデータ提供を受けることが可能ですが、これを利用した申告は認められるのでしょうか。また、その際の具体的な計算方法や法的根拠についても詳しく教えてください」

輸入貨物の課税価格は、原則として買手が実際に支払う価格に基づきますが、相談者のように原則的な方法が適用できない局面は多々あります。

本日は、そのような際の例外的な算定方法の一つである、製造原価に基づく課税価格の決定方法について解説いたします。

 

1 製造原価に基づく課税価格の決定方法の概要

輸入貨物の課税価格を決定する際、原則的な方法(関税定率法第4条)や、同種・類似の貨物を用いる方法(同法第4条の2)、国内販売価格に基づく方法(同法第4条の3第1項)によっても決定できない場合に検討されるのが、製造原価に基づく方法です。

この方法は、関税定率法第4条の3第2項に規定されています。実務上、この手法は「構成価格による評価」とも呼ばれ、生産コストを積み上げて価値を算出する非常に客観性の高い手法といえます。

 

2 国内販売価格に基づく方法との適用順位

関税評価のルールには、適用すべき順番が法律で定められています。

関税定率法第4条の3の規定によれば、原則として「国内販売価格に基づく方法」が「製造原価に基づく方法」よりも優先されます。

しかし、同条第3項には重要な例外規定があります。

輸入しようとする者が税関長に対して、製造原価に基づく方法を優先して適用したい旨を申し出た場合には、その順位を逆転させることが可能です。相談事例のように、国内での転売予定がなく国内販売価格の把握が困難な一方で、製造原価のデータが明確である場合には、この順位逆転の申し出を行うことが実務上有効な選択肢の一つとなります。

 

【表1 課税価格決定方法の適用順位と選択】

方法の名称/基本的な適用順位/選択の可否

国内販売価格に基づく方法(第4条の3第1項)/第四順位(優先適用)/原則通り

製造原価に基づく方法(第4条の3第2項)/第五順位(後位適用)/輸入者の申し出により優先可

 

3 製造原価に基づく算定の具体的な構成要素

製造原価に基づく方法では、以下の要素をすべて合算して課税価格を算出いたします。この計算式は関税定率法第4条の3第2項の規定を基礎としています。

【表2 製造原価に基づく課税価格の計算構成要素】

要素の区分/具体的な内容/算出の根拠

(A)製造原価 原材料費、労務費、容器・包装費、補助的な物品の費用等 生産者の商業帳簿

(B)利益・経費 生産国における同類の貨物の販売に係る通常の利潤及び一般経費 生産国の標準的数値

(C)輸送費用等 輸入港までの運賃、保険料その他運送に関連する費用 実際の支払費用

 

(1)製造原価(A)の範囲

製造原価には、単なる材料費だけでなく、輸入貨物の容器の費用や包装に要する費用が含まれます。さらに、関税定率法第4条第1項第3号に規定される、買手が無償または低価格で提供した金型、工具、原材料などの「アシスト」に要する費用も、生産者が負担している場合には算入しなければなりません。

また、本邦で開発された技術、設計、意匠等の費用であっても、生産者がこれを負担した場合には、当該負担額も原価の一部として構成されます。これらの数値は、原則として生産者の商業帳簿に基づいて確認されることとなります。

(2)通常の利潤及び一般経費(B)

これには、輸入貨物が属する「同類の貨物」について、生産国において本邦への輸出のために販売される際に通常付加される利益と経費が含まれます。ここでいう「同類の貨物」は、輸入貨物と同一の国から輸入されたものに限定されます。

(3)運賃等(C)

最後に、当該貨物が本邦の輸入港に到着するまでの運賃及び保険料を加算いたします。これにより、輸入港に到着した時点での貨物の総価値が確定されます。

 

4 実務上の留意点と証拠書類の重要性

製造原価に基づく方法は、生産者の協力が不可欠な手法です。税関は申告の妥当性を確認するため、生産者の商業帳簿や会計資料の提示を求めることがあります。

もし、生産者が企業秘密を理由にデータの提供を拒んだり、提供された資料が国際的に認められた会計原則に合致していなかったりする場合には、この方法を採用することは認められません。そのため、事前の契約段階から、関税評価のために必要な情報提供を受けられる体制を整えておくことが肝要です。

 

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であると同時に、輸出入や通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を保有しております。

製造原価に基づく課税価格の算定は、関税法や関税定率法のみならず、会計実務や国際的な関税評価協定への深い理解が求められる専門性の高い領域です。当事務所では、以下のような高度な法的サービスを提供しております。

①国内販売価格法と製造原価法のどちらが有利か、または適用可能かの法的検討

②税関長に対する適用順位逆転の申し出に関する手続き代行

③海外生産者から提供された原価データの妥当性検証と税関への説明

④製造原価に含めるべきアシスト費用の正確な按分計算の助言

⑤税関による事後調査において、算定根拠を論理的に防衛するための法的サポート

輸出入や通関上のトラブル、特に特殊な貨物の価格評価でお悩みがある場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。通関士の視点と弁護士の知見を融合させ、貴社の円滑な通関と適正な納税を全面的に支援いたします。

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

同種又は類似の貨物が存在する輸入貨物における例外的な課税価格の決定方法

2021-03-08

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は海外の取引先から、キャンペーン用のノベルティとしてロゴ入りの特注バッグを無償で提供してもらうことになりました。無償で提供される物品であるため、輸入取引の際の売買価格というものが存在しません。通関業者に相談したところ、実際の取引価格がない場合は、同種の貨物や類似の貨物の価格を基にして申告する必要があるとの説明を受けました。しかし、ロゴ入りの特注品であるため、全く同じ商品は市場に存在しないように思われます。このような場合、どのような基準で比較対象となる貨物を選定し、課税価格を算定すればよいのでしょうか。法令に基づいた具体的な判断基準を教えてください」

輸入通関における課税価格は、原則として買手が売手に実際に支払う取引価格に基づきます。しかし、無償貨物や委託販売貨物など、取引価格が存在しない場合には、関税定率法第四条の二以下の規定により、別の方法で価値を評価しなければなりません。

本日は、その代表的な手法である同種又は類似の貨物の価格を用いる方法について解説いたします。

 

1 同種の貨物に係る取引価格による決定

原則的な決定方法(現実支払価格による方法)が適用できない場合、まず検討されるのが同種の貨物の取引価格を用いる手法です。

(1)同種の貨物の定義

関税定率法第四条の二第一項における同種の貨物とは、当該輸入貨物の生産国で生産されたもので、形状、品質及び社会的評価を含むすべての点で当該輸入貨物と同一であるものを指すと解されています。具体的には、以下の条件をすべて満たす必要があります。

①輸入貨物の本邦への輸出の日、またはこれに近似する日に本邦へ向けて輸出されたものであること

②輸入貨物の生産国と同一の国で生産されたものであること

③形状や品質、社会的評価において、外見上の微細な差異を除き、実質的に同一の貨物であること。

例えば、同一メーカーが製造した同一型番の電気製品などは、まさに同種の貨物の典型例といえます。

 

(2)近接する日の解釈

法令にいう近接する日については、関税定率法基本通達において、輸入貨物の輸出の日から遡り、またはその日以後において、価格を変動させるような経済的状況の変化がない期間内とされています。実務上は、市場価格の変動が激しい商品を除き、前後一ヶ月程度が目安とされることが一般的です。

 

2 類似の貨物に係る取引価格による決定

同種の貨物の取引価格が存在しない場合に、次なる選択肢として検討されるのが類似の貨物です。

(1)類似の貨物の定義

関税定率法第四条の二第一項における類似の貨物とは、輸入貨物の生産国で生産されたもので、すべての点で同一ではないが、同様の形状及び材質を有し、かつ、同様の機能を有し、商業上の交換が可能なものを指します。

具体例を挙げれば、異なるメーカーが製造した同程度のスペックを持つ汎用的な電子部品や、デザインは異なるものの素材や機能、ブランド価値が同等であるアパレル製品などがこれに該当する可能性があります。

(2)商業上の交換可能性

ここで重要なのは、単に機能が似ているだけでなく、市場において代替品として取引される程度に社会的評価や品質が同等であるという点でしょう。例えば、極めて高いブランド価値を持つ高級時計と、機能は同じでもブランドのない普及品の時計は、類似の貨物として扱うことはできません。

【表1 同種の貨物と類似の貨物の比較】

| 項目 | 同種の貨物 | 類似の貨物 |

| 生産国 | 当該輸入貨物と同一の国 | 当該輸入貨物と同一の国 |

| 形状及び品質 | すべての点で同一 | 同様の形状及び材質 |

| 機能 | 同一 | 同一の機能を有する |

| 社会的評価 | 同一 | 同等の社会的評価 |

| 商的交換性 | 完全に交換可能 | 商業上の交換が可能 |

 

3 取引価格の優先順位と適用ルール

比較対象となる価格が複数存在する場合、関税定率法及び同法基本通達に基づき、以下の順位に従って適用する価格を決定します。

(1)同種と類似の優先関係

同種の貨物に係る取引価格と類似の貨物に係る取引価格の双方が存在する場合、必ず同種の貨物の価格を優先して採用しなければなりません。

(2)生産者の優先関係

輸入貨物の生産者が製造した貨物の価格と、別の生産者が製造した貨物の価格がある場合は、前者を優先します。これは、生産コストや利益率の構造が近いと考えられるためです。

(3)最小価格の原則

上記の手順によっても、なお複数の有効な取引価格が競合する場合には、それらの価格のうち最小のものを課税価格として採用するというルール これは、納税者に不利にならないように配慮された規定であると同時に、恣意的な価格選定を防ぐ役割も果たしています。

【表2 比較対象価格の選定フロー】

| 手順 | 判断基準 | 決定される価格 |

| 1 | 同種の貨物の有無を確認 | ある場合は優先的に採用 |

| 2 | 同一生産者の有無を確認 | 同一生産者の価格を優先 |

| 3 | 複数の候補が残る場合 | 最も低い価格を採用 |

| 4 | 同種がない場合に類似を確認 | 類似の貨物で上記1から3を適用 |

 

4 実務上の留意点と証拠書類

この方法を適用するためには、比較対象となる貨物の取引価格が、税関において既に「原則的な決定方法」により適正に決定されたものである必要があります。

したがって、単に他社のカタログ価格やインターネット上の販売価格を提示するだけでは不十分です。実際にその価格で輸入許可が下りた実績を示すインボイスの写しや、輸入許可書の内容を確認できる資料が求められるため、独力で適切な比較価格を見つけ出すことは容易ではありません。

 

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の決定方法は、関税評価協定に基づく極めて専門的な領域です。

特に同種や類似の貨物を選定するプロセスにおいては、貨物の物理的な特徴だけでなく、市場における商的な地位や評価といった定性的な分析も必要となります。当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であるとともに、通関実務の国家資格である通関士資格を保有しております。税関との見解の相違が生じやすい関税評価の問題に対し、法的なロジックと実務的なデータの双方からサポートを提供いたします。

具体的には、以下のような業務を通じて貴社の貿易ビジネスを支えていきます。

①無償貨物等の特殊事案における、法令に基づいた適切な課税価格の事前算定

②税関に対する事前教示制度の活用による、通関時のトラブル防止

③事後調査において申告価格の妥当性を指摘された際の、意見書の作成及び当局との交渉

④不当な更正処分がなされた場合の、行政不服審査法に基づく審査請求等の権利救済手続

輸出入や通関に関するトラブル、あるいは課税価格の評価に不安をお持ちの経営者や担当者の方は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

原則的な方法で課税価格を決定できない場合

2021-03-05

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は海外のメーカーから新製品の試作サンプルを無償で提供してもらうことになりました。代金の支払いが一切発生しない無償貨物であるため、税関への申告価格はゼロ円、つまり無税で通関できると考えてよいでしょうか。また、もしその貨物が親会社から送られてくるものである場合、親子間の特殊な関係性が申告価格に影響を及ぼすという話を聞きましたが、具体的にどのような法的リスクがあるのか教えてください」

このようなご相談は、特にグローバル企業の日本支社や、研究開発を行う企業様から寄せられます。無償貨物であっても、関税法上の評価は必ず必要であり、原則的な申告方法が使えない場合のルールを正しく理解しておくことは、コンプライアンス遵守の観点から非常に重要です。

 

1 課税価格決定の原則とそれが適用されない場合

通常、輸入貨物の課税価格は、関税定率法第4条第1項の規定に基づき、実際の輸入取引において支払われる価格(決定価格)に運賃等を加算して算出されます。

しかし、輸入取引によらない貨物や、関税定率法第4条第2項に掲げられる特定の事情がある場合には、この原則的な決定方法を用いることができません。その場合には、同法第4条の2から第4条の4に規定される代替的な決定方法(同種・類似貨物の取引価格の参照や、国内販売価格からの逆算など)へ移行することとなります。

 

2 輸入取引によらない輸入貨物の具体例

一般的な輸入取引とは、居住者が買手となり、非居住者が売手となって、貨物を本邦に到着させるために行われる売買契約を指します。

以下のようなケースは、そもそも売買が存在しないため、原則的な決定方法(第4条第1項)を適用することができない貨物となります。

(1)無償貨物

冒頭の事例のようなサンプル品、修理のための無償代替品、あるいは寄贈品などが該当します。取引価格がゼロであっても、税関はその貨物の市場価値に基づいた客観的な価格での申告を求めます。

(2)本支店間の移送貨物

同一の法人格を持つ海外の本店から日本の支店へ、在庫の補充などのために送られる貨物です。これは法律上の売買契約には該当しないため、内部的な振替価格ではなく、別途法的な評価を行う必要があります。

(3)委託販売のために輸入される貨物

輸入時点ではまだ価格が確定しておらず、日本国内で販売された後に売上を精算する形式の取引です。

(4)賃貸借契約に基づき輸入される貨物

レンタルやリースによって輸入される貨物は、所有権の移転を伴う売買ではないため、取引価格が存在しません。

 

【表1 輸入取引によらない代表的な貨物一覧】

| 貨物の種類 | 具体的な事例 | 理由 |

| 無償貨物 | 新商品の展示用サンプルや無償交換部品 | 代金の支払いが発生しないため |

| 本支店間移送 | 外国本店から日本支店への商品移送 | 同一法人内の移動で売買がないため |

| 委託販売貨物 | 国内での販売後に代金が確定する取引 | 輸入時に確定した取引価格がないため |

| 賃貸借貨物 | 期間限定のイベント用機材のレンタル | リース契約で売買ではないため |

| 滅却目的貨物 | 廃棄を目的とした輸入で費用を売手が負担 | 買手から売手への支払いがないため |

 

3 特別な事情がある輸入貨物

売買契約に基づく輸入であっても、価格の客観性が疑われる以下の4つの場合には、実際の取引価格を申告価格として採用することができません(関税定率法第4条第2項各号)。

(1)買手による輸入貨物の処分又は使用の制限

例えば、輸入した貨物を特定の研究機関にのみ譲渡することを義務付け、一般市場への転売を禁止しているようなケースです。このような制限が価格に影響を及ぼしている場合、その価格は市場価値を正しく反映していないとみなされます。

(2)条件又は対価の付随

「他の古い貨物を引き取ることを条件に、新しい貨物の価格を割り引く」といった契約です。このように、その貨物単体以外の要素によって価格が左右されている場合は、取引価格をそのまま使用することはできません。

(3)売手に帰属する収益

輸入後に貨物を転売した際、その利益の一部が「ロイヤリティ」や「収益の分与」として売手へ戻される契約であり、かつその額が輸入時点で確定できない場合です。

(4)特殊関係による取引価格への影響

親子会社や提携企業の間での取引(特殊関係)があり、それによって価格が相場より著しく低く設定されている場合です。これは税関が最も厳しくチェックする項目の一つです。

【表2 特別な事情の該当要件と具体例】

| 法的要件 | 具体的なシチュエーション | 影響 |

| 処分使用の制限 | 特定の展示会場以外での使用を禁じた場合 | 取引価格の客観性が損なわれる点 |

| 条件対価の付随 | 別の契約の成否によって価格が変動する場合 | 価格がその貨物本来の価値ではない点 |

| 売手帰属の収益 | 転売利益の一定割合を後日支払う合意 | 事後支払額が不明で価格未確定な点 |

| 特殊関係の影響 | 親子会社間で恣意的な低価格を設定 | 独立価格比準法等での再評価が必要な点 |

 

4 法令上の根拠規定の解説

実務においては、関税定率法基本通達4-1(1)や、同4-1の2において、どのような状態がこれらの例外に該当するかが極めて細かく定義されています。

例えば、特殊関係がある場合であっても、その関係が取引価格に影響を及ぼしていないことを輸入者が立証できれば、原則的な方法を維持できる場合があります。この立証には、製造原価や同業他社の利益率など、膨大なデータの提示が必要となります。

 

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の決定は、単なる算数ではなく、法的なロジックの構築そのものです。当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であるとともに、通関士の資格も保有しております。 特に、以下のような複雑な事案において、貴社のリーガルリスクを減少させるためのサポートを提供いたします。

①税関から「価格が低すぎる」と指摘された際の妥当性の主張

②親子会社間の移転価格と関税評価の整合性に関するアドバイス

③無償貨物や委託販売における適切な評価申告書の作成支援

④税関事後調査に対する立ち会いと、法的な見解書の提出

 

輸入通関における価格決定の問題は、一度誤ると過去数年分にわたる追徴課税を招くリスクがあります。少しでも不安を感じられた際は、ぜひお気軽に当事務所までお問い合わせください。

 

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

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郵便物の輸出(輸入)通関手続について

2021-02-25

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は個人事業主として海外から希少なアンティーク時計や宝飾品を輸入し、国内で販売しております。これまでは安価な品物が中心だったため、税関から届くハガキに従って税金を支払うだけでスムーズに荷物を受け取ることができていました。しかし先日、一梱包で価格が30万円を超える商品を輸入した際、税関からこれまでとは異なる複雑な案内が届き、輸入申告が必要である旨の指摘を受けました。郵便物であっても、金額によって手続きがこれほど大きく変わるとは思わず、どのように対応すべきか困惑しております。また、将来的にこれらの商品を海外のコレクターへ輸出する際の手続きについても、正確な法的根拠を知っておきたいと考えております」

国際郵便を利用した物品の送付は非常に簡便な手段ですが、相談者の方のように一定の金額を超える場合には、通常の貨物と同様の厳格な通関手続きが求められます。

以下では、郵便物の輸出入に関する法的な枠組みと実務上の留意点を解説いたします。

 

1 郵便物の輸出通関手続き

郵便物を利用して物品を輸出する場合、その価格や性質によって手続きが二分されます。

(1)輸出郵便物の簡易手続きと法的根拠

輸出される郵便物のうち、課税価格が20万円以下のもの、または価格に関わらず寄贈物品であるものについては、輸出通関の迅速性を確保する観点から簡易的な手続きが認められています。

この根拠となるのは、関税法第七十六条です。

 

(2)20万円を超える場合の輸出申告

前述の通り、課税価格が20万円を超える郵便物(寄贈物品を除く)については、輸出者は自ら、または通関業者に委託して輸出申告を行う必要があります。

この手続きにおいては、関税法第六十七条に基づき、貨物の品名、数量、価格その他必要な事項を税関長に申告し、必要な検査を経て輸出許可を得なければなりません。

以下に、輸出郵便物の手続きの区分を整理した図表を掲載いたします。

 

【表1 輸出郵便物の手続き区分一覧】

貨物の区分/適用される手続き/申告の要否

課税価格が20万円以下/簡易手続き(関税法76条)/輸出申告不要

寄贈物品(価格不問)/簡易手続き(関税法76条)/輸出申告不要

20万円超の一般物品/一般通関手続き(関税法67条)/輸出申告必要

 

2 郵便物の輸入通関手続き

輸入においても、輸出と同様に課税価格の「20万円」という境界線が極めて重要な意味を持ちます。

(1)輸入郵便物の簡易手続きと免除規定

輸入される郵便物のうち、課税価格が20万円以下のものについては、原則として輸入者は個別の輸入申告を行う必要がなく、郵便事業者が税関に提示するだけで手続きが進みます。

もっとも、特定の郵便物については価格に関わらず、または高額な場合に輸入申告が義務付けられています。具体的に輸入申告が必要となるのは、主に以下のケースです。

①課税価格が20万円を超えるもの(ただし寄贈物品等で、税関長において課税価格の把握や所属区分の判断が容易であると認めるものを除きます)

②課税価格が20万円以下であっても、EPA税率の適用を受けようとするもの ここで注意が必要なのは、輸出とは異なり、輸入においては「寄贈物品」であっても、課税価格を把握することが困難な場合などは、一般の輸入申告を求められる可能性がある点です。

(2)輸入申告が必要な場合の具体的な流れ

課税価格が20万円を超え、輸入申告が必要と判断された郵便物については、名宛人に対して郵便事業者から「外国から到着した郵便物の通関手続のお知らせ」という案内文書が送付されます。この通知を受け取った名宛人は、以下のいずれかの方法を選択して手続きを進めることになります。

①自分自身で税関窓口へ出向き、または輸出入申告システム(NACCS)を利用して輸入申告を行う

②日本郵便株式会社または民間の通関業者に手続きを委託する

輸入申告の際には、仕入書(インボイス)や運賃明細、保険料明細などの価格根拠資料を提出し、関税、消費税、地方消費税を正しく計算して納付する必要があります。

 

【表2 輸入郵便物における輸入申告の要否判定】

| 区分 | 課税価格 | 申告の要否 |

| 一般の商流品 | 20万円以下 | 申告不要 |

| 一般の商流品 | 20万円超 | 申告必要 |

| EPA適用希望物品 | 価格不問 | 申告必要 |

| 税関長が指定する物品 | 価格不問 | 申告必要 |

 

3 専門的知見に基づく実務上のアドバイス

郵便物通関において特に留意すべきは「課税価格の算定」です。

関税定率法第四条では、輸入貨物の課税価格は「当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時の価格(決定価格)に、当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運賃、保険料その他一切の費用を加算した価格」と定義されています。

郵便物の場合、物品自体の代金だけでなく、国際送料や保険料も合算した金額が「20万円」を超えているかどうかが判断基準となります。この計算を誤ると、意図せず無申告の状態となり、後日、過少申告加算税や延滞税などの附帯税が課されるリスクがあります。

また、関税法では、税関長が郵便物の内容を確認するために、名宛人に対してインボイス等の書類の提出を求めることができると定められています。書類の不備や価格の過少申告が疑われると、貨物の引き渡しが大幅に遅れるだけでなく、税関による厳しい調査の対象となることもあります。

さらに、輸入してはならない貨物(関税法第六十九条の十一)についても注意が必要です。 知的財産権を侵害する物品、例えばブランド品のコピー商品などを郵便で輸入しようとした場合、たとえ一個であっても没収の対象となります。郵便物通関は簡易的である反面、税関のX線検査や開披検査が非常に効率的に行われており、違法物品の検挙率は非常に高いのが現状です。

特に、一時期違法薬物を郵便で輸入しようと試みて検挙されるケースが多数存在しました。このようなことは絶対にやめてください。

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関手続きに関する国家資格である通関士資格を保有しております。単なる法律の解釈にとどまらず、実際の通関現場で行われている実務慣行や、税関当局の考え方を踏まえたアドバイスが可能です。

例えば、以下のような事項でお困りの際に、サポートを提供いたします。

①課税価格の決定(評価申告)に関する税関との見解の相違

②実行関税率表上の所属区分(HSコード)の判定に関する助言

③税関事後調査に対する立ち会いおよび対応方針の策定

④関税法違反等で貨物が差し押さえられた場合の権利救済

④効率的な輸出入管理体制(ガバナンス)の構築

郵便物や一般貨物を問わず、輸出入に関してご不明な点や、税関とのトラブル、あるいは将来的な法的リスクを回避するための対策についてのご相談がありましたら、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。

 

【お問合せは、こちらから】

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

原産地証明書の重要性と実務上の留意点について

2021-02-17

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は都内で輸入卸売業を営んでおりますが、この度、東南アジアのEPA締約国から加工食品を輸入することになりました。基本税率よりも低いEPA税率の適用を受けたいと考えておりますが、相手国の輸出者から送られてきた原産地証明書の有効期限や、日本の税関への提出要件が複雑で困惑しております。特に、どのような場合に提出が免除されるのか、また、自己証明制度と第三者証明制度の違いが実務にどう影響するのかを専門的な視点から教えていただけないでしょうか」

このようなご相談は、非常に多く見受けられます。

原産地証明書は、単なる書類の一つではなく、コスト削減やコンプライアンスに直結する重要な文書です。本日は、原産地証明書の概要から実務上の注意点まで、解説いたします。

 

1 原産地証明書の内容と役割

原産地証明書とは、最も典型的なものとしては、輸出入貨物について一国の政府や公的機関が、その国が原産地であることを証明して発行する文書を指します。

輸出入をビジネスで行っている方にとっては、避けては通れない書類といえます。もっとも、名称は知っていても、具体的な法的根拠や効果までは十分に把握していないケースも少なくありません。原産地証明書の主な役割は、輸入国における関税の譲許(減免)を受けるための資格を証明することにあります。

 

2 輸出貨物における原産地証明書の手続

日本では、輸出通関の際に原産地証明書を必ず提出しなければならないという法的義務はありません。しかし、輸入国側の法令や輸入者からの契約上の要請に基づき、発行が必要となる場面が多々あります。日本からの輸出貨物に関する原産地証明書の発行主体については、商工会議所法第9条第6号において、商工会議所が「輸出品の原産地証明を行うこと」と規定されています。

ただし、一般的にEPA関連においては原産地証明の発行の形式には大きく分けて二つの制度が存在します。

【表1 証明制度の比較と特徴】

制度の名称

証明の主体

主な適用協定

第三者証明制度

商工会議所等の公定機関

多くのEPA(日アセアン、日インド等)

自己証明制度

輸出者、生産者または輸入者

CPTPP、日豪EPA、日EUEPA、RCEP

 

上記のように、第三者が証明を行う形式だけでなく、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)などのように、自ら原産品であることを証明する自己証明制度も採用されている協定が増えております。この場合、作成者の責任や税関の審査がより重くなるため、根拠資料の保管義務を含めた厳格な管理が求められます。

 

3 輸入貨物における原産地証明書と関税の減免

輸入者が税関に対して原産地証明書を提出する必要があるのは、主に優遇税率の適用を受ける場合です。

【EPA税率の適用】

EPA(経済連携協定)税率の適用を受ける場合、関係法令及び各協定に基づき、適切な証明書を提出する必要があります。

具体的には、

①各締約国の権限ある機関が発給したものであること

②原則として発給日から一年を経過していないものであること

といった条件がありますが、以下の要件を満たす場合は、原産地証明書の提出が免除される場合があります。

(i)貨物の種類や形状により、原産地が明らかであると税関長が認めるもの

(ii)一つの輸入申告における課税価格の総額が二十万円以下であるもの

 

4 輸入通関の流れ

輸入時に原産地証明書を使用する際の大まかな流れは以下の通りです。

【表2 輸入通関における原産地証明書の処理フロー】

手順/実施内容/留意事項

1 輸出者から証明書を入手 有効期限(一年)を確認

2 適用税率の確認 実行関税率表で確認

3 輸入申告時に提示 二十万円以下は省略可

4 税関による審査 形式不備は否認のリスクあり

 

5 実務上のトラブル事例と対策

原産地証明書を巡っては、以下のようなトラブルが発生しがちです。

第一に、書類上の記載ミスです。インボイスに記載された品名や数量と、原産地証明書の記載が一致しない場合、税関での審査が滞り、最悪の場合は優遇税率の適用が認められない可能性もあります。

第二に、直接運送原則の違反です。原産国から日本へ直送されず、第三国を経由して積み替えられた場合、その第三国で加工が施されていないことを証明する「通し船荷証券」等の追加書類が必要になることがあります。

 

6 弁護士へのご相談のメリット

当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であると同時に、輸出入や通関手続きに関する国家資格である通関士試験に合格し通関士の資格を保有しております。一般的な法律事務所では対応が難しい、以下のような領域についてもサポートが可能です。

①税関による事後調査への対応

②実行関税率の適用区分に関する不服申立て

③EPA原産地規則の解釈と該非判定の助言

④通関業者との連携によるスムーズな手続きの構築

 

原産地証明書は、貿易コストの最適化を図る上で欠かせないツールです。しかし、その運用には緻密な法令理解と実務知識が求められます。複雑な制度を正しく活用し、ビジネスの競争力を高めるために、ぜひ専門家の知見をご活用ください。

輸出入や通関上のトラブル、あるいは税関との見解の相違に関してご不安な点があれば、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

【お問合せは、こちらから】

 

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

 

輸入申告における「特殊関係」の定義と課税価格決定への影響

2021-02-10

0 はじめに:相談事例

まずは、親子会社間や関連会社間の取引において、多くの企業が直面する具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:海外ブランド日本法人 F社 サプライチェーンマネージャー】

「当社はフランスにある親会社から香水や化粧品を輸入し、国内で販売しております。親会社からの仕入価格はグループ内価格として設定されており、一般的な卸売価格よりも低く設定されています。先日、税関から『売手と買手の間に特殊関係があるため、現在の申告価格が妥当かどうか精査が必要である』との指摘を受けました。長年この価格で輸入してきましたが、親子会社であるという理由だけで、インボイスの価格が否定されてしまうのでしょうか。また、どのような関係があれば『特殊関係』に該当し、どのような基準で価格の妥当性を証明すればよいのでしょうか。」

輸入取引において、売手と買手の間に密接な関係がある場合、その価格が恣意的に操作されているのではないかという疑念が税関側に生じます。以下では、関税評価における「特殊関係」の法的定義とその影響について詳細に解説いたします。

 

1 特殊関係が課税価格に与える法的影響

原則として、輸入貨物の課税価格は「取引価格」に基づき決定されます。しかし、売手と買手の間に「特殊関係」があり、その関係が取引価格に影響を及ぼしていると判断される場合には、その価格を課税価格として採用することができません。

【根拠法令】

関税定率法第4条第2項第4号

「買手と売手との間に特殊関係(…中略…)がある場合において、その特殊関係が当該輸入貨物の取引価格に影響を与えていると認められるときは、第1項の規定(取引価格による決定)は適用しない。」

この規定の目的は、関連企業間での不当な低価格申告による関税逃れを防止することにあります。特殊関係があること自体は違法ではありませんが、その価格が「独立した第三者間での取引価格」と同等であることを輸入者側が立証できなければ、例外的な決定方法(同種貨物の価格や国内販売価格からの逆算など)に移行することになります。

 

2 「特殊関係」の具体的な定義と範囲

「特殊関係」の範囲については、関税定率法施行令および基本通達によって厳格に定められています。以下の9つの項目のいずれかに該当する場合、法的な特殊関係が存在するものとみなされます。

「法第4条第2項第4号に規定する政令で定める特殊な関係がある場合は、次に掲げる場合とする。」

以下に、その具体的な内容を整理した一覧表を掲載いたします。

【表:関税法上の特殊関係に該当する9つの類型】

 

特殊関係の内容(定義)

具体的な詳細・補足説明

相互の役員兼任

一方の役員が他方の役員(取締役、監査役、理事等)を兼ねる場合

共同経営者

法令上認められた形態で、出資や労務を共にし事業を営む関係

使用者と被用者

いわゆる雇主と従業員の関係にある場合

5%以上の株式所有

一方が他方の議決権付株式の5%以上を直接・間接に所有する場合

直接又は間接の支配

一方が他方を法律上又は事実上、拘束し指示する立場にある場合

同一第三者による所有

同一の第三者が、売手・買手双方の株式を5%以上所有する場合

同一第三者による支配

売手と買手の双方が、同一の第三者から直接又は間接に支配されている

共同による第三者支配

売手と買手が共同して、同一の第三者を直接又は間接に支配している

親族関係

配偶者、6親等内の血族、及び3親等内の姻族

3 特殊関係の各項目に関する専門的解説

3-1 「支配」の概念

ここでいう「支配」とは、必ずしも株式の過半数を所有している必要はありません。例えば、主要な取引先であり、その指示に従わなければ事業継続が困難であるような「事実上の支配」も含まれます。また、技術提携や独占販売権の付与に伴い、経営上の重要な意思決定が他方によって左右される場合も慎重な判断が求められます。

3-2 親族関係の範囲

関税法における親族の範囲は非常に広く設定されています。「6親等内の血族」には、従兄弟の子供や孫までが含まれます。個人輸入や小規模な家族経営企業間の取引において、この規定を見落とし、事後調査で指摘を受けるケースが散見されます。

 

4 「価格に影響を与えている」かどうかの判断基準

特殊関係に該当した場合でも、直ちに取引価格が否定されるわけではありません。関税定率法基本通達4-19では、以下の要素などを加味して、その価格が妥当かどうかを審査されます。

4-1 取引状況の検討(事情の精査)

売手と買手との間の取引が、特殊関係のない通常の顧客に対する販売価格の決定方法と同一である場合、あるいはその価格が当該業界の通常の価格形成慣行と一致している場合などは、「影響を与えていない」と判断されます。

4-2 標準価格との比較

輸入者が、その取引価格が以下のいずれかの価格(標準価格)に近いものであることを証明した場合です。

①同種又は類似の貨物に係る取引価格(特殊関係のない者間のもの)

②国内販売価格から逆算した課税価格

③製造原価から積み上げた課税価格

 

5 実務上の対策:輸入事後調査への備え

税関の輸入事後調査において、特殊関係間の取引価格は重点的な確認項目となります。企業としては、あらかじめ以下の資料を準備しておくことが重要です。

①価格決定プロセスを説明する書類:価格表(プライスリスト)、原価計算書、グループ内の移転価格ポリシー

②第三者向け価格との比較表:親会社が他国の非関連企業に販売している価格との差異説明

③移転価格税制との整合性:法人税法上の移転価格文書(ローカルファイル等)との整合性。ただし、税務上の「独立企業間価格」と関税上の「課税価格」は必ずしも一致しない点に注意が必要です。

 

6 特殊関係の未申告によるリスク

輸入申告において事実があるにもかかわらず特殊関係が存在しないものとして申告し、後の調査で発覚した場合には、意図的な隠蔽とみなされ、重加算税が課されるリスクが高くなります。

また、一度価格が否認されると、過去数年分に遡って更正(追徴課税)が行われるため、多額のキャッシュアウトが発生し、経営に深刻なダメージを与える可能性があります。

 

7 おわりに:当事務所のサポート

輸入貨物の課税価格、特に特殊関係が絡む事案は、関税法の中でも最も技巧的で専門性の高い領域です。税関当局との見解の相違が生じた際、論理的な証拠を持って対抗するためには、深い法知識と実務経験が不可欠です。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、輸出入や通関に関する豊富な知見を有しております。

①特殊関係の該当性診断:貴社の取引構造を精査し、法的なリスクを洗い出します。

②価格妥当性の立証支援:税関に対し、現在の取引価格が正当であることを証明するための法的意見書を作成いたします。

③事後調査の立会と交渉:不当な価格否認が行われないよう、現場での適切な主張と交渉を代行します。

「親子会社間の取引価格に不安がある」、「税関から説明を求められているが、どう答えればよいかわからない」といったお悩みがあれば、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の適正な輸入申告と、円滑な国際ビジネスを全力でバックアップさせていただきます。

 

 

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

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輸入申告における「現実支払価格」の法的定義と実務上の判断基準

2021-02-06

0 はじめに:相談事例

まずは、輸入価格の申告において多くの企業が直面する、具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:工作機械輸入商社 E社 経理部長】

「当社はドイツのメーカーから大型の工作機械を輸入しています。契約では、機械本体の代金のほかに、日本到着後の据付け費用や、輸入後の半年間にわたる技術指導料も含まれており、一括して送金しています。仕入書(インボイス)にはこれらの内訳が記載されていますが、税関への申告にあたっては、送金した全額を『現実支払価格』として申告すべきなのでしょうか。また、当社が独自に行っている国内での広告宣伝費が、売手への間接的な支払いとみなされることはないのでしょうか。正しく申告価格を算定するための法的根拠を教えてください。」

輸入申告における価格決定は、単に「支払った総額」を記載すればよいというものではありません。何を含め、何を差し引くべきかというルールを正しく理解していないと、税金の過払い、あるいは過少申告によるペナルティを招く恐れがあります。以下では、関税評価の核となる「現実支払価格」について詳細に解説いたします。

 

1 「現実支払価格」の法的定義と原則

関税の課税標準となる課税価格を算出する際、その基礎となるのが「現実支払価格」です。これは、売買契約に基づいて実際に動く金銭の総体を指します。

【根拠法令】

関税定率法第4条第1項

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において次に掲げる費用(加算要素)の額を加えた価格とする。」

【専門的な意義の解説】

現実支払価格とは、買手が売手に対し、または売手のために、輸入貨物の対価として直接的または間接的に支払った、あるいは支払うべき総額をいいます。ここでの「間接的な支払い」とは、例えば買手が売手の債務を肩代わりして第三者に支払った金額なども含まれるため、注意が必要です。

通常、この価格は輸入取引の仕入書(インボイス)に基づき認定されます。ただし、仕入書に記載された金額が、取引の真実の対価を正当に表示していないと判断される場合には、税関から厳格な調査を受けることになります。

 

2 「現実支払価格」に含まれない費用の特定

実務上非常に重要なのが、支払総額の中から「課税価格に算入しなくてよい費用」を正しく切り分けることです。これらは、輸入港に到着した後の活動に関連するものが主となります。

控除が認められる主な費用(関税定率法基本通達等の規定)

以下の費用が仕入書等において明確に区分されている場合は、現実支払価格から除外して申告することが可能です。

①据付け・技術指導費:輸入許可後に行われる機械の組み立てや整備、技術指導の対価。

②国内運賃・保険料:日本国内の港から保税倉庫、あるいは納品先までの輸送費用。

③公課:日本国内で課される関税、消費税、その他の公的負担。

④延払金利:代金の支払いを猶予してもらうことに対する利息(一定の条件を満たす場合)。

⑤輸出国の還付税:輸出国側で免除または払い戻されるべき関税等。

これらの費用を誤って含めて申告してしまうと、本来支払う必要のない関税を納めることになり、企業のコストを不必要に押し上げる要因となります。

 

3 現実支払価格の構成要素一覧表

実務における判断を円滑にするため、算入すべきものと算入不要なものを整理した比較表を作成いたしました。

【表:現実支払価格への算入・非算入の判断基準】

費用の項目

算入の可否

判断の法的根拠と留意点

貨物そのものの代金

算入(必須)

割引がある場合はその正当性の立証が必要。

売手の債務の弁済額

算入(原則)

買手が売手に代わって第三者へ支払う額。

輸入港までの運賃

算入(必須)

加算要素として現実支払価格に加える。

到着後の据付け工賃

非算入

仕入書で金額が明確に区分されていること。

買手による広告宣伝費

非算入

買手が自己のために行う活動は算入不要。

配当金・融資金利

非算入

輸入貨物との直接的な関連がない支払。

 

4 間接的な支払いと自己活動の区別

「売手のために行われた支払い」の解釈は非常にテクニカルです。

特に、買手が行うマーケティング活動については、以下の点に注意が必要です。

【買手が自己のために行う活動】

買手が日本国内での販売を促進するために支出する広告宣伝費、販売促進費、アフターサービス費用などは、例えその結果として海外の売手(メーカー)のブランドイメージが向上し、売手の利益になったとしても、原則として売手に対する「間接的な支払い」とはみなされません。したがって、これらは現実支払価格には含まれません。

【金額を区別し明らかにできない場合の不利益】

ここで注意すべきは、控除できるはずの費用であっても、仕入書等でその額を客観的に明らかにできない場合には、それを含んだ総額を現実支払価格として申告しなければならないという点です。不明朗な一括契約は、結果として高い税負担を招くリスクを孕んでいます。

 

5 実務上の対策:契約書の作成と資料保存

正確な「現実支払価格」を認定し、適切な納税を行うためには、事前の準備が欠かせません。

①費用の区分明記:契約段階において、貨物代金と、据付け費や技術指導料、国内運賃などを明確に分けて見積書や仕入書に記載させる。

②支払いルートの透明化:第三者への支払いがある場合は、それが「貨物の対価」なのか「他のサービスの対価」なのかを明確にする。

③輸入税関事後調査への備え:税関の事後調査では、銀行の送金記録と仕入書の照合が行われます。差額がある場合は、その理由を法的に説明できる資料(価格調整に関する合意書など)を保管しておく必要があります。

 

6 過少申告および過大申告のリスク

現実支払価格の解釈を誤ると、二つの大きなリスクが生じます。

①過少申告リスク:含めるべき金額を除外して申告した場合。事後調査で指摘を受けると、不足税額に加えて「過少申告加算税」が課されます。悪質な場合は「重加算税」の対象となり、社会的信用を失墜させます。

②過大申告リスク:除外できる費用を含めて申告した場合。税金を多く払いすぎることになります。これを更正の請求によって取り戻すには、多大な労力と時間が必要となります。

適正な価格での申告は、企業のキャッシュフロー最適化とコンプライアンス維持の両面において極めて重要です。

 

7 おわりに:当事務所の強み

輸入申告価格の決定、特に「現実支払価格」の算定は、関税評価における最も基礎的かつ複雑な領域です。単なる会計知識だけでは不十分であり、関税法および関係諸法令、さらには国際的な評価基準に精通している必要があります。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸入実務と法律実務の橋渡しを行うことが可能です。

①申告価格のリーガルチェック:複雑な取引形態において、どの費用が現実支払価格に該当するかを法的に診断します。

②税関調査への完全対応:事後調査において、税関の主張する「間接的な支払い」の認定に対し、法的な反論を行い、不当な加算税を回避します。

③契約スキームの構築:将来的な関税リスクを低減するための、売買契約書や価格決定メカニズムの整備を支援します。

 

「インボイスの価格が本当に正しいのか確信が持てない」、「税関から価格の妥当性を疑われている」といったお悩みがあれば、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の貿易業務の安全性と透明性を高めるため、全力でバックアップいたします。

 

 

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

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輸入貨物における課税価格の決定原則とその例外に関する法的解説

2021-02-01

0 はじめに:相談事例

まずは、輸入実務において課税価格の判断に迷われた企業様からの、典型的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:海外サプリメント輸入販売会社 D社 貿易事務担当】

「当社は米国メーカーから健康食品を輸入しておりますが、今回、メーカー側から販売促進費用の一部を日本側で負担することを条件に、仕入価格の大幅な値引きを受けました。インボイス価格は安くなりましたが、税関からは『この値引き後の価格はそのまま課税価格として認められない可能性がある』と指摘を受けてしまいました。輸入時の関税はインボイスの金額にかかるものだと思っていましたが、実際にはどのようなルールで計算されるのでしょうか。また、運賃や保険料以外にも加算しなければならない費用があるのでしょうか。正しく申告しないと加算税のリスクもあると聞き、不安に感じております。」

輸入貨物の「課税価格」は、単に相手方に支払う商品代金(インボイス価格)とイコールであるとは限りません。以下では、関税定率法に基づいた課税価格の決定原則と、実務上の留意点について詳しく解説いたします。

 

1 課税価格の決定方法の原則(取引価格による決定)

輸入関税の計算基礎となる課税価格の決定については、関税定率法第4条から第4条の9までの規定に詳細なルールが定められています。その基本となるのが「取引価格」による決定方法です。

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において次に掲げる費用(加算要素)の額を加えた価格(取引価格)とする。」

ここでいう「現実に支払われた又は支払われるべき価格」とは、買手が売手に対して、または売手のために、輸入貨物の対価として直接または間接に支払った(支払うべき)総額を指します。

【重要な加算要素(輸入港までの費用等)】

インボイス価格に含まれていない場合、以下の費用などを加算しなければなりません。

①輸入港までの運賃及び保険料:日本に到着するまでの輸送コスト

②仲介手数料等:買手が支払う手数料(買付手数料を除く)

③容器及び包装の費用:当該貨物と一体として取り扱われるもの

④無償提供物品等の費用:輸入貨物の生産のために買手が無償または安価で提供した材料や金型等の費用

⑤ロイヤリティ等:輸入貨物に係る知的所有権の使用の対価

 

2 原則的な方法が適用できない「特別な事情」

インボイス価格を基礎とできないケースが法律で定められています。

これに該当する場合、税関は取引価格を否認し、後述する「例外的な決定方法」へと移行します。

次に掲げる事情がある場合には、第1項の規定(取引価格による決定)は適用されません。

①処分又は使用の制限:買手による貨物の転売先や使用方法に、売手による強い制限がかかっている場合

②条件又は対価の付帯:取引価格が、輸入貨物以外の要素(例:他の商品の抱き合わせ購入等)によって決定されており、その影響を金額換算できない場合

③特殊関係の影響:親子会社間などの取引において、その特殊な関係が価格形成に影響を及ぼしていると認められる場合

 

3 課税価格決定の優先順位と体系表

原則的な方法が使えない場合、法律が定める順番(第4条の2から第4条の4)に従って評価を行います。この順番を飛ばすことは、納税者が製造原価による計算を希望する場合などの一部の例外を除き、認められません。

【表:課税価格決定方法の優先順位と内容一覧】

順位

根拠条文

決定方法の名称

概要説明

第1

関税定率法第4条

取引価格による決定

現実支払価格に運賃等の加算要素を加えた額

第2

関税定率法第4条の2

同種又は類似貨物法

本来の貨物と同一または酷似した他貨物の取引実績価格

第3

関税定率法第4条の3第1項

国内販売価格逆算法

輸入後の国内販売価格から国内経費や利益を差し引いて逆算

第4

関税定率法第4条の3第2項

製造原価積算法

製造原価に通常の利益や輸入港までの費用を積み上げて計算

第5

関税定率法第4条の4

特殊な決定方法

上記いずれも不可能な場合、合理的な基準により決定

※第3順位と第4順位については、輸入者の要請に基づき税関長が認めた場合に限り、順序を入れ替えることが可能です。

 

4 各例外規定の専門的解説

4-1 同種又は類似の貨物に係る取引価格による決定(第4条の2)

輸入貨物そのものの取引価格が使えない場合、ほぼ同時期に日本へ輸入された「同種」または「類似」の貨物の価格を基準にします。ここでいう同種とは、物理的特性や品質、社会的評価がすべての点で同一であることを指します。類似とは、すべての点で同一ではないものの、同一の機能を果たし、商業的に交換可能なものを指します。

 

4-2 国内販売価格又は製造原価に基づく決定(第4条の3)

日本国内での卸売価格から、国内での通常の利益や一般経費、関税、国内運賃などを差し引いて算出します。もし国内販売の実績がない場合は、製造元から提供された製造原価、材料費、利益等のデータを積み上げて算出します。ただし、海外メーカーが企業秘密を理由に原価開示を拒否するケースも多く、実務上のハードルは高いといえます。

 

4-3 特殊な輸入貨物に係る決定(第4条の4)

中古品、無償見本、寄贈品、あるいはリース貨物など、通常の売買契約に基づかない輸入の場合に適用されます。航空機や船舶、故障による返品、変質・損傷した貨物などもこの規定の対象となり、個別の合理的な基準によって評価されます。

 

5 実務上の落とし穴:見落としがちな加算要素

冒頭の相談事例のように、一見「値引き」に見えるものであっても、それが「輸入貨物の対価を他の形で支払っている」とみなされると、加算が必要になります。

5-1 買手負担の広告宣伝費や開発費

輸入者が海外メーカーに代わって広告宣伝を行い、その分だけ仕入価格を安くしてもらっている場合、その宣伝費は「間接的な支払い」として課税価格に含まれる可能性があります。

5-2 金型の無償提供(アシスト費用)

日本側で製作した金型を海外工場へ無償で送り、それを使って製品を製造させている場合、その金型の製作費用や輸送費用を、輸入する個々の製品の価格に按分して加算しなければなりません。これは「物品及び役務の無償提供」として、事後調査で最も指摘されやすい項目の一つです。

 

6 正確な申告に向けた対応策

課税価格の決定は、税関の「評価申告」という手続きを伴うこともあり、非常に高度な専門知識が要求されます。

①契約書の精査:売買契約書に「価格調整条項」や「別途費用の負担」が明記されていないか確認する。

②会計記録との照合:インボイスによる支払い以外に、海外の取引先に対して別名目で送金していないか確認する。

③評価申告の検討:課税価格が確定しない状態で輸入する場合や、特殊な加算要素がある場合は、事前に評価申告を行い、税関の承認を得ておくことがリスク回避につながります。

 

7 不適切な申告によるペナルティ

課税価格を誤って過少に申告した場合、不足していた関税および消費税の徴収に加え、過少申告加算税が課されます。さらに、事実を隠蔽したり仮装したりしたと判断されれば、重加算税(35%または40%)という極めて重い制裁金が課されるだけでなく、以後の輸入申告において税関の検査が厳しくなるなど、事業運営に多大な支障をきたします。

 

8 おわりに:当事務所のサポート

関税定率法における課税価格の決定ロジックは、国際的な評価協定に基づいた複雑な体系となっており、一般の企業が自力ですべてを正確に把握することは容易ではありません。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、法的な解釈と実務的な運用の両面から、貴社の輸入申告を強力にサポートいたします。

①課税価格の適正診断:現在の輸入取引が関税定率法に適合しているか、加算漏れがないかを精査します。

②税関への評価申告相談:複雑な取引形態について、税関から適正な回答を引き出すための書面作成を行います。

③事後調査への立会:税関の主張に対して法的な観点から反論し、適正な課税を確保します。

「この手数料は加算すべきなのか」、「親子会社間の取引価格は認められるのか」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。

貴社の円滑かつ適法な貿易実務のために、最良の対応方法を提示させていただきます。

 

 

【お問合せは、こちらから】

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入事後調査における事前通知の法的性質と実務上の備え

2021-01-26

0 はじめに:相談事例

まずは、当事務所に実際に寄せられた相談をベースにした、典型的な事例をご紹介いたします。

【相談者:中堅輸入商社 C社 物流管理部長】

「当社は長年、家具や雑貨の輸入を行っております。先日、事前の連絡もなく、突然税関の職員が数名、本社に調査にやってきました。『輸入事後調査を実施します』とのことでしたが、通常は事前に電話や書面で通知が来るものだと思っていましたので、非常に驚き、現場は混乱してしまいました。その日は主要な担当者が不在だったこともあり、十分な説明や資料の提示ができませんでした。このように、事前通知なしで調査が始まることは法的に許されるのでしょうか。また、抜き打ち調査が行われる場合にはどのような背景があるのでしょうか。今後の適切な対応方法を知りたいです。」

このような「突然の事後調査」に直面した企業の動揺は計り知れません。

以下では、輸入事後調査における通知の仕組みと、根拠となる法令、そして企業が取るべき対策について詳しく解説いたします。

 

1 輸入事後調査と事前通知の原則

輸入事後調査とは、貨物の輸入許可後において、税関が輸入者の事業所などを訪問し、申告内容の適正性を帳簿や書類等に基づき確認する手続きです。

【事前通知の運用実態】

一般的に、税関は調査の円滑な遂行と輸入者側の準備期間を考慮し、調査実施の数週間前に電話または書面にて事前通知を行う運用をしています。これにより、輸入者は過去の輸入書類を整理し、担当者のスケジュールを確保することが可能となります。しかし、この事前通知は「絶対的な義務」ではないという点に、実務上の大きな落とし穴があります。

 

2 事前通知を規定する法令とその例外

輸入事後調査の事前通知については、関税法そのものよりも、行政手続法および税務調査の手続きに準じた運用がなされています。

 

関税法第105条第1項第6号では税関職員の検査権限が規定されていますが、通知に関しては国税通則法第74条の9第1項の規定が実務上の指針となっています。

「税務署長等は、国税庁等又は税務署の職員に納税義務者に対し実地調査を行う場合には、あらかじめ、当該納税義務者に対し、その旨及び調査を開始する日時、調査を行う場所その他政令で定める事項を通知するものとする。」

【事前通知を要しない場合の例外規定】

しかし、同法第74条の10には、以下のような重要な例外規定が存在します。

「税関長は、申告の内容、過去の調査の結果、事業の内容その他の事情に照らし、事前通知をすることによって、適正な税額等の把握を困難にするおそれ、又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、前三項の規定にかかわらず、事前通知をすることなく調査を行うことができる。」

つまり、税関が「通知をすると証拠隠滅や口裏合わせをされるリスクがある」、あるいは「正確な実態把握ができない」と判断した場合には、法的根拠に基づいて、予告なしの調査(無予告調査)を強行することが認められているのです。

 

3 事前通知がなされない具体的な判断基準

税関の公式見解や実務指針に基づくと、以下のような状況下では事前通知が行われない可能性が高まります。

①隠蔽・仮装の疑い:過去の申告において意図的な過少申告や書類の偽造が発覚している場合

②事業形態の特殊性:現金取引が主体である、あるいは在庫の流動性が極めて高く、抜き打ちでなければ実数把握が困難な場合

③第三者からの情報提供:脱税や不当申告に関する具体的な情報が税関に寄せられている場合

ただし、冒頭の相談事例のように、特に身に覚えがない企業であっても、税関側の「リスク分析」の結果として無予告調査の対象に選定されるケースは十分にあり得ます。

 

4 輸入事後調査の形式と通知の有無(比較一覧表)

事後調査の形態と通知の関係を、以下の表にまとめました。

【表:輸入事後調査の種類と運用の比較】

調査の形態

事前通知の有無

主な目的と特徴

輸入者側の対応準備

一般事後調査

原則としてあり(4週間前程度)

申告全体の適正確認、帳簿管理状況の把握。

過去5年分のインボイス、契約書等の整理。

無予告調査

法令に基づきなし(当日訪問)

隠蔽・仮装の防止、現況の即時把握。

弁護士への即時連絡、当日の応接体制の確認。

特別調査

あり、またはなし

特定の重要案件や、大規模な脱税疑念がある場合。

専門チームの編成、徹底した内部調査。

簡易的な照会

なし(電話や書面)

単一の輸入申告に対する疑義の解消。

該当資料の迅速な提出。

 

5 無予告調査が行われた際の対応の注意点

もし事前通知なしに税関職員が訪問してきた場合、輸入者はどのように振る舞うべきでしょうか。

5-1 身分証の確認と調査目的の把握

まずは、来訪した職員の「税関職員証」の提示を求め、所属部署と氏名を確認します。

また、関税法第105条第1項に基づき、どの範囲(どの貨物やどの期間)についての調査なのかを明確に質問する必要があります。

5-2 専門家(弁護士等)への連絡

無予告調査であっても、弁護士等の立ち会いを求める権利はあります。

職員に対し、「顧問弁護士が到着するまで待機してほしい」と伝えることは正当な要求です。ただし、調査自体を不当に拒否することは、関税法上の罰則(検査拒否罪)の対象となるため、協力姿勢を示しつつも慎重に対応する必要があります。

5-3 書類の提示と預かり証

税関職員が書類の持ち出し(領置)を希望した場合は、必ず「預かり証」の発行を求めてください。どの書類が回収されたかを正確に把握しておかないと、その後の防御活動に支障をきたします。

 

6 「通知を待つ」ことのリスクと事前対策

「通知が来てから準備すればよい」という考えは、無予告調査の可能性を排除している点において非常に危険です。万が一の抜き打ち調査で不適切な対応をしたり、資料が散逸していたりすると、本来は「過失」であった間違いが「隠蔽」と疑われ、重加算税を課されるリスクが増大します。

【推奨される事前対策】

①自主的な内部監査:年に一度は過去の申告書類を抽出し、実際の送金記録や契約書との整合性をセルフチェックする。

②保存書類のデジタル化と整理:関税法で義務付けられている帳簿等の保存期間(原則7年)を遵守し、誰でもすぐに出せる状態にしておく。

③対応マニュアルの策定:突然の訪問時に、誰が受付をし、誰が対応責任者となるかを決めておく。

 

7 当事務所が提供する事後調査サポート

輸入事後調査は、事前の通知があってもなくても、輸入者にとって精神的・実務的に大きな負担となります。税関側の意図を正確に汲み取り、不当な不利益を被らないようにするためには、通関と法律の両面を知り尽くしたアドバイザーが必要です。

当事務所の代表弁護士は通関士資格を有しており、数多くの事後調査において輸入者の立ち会いを行ってまいりました。

①調査前のシミュレーション:現状の申告体制の脆弱性を指摘し、是正をサポートします。

②調査当日の立ち会い:税関職員の質問に対し、法的に適切な範囲で回答を補佐し、現場の混乱を防ぎます。

③調査後の交渉と修正申告:指摘事項に対する反論書面の作成や、加算税の減免に向けた交渉を代理します。

 

8 おわりに

輸入事後調査の通知は、あくまで税関側の「配慮」による運用の一環であり、法的権利として保証されているものではありません。いつ、どのような形で調査が始まっても揺るがない体制を築いておくことこそが、真のコンプライアンス経営といえます。

「もし今、税関が来たらどうなるだろうか」と少しでも不安に感じられた方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。事後調査を恐れるのではなく、適切に受け入れ、乗り越えるためのパートナーとして貴社を支えます。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

 

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

 

 

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