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ワシントン条約に違反してしまった場合

2025-03-22

近年、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の重要性が高まる中、事業者が意図せずその規制に違反するケースが増えています。

違反が摘発された場合、事業者としては迅速かつ適切な対応を取ることが極めて重要です。本日は、弁護士の視点から取るべき具体的な対策をご説明します。

 

1 違反内容の確認

まず、摘発された違反行為の内容を正確に把握することが必要です。

どの貨物が規制対象であったか、輸出先の国との間で必要な手続き(許可証の取得など)が行われていなかった理由を明確にしましょう。

これには、輸出に関与した取引先や関係者全体からヒアリングをすることも含まれます。

 

2 直ちに行政機関に協力

違反が指摘された場合、担当する行政機関(たとえば税関や経産省等)の調査に全面的に協力することが重要です。

隠蔽や虚偽の報告は絶対に行ってはいけません。このような行為をしてしまうと、違反が悪質であると見なされ、ペナルティが重くなる可能性があります。事実を正直に開示し、必要に応じて担当弁護士を通じて正確な説明を行うことをお勧めします。

 

3 徹底した社内調査の実施

違反が発生した原因を究明するため、速やかに社内調査を行いましょう。

この際、輸出管理やコンプライアンス体制に不備がなかったか、CITESに関する知識や教育が十分だったかを確認します。このような調査は社内で行うこともありますが、外部の弁護士に依頼して調査することも十分考えられます。

また、調査結果を踏まえて再発防止策を策定します。

 

4 必要な手続の確認

CITES違反の多くは、許可の取得漏れや対象種の誤認が原因です。

取引している物品がCITESで規制される可能性がある場合、今後は必ず専門家や行政機関に確認し、必要な許可を取得してください。

 

5 再発防止策の徹底

違反後の対応として最も重要なのは、再発防止策を構築し、従業員全体に徹底することです。例えば、以下のような施策を導入することが考えられます:

①ワシントン条約に関する社員教育の実施

②規制対象貨物をチェックするためのシステム導入

③取引先との契約書にCITES遵守条項を追加すること

 

6 弁護士への相談

ワシントン条約違反は刑事責任や場合によっては民事責任を問われる可能性があるため、専門の弁護士に相談することが不可欠です。

不十分な知識で不適切な対応を行ってしまうと、傷口がどんどん大きくなり将来の事業にとって取り返しのつかない事態となる場合もあります。

 

7 意図しない違反をしてしまうことこそご注意ください

意図しない違反であっても、法的責任を免れることは難しい場合があります。

しかし、迅速な対応と誠意ある姿勢を示すことで、ペナルティを最小限に抑えられる可能性があります。

違反の発覚時には慌てず、まずは専門家に相談することをお勧めします。

法的対応や再発防止策についてお困りの場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。一緒に最善の解決策を見つけていきましょう。

ワシントン条約の概要と注意点

2025-03-17

絶滅のおそれのある動植物やその製品の取扱いについては「ワシントン条約(CITES)」を踏まえた規制が設けられております。

本日は、ワシントン条約の概要と注意点についてご説明いたします。

 

1 そもそもワシントン条約(CITES)とは?

ワシントン条約(正式名称:「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」)は、絶滅の危機に瀕した動植物およびその製品の国際取引を規制する国際条約です。

1973年に採択され、日本も1980年に加盟しています。

象牙、サイの角、ウミガメの甲羅、特定の希少な木材や植物、さらにはそれらを使用した製品(バッグ、家具など)が対象となります。

 

2 ワシントン条約における規制区分

ワシントン条約では、規制対象を3つの附属書(カテゴリー)に分類しています。

①附属書Ⅰ

絶滅の恐れが最も高い種。商業目的の輸出入は禁止されていますが、例外的に学術研究や保護目的の場合に限り許可されます。
例:アジアゾウ、オオサンショウウオ、アマゾンオウム

②附属書Ⅱ

絶滅のおそれはないものの、国際取引による影響が懸念される種。輸出入には許可が必要です。

例:マホガニー材、ナマコ、シャチ

③附属書Ⅲ

特定の国が保護を強化するために、国際的な協力を求めた種。輸出国政府の許可が必要です。
例:ある国が独自に保護対象とした植物や動物

 

3 ワシントン条約を踏まえた輸出時の注意点

貨物を輸出する際、次の点に注意しなければなりません。

①貨物が規制対象かどうかを確認する

貨物にワシントン条約の対象種や製品が含まれていないか確認しましょう。

対象かどうかは、環境省や税関が公開しているリストで確認できます。

ここでは、製品の一部に規制対象が使用されている場合も対象となりますので注意が必要です。
例えば、ワニ革を使ったバッグ、象牙の装飾品、希少木材を使用した家具などには注意が必要です。

②輸出許可の取得

規制対象の場合、輸出には事前の許可が必要です。

 

4 罰則について

違反した場合、取扱者には重い罰則が科されます。

例えば、無許可輸出については、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金等

 

5 よくある輸出時の落とし穴

知らずに対象となる原材料や部品が使用されている製品を輸出し、税関で没収される事例が増えています。

例えば、楽器に使われた希少木材や貝殻装飾品等

 

6 適切な輸出管理のために社内体制を強化しましょう

①社内の確認体制を強化する

ワシントン条約対象の製品・原材料リストを常に更新し、輸出前に複数名で確認する。

②専門機関や弁護士に相談する

対象品かどうか不明な場合や、許可証取得に不安がある場合は、専門家に相談することが重要です。

③通関業者との連携

税関申告時に通関業者と緊密に連携することも重要です。正確な情報のやり取りがここではポイントとなります。

 

7 ワシントン条約に関して不安な場合は弁護士にご相談を

ワシントン条約に基づく輸出規制は、絶滅危惧種や希少な動植物を保護するために非常に重要な制度です。

対象製品の輸出は事前の許可の取得が必須であり、違反した場合には重い罰則が科せられます。

事業者は輸出前の確認を徹底し、適正な手続きを行うことが必要ですが、なかなか上手く調整できない場合も多いと思います。

不安や疑問があれば、ワシントン条約に精通した弁護士等に相談し、法令違反のリスクを回避しましょう。

ロマンス詐欺の二次被害

2025-03-12

前回の記事では、ロマンス詐欺に遭い送金してしまった場合の対処法についてご説明しました。しかし、ここで注意しなければならないのがいわゆる「二次被害」です。

一度送金してしまうと、詐欺師はさらに金銭を騙し取るため、新たな口実をつけて繰り返し送金を要求してきます。

本日は、その「二次被害」の手口と対策についてご説明します。

 

1 二次被害の典型的な手口

ロマンス詐欺における二次被害とは、最初の送金後に別の理由で追加の金銭を要求されることを指します。詐欺師は、被害者に「あと少しで問題が解決する」と思わせ、さらに送金させるために巧妙なシナリオを用意します。

以下は代表的な例です。

①税関手続きの追加費用

「最初に送った手数料で解決するはずだったが、追加の書類や手続き費用が発生した」と言い、さらなる金銭を要求します。

②罰金やペナルティ

「荷物の中に高額な現金や貴重品が入っていたため、税関が罰金を課した」などと理由をつけて、金銭の支払いを迫ります。

③返金手続きを装った要求

「送金してくれたお金を返すために手続きが必要だ」、「返金のための保証金を先に支払ってほしい」といった言い方で、さらに送金を促します。

④トラブルの発生を装う

「送金した荷物が盗まれた」、「私が逮捕されそうだから助けてほしい」などと、緊急事態を装って被害者の焦りを誘います。

⑤弁護士や第三者を装った要求

詐欺師は別人を装い、「弁護士」や「税関職員」として登場し、「手続きを進めるには費用が必要だ」と言って信憑性を高めます。

 

2 二次被害を防ぐためにすべきこと

①「追加の送金」は絶対に応じない

どんな理由があっても、詐欺師の言葉を信じてはいけません。

「今度こそ解決する」「最後の支払いだ」という言葉には要注意です。

②一度送金した後は冷静に相談する

二次被害を防ぐためには、早い段階で専門家や警察、弁護士に相談することが大切です。一人で判断せず、第三者の冷静な意見を聞きましょう。

③新たな連絡には応じない

詐欺師は電話、メール、SNSなどで何度も連絡してきます。心を揺さぶられる前に、連絡手段をブロックし、関わりを断つことが重要です。

④被害の証拠を保管する

やり取りしたメール、送金履歴、SNSのメッセージなどは証拠として保管し、警察や弁護士に提出できるよう準備しておきましょう。

 

3 少しでも疑念があれば送金は控えてください

ロマンス詐欺の二次被害は、最初の送金後に詐欺師が被害者の心理につけ込み、何度も追加の送金を要求する極めて悪質な手口です。「今度こそ大丈夫」と思わせる巧妙な言葉に惑わされず、少しでも不審に感じたらすぐに関係を断ち、専門機関に相談することが重要です。

 

ロマンス詐欺の被害で送金してしまった場合

2025-03-07

前回の記事では「ロマンス詐欺」の代表的な手口である税関を騙る詐欺についてご紹介いたしました。
しかしながら、実際に送金してしまい、「どうすればいいかわからない」と悩まれている方も相当程度いらっしゃるのが現状です。
実際問題として一度送金してしまうと取り返すことは至難の業ですが、送金してしまった後の具体的な対応方法についてご説明いたします。

 

1 すぐに警察へ相談する

まず大前提として、詐欺被害に遭ったと気づいたら、速やかに最寄りの警察署へ相談してください。

①被害届の提出

被害の内容や経緯を詳しく伝え、被害届を提出します。
警察は事件として捜査を開始することがあり、詐欺グループの一端が明らかになることもあります。

②振り込め詐欺救済法の適用

特定の口座に送金した場合、「振り込め詐欺救済法」という法律の対象になることがあります。この制度は、詐欺グループが使用した口座の凍結後、被害者に返金する可能性を残すものです。警察が認定すれば、口座内の残額から被害額の一部が返金されることもあります。

 

2 銀行へ連絡し口座の停止を依頼する

送金先が国内の銀行口座であれば、できるだけ早く銀行に連絡を入れ、口座の停止措置や被害回復手続きを依頼しましょう。

ただし、送金後時間が経過していると、詐欺師がすでに引き出している可能性が高いため、一刻も早い対応が重要です。

 

3 海外送金の場合:送金業者等への連絡

もし国際送金をしてしまった場合は、送金先の情報とともに送金業者等へ至急連絡を入れましょう。

 

4 消費生活センターや専門機関への相談

詐欺の被害に遭われた方は、精神的にも大きなショックを受けている場合が多いです。

一人で抱え込まず、消費生活センターや法テラス、弁護士などの専門機関に相談してください。

なお、非常に残念なことではありますが、昨今、送金したお金を取り戻すことが非常に困難であるにもかかわらず、あたかもある程度のお金を取り戻すことができるかのように誤解させて着手金を得ようとする弁護士が存在しますので、弁護士にご相談いただく場合には、必ず複数の弁護士にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

 

5 冷静な行動を心がけましょう

ロマンス詐欺で送金してしまったとしても、迅速かつ適切な対応によって被害を抑えたり、回復の可能性を残すことができます。

具体的には、警察への通報、銀行への連絡、専門家への相談を通じて、冷静に行動することが大切です。

詐欺被害に遭ったことで自責の念を感じる方も多いですが、詐欺師が悪いのは明白です。一人で悩まず、まずは信頼できる専門家へご相談ください。

ロマンス詐欺にはご注意ください

2025-03-02

今回は、近年急増している「ロマンス詐欺」についてお話しします。

この詐欺は、特にインターネットやSNSを利用した交際関係を装う手口で、被害者の方が多額の金銭を騙し取られるケースが後を絶ちません。中でも「海外から大事な荷物を送ったが日本の税関で止められている」といった手口が典型例であり、本日はこの手口を中心にご説明致します。

 

1 詐欺の具体例:税関を装う手口

この詐欺の典型的な流れは以下のようなものです。

①SNSでの接触

詐欺師は、親切で魅力的な人物を装って接触してきます。

例えば「自分は海外でビジネスをしている」や「軍人として海外勤務中だ」というプロフィールが多いです。

②信頼関係の構築

数週間から数か月かけて、甘い言葉や親密な会話を通じて被害者の信頼を得ます。相手は結婚や将来の話題にまで触れることで、被害者に強い期待感を持たせます。

③荷物を送ったという嘘

ある日、詐欺師は「あなたに感謝の気持ちとして貴重なプレゼントを送った」と伝えます。さらに、荷物には現金や貴金属、その他高価な品物が入っていると説明します。

④税関で荷物が止められたという虚偽の連絡

しばらくして、詐欺師またはその共犯者が「荷物が日本の税関で止められた」、「多額の金や手数料を支払わなければ荷物が処理されない」といった嘘の連絡をしてきます。

そして、「荷物を受け取るために」と称して多額の金銭を送金するよう要求します。

 

2 税関が荷物の引き渡しと交換にお金を要求することはありません

ここで強調したいのは、日本の税関がこのような金銭を要求することは絶対にないという点です。

税関で輸入品に課される税金等は、通常、宅配業者や配送業者を通じて適切に請求されます。直接的に個人の口座に送金を求めることはまずありません。

また、税関が個人に直接連絡を取ることも非常に稀であり、正式な連絡は郵送や通関業者を介した方法で行われます。「税関」を名乗って金銭を要求された場合、その時点で詐欺を疑うべきです。

 

3 被害に遭わないためのポイント

このような詐欺から身を守るためには、以下の点に注意してください。

①オンラインの関係に注意

短期間で急に親密になろうとする相手や、多額の贈り物を約束する相手には警戒してください。

②お金を送らない

理由が何であれ、直接的な送金要求には応じないことが重要です。

③税関に直接確認する

税関に関する連絡内容に疑義がある場合、必ず税関の窓口に直接問い合わせて真偽を確認してください。

④専門家に相談する

被害に遭ってしまった場合は、速やかに警察や弁護士に相談してください。

 

4 ロマンス詐欺にはご注意を

ロマンス詐欺は、非常に巧妙な手口で被害者の心理を操り、多額の金銭を騙し取る悪質な犯罪です。

「税関で荷物が止められている」というシナリオが典型的な手口ですので、このような話を持ち掛けられたら即座に疑うべきです。

大切なのは、冷静に事実を確認し、決して相手のペースに乗らないことです。ご自身や大切な人を守るために、詐欺の手口を理解し、常に警戒心を持つことが何よりも重要です。

お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

輸入ビジネスと意匠権侵害

2025-02-25

輸入ビジネスでは、「意匠権(デザインの権利)」に対する認識不足から、知らずに法律違反に問われるケースが増えています。
意匠権は製品の形状やデザインを保護する権利であり、無断で輸入すると意匠権侵害とされ、貨物が差し止められることもあります。
本日は、輸入に関連する意匠権侵害の具体的な事例を3つ取り上げ、注意すべきポイントを解説いたします。

 

1 意匠権とは?

意匠権とは、物品のデザイン(形状、模様、色彩など)を保護する権利です。

特許庁に意匠登録されたデザインについては、意匠権者が独占的に使用することができます。

意匠権の侵害は、無断で類似したデザインの商品を製造・販売・輸入する行為を指します。輸入した商品が意匠権を侵害していると判断されれば、差し止めや損害賠償の対象となります。

 

2 意匠権侵害の事例

事例①:デザインが酷似した家具の輸入

Aさんは海外メーカーからおしゃれなデザインの椅子を輸入し、日本で販売しようとしました。しかし、その椅子のデザインは、日本国内で意匠登録されているブランドの製品に酷似していました。

輸入時に税関で差し止められ、Aさんは意匠権者から損害賠償を請求される事態となりました。

 

事例②:デザイン盗用のスマホケース

Bさんは海外で製造されたスマートフォンケースを輸入して販売しました。しかし、そのケースのデザインは、日本で登録された意匠権を持つ企業の製品とほぼ同じ形状でした。

Bさんは意匠権侵害を指摘され、販売停止とともに在庫の廃棄を余儀なくされました。

 

事例③:工業製品の部品デザイン

Cさんは海外から自動車部品を輸入しましたが、その部品のデザインが日本国内で意匠登録されているものでした。製品の機能には問題がないものの、デザイン部分が意匠権侵害と判断され、税関で輸入差し止めとなりました。

Cさんは意匠権者との交渉を余儀なくされ、ビジネスに大きな影響を受けました。

 

3 意匠権侵害を避けるための対策

輸入ビジネスで意匠権侵害を防ぐためには、以下のポイントに注意しましょう。

①デザインの事前調査を行う

輸入予定の商品デザインが、日本国内で意匠登録されていないかを確認しましょう。特許庁の「意匠検索システム(J-PlatPat)」を利用すれば無料で確認できます。

②仕入先や製造元の信頼性を確認する

海外の製造元が他者の意匠権を無視して製造している場合もあるため、意匠権の確認や正規品であるかを仕入先に確認しましょう。

③デザインの独自性を確保する

オリジナルのデザインを採用し、意匠権に抵触しないよう製品を設計・選定することが重要です。

④税関での輸入差し止めを意識する

日本の税関では、意匠権侵害品の輸入を厳しく監視しています。疑わしい商品は差し止められ、損害が発生する可能性があります。

⑤専門家のサポートを受ける

商品デザインが意匠権を侵害していないか不安な場合は、弁理士や弁護士といった専門家に相談し、適法性を確認することが確実です。

輸入ビジネスと著作権侵害

2025-02-20

輸入ビジネスを行う中で意図せず「著作権侵害」に該当してしまうケースが少なくありません。

著作権は音楽、映画、アニメ、書籍、デザインなど、幅広い創作物を保護する権利であり、無断で複製・販売・輸入することは違法行為とされます。

本実は著作権侵害の輸入に関する具体的な事例を3つ取り上げ、注意すべきポイントをご説明いたします。

 

1 著作権侵害とは?

著作権は、著作物(例:音楽、映像、デザイン、キャラクターなど)を創作した人に与えられる権利です。著作権者の許諾なく著作物を複製、頒布、輸入、販売することは著作権侵害に該当します。著作権は国際的な条約によって保護されており、海外で製造された商品でも日本国内で著作権を侵害する場合、輸入差し止めや賠償責任が生じます。

 

2 著作権侵害の事例

事例①:偽キャラクターグッズの輸入

Aさんは海外のオンラインサイトで人気アニメキャラクターが描かれたTシャツやキーホルダーを安価で仕入れました。しかし、それらの商品は著作権者の許諾を得ていない偽造品であることが税関検査で発覚しました。

Aさんは輸入差し止めを受け、さらに著作権者から賠償請求を受けることになりました。

 

事例②:海賊版DVD・CDの輸入

Bさんは海外で格安の映画DVDや音楽CDを仕入れ、日本で販売しようとしました。しかし、それらは正規の著作権者が許可していない「海賊版」であり、日本の税関で輸入差し止めとなりました。

Bさんは輸入した商品を没収された上、著作権法違反の責任を問われる事態となりました。

 

事例③:デザイン盗用の雑貨輸入

Cさんは海外の工場で、著名デザイナーの絵画やイラストを模倣した雑貨(バッグやポスター)を製造し輸入しました。しかし、そのデザインは著作権で保護されており、日本で販売することは侵害行為に該当しました。

Cさんは著作権者から法的措置を取られ、輸入した商品は廃棄、賠償金も請求される結果となりました。

 

3 著作権侵害を避けるための対策

著作権侵害を防ぐためには、以下のポイントを意識しましょう。

①商品に著作権が関わっていないか確認する

キャラクター、音楽、映画、デザインなど著作物に関連する商品は、必ず著作権者の許諾を確認する必要があります。

②製造元や仕入先の信頼性を確認する

海外の製造元や販売者が著作権を無視している可能性もあるため、ライセンスの有無や商品が正規品かどうかを確認しましょう。

③税関の検査を意識する

日本の税関は著作権侵害品の輸入を厳しく取り締まっています。偽造品や海賊版と判断されれば差し止めの対象となります。

④正規ライセンスを取得する

著作権者の許可を得てライセンス契約を結ぶことで、正規品として輸入・販売が可能になります。

⑤専門家に相談する

著作権に関するリスクがある商品を取り扱う場合、専門家に相談し、適法性を確認することが重要です。

 

4 著作権侵害にはご注意を

著作権は非常に広範な分野を対象とし、気づかないうちに侵害してしまうケースが少なくありません。

特にキャラクターグッズや映像・音楽メディア、デザイン雑貨などは著作権侵害が発生しやすい分野です。輸入ビジネスでは、必ず著作権の確認と対策を行いましょう。

輸入後に問題が発覚すれば、輸入差し止めや廃棄、賠償請求、さらには刑事罰に発展する可能性もあります。適切な調査と対策を通じて、安全にビジネスを展開していただければと思います。

輸入ビジネスと特許権侵害

2025-02-15

輸入ビジネスが拡大する中、特許権に対する認識不足から思わぬトラブルに巻き込まれるケースが増えています。特許権は発明を保護するための重要な権利であり、その侵害は「知らなかった」では済まされません。

本日は、特許権侵害に関する具体的な事例を3つご紹介しながら、輸入ビジネスで注意すべきポイントを解説します。

 

1 特許権とは?

特許権とは、新しい技術や発明を独占的に使用できる権利です。

権利者は、他者が特許を無断で製造、使用、販売、輸入することを禁じる力を持ちます。基本的に特許権は国ごとに設定されており、日本国内で登録された特許は、日本国内での無断使用を禁止します。

輸入ビジネスにおいて、特許権を侵害する商品を日本に持ち込むと、輸入差し止めや損害賠償の対象になるリスクがあります。

 

2 特許権侵害の事例

事例①:機械部品の輸入

Aさんは海外メーカーから最新の工業機械の部品を仕入れ、日本国内の企業に販売することを計画しました。しかし、その部品に使用されている技術は日本で特許登録されている企業の特許を侵害するものであることが判明しました。
輸入した貨物は税関で差し止められ、Aさんは特許権者から損害賠償を請求されることとなりました。

 

事例②:特許技術を用いた日用品

Bさんは海外で特許技術が用いられたキッチン用品を見つけ、その利便性から輸入販売を開始しました。しかし、そのキッチン用品の特許技術は、日本国内で他社が特許権を取得していました。
結果として、Bさんの販売行為は特許権侵害とされ、販売停止命令と損害賠償が求められました。

 

事例③:ソフトウェアの組み込まれた電子機器

Cさんは海外のメーカーから電子機器を輸入しましたが、その機器には特許技術を使用したソフトウェアが組み込まれていました。輸入後、特許権者から「特許権侵害」として警告を受け、Cさんは販売停止と共に多額の賠償金を支払うことになりました。

 

3 特許権侵害を避けるための対策

輸入ビジネスで特許権侵害を防ぐためには、以下のポイントを押さえましょう。

①製品の特許調査を行う
日本国内で関連する技術や商品が特許登録されていないか調査しましょう。特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用すると無料で確認できます。

②輸入予定の製品内容を詳しく確認する
製造元から特許関連の情報を入手し、特許技術が使用されている場合はライセンスの有無を確認しましょう。

③税関での輸入差し止めを意識する
日本の税関は、特許権侵害の疑いがある貨物を発見した場合、輸入差し止めの手続きを行います。貨物が止められた際の対処法や、特許権者との交渉の準備も考えておく必要があります。

④専門家に相談する
製品に特許技術が含まれるか不安な場合は、弁理士や弁護士など専門家に相談し、特許の確認を行いましょう。

 

4 特許権侵害には改めてご注意を

輸入ビジネスにおいて特許権侵害は、法的トラブルや大きな経済的損失を招く重大なリスクです。特許技術は日用品から工業製品、電子機器に至るまで多岐にわたり、気づかないうちに侵害してしまうケースが多くあります。

輸入前には必ず特許権の調査を行い、適切に対策を講じることが大切です。特許の確認や対策について不安な方は、ぜひ専門家のアドバイスを受け、安全にビジネスを進めてください。

輸入ビジネスと商標権侵害

2025-02-10

近年、海外から商品を輸入して販売するビジネスを行う方が増えております。

しかしながら、その中には意図せず法律違反に問われるケースが少なくありません。特に気をつけていただきたいのが「商標権の侵害」です。

本日は、商標権侵害の具体的な事例を3つご紹介しながら、皆様に注意していただきたいポイントを解説します。

 

1 商標権侵害とは?

商標権とは、特定の商品やサービスに使用される「名前」「ロゴ」「デザイン」などを保護する権利です。商標権は商標登録を行った権利者に独占的に認められ、その登録された範囲で無断使用を禁止する力を持ちます。

仮に、商標権者の許可なく、似た商標が付された商品を輸入・販売すると「商標権侵害」とされることがあります。

 

2 商標権侵害の事例

事例①:並行輸入品と偽物の誤認

Aさんは海外の現地市場で有名ブランドのバッグを安価に仕入れ、日本で販売することを計画しました。しかし、そのブランドのバッグには日本で別の会社が商標権を持っていることが判明しました。
結果的にAさんの輸入品は「正規品」とは言えず、商標権を侵害する商品として差し止められた上、損害賠償を請求されてしまいました。

 

事例②:OEM商品に含まれるロゴ

Bさんは海外工場でOEM(受託製造)を依頼し、無地の衣類を輸入しました。しかし、製造業者が意図せずブランドロゴを付けたまま製品を出荷してしまい、日本の税関で「商標権侵害」として止められました。
Bさんは出荷後に問題に気づいたものの、輸入時点で差し止められ、在庫の廃棄と経済的損失を余儀なくされました。

 

事例③:類似品の輸入

Cさんは海外メーカーの化粧品を輸入しようとしましたが、その商品名が日本国内で登録された有名ブランドの名前と酷似していました。
権利者から「類似商標」として警告を受け、Cさんは販売の中止と賠償に応じざるを得ませんでした。

 

3 商標権侵害のトラブルを避けるための対策

輸入ビジネスで商標権侵害を避けるためには、以下の点に気をつけましょう。

①事前調査を徹底する
輸入する商品の商標やブランド名が、日本で登録されていないかを確認しましょう。特許庁の「商標検索システム(J-PlatPat)」が役立ちます。

②製造元との契約内容を明確にする
OEM製品を製造する際には、ロゴやデザインの仕様に注意し、権利侵害がないかを明記した契約を結びましょう。

③税関でのチェックを意識する
日本の税関は輸入品の商標権侵害に厳しく対応しています。貨物が止められた場合の対処法も考えておくことが重要です。

 

4 改めて商標権侵害にはご注意を

商標権侵害は「うっかりでした」や「知らなかった」では済まされません。

権利侵害が認められた場合、差し止め、損害賠償、さらには刑事罰の対象となることもありえます。

海外からの商品輸入は大きなビジネスチャンスですが、商標権の確認を怠れば、経済的な損失や法的トラブルに発展するリスクがあります。

慎重な確認と専門家のアドバイスを受けることで、安全にビジネスを進めていただければと思います。

 

特許権侵害貨物の輸入にはご注意ください

2025-02-05

輸入ビジネスでは、特許権侵害のリスクを軽視することはできません。

特許権は、発明を保護する独占的権利であり、特許権を侵害する商品を輸入してしまうと、法的責任を問われる可能性があります。

そこで、本日は具体例を交えながら、特許権侵害のリスクと輸入業者が取るべき対策についてご説明します。

 

1 そもそも特許権とは何か

日本の特許法において、特許権は特許発明を独占的に実施する権利とされています(特許法第68条)。

特許発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、高度なものと定義されています(特許法第2条第3項)。特許法第101条では、「特許発明の実施を目的とした商品を輸入する行為」が特許権侵害に該当する行為として規定されています。

 

2 特許権侵害の具体例

例えば、ある輸入業者が海外で人気の高い医療機器を現地メーカーから仕入れ、日本国内で販売しようとしました。その医療機器は海外市場では広く流通しており、特許権の問題について特に注意が払われていませんでした。

しかし、日本国内では、その医療機器の技術が特定の企業によって特許権として登録されており、その輸入が「特許発明の実施」に該当する可能性が指摘されました。

 

3 特許権侵害による法的リスク

①差止請求のリスク
特許権者が特許法第100条に基づき差止請求を行う可能性があります。この請求が認められると、輸入した商品の販売や流通が禁止され、在庫を抱えた状態で商品が動かせなくなる恐れがあります。

②損害賠償請求のリスク
特許権者が損害賠償請求を行うリスクがあります。特許発明の実施により権利者が被った損害について、輸入業者が賠償責任を負うことが求められる場合があります。

③税関での差止め
特許権者が税関に申し立てを行い、輸入時点で商品が差し止められる可能性があります。これにより、商品が国内に持ち込まれる前に問題が発覚し、業務上の遅延や損失が発生する可能性があります。

 

4 特許権侵害を防ぐための対策

①丁寧な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で特許権を侵害していないか事前に調査することが重要です。特許庁が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用して特許権の登録状況を確認しましょう。

②仕入先への確認
海外の仕入先に対して特許権に関するライセンスの有無を確認し、必要に応じて契約書で輸入品の権利関係を明確にしておくことが推奨されます。

③弁護士への相談
特許法に詳しい弁護士に相談し、輸入予定の商品が特許権侵害に該当するかどうかを事前に確認することも重要です。

 

5 特許権侵害貨物の輸入にはくれぐれもご注意ください

特許権侵害は輸入ビジネスにおいて避けられない重大なリスクです。

海外で合法的に流通している商品であっても、日本国内では特許権の保護対象となる場合があります。輸入業者としては、法律を遵守しつつ、リスクを十分に評価し、安全なビジネス運営を目指すことが求められます。事前の調査と適切な対策を講じることで、特許権に関連するトラブルを未然に防ぐことが可能です。

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