Author Archive

税関事務管理人の選任について

2025-05-11

本日は、『税関事務管理人』についてご紹介いたします。

特に、海外企業が日本で商品を輸入・販売する際に直面する重要なポイントの一つですので、具体例を交えながらご紹介します。

 

1 税関事務管理人とは?

税関事務管理人とは、外国に所在する事業者が日本に貨物を輸入する際に、日本の税関に対して必要な手続きを行うために選任する日本国内の代理人のことを指します。

これは関税法に基づく制度であり、外国企業が日本に支店を持たずに直接貨物を輸入する場合、日本の税関とのやりとりをスムーズに進めるために必須の仕組みになります。

 

2 税関事務管理人の役割

税関事務管理人の主な役割は、以下のとおりです。

①輸入申告の代理

税関への輸入申告手続きを代理します。関税や消費税の納付手続に関する対応も含まれます。

②税関とのやりとり

税関からの問い合わせや追加書類の提出要求に対応します。輸入貨物が関税法や他の法律に適合しているかを確認する役割も担います。

③関税や消費税の納付代行

海外事業者に代わって関税や消費税を納付します。税関事務管理人が支払いを行い、後ほど海外事業者から費用を回収する(又はその逆)の流れとなります。

④輸入手続の支援

税関手続きを円滑に進め、貨物の輸入許可を取得するための手続面でのサポートを行います。

 

3 税関事務管理人が必要なケース

以下のような場合には、税関事務管理人の選任が必要となります。

①ケース1 アメリカのアパレルブランドが日本向けにEC販売を開始

アメリカに拠点を持つアパレルブランドが、アメリカの工場から日本に輸入して在庫をもち自社ECサイトを通じて日本の消費者に商品を販売していく場合、商品を日本に輸入するために日本において税関手続きを行う必要があります。

しかし、このアメリカのアパレルブランドは日本国内に法人がないため、税関事務管理人を通じて輸入申告を行い、関税・消費税の納付を代行してもらう必要があります。

②ケース2 中国の電子機器メーカーが日本の小売業者と直接取引

中国の電子機器メーカーが、中国から日本に商品を輸入した上で日本の家電量販店と直接取引を行うことを想定している場合、税関事務管理人の選任が求められます。メーカーが日本に法人を持っていない場合には、輸入に必要な税関手続きを管理人を通じて行うことが必要となります。

 

4 税関事務管理人を選任することをお忘れなく

税関事務管理人は、海外企業が日本へ商品を輸入する際には必要な存在であり、基本的には税関事務管理人を選任することなく日本に輸入することはできません。海外EC事業者やメーカーにとっては、日本市場での展開を成功させるために欠かせない存在ともいえます。

もし貴社が日本市場への進出を検討されている場合、税関事務管理人の選任は必須となります。適切な管理人を選び、スムーズな輸入通関を実現しましょう。

貨物を輸入する際のよくあるトラブル

2025-05-06

貨物を輸入する場合のよくあるトラブルですが、法律や規制、その他の理由により、予定通りに輸入できない場合があります。

この記事では、輸入が制限される具体的なケースをいくつか挙げ、それぞれ解説していくことにいたします。

 

1 輸入禁制品の場合

日本では法律によって輸入が禁止されている貨物があり、これには麻薬や銃火器、特定の動植物などが含まれます。

例えば、ある企業が海外から装飾用の植物を輸入しようとした際、その植物が外来種規制に該当し、輸入が禁止されていたケースがありました。

このような事態を避けるためには、

①貨物の輸入計画の段階で、商品が「関税法」「植物防疫法」「動物検疫法」などに抵触しないかを確認します。

②商品の輸入可否を事前に税関や専門機関に問い合わせることが重要です。

③万が一、輸入禁止品と判明した場合、契約内容を見直し、代替品への変更や契約解除を検討します。

 

2 書類不備による通関拒否

貨物を輸入する際には適切な書類の提出が求められますが、記載内容の不備や不足が原因で通関が拒否されることがあります。

例えば、輸入品の原産地証明書やインボイスに記載された情報が不完全だったため、輸入が遅延したケースはよくあります。

このような事態を避けるためには、

①必要な書類を輸入元と事前に確認し、不足がないよう準備します。

②書類不備が発覚した場合、速やかに正確な書類を輸入元から取得し、税関へ再提出します。

③書類作成時には、専門の通関士や弁護士等の専門家のアドバイスを受けることでミスを防ぎます。

 

3 貨物の損傷や品質問題

輸送中に貨物が損傷したり、輸入後に品質が基準に達していないことが発覚する場合があります。例えば、海外から輸入した食品が保存条件の不備により劣化していたケースが挙げられます。

このような事態を避けるためには

①輸送契約時に、保険を付保し、万が一の損害に備えます。

②商品到着時には、貨物の状態を確認し、損傷や問題があれば輸入元と交渉を行います。

③問題が解決しない場合、契約違反として損害賠償請求を検討します。

 

4 規制変更や制裁措置による輸入制限

国際情勢や規制の変更により、特定の国や地域からの輸入が禁止または制限されることがあります。例えば、ある国が経済制裁を受けたため、その国からの製品が輸入できなくなったケースがありました。

このような事態を避けるためには、

①国際情勢や貿易政策の動向を定期的に把握することが重要です。

②制裁対象となった場合は、第三国を経由した輸入や代替製品の検討を行います。

③規制変更に関する法律問題については、弁護士に相談することで適切な対応策を講じられます。

 

5 貨物を輸入する際には事前準備を丁寧に行いましょう

貨物輸入における問題は多岐にわたり、それぞれに応じた迅速かつ適切な対応が求められます。事前の調査や準備を徹底することが最善の予防策ですが、問題が発生した場合には、法律や契約の観点から対応策を検討する必要があります。

不測の事態に備えるためにも、少しでも不安な点がある場合には、通関士や弁護士等の専門家に事前に相談することをお勧めします。

輸入品の医療機器該当性の判断

2025-05-01

医療機器の輸入を検討する際、まず製品が薬機法に基づく「医療機器」に該当するかを正確に判断することが重要です。

この判断を誤ると、規制違反として厳しい行政指導や罰則を受ける可能性があります。

本記事では、医療機器への該当性を判断する際の具体的な注意点を、実例を交えて解説します。

 

1 使用目的の確認

製品が医療機器に該当するか否かは、使用目的が重要な判断基準となります。

薬機法では、「疾病の診断、治療、予防」または「身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする製品」が医療機器として扱われます。

例えば、スポーツジムで使用するある機器を輸入する場合、単なるリラクゼーション目的であれば医療機器に該当しない可能性があります。

しかし、「腰痛の治療」や「血行促進」などの治療効果を明示した場合は、医療機器と見なされる可能性が高いです。このため、製品カタログや説明書に記載されている使用目的を慎重に確認する必要があります。

 

2 類似製品の規制状況を調査

同じ機能を持つ製品が国内で医療機器として扱われている場合、該当製品も医療機器に該当する可能性が高まります。

例えば、「スマートウォッチ」のようなウェアラブルデバイスで、心拍数や血圧を測定する機能を備えた製品が医療機器に該当するケースがあります。

同様の機能を持つ製品が国内で医療機器として登録されている場合、その製品も同様に扱われる可能性があるため、類似製品の薬機法上の位置づけを調査することが重要です。

 

3 効能効果の表示内容について

輸入時の広告やパッケージデザインに記載される効能効果の内容が、医療機器に該当するかどうかの判断に影響を与えます。

特に、「治療」「予防」といった医療行為を連想させる表現は慎重に扱う必要があります。

例えば、特定の症状に効果があるとされる「空気清浄機」を輸入する場合、「アレルギー症状を軽減する」といった表現は医療機器に該当する可能性を高めます。一方、「空気をきれいに保つ」といった表現であれば、医療機器としての該当性は低くなることがあります。この違いに留意し、広告やラベルに使用される文言を慎重に選定しましょう。

 

4 事前の調査、検討が非常に重要です

医療機器への該当性判断は、薬機法の専門知識を必要とし、ケースによっては複雑な判断を求められます。

不明点がある場合は専門家に相談し、厚生労働省等の行政機関への問合せを含む適切な指導を受けることでリスクを最小限に抑えることが可能です。輸入を検討する際には、慎重な調査と準備を行うことを強くお勧めします。

医療機器を輸入する場合の注意点

2025-04-26

医療機器を輸入する際には、一般的な貨物輸入とは異なる規制が適用される可能性があります。

そのため、医療機器の輸入を計画する際には、まず対象となる貨物が医療機器に該当するかどうかを明確に判断することが重要です。

本日は、医療機器に該当する場合の規制内容と該当性判断のポイントについて解説します。

 

1 医療機器該当性について

日本国内では、医療機器の定義はいわゆる薬機法及び関連法令、通達に基づいて定められています。

具体的には、以下のような特徴を持つ製品が医療機器に該当します。

①人または動物の疾病の診断、治療、または予防に使用されることを目的としたもの

②身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的としたもの

③厚生労働省が定める基準に適合するもの

例えば、診断装置、手術器具、心臓ペースメーカー、コンタクトレンズなどが該当します。一方で、健康増進や美容を目的とする製品であっても、効能効果が明確に謳われている場合は、医療機器に該当する可能性があります。

そのため、輸入計画の段階で製品の使用目的や宣伝内容を慎重に確認する必要があります。

 

2 医療機器に該当する場合の規制

医療機器に該当すると判断された場合、輸入に際して以下の規制が適用されます:

①医療機器製造販売業許可の取得

医療機器を輸入するには、厚生労働省の認可を受けた「医療機器製造販売業許可」を取得する必要があります。これは、輸入業者が医療機器の品質と安全性を適切に管理する能力を持つことを示すものです。

②外国製造業者認定

製造元が海外にある場合、その製造業者が「外国製造業者認定」を取得していることが求められます。この認定により、製造業者の品質管理体制が確認されます。

③輸入届出と承認申請

輸入する製品ごとに、規制当局への届出や承認申請が必要です。

製品のリスク分類(クラスⅠ~Ⅳ)に応じて、必要な手続きや審査の厳しさが異なります。

④法定表示とラベルの要件

医療機器として販売するためには、薬機法に基づく適切な表示(名称、効能効果、使用上の注意など)が必要です。

 

3 医療機器への該当性を判断する際の注意点

医療機器に該当するか否かの判断は、輸入者が自ら行うのではなく、専門家や規制当局と連携して進めることが望ましいです。具体的には、以下の点に注意することが重要です。

①使用目的の確認

製品の説明書や仕様書に記載された使用目的が医療機器の定義に該当するかどうかを確認します。

②類似製品の規制状況

国内で同様の製品が医療機器として扱われているか調査します。

③厚生労働省や第三者機関への相談

曖昧な場合には、厚生労働省や第三者機関に問い合わせることで明確な判断を得ることが可能です。

輸入手続きにおける様々なトラブルにはご注意を

2025-04-21

輸入手続に関する業務は、複雑な通関手続や法規制の遵守が求められるため、トラブルが発生しやすい分野です。

貨物の輸入手続の遅延や差し止め、課税価格の計算のミス、輸入が禁止された品の混入など、どのようなケースであっても適切に対応することで被害を最小限に抑えることが可能です。

本記事では、輸入手続に関連する主なトラブルの具体例を交えつつ、対応方法についてご紹介していきます。

 

1 輸入手続における主なトラブルの例

輸入手続でよく見られるトラブルには、以下のようなものがあります。

(1)輸入通関手続が遅延する

輸入申告書の記載ミスや必要書類の不備、税関による検査対象となった場合、貨物の輸入通関が大幅に遅れることがあります。

この遅延は、取引先との信用問題や追加の保管費用の発生など、事業運営に大きな影響を与える可能性があります。

(2)関税の過大請求や不足納付が発覚する

輸入品のHSコードの誤りや特恵関税の適用漏れが原因で、関税を過大に支払ったり、不足納付が追徴されるケースがあります。

不足納付の場合、追徴課税やペナルティが課される可能性があり、迅速な対応が求められます。

(3)輸入禁制品の混入

知らない間に規制対象の商品や輸入禁止品が混入していた場合、税関で貨物が差し止められるだけでなく、場合によっては刑事責任を問われることもあります。

 

2 弁護士に相談することで得られるメリット

輸入手続でトラブルが発生した場合、弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。

(1)法的なアドバイスを受けられる

税関手続や関税法、輸入規制など、専門的な知識が必要な問題について、適切な法的アドバイスを受けることができます。

これにより、手続きの修正や適切な対応が可能となります。

(2)交渉力の強化

取引先との交渉では、法律の専門家である弁護士が関与することで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。

また、税関や通関業者とのやり取りの中で専門用語が多数使用されて困っている場合には弁護士が一緒に対応することで適切なやり取りを行うことができます。

(3) トラブルの迅速な解決

弁護士に依頼することで、トラブルの解決に向けた最善の方針を迅速に立案できます。

これにより、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。

(4) リスクの軽減

弁護士はトラブル対応だけでなく、将来のリスクを予防するための提案も行います。

契約書の作成や税関対応のチェック体制の構築など、長期的なリスク管理が可能です。

 

3 輸入手続においてトラブルが発生した場合には弁護士にご相談ください

輸入業務でトラブルが発生した場合、弁護士に相談することは迅速かつ適切な解決への第一歩です。税関対応や契約問題、さらには将来のリスク管理まで幅広くサポートを受けられるため、事業の安定運営に大きく貢献します。

トラブルが発生した際には、一人で抱え込まず、ぜひ輸入や輸出に関する手続等に詳しい弁護士にご相談ください。適切なサポートを得ることで、輸入業務における課題を乗り越え、ビジネスの成長を実現しましょう。

HSコードの間違いを発見した場合

2025-04-16

輸入事業者にとって、輸入貨物に正しいHSコードを付与することは、通関手続を適正に行う上で不可欠の要素となります。

しかしながら、ミスはつきものであり、時として誤ったHSコードを使用してしまうケースも少なくありません。

この記事では、万が一輸入申告時のHSコードが間違っていたことが判明した場合に取るべき対応について、ご説明いたします。

 

1 HSコードの重要性について

HSコード(Harmonized System Code)は、貨物の種類や特性を示す国際的な分類コードです。

各種の輸入規制や関税率等に大きな影響を与えます。

そして、誤ったHSコードを申告すると、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

①関税の過大・過小納付

特に過小納付は追徴課税等のペナルティの対象となる可能性があります。

②貨物の差し止め

申告する貨物の内容と実際の貨物の内容が異なることになりますので、検査等で密輸の疑いがもたれるほか、貨物の輸入が差し止められることがあります。

 

2 HSコードが間違っていた場合の具体的な対応手順

HSコードの誤りが発覚した場合、速やかに以下の手順を実行することをお勧めします。

(1) 誤りの原因の特定

まず、どの時点で、どのような理由で誤ったHSコードが使用されたのかを明確にしましょう。誤りが発生した原因を特定することで、再発防止策も検討できます。

(2) 修正修正(又は更正の請求)

誤りが発覚した場合は、速やかに税関に対して申告内容の修正手続を行います。

例えば、修正申告の際には、以下の情報を準備する必要があります。

①修正が必要な貨物の詳細

②本来適用されるべきHSコード

③関連する書類(インボイス、船荷証券など)

④修正申告書

(3) 追加納税・還付申請

HSコードの訂正により関税額が増加する場合は、速やかに追加納税を行います。

他方で、過大納付が判明した場合は、還付申請を行うことが可能です。

還付申請には、税関が求める証拠書類の提出が必要となるため、日常的に関連書類の整理を怠らないようにしましょう。

(4) 専門家への相談

HSコードの解釈や適用に不明点がある場合は、通関業者や、輸入トラブルに詳しい弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

適切な指導を受けることで、複雑なケースにも正確に対応でき、安心して輸入事業を継続することができます。

 

3 予防策としての体制整備

誤ったHSコード使用を防ぐためには、輸入事業者としての社内体制の整備が重要です。

具体的には、以下の取り組みが有効です。

①最新のHSコードの確認

税関やWCO(世界税関機構)等の情報を随時チェックし、最新のHSコードに基づいた手続きが行えるようにする。

②社内研修の実施

社員がHSコードの重要性を理解し、適切に対応できるスキルを身につける。

③専門家との連携

定期的に専門家のアドバイスを受け、コンプライアンス体制を強化する。

 

4 輸入手続で不明点がある場合には、まずは専門家にご相談ください

輸入申告時に誤ったHSコードを使用してしまった場合でも、速やかに適切な対応を取ることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

修正申告等の対応は慎重かつ迅速に行い、場合によっては専門家の助けを借りることを検討してください。また、再発防止策として社内体制を整えることで、長期的なリスク軽減を図ることができます。

輸入手続について不明点がある場合や法的なアドバイスが必要な際は、ぜひ輸入や輸出に詳しい弁護士等の専門家にご相談ください。

輸入申告価格の間違いに気づいた場合

2025-04-11

輸入事業者の皆様は日常的に多数の貨物を輸入しておりますので、HSコードが正確かどうか、また輸入申告価格が適切であったかどうかについては日常的に注意を払われているものと思います。

ただ、どれほど注意をしていてもミスはつきものであり、輸入申告価格に誤りがあった場合には、迅速かつ適切に対応することが必要です。不適切な申告価格が税関により指摘された場合、ペナルティや追徴課税が発生する可能性があるからです。

また、輸入業務全体の信頼性にも影響を及ぼすため、慎重な対応が求められます。

本記事では、主に「修正申告」と「更正の請求」という2つの方法を中心に、申告価格の間違いへの対応について解説いたします。

 

1 修正申告について

修正申告とは、申告価格が実際に申告すべき価格よりも低額であった場合において、輸入者が自ら申告価格の誤りを発見した上で、税関にその誤りを申告し、正しい価格を基に再計算した税額を納付する手続きです。

この方法は、税関による指摘を受ける前に自主的に行うことが可能です。

修正申告を行う際の主な流れは以下の通りです。

①誤りの確認

申告価格に誤りがあることを確認し、具体的な修正内容を把握します。この段階では、インボイスや契約書などの関連資料を改めて精査することが重要です。

②税関への申告

修正内容を税関に申告します。税関の専用フォーム等を利用し、正しい申告価格および修正後の税額を記載します。

③不足税額の納付

修正申告に基づき、納付すべき不足税額を支払います。速やかな納付により、ペナルティが課されることを回避することが期待できます。

 

2 更正の請求について

更正の請求は、申告価格を過大に申告した結果、過剰な税金を納付してしまった場合に、税関に対して過払い分の返還を求める手続きです。

この方法は、以下の手順で進めます。

①申告の見直し

当初申告した価格が実際よりも高額であったことを確認します。修正申告と同様に、インボイスや契約書などの証拠資料を基に誤りを明確にします。

②請求書類の提出

更正の請求を行うためには、税関の指定する書類を提出します。ここでは、過大申告の根拠および返還を求める税額を明記する必要があります。

③税関とのやり取り

税関が請求内容を確認し、適切であると判断した場合、過剰に納付した税額相当額が返還されます。このプロセスには一定の期間がかかることがあるため、余裕を持った手続きを心がけましょう。

 

3 各手続の注意点

いずれの手続きにおいても、正確な証拠資料の提出が重要です。

輸入に関わる書類の保管や記録は、適切な対応のための出発点となります。また、複雑なケースでは、通関業者や弁護士といった専門家のサポートを受けることを検討すると良いでしょう。

修正申告や更正の請求を迅速かつ適切に行うことは、輸入事業者の法的リスクを低減し、適正な税務処理を実現するポイントとなります。

輸入申告価格の内容を含めて輸入手続に不明点がある場合は、まずは専門家に相談することをおすすめします。

 

 

カスタマーハラスメント防止条例について

2025-04-06

東京都が推進する「カスタマーハラスメント防止条例」は、従業員を保護し、企業の健全な業務運営を支えるために策定された重要な取り組みです。

現代の職場環境において、顧客や取引先からの過剰な要求や暴言、脅迫的な言動は深刻な問題となっています。従業員がこうしたカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」といいます。)を受け続ければ、精神的・肉体的な負担が重くなり、結果として業務への支障や離職、メンタルヘルス問題の悪化を引き起こしますので、企業としては注意が必要です。

 

1 条例の意義:従業員保護と企業の責務

まず、この条例の最大の意義は「従業員の保護」です。

これまで多くの現場では、顧客の要求が正当か不当かを明確に区別せず、従業員が耐え忍ぶことで場を収めるケースが少なくありませんでした。「顧客第一主義」の価値観が浸透していることも、問題の根深さにつながっています。しかし、この条例は「従業員も守られるべき存在である」という当たり前の価値観を明確に打ち出しています。

 

2 企業の責務

さらに、条例では企業側に対して以下のような義務が求められています:

①相談窓口の設置

被害を受けた従業員が相談しやすい窓口を整えること。

②内部対応マニュアルの整備

カスハラの定義や対応フローを明確にし、従業員が毅然とした対応を取れるよう教育すること。

③企業全体の意識改革

管理職や従業員教育を通じて、カスハラを許さない企業文化を浸透させること。

 

企業がこれらの対策を講じることによって、従業員の安心・安全を確保するだけでなく、企業自体が社会的信頼を高める効果も期待できます。

 

3 条例の実効性を高めることが今後の日本社会で求められています

条例の実効性を高めるためには、企業、行政、そして社会全体が連携することが不可欠です。

東京都が推進する条例は、あくまで「第一歩」に過ぎません。

具体的な事例の蓄積や、企業間での情報共有、弁護士や警察との連携強化が今後の課題となるでしょう。

例えば、悪質なカスハラに対しては法的措置を厭わない姿勢を示すことで、従業員を守ると同時に企業ブランドを守ることができます。また、行政が企業向けに対策ガイドラインや成功事例を提供することで、取り組みの実効性がさらに高まるでしょう。

東京都のカスタマーハラスメント防止条例は、従業員の権利を守り、企業と顧客の健全な関係を築くための重要な取り組みです。今後、企業や行政、そして社会全体が一体となってこの問題に取り組むことが求められています。

 

カスハラへの具体的な対応

2025-04-01

カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます)問題は、今や社会問題の一つとなっており、その対応は企業にとって急務となっております。

2025年4月1日には、東京都のカスハラ防止条例が施行されますので、企業としてはカスハラ問題に迅速に対応することが求められており、具体的には。以下のポイントを押さえることが重要です。

 

1 カスハラの定義を企業として明確化する

カスタマーハラスメントの判断基準が曖昧だと、現場での対応が混乱しがちです。

そのため、企業はカスハラ対策の出発点として「正当なクレーム」と「不当な言動」の線引きを明確にする必要があります。

例えば、暴言や威圧的な態度、誹謗中傷などを具体的に示し、社内に周知することで従業員も安心して、かつ自信をもって対応できるようになります。

ここを不透明にしてしまうと、現場によっては問題を表面化させることを防ぐため、直接顧客に対応する従業員に全てを押し付けてしまうといった事態にもなりかねませんので注意が必要です。

 

2 相談窓口の設置と報告体制

従業員がカスハラ被害に遭った際、すぐに相談できる窓口がなければ問題が放置されてしまいますし、問題が顕在化することもありません。

企業は専用の相談窓口を設置し、報告から対応までのフローを整備することが求められます。さらに、現場の管理職にも「カスハラ事案への適切な初期対応」を教育することが重要です。

 

3 法的対応の準備

SNSやインターネットでの個人に対する誹謗中傷は、従業員の名誉や企業ブランドを大きく傷つけます。

万一このような被害が発生した場合には、弁護士等の専門家と連携し、発信者情報の開示請求や損害賠償請求を検討することが重要です。

また、悪質な脅迫行為があった場合は、警察への通報も視野に入れた対応が必要です。

 

4 顧客への啓発活動

企業は顧客にも「過剰な要求や暴言はハラスメント行為にあたる」という理解を促す活動を行うべきです。

ポスターや自社のウェブサイトで啓発するほか、サービスの場面でも「従業員を守る姿勢」を示すことで、カスハラの抑止につながります。

正当なクレームはきちんと受けてビジネスの改善につなげる必要がありますが、不当なクレームには毅然とした対応をする必要があります。

企業がカスハラ問題に真摯に向き合うことは、従業員の安心・安全を守るだけでなく、企業の信頼とブランド価値を守ることにもつながります。

カスハラへの対応について

2025-03-27

近年、企業や行政の間で「カスタマーハラスメント」、通称「カスハラ」が大きな問題となっています。

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先からの不当・過剰な要求や暴言、脅迫的言動のことを指し、働く従業員に対して精神的・肉体的負担を与える行為です。

東京都では、2025年4月1日からカスタマーハラスメント防止条例が施行され、その他の自治体でも同様の条例が制定される風潮となっております。

事業者にとって顧客は非常に重要な存在ではありますが、だからといってカスハラを放置することは事業にとって大きな悪影響となりますので、対策は急務といえます。

 

1 代表的なカスハラ

例えば、以下のような行為が代表的なカスハラとされます。

①長時間のクレーム対応や不当な罵声

②従業員の人格を否定する発言や誹謗中傷

③SNSやネット掲示板への事実無根の書き込み

④脅迫的言動や威圧的態度

このような行為が横行する背景には、「顧客は絶対である」という価値観が根強く残っている点がよく指摘されています。

しかしながら、企業に働く従業員にも当然ながら守られるべき権利があります。

過度な要求や罵声を受け続ければ、従業員のメンタルヘルスは悪化し、職場環境も不安定になり、事業に大きな悪影響を及ぼしかねません。

そもそも、顧客もどこかでは従業員となっていることも多いわけですので、このような行為は、顧客が自分自身の職場環境を悪化させているのと等しい行為とすら考えられます。

 

2 東京都の対応

東京都は、このようなカスハラに関する問題に対して積極的な姿勢を示し、企業に対してカスタマーハラスメント対策の強化を求める条例やガイドラインを策定しています。

例えば、以下の具体的な取り組みがあげられます。

①相談窓口の設置

被害を受けた従業員が迅速に相談できる体制づくり。

②社内マニュアルの整備

正当な苦情とカスハラを区別し、適切な対応フローを確立する。

③従業員教育・研修

毅然とした対応ができるよう、具体的なケーススタディを通じた教育。

このように、東京都の取り組みは、従業員を守りつつ、企業全体として適切な対応を促すものです。さらに、カスハラを社会的な問題として取り上げることで、「顧客と企業の健全な関係性の再構築」を目指しています。

今後、企業は東京都の条例に基づいて従業員を保護する体制を強化することが求められます。同時に、顧客側にも「過剰な要求はハラスメントになる」という意識を広げることが、非常に重要であり、カスハラを減らす第一歩と言えるでしょう。

« Older Entries Newer Entries »

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー