Author Archive

輸入事後調査の現状

2025-01-06

本日は、輸入事業者の皆様にとって無視できない『輸入事後調査』についてご説明します。

この調査は、輸入事業者にとって避けて通れないものであり、正しく対応しなければ思わぬペナルティを受けるリスクがあります。以下では、輸入事後調査の概要、よくある指摘事項、また、適切な対応方法についてご説明いたしますので、ご参考となれば幸いです。

 

1 輸入事後調査とは?

輸入事後調査とは、輸入許可後に税関が輸入事業者の取引内容や書類を調査し、輸入申告内容が正確で適切であるかを確認する制度です。主に以下の目的があります。

①関税・消費税の適正な納付確認
輸入申告で申告した課税価格を踏まえて、納付した関税額や消費税額が正確かをチェックします。

②適法な輸入手続きの確保
禁制品や規制対象品が適切に取り扱われているかを確認します。

通常、税関は過去5年以内の輸入取引を対象に調査を行い、不適切な申告が見つかった場合には追加課税やペナルティが科されることがあります。

 

2 よくある指摘事項

輸入税関事後調査では、以下のような点がよく問題とされます。

①課税価格の過少申告
輸入品の価格を意図的または誤って低く申告し、関税や消費税を少なく納めるケースです。

たとえば、運賃や保険料を含めない形で価格を申告している場合や加算要素を適切に加算できていない場合には、課税価格が過少となる可能性があります。

②税率の誤適用
関税分類(HSコード)の誤りによる税率の適用ミスが挙げられます。

例えば、食品と工業用化学品で異なる税率が適用される場合、分類ミスが追加納税の原因となります。

③規制品の適正な取り扱い
輸入品が規制対象である場合、必要な許可や証明書を取得していないと指摘されることがあります。

⑤書類の保存不備
輸入事業者は、輸入取引に関する書類を5年間は保存する義務があります。保存が不十分だと、調査で適正な保存をするように指導される可能性があります。

 

3 税関事後調査への適切な対応

税関事後調査は、突然の通知で輸入事業者にとって大きな負担になることがあります。

しかし、適切に対応すれば負担やリスクを最小限に抑えることが可能です。

税関事後調査は法律的・技術的な知識が必要な場面が多くあります。関税法や輸入手続きに精通した弁護士や税関コンサルタントに相談することで、リスクを軽減できます。

改めてになりますが、輸入事後調査は、輸入事業者にとって避けられないプロセスですが、適切に準備し対応することでリスクを最小限に抑えることができます。不安や疑問を抱えたままでは、事業運営に支障をきたす可能性がありますので、ぜひ専門家にご相談ください。

輸入事業を安心して継続するためのサポートを全力で提供いたします。

お困りの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

該非判定は慎重に行いましょう

2025-01-01

外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」といいます)は、国際的な平和と安全を維持するための重要な法律です。

特に、日本から貨物を輸出するに際しては、輸出する貨物が戦略物資や軍事転用可能な技術に該当しないかどうか等を適切に判断(いわゆる、該非判定)する必要があります。しかしながら、この該非判定を軽視し、誤った輸出行為を行った場合、単なる法的リスクだけでなく、昨今話題となっている経済安全保障の観点からも深刻な影響を及ぼします。

そこで本日は、外為法の規定の順守を疎かにすることのリスクについて、概要とはなりますがご説明いたします。

 

1 該非判定を怠る場合の様々なリスク

該非判定を適切に行わずに輸出を行う場合、以下のようなリスクが発生します。

(1) 法的リスク

外為法違反に該当すると、例えば、以下の厳しい罰則が科される可能性があります。

①刑事罰

外為法第70条では、無許可輸出が判明した場合、最高で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は5億円以下)が科されます。

②行政処分

経済産業省から事業停止命令や輸出許可の取り消しを受けるリスクがあります。

(2) 経済的リスク

罰金や事業停止による直接的な経済的損失だけでなく、取引先からの信頼を失い、契約の破棄や市場からの排除といった二次的な損害も生じます。

(3) 国際社会での信用失墜

外為法違反が国際的に報じられると、日本全体の信頼を損ねる可能性があります。

特に輸出先国が敏感な技術や資材を輸入した場合、外交問題に発展する危険性すら存在することは改めて強調しておきます。

 

2 経済安全保障の観点からのリスク

経済安全保障は、近年注目を集めている分野です。

特に以下の点で、該非判定を怠る行為は日本の安全保障に直結する問題となります。

(1) 軍事転用のリスク

一見無害に見える技術や部品が、軍事目的で使用されるケースがあります。

たとえば、半導体や高精度機械は、ミサイルや監視技術の開発に利用される可能性があります。

(2) テロリストや制裁対象国への流出

該非判定を怠ると、意図せずにテロリストや国際的な制裁対象国に戦略物資を供与する結果を招きかねません。これにより、国際的な制裁や報復措置を受けるリスクがあります。

 

3 該非判定を怠らないための対策

輸出者としては、以下の対策を徹底することが求められます。

①適切な該非判定

対象物品や技術が輸出貿易管理令に定められた「リスト規制」に該当するかを確認し、必要に応じて専門家や弁護士の助言を受けること。

②社内コンプライアンス体制の整備

社内で輸出管理の専門部署を設け、該非判定を二重・三重にチェックする体制を整えること。

③定期的な教育と研修

社員に外為法の重要性を理解させ、違反行為を未然に防ぐための教育を徹底すること。

 

4 外為法のルールは非常に難しく、専門家も交えた体制作りが重要です

外為法に基づく該非判定を軽視する行為は、単なる法律違反にとどまらず、経済安全保障や国際的な信頼に深刻な影響を及ぼします。

輸出者は「知らなかった」「確認不足だった」という言い訳が通用しないことを認識し、法令遵守を最優先に行動すべきです。

万が一、該非判定に関する疑問や不安がある場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。違法行為を未然に防ぎ、健全なビジネス活動を維持するために、法令の遵守を徹底していきましょう。

若者が巻き込まれる密輸の現状

2024-12-27

近年、大学生などの若者が『簡単に稼げる副業』として禁制品や金地金の密輸入に関わるケースが増加しています。

特にSNSやインターネットを通じて、「海外旅行のついでに荷物を運ぶだけ」、「観光の帰りに簡単な副業」、「実質無料で観光に行こう」等の甘い言葉で勧誘されることが多いようです。しかしながら、このような行動がもたらすリスクは非常に深刻であり、一度関与すると人生を大きく狂わせる可能性があります。

本日は、その危険性について説明します。

 

1 若者が巻き込まれる現状

警察庁の2022年の統計情報によると、日本における薬物密輸関連の検挙者数は前年より約15%増加しており、そのうち20代以下の若者が占める割合は約30%と報告されています。こうした背景には、SNSや求人アプリを通じて「割の良いバイト」として勧誘されることが挙げられます。

この傾向は2024年の現在でも同様であり、犯罪組織にとっては、社会経験の浅い若者は「リスクを理解していない」、「違法性に鈍感」等と見られるため、非常に利用しやすく、問題が発覚した場合には簡単に見捨てることができる使い勝手のよい存在です。

 

2 密輸は人生を狂わせるので、絶対に行ってはいけません

日本の法律では、禁制品の密輸は極めて重い罪です。

たとえば、麻薬取締法や関税法に基づく罰則では、以下のような処罰が規定されています。

①麻薬取締法違反:最高で無期懲役、または10年以上の懲役に加え、数千万円規模の罰金が科されることがあります。

②関税法違反:密輸入を目的とした行為は、5年以上の懲役または罰金が科されます。

 

最終的な処罰の前には逮捕、勾留、刑事裁判と続き、経済的負担や社会的信用の喪失を招きます。

 

3 実際に起こりうるリスク

(1) 刑罰とその影響

先述の通り、禁制品や金地金の密輸に関与した場合、極めて厳しい刑罰が科されます。

一度有罪判決を受けると前科がつき、就職や進学といったその後の人生にも大きな悪影響を及ぼします。

(2) 知らずに「運び屋」にされる可能性

「ただ荷物を預かっただけ」といった場合でも、禁制品や金地金が入っていれば違法行為とみなされます。

「知らなかった」という弁解は通用しないことがほとんどであるとお考えください。

 

4 誘惑に負けないために

若者が犯罪に巻き込まれないためには、以下のポイントに注意することが重要です。

①安易な勧誘に乗らない:特に「高額報酬」「簡単」といった文言には注意を払いましょう。

②荷物を預かる際のリスクを認識する:他人の荷物を運ぶ場合、その内容物に責任が伴うことを自覚しましょう。

③法律知識を身につける:日本の厳しい法律について正確に理解しておくことで、違法行為を未然に防ぐことができます。

 

5 専門家に相談することもご検討ください

禁制品の密輸は決して「簡単な副業」ではなく、人生を台無しにするほどのリスクを伴う犯罪です。

もしも自分自身やご家族が誘いを受けたり、不安に思うことがあれば、弁護士や警察に相談してください。自分自身を守るためにも、軽率な行動を避け、慎重な判断を心がけましょう。

禁制品や金地金の密輸

2024-12-22

禁制品の輸入や金地金の密輸は、いわゆる関税法違反事件となり、刑事告発された場合には、懲役刑等の厳罰に処せられる可能性もあります。

禁制品の輸入を軽い気持ちで行うことはあまりないと思いますが、他方で金地金に関しては、簡単な運び屋の気分で安易に行われてしまうケースが散見されます。

本日は、令和6年上半期(令和6年1月から6月まで)において、関税法違反事件として取り締まりが実行された案件をご紹介いたします。

 

1 不正薬物関連

まず、不正薬物の内訳としては、覚醒剤、大麻、あへん、麻薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)、向精神薬及び指定薬物を指すものとします。

不正薬物全体の摘発件数は500件、押収量は約1301kgであり、摘発件数は増加し、押収量は減少した模様です。

具体的な内訳をみると、

①覚醒剤

摘発件数は85件、押収量は約814kgと、共に減少した。

押収した覚醒剤は、薬物乱用者の通常使用量で約2715万回分、末端価格にして約538億円に相当するとのことです。

 

②大麻

大麻草の摘発件数は96件、押収量は約103kgであり、前年比で大幅に増加したようです。

また、大麻樹脂等(大麻リキッド等の大麻製品を含む。)の摘発件数は61件、押収量は約46kgとなり、前年比で共に大幅に増加したようです。

 

③麻薬

コカインの摘発件数は30件、押収量は約235kgでした。

また、MDMA等の摘発件数は49件、押収量は約79kgでした。

 

④指定薬物

指定薬物の摘発件数は76件、押収量は約7kgでした。

 

2 金地金

金地金の摘発件数は228件、押収量は約937kgでした。

 

3 安易に貨物を日本に持ち込む行為にはご注意ください

上記のとおり、不正薬物関連や金地金等の密輸は非常に多く行われておりますが、特段罪の意識がない若者等が運び屋として利用されてしまうケースも多くあります。

自分では大したことがなく、単に土産物のようなものを運んで日本に持って帰ってくるだけで相当程度の報酬がもらえる、と思い安易な気持ちで関与してしまう方もおりますが、自分の一生を棒に振ってしまいかねない行為ですので絶対に関わってはいけません。

あくまでも関与しないことが一番ではありますが、万一関りを持ってしまった場合には、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入事後調査の現況

2024-12-17

輸入を事業として行っている事業者にとって、『輸入事後調査』という言葉はどこかで聞いたことがあるものかと思います。

日本の輸入通関においては、申告納税方式がとられておりますので、事後的に各輸入申告が適正なものであったかどうかを税関が判断することになります。

そこで、本日は税関が公表した資料を踏まえて、輸入事後調査の現況についてご紹介いたします。

 

1 輸入事後調査の現況

令和5事務年度(令和5年7月から令和6年6月)において、輸入事後調査の調査対象となった輸入者は3576者(前事務年度比108%)、その内申告漏れ等のあった輸入者は2678者であり、調査対象者全体の74.9%に上りました。

 

また、納付不足税額は128億2932万円(前事務年度比137.3%)であり、内関税額は8億5888万円、内国消費税額は119億7043万円でした。

加算税は総額6億2238万円、内重加算税は、4336万円でした。

 

いずれの統計情報でも、不足額は増加傾向にあります。

 

納付不足税額が多い上位5品目ですが。

①光学機器等(90類)で納付不足税額は26億4237万円、

②電気機器(85類)で納付不足税額は17億601万円、

③機械類(84類)で納付不足税額は14億8761万円

④医療品(30類)で納付不足税額は14億7569万円、

⑤自動車等(87類)で納付不足税額は12億6813万円

 

2 輸入事後調査に備えましょう

輸入事後調査は、貨物の輸入を事業として行っている場合にはいつ行われてもおかしくありませんので、日常的に輸入事後調査に備えておくことが重要です。

特別なことをする必要はなく、輸入を事業として行っている事業者であれば当然に実施していなければならない資料の整理等を日常的に行うことが重要です。

輸入事後調査を過度に恐れる必要はなく、日常的に行うべきことを適切に行っていただければ特段問題はないですが、なかなか後回しになり取り掛かることができないケースも多いでしょう。

既に輸入事後調査の実施が決まった、という事業者の方、将来的に事後調査が入っても問題ないように今から準備をしておきたい事業者の方、会社として準備は行っているけれどその準備が適切かどうかわからないので第三者の観点でチェックして欲しいとお考えの事業者の方等、輸入事後調査に関してご不安な点がある場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

弊事務所では、輸入事後調査に幅広く対応しておりますので、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。

関税等脱税事件に係る品目別の処分の実績

2024-12-12

日本に貨物を輸入(ハンドキャリーを含む)する場合には、様々な法規制が存在します。

自分としては悪いことをしている認識がなかったとしても、法規制に違反してしまうとペナルティが発生することもありますので、十分注意する必要があり、軽い気持ちで行ったことが思わぬ重大な犯罪につながることもあります。

本日は、令和5事務年度(令和5年7月から令和6年6月)における関税等脱税事件に係る品目別の処分の実績に関する統計情報(税関公表)をご説明いたします。

 

1 品目別の処分の現状

①金地金は102件、脱税額は3億5550万円、

②たばこは25件で、脱税額は933万円、

③腕時計は19件で、脱税額は2498万円、                                              

④バッグ類は7件で、脱税額は412万円、

⑤アクセサリー類は2件で、脱税額は2万円、                                                                                                                                       

⑥化粧品類は1件で、脱税額は21万円、

⑦食品・酒類は2件で、脱税額は3万円、

 

2 品目別の処分を踏まえた現在の状況

品目別の処分を踏まえた現在の状況を考えると、やはり件数、脱税額のいずれに関しても金地金の密輸が圧倒的なウェイトを占めるということが分かります。

いわゆるコロナの流行期間においては海外との往来が行われておりませんでしたが、それ以前の期間から金地金の密輸は大問題として存在しておりました。

要するに、海外で金を購入し、日本に密輸して日本で販売すれば消費税分を丸々利益にすることができるということで、若い学生などを運び屋にして金地金の密輸をすることが多かったわけですが、現状でも金地金の密輸が非常に多く行われていることが分かります。

金地金の密輸によって得られる利益は、いわゆる反社会的勢力の資金源になることも多く、今後金地金の密輸は徹底的に撲滅していくことが必要です。

海外と往来する場合に、安易な気持ちで運び屋のようなことは引き受けないということは改めて強く認識していただく必要があります。

 

3 貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルにはご注意ください

貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルには様々な種類がありますが、要するに、持ち込みが禁止されているもの(いわゆる禁制品)の持ち込みを試みるケースと、脱税目的で密輸するケースが大半です。金地金の密輸は後者です。

これらはいずれも重大な犯罪ですので、絶対に行ってはいけないことは言うまでもありませんが、軽い気持ち(バイト感覚)で知り合いから頼まれたから等の理由で行ってしまう人も一定程度存在します。

行ってしまったことは取り消せませんので、もしこれらの輸入におけるトラブルに巻き込まれてしまった場合には、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

関税等脱税事件に係る脱税額の推移

2024-12-07

日本に貨物を輸入(ハンドキャリーを含む)する場合には、様々な法規制が存在します。

自分としては悪いことをしている認識がなかったとしても、法規制に違反してしまうとペナルティが発生することもありますので、十分注意する必要があり、軽い気持ちで行ったことが思わぬ重大な犯罪につながることもあります。

本日は、令和5事務年度(令和5年7月から令和6年6月)における関税等脱税事件に係る脱税額の推移に関する統計情報(税関公表)をご説明いたします。

 

1 脱税額の現状

告発に進んだケースの関税額は106万円、内国消費税額は2億5079万円(前事務年度比15.2倍)でした。

次に、通告処分で終了したケースの関税額は778万円、内国消費税額は1億3598万円(前事務年度比72%)でした。

 

2 脱税額を踏まえた現在の状況

脱税額を踏まえた現在の状況を考えると、やはり金地金の密輸が圧倒的なウェイトを占めるということが分かります。

いわゆるコロナの流行期間においては海外との往来が行われておりませんでしたが、それ以前の期間から金地金の密輸は大問題として存在しておりました。

要するに、海外で金を購入し、日本に密輸して日本で販売すれば消費税分を丸々利益にすることができるということで、若い学生などを運び屋にして金地金の密輸をすることが多かったわけですが、現状でも金地金の密輸が非常に多く行われていることが分かります。

金地金の密輸は徹底的に防ぐことが必要であることは今更言うまでもありませんが、徹底的に防ぐことが重要であることは改めて強調したいところです。

 

3 貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルにはご注意ください

貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルには様々な種類がありますが、要するに、持ち込みが禁止されているもの(いわゆる禁制品)の持ち込みを試みるケースと、脱税目的で密輸するケースが大半です。金地金の密輸は後者です。

これらはいずれも重大な犯罪ですので、絶対に行ってはいけないことは言うまでもありませんが、軽い気持ち(バイト感覚)で知り合いから頼まれたから等の理由で行ってしまう人も一定程度存在します。

行ってしまったことは取り消せませんので、もしこれらの輸入におけるトラブルに巻き込まれてしまった場合には、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

関税等脱税事件に係る犯則調査の現況

2024-12-02

日本に貨物を輸入(ハンドキャリーを含む)する場合には、様々な法規制が存在します。

自分としては悪いことをしている認識がなかったとしても、法規制に違反してしまうとペナルティが発生することもありますので、十分注意する必要があり、軽い気持ちで行ったことが思わぬ重大な犯罪につながることもあります。

本日は、令和5事務年度(令和5年7月から令和6年6月)における関税等脱税事件に係る犯則調査の統計情報(税関公表)をご説明致します。

 

1 犯則調査の現状

処分件数は157件であり、その内、告発まで進んだケースは6件、通告処分で終了した件数は151件、でした。

処分件数自体は、令和4事務年度から微減(前事務年度比93%)となりましたが、告発件数は増加し(前事務年度比200%)ており、悪質な事案が増加したことが窺われます。

 

2 犯則調査のうちの金地金の件数の現状

処分件数157件の内、金地金は102件、告発まで進んだケース6件の内、金地金は6件、通告処分で終了した件の内、金地金は96件でした。

令和4事務年度よりも件数自体は減少しているものの、告発まで進んだケースが令和4事務年度では2件だったにもかかわらず、6件に増加したことから前事務年度比300%の増加となっております。

 

いわゆるコロナの影響で海外との往来が制限されていた期間は当然件数自体は少ない物でしたが、それ以前は、年間300件近い処分件数だった時もありましたので、以前に比べると半分近くとまでは言えないものの大幅に処分件数が減少していることは間違いありません。これが、実際に違法行為の試みが減少したからであれば問題ありませんが、違法行為の試みが巧妙化しており、発覚を免れているだけということであれば大問題です。

今後の処分件数の推移や、内容については注視していく必要があるところです。

 

3 貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルにはご注意ください

貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルには様々な種類がありますが、要するに、持ち込みが禁止されているもの(いわゆる禁制品)の持ち込みを試みるケースと、脱税目的で密輸するケースが大半です。

これらはいずれも重大な犯罪ですので、絶対に行ってはいけないことは言うまでもありませんが、軽い気持ち(バイト感覚)で知り合いから頼まれたから等の理由で行ってしまう人も一定程度存在します。

行ってしまったことは取り消せませんので、もしこれらの輸入におけるトラブルに巻き込まれてしまった場合には、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

貨物の原産地の表示にはご注意ください

2024-11-27

貨物を輸入する際に、原産地を貨物上に記載、掲載している場合も多いと思います。

原産地表示は、原産地規則に基づいて行う必要があり、また、日本国内で商品を販売する場合も、正確な原産地を記載しないと景品表示法等で問題となるリスクがありますので、正確に記載する必要があります。

貨物の原産地を決定するための基準の概要は、以下の通りですので、ご参考となれば幸いです。

 

1 完全生産品基準

貨物が完全に特定の国で生産された場合、この基準が適用されます。

例えば、農産物や鉱物など、その国で完全に採取・生産されたものが該当します。

 

2 実質的変更基準

 貨物がある国で加工・製造され、その結果、製品の性質や用途が大きく変わった場合に適用されます。この基準には具体的には以下の方法があります。

①HSコード変更基準

貨物の関税分類(HSコード)が製造過程で変更された場合です。

例えば、生地(HSコード:5208)が特定の国で縫製されてシャツ(HSコード:6105)になった場合、加工により商品分類(HSコード)が変わるため、実質的変更が行われたと判断されます。この基準は、単純な梱包や組み立てなどでは適用されず、製品の性質や用途が明確に異なることが求められます。

②付加価値基準

加工後の貨物における特定国での付加価値の割合が一定以上の場合です。

たとえば、自動車部品の輸入材料がある国で組み立てられ、完成車として輸出される場合です。この際、完成品に占める原材料費や輸入部品の割合を差し引いた「現地での加工付加価値」が40%以上であれば、実質的変更と見なされます。

 

③ 製造工程基準

特定の製造工程が行われた場合に適用

例えば、未加工のカカオ豆がある国でローストされ、チョコレートに加工される場合、特定の製造工程(焙煎や成形など)が行われたことにより、商品が別のものとみなされます。

この基準では、工程の重要性や不可逆性が重視されます。

 

3 原産地の表示にはご注意ください

国際貿易において『原産地規則』は非常に重要な役割を果たします。

また、日本国内で商品を販売する場合も、景品表示法等の関係で原産地表示は正確に行う必要があります。

『原産地規則』は、ある製品がどの国で「生産された」とみなされるかを決定する基準を指し、輸入ビジネスを行う上で、このルールを正しく理解することは、関税や通関の手続き、また日本国内での商品の販売のいずれにおいても不可欠です。

少しでも不安な点がある場合には、まずは専門家にお問合せいただくことをお勧めいたします。

用途の回答が曖昧なケース

2024-11-18

外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。

また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。

本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。

 

1 事例

日本の大学のA教授は、外国ユーザーリストに掲載されている海外の大学から輸出令別表第1の16の項に該当する機器の提供依頼を受けた。用途を海外の大学側に確認したところ、曖昧な回答に終始された。A教授としては、海外の大学側は民生用途に使用するものと考えてはいるが、海外の大学側の回答内容を踏まえて、どのように対応すべきかを大学側に照会した。

 

2 正しい対応

海外の大学側が用途確認を事実上拒んでおりますので、需要者要件に関する明らかガイドラインに該当します。

そのため、大量破壊兵器キャッチオール規制の需要者要件に該当し、輸出許可を取得する必要があります。

A教授の主観的な考えはさておき、明らかガイドラインを踏まえて輸出許可の取得の有無は検討する必要がある点は改めて注意が必要です。

 

3 外為法の規制には十分ご注意ください

貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。

日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。

日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。

また、外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為であるといわざるを得ません。

知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在しますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

« Older Entries Newer Entries »

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー