輸入ビジネスでは、特許権侵害のリスクを軽視することはできません。
特許権は、発明を保護する独占的権利であり、特許権を侵害する商品を輸入してしまうと、法的責任を問われる可能性があります。
そこで、本日は具体例を交えながら、特許権侵害のリスクと輸入業者が取るべき対策についてご説明します。
このページの目次
1 そもそも特許権とは何か
日本の特許法において、特許権は特許発明を独占的に実施する権利とされています(特許法第68条)。
特許発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、高度なものと定義されています(特許法第2条第3項)。特許法第101条では、「特許発明の実施を目的とした商品を輸入する行為」が特許権侵害に該当する行為として規定されています。
2 特許権侵害の具体例
例えば、ある輸入業者が海外で人気の高い医療機器を現地メーカーから仕入れ、日本国内で販売しようとしました。その医療機器は海外市場では広く流通しており、特許権の問題について特に注意が払われていませんでした。
しかし、日本国内では、その医療機器の技術が特定の企業によって特許権として登録されており、その輸入が「特許発明の実施」に該当する可能性が指摘されました。
3 特許権侵害による法的リスク
①差止請求のリスク
特許権者が特許法第100条に基づき差止請求を行う可能性があります。この請求が認められると、輸入した商品の販売や流通が禁止され、在庫を抱えた状態で商品が動かせなくなる恐れがあります。
②損害賠償請求のリスク
特許権者が損害賠償請求を行うリスクがあります。特許発明の実施により権利者が被った損害について、輸入業者が賠償責任を負うことが求められる場合があります。
③税関での差止め
特許権者が税関に申し立てを行い、輸入時点で商品が差し止められる可能性があります。これにより、商品が国内に持ち込まれる前に問題が発覚し、業務上の遅延や損失が発生する可能性があります。
4 特許権侵害を防ぐための対策
①丁寧な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で特許権を侵害していないか事前に調査することが重要です。特許庁が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用して特許権の登録状況を確認しましょう。
②仕入先への確認
海外の仕入先に対して特許権に関するライセンスの有無を確認し、必要に応じて契約書で輸入品の権利関係を明確にしておくことが推奨されます。
③弁護士への相談
特許法に詳しい弁護士に相談し、輸入予定の商品が特許権侵害に該当するかどうかを事前に確認することも重要です。
5 特許権侵害貨物の輸入にはくれぐれもご注意ください
特許権侵害は輸入ビジネスにおいて避けられない重大なリスクです。
海外で合法的に流通している商品であっても、日本国内では特許権の保護対象となる場合があります。輸入業者としては、法律を遵守しつつ、リスクを十分に評価し、安全なビジネス運営を目指すことが求められます。事前の調査と適切な対策を講じることで、特許権に関連するトラブルを未然に防ぐことが可能です。