企業外、すなわち私生活上の行為についても懲戒処分の対象となることについては先日のコラムにおいてご紹介いたしました。
本日は、私生活上の行為に対する懲戒処分に関して参考となる裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 笹谷タクシー事件(最判昭53・11・30労判913・113、仙台高判昭50・10・16労判238・47)
本事案は、タクシー運転手が職場外での飲酒運転により衝突事故を起こしたところ、飲酒運転の車両に同乗していた先輩運転手に対しても懲戒解雇を行ったという事案です。
【判示の概要】
従業員の職務外でなされた職務遂行に関係のない行為についても、使用者の懲戒権が及ぶことは最高裁判所の判例が認めるところであつて、そもそも使用者が従業員に対し課する懲戒は広く企業秩序を維持確保し、もつて企業の円滑な運営を可能ならしめるための制裁罰であり、利益追求を目的とする企業体である会社が名誉、信用その他相当な社会的評価を享けることは経営秩序、企業財産を維持し生産向上を図るうえにおいて欠くべからざるものであり、従業員の企業外の行為がそれ自体において不名誉な行為として社会的非難に値するものであり、その結果会社の社会的評価を損うおそれがあるとみられる場合は懲戒事由となりうるものである(最高裁判所昭和四九年二月二八日第一小法廷判決、同年三月一五日第二小法廷判決)。
控訴人(先輩運転手のこと。以下同様。)は刑事処分を受けておらず、右A(運転手のこと。以下同様。)も飲酒運転について刑事処分を受けていないが、これは控訴人らが事故報告をせず逃走していたため、右Aについて飲酒検査ができなかつた結果刑事処分ができず、控訴人についても同様飲酒運転の教唆等による刑事処分ができないでしまつたものであり、事故後ただちに飲酒検査を受けていれば右Aも控訴人も当然に刑事処分を受けた筈である。また、本件について新聞等に報道されなかつたのは、被控訴人が報道機関に懇請して報道を差止めてもらつたからであるが、本件は同業者間にはただちに知れわたつており、被害者である前記Cらから世間には相当伝わつており、被控訴人の信用は低下したものである。
本事案は、先輩運転手が後輩運転手に飲酒を勧めた上で自動車を運転させたという事情等を踏まえた事例判断ですが、私生活上の行為に対する懲戒処分に関して参考となる裁判例といえます。
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