本コラムでは、これまで、2回にわたり、人事異動の拒否が認められる場合をご紹介してまいりました。
本日は、これまでご紹介した以外で人事異動の拒否が認められる場合について、ご紹介いたしますので、これまでご紹介した内容とあわせてご参照いただけますと幸いです。
人事異動は企業が業務を円滑に進める上では非常に重要な仕組ですので、当該人事異動に制限がある場合については、企業としては十分に注意する必要があります。
このページの目次
1 技術・技能等の著しい低下となるもの
特に技術系統の社員については、技術や技能等は人格財産を形成することにつながるので、その能力の維持又は発展を著しく阻害するような職種の変更等は配転権の濫用となる可能性があります(昭和47・10・23名古屋地判、三井東圧化学事件)。
もっとも、昨今では、セールスエンジニア等については、本人の技術や技能の発展にむしろプラスであるという理由から、正当な配転と認められることもあります(昭和46・7・27前橋地判、新潟鉄工所事件等)。
2 私生活に著しい不利益を生ずるもの
一般の社員が通常予想されるような損害や苦痛を超えて、きわめて著しい場合には、認められることがあります。このような場合には、企業の人事異動を自由に認めると従業員にとって極めて酷な事態となってしまうため、裁判所は、人事異動命令の合理性を慎重に判断する傾向にあります。
例えば、重病の家族がいるにもかかわらず、家族の看護に影響を与える形での人事異動の場合には、人事異動命令に合理性がないと判断される場合があります(昭和43・8・31東京地判、日本電気事件)。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
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