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1 事後調査のリスクを低下させる防御策
輸入事業者が抱える関税評価やHSコード(品目分類)に関する不確実性は、数年後の事後調査で多額の追徴課税という形で顕在化するリスクを常に伴います。
この不確実性を低減させるための方法の一つが、税関の「事前教示制度」です。
事前教示制度とは、輸入申告を行う前に、輸入者が具体的な取引や貨物について税関に照会し、その取り扱い(HSコード分類、関税評価など)に関する文書による回答を事前に得ておくことができる制度です。税関は、この回答に従って実際の申告を取り扱うため、追徴課税のリスクを低下させることができます。
2 事前教示制度の最大のメリット:法的拘束力
事前教示制度の回答は、回答から3年間、税関の実務においてその内容が遵守されます。
これは、企業が獲得できる強固な防御手段の一つです。
特に以下のようなケースで活用すべきでしょう。
①複雑な複合品・新製品のHSコード:関税率表の解釈通則や類注の適用が難しく、複数のコードに該当しうる場合。
②複雑な取引構造の関税評価:ロイヤルティ、金型提供、仲介手数料など、加算要素の有無が論点となる複雑な取引の場合。
③EPA/特恵の原産地規則:「実質的な変更」の要件を満たすかどうか、加工工程が複雑な場合。
3 税関の判断を導く「照会文書」作成の3つのコツ
税関が事前教示の回答を出す際、その判断材料となるのは、提出された照会文書と添付資料のみです。税関が正確な判断を下せるよう、以下の点に留意して文書を作成する必要があります。
(1)事実関係の完全な開示と明確化
照会対象となる取引や貨物の事実関係は、一切隠さず、かつ明確に記載する必要があります。不確実な点や不足がある場合、税関は「回答不能」とするか、事実誤認に基づいた回答を出してしまうリスクがあります。
①関税評価の場合:契約の全体図、当事者間の関係図(資本関係、取引関係)、貨物代金以外の全ての支払い(ロイヤルティ、手数料、サポート費用など)の流れと使途を、証憑に基づき図示することが有効です。
②HSコードの場合:貨物の材質、機能、用途を詳細に記載し、カタログや図面を添付するだけでなく、製造工程や原理まで技術的に解説することが求められます。
(2)企業側の「法的見解」と論拠の提示
単に「このHSコードで合っていますか?」と質問するだけでは、税関任せの回答になりがちです。賢い活用法は、「企業側はこう考える」という主張と、その法的根拠を提示し、税関の判断を正確に導くことです。
(3)税関が疑問に思う点を先回りして伝えておく
税関職員がどこに疑問や懸念を持つかを予測し、照会文書の中で先回りしてその疑問を解消しておくことが重要です。
例えば、ロイヤルティの件であれば、「このロイヤルティは貨物の販売とは独立した技術指導の対価であり、関税評価上加算が不要とされる非加算要素であると考えます。その根拠として、ライセンス契約書と売買契約書を添付し、支払い条件が異なることを示します。」など、税関が最も問題視する論点を明確にする資料と主張を用意します。
4 弁護士によるサポートの必要性
事前教示は行政手続きであり、その照会文書は「法的文書」としての正確性が求められます。関税法、関税評価、HSコードの解釈に精通した弁護士(通関士)のサポートを得ることで、回答の取得可能性を高め、かつその回答が最大限に有利になるよう導くことができます。
当事務所は、予防法務としての事前教示制度の活用を最も重視しています。曖昧な通関手続は、貴社の将来の収益を脅かします。
複雑な輸入を始める際は、必ず事前教示制度をご活用ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

