従業員の行為が労働時間に該当する場合には、当該時間に対して、企業としては残業代の支払いをはじめ様々な規制を受けることになります。
そのため、従業員の行為が労働時間に該当するかどうかについては、慎重に判断する必要があります。昨今の社会情勢のもと、従業員に自宅学習時間を設ける企業も増えてきており、そのような自宅学習時間が労働時間に該当するかどうかに関してご相談いただく場合もございます。
そこで、本日は、自宅学習時間が労働時間に該当するかどうかについてご説明いたします。
結論としては、該当する場合もございますので、自宅学習時間の設定には十分注意する必要があります。
このページの目次
1 自宅学習時間の労働時間該当性に関する2つの考え方
そもそも労働時間は、「使用者の指揮命令下に置かれていた」ものと客観的に評価される時間のことを指すところ、自宅学習は、通常、場所的にも時間的にも拘束されているわけではないものと思われます。
そのため、企業の指揮命令下に従業員が置かれている状況とはいえず、自宅学習時間について、労働時間には一切該当しない、という考え方もあります。
他方で、場所的な拘束を受けていないとしても、企業側の指示により自宅学習を行うという点で時間的には拘束されていると考えるべきであるとして、自宅学習時間であってもその拘束の具体的な態様次第では、労働時間として扱う必要がある場合もある、との考え方もあります。
2 自宅学習時間の労働時間該当性をどのように考えるべきか?
参考となる事例として、労災認定に関する事案ですが、業務命令で受験することになった資格取得のための自宅での学習時間について、あくまでも業務命令で受験することになった以上、当該受験のための学習は業務命令に基づくものであるとして、自宅での学習時間も企業側の指揮命令下での業務に該当する、と判示した裁判例があります(大阪地判平成21・4・20労判984・35)。
上記裁判例も踏まえますと、自宅学習時間というだけで形式的に労働時間には該当しないと判断すべきでなく、あくまでも、その学習時間がどのような経緯で企業側が従業員に対して求めたものなのか、また、実際の学習時間において企業側の指揮命令下にあったと言えるか、等といった点を具体的に検討、判断する必要があり、その結果、自宅学習時間が労働時間に該当すると判断される場合も十分考えられるものと思われます。
自宅学習時間が労働時間に該当すると判断される場合、残業規制等の様々な規制が発生することになりますので、企業としては慎重に判断する必要があります。
もっとも、労働時間該当性は客観的に判断する必要があり、当事者では判断が難しい場合も多いのが実情です。
そのような場合には専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。