本日は、『税関事務管理人』についてご紹介いたします。
特に、海外企業が日本で商品を輸入・販売する際に直面する重要なポイントの一つですので、具体例を交えながらご紹介します。
このページの目次
1 税関事務管理人とは?
税関事務管理人とは、外国に所在する事業者が日本に貨物を輸入する際に、日本の税関に対して必要な手続きを行うために選任する日本国内の代理人のことを指します。
これは関税法に基づく制度であり、外国企業が日本に支店を持たずに直接貨物を輸入する場合、日本の税関とのやりとりをスムーズに進めるために必須の仕組みになります。
2 税関事務管理人の役割
税関事務管理人の主な役割は、以下のとおりです。
①輸入申告の代理
税関への輸入申告手続きを代理します。関税や消費税の納付手続に関する対応も含まれます。
②税関とのやりとり
税関からの問い合わせや追加書類の提出要求に対応します。輸入貨物が関税法や他の法律に適合しているかを確認する役割も担います。
③関税や消費税の納付代行
海外事業者に代わって関税や消費税を納付します。税関事務管理人が支払いを行い、後ほど海外事業者から費用を回収する(又はその逆)の流れとなります。
④輸入手続の支援
税関手続きを円滑に進め、貨物の輸入許可を取得するための手続面でのサポートを行います。
3 税関事務管理人が必要なケース
以下のような場合には、税関事務管理人の選任が必要となります。
①ケース1 アメリカのアパレルブランドが日本向けにEC販売を開始
アメリカに拠点を持つアパレルブランドが、アメリカの工場から日本に輸入して在庫をもち自社ECサイトを通じて日本の消費者に商品を販売していく場合、商品を日本に輸入するために日本において税関手続きを行う必要があります。
しかし、このアメリカのアパレルブランドは日本国内に法人がないため、税関事務管理人を通じて輸入申告を行い、関税・消費税の納付を代行してもらう必要があります。
②ケース2 中国の電子機器メーカーが日本の小売業者と直接取引
中国の電子機器メーカーが、中国から日本に商品を輸入した上で日本の家電量販店と直接取引を行うことを想定している場合、税関事務管理人の選任が求められます。メーカーが日本に法人を持っていない場合には、輸入に必要な税関手続きを管理人を通じて行うことが必要となります。
4 税関事務管理人を選任することをお忘れなく
税関事務管理人は、海外企業が日本へ商品を輸入する際には必要な存在であり、基本的には税関事務管理人を選任することなく日本に輸入することはできません。海外EC事業者やメーカーにとっては、日本市場での展開を成功させるために欠かせない存在ともいえます。
もし貴社が日本市場への進出を検討されている場合、税関事務管理人の選任は必須となります。適切な管理人を選び、スムーズな輸入通関を実現しましょう。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。