「税関から事後調査実施の通知が届いた」、「過去3年分の帳簿を提出するよう求められた」、こうした連絡を受けた輸入事業者の中には、突然のことに戸惑う方も少なくありません。
税関事後調査は、輸入ビジネスを行う企業にとって避けられないリスク管理の一環です。本記事では、税関事後調査の概要と、どのような企業が調査対象となるのか、調査の頻度や傾向について解説いたします。
このページの目次
1 税関事後調査とは何か?
税関事後調査とは、輸入申告の内容が正確であったかどうかを、輸入通関後に税関が企業を訪問して確認する調査です。
税関は、申告時点でのインボイス・契約書・価格資料の内容だけでなく、企業が保有する帳簿、会計資料、メールなどの実態をもとに申告の正確性を検証します。
調査対象となるのは、法人・個人事業主を問わず、一定の輸入実績があるすべての事業者です。
2 調査の目的
税関が事後調査を行う主な目的は以下のとおりです。
①関税の適正な納付状況を確認すること
②過少申告・申告漏れ・不正申告の有無を把握すること
③FTA・EPA等の原産地申告の適正性を確認すること
調査の結果、申告ミスや法令違反が判明した場合、追徴課税(関税・消費税)や加算税、場合によっては刑事処分がなされる可能性があります。
3 調査対象となる企業の特徴
税関は、全事業者を一律に調査するわけではなく、リスクに応じて優先度を判断しています。
以下のような特徴のある企業は調査対象となりやすいとされています。
①輸入金額が一定規模以上(年間数千万円以上)
②同種商品の申告価格が著しく安い
③HSコードが不安定、または頻繁に変更されている
④FTA・EPAの利用申告が多い
⑤過去に申告ミスや修正申告歴がある
⑥関連会社取引(移転価格)の比率が高い
また、近年はデータ分析によるスクリーニングの精度が高まっており、初めての調査でも詳細な調査が行われる傾向にあります。
4 調査頻度と実施の流れ
税関事後調査は、数年に一度のペースで実施されるケースが一般的です。
調査は次のような流れで進行します。
①調査実施通知書の送付(1〜2か月前)
②事前ヒアリング(調査対象期間・業務内容など)
③税関職員による訪問調査(通常1〜3日)
④追完資料の提出依頼・質疑応答
⑤調査結果通知(指摘事項と是正内容の提示)
5 調査対象期間とリスクの広がり
原則として、調査対象期間は過去5年間ですが、重大な不正が見つかった場合には最大7年間に遡って追徴課税されることがあります(重加算税の対象)。
また、一度の調査で問題が発覚した企業は、その後も継続的にチェック対象となる傾向があります。
税関事後調査は、輸入ビジネスにおける納税義務の適正性を確認する重要な行政調査です。
突然の通知に慌てないよう、日頃から帳簿や契約書の管理体制を整備しておくことが極めて重要です。
当事務所では、税関事後調査の初動対応、調査準備、対応支援、追徴課税への対応、異議申立てまで幅広く対応しております。ご不安な方は、ぜひ早めにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。