労働者が会社に対して退職願を提出した後に、当該退職願を撤回したいとの要望を出してきたという経験のある経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この点について、参考となる裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 大隈鉄工所事件(最判昭62・9・18労判504・6)
【判示の概要】
労働者の退職願に対する承認について、採用後の当該労働者の能力、人物、実績等について掌握し得る立場にある人事部長に退職承認についての利害得失を判断させ、単独でこれを決定する権限を与えることとすることも、経験則上何ら不合理なことではない。
そして、部長に被上告人(退職願を出した労働者のこと。以下同様。)の退職願に対する退職承認の決定権があるならば、原審の確定した前記事実関係のもとにおいては、部長が被上告人の退職願を受理したことをもって本件雇用契約の解約申込に対する上告人(会社のこと)の即時承諾の意思表示がされたものというべく、これによって本件雇用契約の合意解約が成立したものと解するのがむしろ当然である。
以上のとおり、本裁判例を前提とすると、労働者が退職願を提出し、それを人事権を掌握する人物が受理した場合には、即時に雇用契約の解約合意が成立したと判断される可能性がありますが、あくまでも具体的な事例ごとに慎重に判断すべきですので、ご注意ください。
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