輸入ビジネスを営む事業者は、商標権侵害のリスクに十分注意する必要があります。
実際、輸入された商品が知らず知らずのうちに日本国内の商標権を侵害しているケースが多々あります。
そこで本日は、具体例を交えつつ、輸入貨物の商標権侵害に関してご説明いたします。
このページの目次
1 商標権侵害とは
日本の商標法では、登録商標が他人の許諾なく使用されることを防ぐため、商標権が保護されています。
例えば、商標法第25条には、商標権者は指定商品または指定役務に関して登録商標を独占的に使用できる旨が規定されています。
また、商標法第37条では、商標権侵害行為の具体例が挙げられており、次のような行為が侵害に該当するとされています:
①登録商標と同一または類似の商標を、指定商品や指定役務に使用すること
②指定商品と類似の商品に登録商標を使用すること
事業者が意図せずに商標権を侵害するケースでは、これらの規定が問題となることが多いです。
2 具体例『海外製品の輸入と商標権の問題』
例えば、ある事業者が海外の有名ブランドの衣料品を海外の市場で購入し、日本に輸入したケースを考えます。
この業者は「現地で合法的に購入した商品だから問題ない」と考えていました。しかし、日本国内では、そのブランドの商標が別の日本企業によって登録されていました。
この場合、業者が輸入した商品が商標法第2条に基づく「商標の使用」に該当し、日本側の商標権を侵害する可能性があります。
結果として、以下のようなトラブルが生じるリスクがあります:
①商標権者からの差止請求
輸入品の販売や流通が差し止められ、業務に大きな支障が生じる可能性があります。
②損害賠償請求
商標権者が損害賠償を請求することも可能であり、高額な賠償金が発生するケースもあります。
③刑事罰
悪質な場合には、商標法第78条に基づき、刑事罰が科されることもあります。
3 リスク回避のためのポイント
輸入業者として商標権侵害を防ぐためには、次の対応策が有効です:
①丁寧な事前調査の実施
輸入予定の商品について、国内の商標権登録状況を調査しましょう。特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用することで、商標の登録状況を確認することができます。
②契約内容の確認
海外のサプライヤーから購入する際、当該商品が輸入先国で商標権侵害のリスクがないことを明確にする条項を契約に盛り込むことが重要です。
③弁護士等の専門家への相談
商標権の問題は専門的で複雑です。輸入を検討している商品がある場合は、事前に弁護士等の専門家にご相談いただき、リスク評価を行いましょう。
4 商標権侵害貨物の輸入にはご注意ください
商標権侵害は、輸入業者にとって見過ごせないリスクです。
合法的に購入した商品であっても、日本国内では商標権侵害に該当するケースがあります。事前の調査と適切な対応を通じて、トラブルを未然に防ぐことができます。
輸入ビジネスを行う上では、法律の専門家と連携しながら慎重に対応することを強くお勧めします。商標権を侵害することなく、円滑で安全なビジネス運営を目指しましょう。