会社の業務の繁閑に応じて、従業員には残業を命じる必要がある場合も多いものと思います。
もっとも、このような残業命令については、無制約で行うことができるわけではありませんので注意が必要です。
本日は、三六協定に基づかない残業命令の有効性が問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 宝製鋼所事件(東京地判昭25・10・10民集1・5・766)
【判示の概要】
従業員が割増賃金要求のための、交渉をなすことについては、組合において明示の承認を与えていたのであるから、申請人等が、その要求貫徹のためになした行為は、もとより正当な組合活動である。
もつとも、申請人等が、被申請人会社との交渉をもつことなく、直ちに産業拒否の態度に出たことは、信義則に背くといえないこともないが、その残業は、被申請人会社と前記労働組合との協定に基くものではなく、会社の慣行によつて行われてきたものであるから、申請人等に法律上そのような残業を強制するということはできないのであつて、それゆえ、残業拒否を違法とする前提要件を欠いているというベきであり、七の信義則違反ということも問題とならない。
上記裁判例はやや古いものですが、仮に会社内で慣行として残業命令が行われ、従業員が従っていたとしても、三六協定がない以上は、法律上強制力をもつ形で残業命令を行うことはできないと判示しており、当然といえば当然ではありますが、改めて念頭に置いておくべき重要な裁判例であるものといえます。
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