本日は、企業が従業員に対して適切に休憩時間を付与しなかった場合において、企業がどのような損害賠償義務を負うかどうかをご説明いたします。
経営者の方にとっては重要な問題であるものといえますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 休憩時間を付与しなかった場合における企業の損害賠償義務について
この点について、参考となる判例としては、住友化学工業事件(最判昭54・11・13判タ402・64)があります。
この事件は、会社が従業員に対して労働契約上の適切な休憩時間を付与しなかった場合において、従業員が、会社による労働契約上の債務不履行による損害賠償を求めたという事案です。
【判示の概要】
従業員が帰属するグループのメンバーは、休憩時間においても会社の指揮命令のもとに身体・事由を半ば拘束された状態にあったものであるから、休憩を付与する債務の履行が適切に行われなかったものというべきであるが、しかし、このように半ば拘束された状態にあったにしても、その時間に完全に労働に服したというべきであるものでもないから、従業員が受けた身体上、精神上の不利益は勤務1時間あたりの労働の対価相当額に換算することはできない。
以上のとおり、上記事件においては、賃金相当額の損害賠償請求を認めず、慰謝料の支払請求のみを認めました。
もっとも、事案によっては、休憩時間に通常の労働を行わせていたような場合には、賃金相当額の損害賠償請求まで認められる可能性は十分あるものと考えられますので注意が必要です。
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