休憩時間中の自動車事故について

「従業員が、休憩中に自動車事故を起こしたのですが、休憩中の出来事なので企業には何の責任もないですよね?」、というご相談をお受けすることがあります。
結論としては、休憩中の事故であっても企業が責任を負う場合もありますので、十分注意する必要があります。
以下、概要をご紹介いたします。

 

1 事故によって相手方が負傷した場合における企業の損害賠償責任について

使用者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条)。
ここで、「事業の執行について」というのは、必ずしも被用者がその担当する業務を執行する場合だけを指すのでありません。広く被用者の行為の外形を客観的に捉えた場合に、使用者の事業の態様、規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りるものと解されています(最判昭39・2・4民集18巻2号252頁)。

したがいまして、例えば、よく外回り営業のため、自動車で移動する従業員が、企業のロゴが付された企業の自動車を休憩中に乗り、自転車事故を起こした場合には、「事業の執行について」に該当する可能性が相当程度あります。
そのため、従業員が事故を起こした場合には、まずはどのような状況で事故を起こしたのかを客観的に把握することから出発する必要があります。

 

2 被用者が負傷した場合の労災保険の申請について

休憩時間については、労働基準法34条3項により、労働者が自由に行動することができ、その間の個々の行為自体は労働者の私的行為といえます。
したがって、休憩時間中の災害は、それが事業場施設またその管理の状況・欠陥等に起因することが証明されない限り、一般的には、業務上の災害とは認められません。
しかし、休憩時間中に事業場内で継続して業務を行っているとか、上司に促されて休憩のついでに業務 上必要な書類を取引先に届けるといった事情があれば、業務上の災害に該当し得ます。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員の休憩中の事故の問題を含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

 

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