会社側による就労拒否と賃金支払義務について

本日は会社側による就労拒否と賃金支払い義務に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 新興工業事件(神戸地尼崎支判昭62・7・2労判502・67)

本事件は、提出が義務付けられていた報告書について、提出をしなかった従業員に対して、会社側が就労を拒否した事案において、当該従業員への賃金の支払義務が問題となったものです。

【判示の概要】
原告は就労を被告側に申し出ていたが、雇用関係において、労働者は、従業員の服務上の規律につき使用者の指揮命令に服すべき義務があり、正当な理由なしにその命令を拒否している場合には、たとえ就労の申出をしたとしても、それは労働者としての服務規律に違反し、ひいては職場秩序を乱すものであるから、原則として債務の本旨に従った労務の提供とはいえないものと解すべきである。

本件における原告の作業ミス報告書の提出拒否は、全社的な品質管理の向上を目指す運動の一環として重要な意味を有する作業ミスの自主申告制度を否定し、それに対する協力を拒むものであり、これを放置するときは、右品質管理運動の円滑な遂行を阻害し、その目的達成の支障となる具体的な危険があるものと考えられるし、また、原告は、これを拒否すべき正当な理由がないばかりか、むしろ前述のような独善的な見解のもとに、会社の施策に対し敵意と反感をもち、これにあくまで抵抗しようとしたものであり、再三の説得にも応じようとしないそのかたくなな態度を考えれば、職場秩序の上からも無視できないものがあるといわなければならない。

したがって、原告が、作業ミス報告書の提出を拒否する態度を変えないままで、仕事だけはさせてほしいと申し出たとしても、それは債務の本旨に従った労務の提供といえないばかりでなく、その瑕疵は決して軽度なものではなくて、被告として受忍すべからざるものというべきであるから、その就労の申出を拒否することは正当であり、被告の責に帰すべき事由による就労不能にはならないものとすべきである。

 

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