EPA活用は諸刃の剣:メリットの裏にある追徴リスク

EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)は、締結国・地域の間の貿易において、特定の商品に関税を撤廃または大幅に引き下げる特恵関税を適用するための強力なツールです。これにより、輸入事業者は大幅なコスト削減と競争力強化を実現できます。

しかし、特恵関税の適用は、その貨物が協定で定められた厳しい原産地規則を満たしていることが条件です。この規則の解釈や運用を誤ると、税関の事後調査で特恵適用が遡及的に否認され、過去数年分の関税差額が一括で追徴されるという重大なリスクを負います。

EPAのメリットを安全に享受するために、輸入事業者が理解し、実行すべき原産地規則に関する重要チェックリストと注意点を解説します。

 

1 原産地規則の基礎知識と主要な判定基準

原産地規則とは、「その貨物がどの国で生産されたか」を特定するためのルールです。輸入者がEPAの特恵税率を適用する場合、以下の主要な判定基準を満たす必要があります。

(1)完全生産品

その国・地域で完全に獲得または生産された貨物(例:鉱物、農産物、漁獲品など)に適用されるシンプルな基準です。

(2)実質的な変更基準

輸入された非原産材料を使用して生産された貨物に適用されます。以下のいずれかの基準を満たすことが求められます。

①関税分類変更基準(CTC): 最終製品のHSコードと、製造に使用された非原産材料のHSコードが、協定で定められたレベル(類、項、号)で変更されていること。

②付加価値基準(VA): 最終製品の価格に占める、原産国・地域での**付加価値(原産材料費+人件費など)**の割合が、協定で定められた基準(例:40%以上)を満たしていること。

2 EPA適用を確実にするためのチェックリスト 5項目

税関調査で原産地規則の不備を指摘されないために、以下の5つの事項を確認・準備しておく必要があります。

No.

チェック項目

対応のポイント

1

適用する協定と規則の特定

輸入貨物のHSコードに基づき、適用すべき判定基準を協定の付属書から正確に特定しているか。

2

原産性の証明文書の確保

輸出者から特定原産地証明書(または自己証明)を受け取っているか。また、その証明の根拠となる書類(部品表、原価計算書、製造工程資料など)も確保しているか。

3

付加価値計算の正確性

付加価値基準を適用する場合、協定ごとの原価計算方法(控除方式、積み上げ方式)に従って、計算が正確に行われ、証明書発行時点の根拠資料があるか。

4

輸出者による保証の確保

輸出者との契約書に、原産地情報の正確性に関する輸出者の保証、および税関調査時の資料提供協力義務を明記しているか。

5

事前教示制度の活用

原産性の判断が複雑でリスクが高い貨物について、事前に税関の事前教示制度を利用し、原産地認定に関する回答を得ているか。

 

3 弁護士による監査と予防法務の重要性

原産地規則の適用は、HSコードの分類、会計処理、製造実務のすべてに関わる複雑な作業です。弁護士によるサポートを受けることで、例えば、

①原産性判断の法的レビュー: 貴社のサプライチェーンと製造プロセスに基づき、最も有利かつ安全な原産地規則の適用方法を提案します。

②輸出者のサポート: 輸出者から提出される原産地証明の根拠資料が、協定の要件を確実に満たしているか、弁護士の視点で検証します。

③追徴課税への防御: 事後調査で原産地適用の誤りを指摘された場合、法的根拠に基づき、原産性の正当性を主張・立証し、追徴リスクの回避・軽減を交渉します。

EPAの活用は、企業の成長に不可欠です。しかし、リスク管理なくして利益の最大化はありえません。特恵関税の適用については、必ず専門家のサポートを得て、盤石な体制を構築しましょう。

 

 

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