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犯則調査にご注意ください

2023-05-07

はじめに:仮の相談事例

輸入・輸出をビジネスとして継続的に行われている方であれば、税関による「犯則調査」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。知り合いの会社が突然の立ち入り調査を受け、大変な事態に陥ったといった話を聞き、不安を感じている方も少なくありません。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した、架空の事例をご紹介いたします。

【相談者】

東京都内でブランド時計や高級雑貨の輸入卸売を営む株式会社デイ 代表取締役 シー氏。

【相談内容】

「当社は海外のブローカーを通じて、欧州の高級時計を定期的に輸入しています。これまでは通関業者に書類を任せ、特に大きなトラブルもなく事業を進めてきました。ところが先日、突然税関の職員が数名で事務所に現れ、『犯則事件の調査』だと言って書類やパソコン、スマートフォンの提出を求められました。以前受けたことがある事後調査とは全く雰囲気が異なり、高圧的で、まるで犯罪者扱いをされているような恐怖を感じました。

聞けば、過去の輸入申告において価格を低く書き換えたインボイスを使用し、消費税を免れた疑いがあるとのことです。当社としては、現地のブローカーから送られてきた書類をそのまま出していただけで、脱税の意図はありませんでした。しかし、このままでは逮捕されるのではないか、会社が潰れてしまうのではないかと夜も眠れません。刑事事件としての対応が必要なのでしょうか、それとも行政処分で済むのでしょうか」

このような事態は、輸入実務に携わる者にとって最大の危機の一つといえます。犯則調査は、通常の「事後調査」とは法的性質が根本的に異なり、最終的には刑事罰に直結する可能性を秘めた厳格な手続きです。本記事では、犯則調査の概要から最新の動向、そして万が一対象となった場合の法的対応について詳しく解説いたします。

1 犯則調査の定義と法的性質

税関の公式な見解によれば、犯則調査とは「犯則事件について、証拠を発見・収集し、犯則事実の有無及び犯則者を確定させるための手続きであり、告発又は通告処分を終局の目標として行う調査」と定義されています。

簡単にいうと、犯則事件とは税金に関する犯罪を指しますが、税関の調査対象は主として関税及び内国消費税となります。

犯則調査の法的根拠は、関税法第11章「犯則事件の調査及び処分」に規定されています。特に関税法第119条から第149条にかけて、税関職員による質問、検査、領置(差し押さえ)などの強大な権限が明文化されています。

(関税法第119条 質問、検査又は領置)

税関職員は、犯則事件の調査をするため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、若しくは質問し、若しくはこれらの者が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又はこれらの者が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。

(関税法第124条 臨検、捜索又は差押え)

税関職員は、犯則事件の調査をするため必要があるときは、その所属する税関の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができる。

このように、裁判所の許可状に基づく強制捜査が行われることもあり、「任意の協力」とは一線を画す強制力を持った調査であることがわかります。

2 近年の犯則調査の動向と具体的な事例

税関が公表しているデータによれば、近年の犯則調査は、金地金(ゴールド)の密輸入や、ブランド品・時計の過少申告(アンダーバリュー)に対して非常に厳格化しています。

最新の傾向としては、税関長が処分(通告処分)又は告発を行った件数は相当数に上り、脱税額も数億円規模に達する事例が報告されています。

(1)金地金の密輸入事件

金の輸入には10パーセントの消費税がかかります。海外で金を購入し、税関に申告せずに密輸入して国内で転売すれば、その消費税分が不当な利益となります。これまでは旅行者を装った個人による「運び屋」が中心でしたが、最近では貨物に巧妙に隠し、組織的に脱税を図る法人の犯則事件が目立っています。

(2)高級ブランド品の過少申告事件

冒頭の相談事例のように、実際の購入価格よりも低い金額をインボイスに記載し、関税や消費税を免れる手口です。最近の事例では、海外の売手と共謀して二重のインボイスを作成し、税関には低い価格のものを提出していた法人が、電子メールの履歴から偽装が発覚し、重加算税の賦課とともに検察庁へ告発されたケースがあります。

(3)知的財産侵害物品の輸入事件

コピー商品や偽ブランド品を輸入する行為も、関税法上の犯罪(輸出入禁止物品の輸入)となります。これらは単純な脱税だけでなく、商標法違反等とも重なり、非常に重い刑事罰の対象となります。

3 犯則調査と事後調査の違い

多くの経営者が混同しやすいのが、定期的に行われる「事後調査」と、この「犯則調査」の違いです。実務上の混乱を避けるため、以下の比較表にまとめました。

【事後調査と犯則調査の比較一覧表】

項目|事後調査(税務調査)|犯則調査(犯罪捜査)

法的根拠|関税法第105条等|関税法第119条等

主な目的|申告の適正性の確認|犯罪の証拠収集と確定

調査の性質|行政上の任意調査|刑事手続に準ずる調査

強制力の有無|事実上の強制(受忍義務)|許可状に基づく強制捜査あり

終局の目標|修正申告・更正処分|告発・通告処分

事後調査は「間違っていたら直してください」というスタンスですが、犯則調査は「法を犯した証拠を固めます」というスタンスです。犯則調査の対象となった場合、非常に動転される方も多い一方で、刑事事件ではないから大丈夫だろうと高を括ってしまう方もいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。

4 通告処分という独自の制度

犯則調査の結果、税関長が行う「通告処分」という言葉について補足いたします。

通告処分とは、税関による犯則調査の結果、その情状が罰金刑に相当すると判断された場合において、税関長がその罰金に相当する金額の納付を求める処分のことを指します。

(関税法第146条 通告処分)

税関長は、犯則事件の調査の結果、犯則の確信を得たときは、その理由を明示し、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額及び書類の送達に要する費用(中略)を税関に納付すべき旨を通告しなければならない。

通告処分の特色は、刑事処分ではなくあくまでも行政処分であるという点にあります。この通告に従って金額を納付すれば、刑事訴追(裁判)を免れることができます。一種の「司法取引」に近い性格を持っており、前科がつかないというメリットがあります。しかし、通告に従わない場合や、悪質性が極めて高いと判断された場合は、即座に検察官へ告発され、通常の刑事裁判の手続きへと移行することになります。

5 犯則調査の対象となった場合の対応指針

犯則調査の対象となった場合、安易な対応は非常に危険であると言わざるを得ません。ただその一方で、恐怖のあまり早く事件を解決させようと虚偽の主張や自白をしてしまおうとされる方もおりますが、このような対応は絶対にとってはいけません。一度事実と異なる供述をしてしまうと、後から訂正することは極めて困難です。

以下の点に留意して冷静に対応することが求められます。

(1)黙秘権の理解

刑事手続に準ずる調査である以上、自分に不利な供述を強要されることはありません。しかし、税関側の質問を無視し続けることは、情状を悪くする可能性もあります。どの範囲で回答すべきかは、専門家の助言が不可欠です。

(2)証拠の任意提出と押収

パソコンや書類が差し押さえられると、業務が停止してしまいます。どの資料が調査に必要で、どの資料が返還されるべきか、法的な観点からのチェックが必要です。

(3)反省と改善姿勢の提示

意図的でないミスであったとしても、管理体制の不備は認めざるを得ません。調査には協力的な姿勢を見せつつ、再発防止策を提示することで、告発ではなく通告処分での解決を目指す戦略が重要となります。

冷静に対応しつつ、税関側の調査に協力し、自分が行ってしまったことの反省をしていただくことが重要ではありますが、なかなか一般の方で突然このような対応を取ることは至難の業といえるでしょう。

6 専門家による支援の重要性

まずは、冷静に落ち着いて状況を確認し、その後の流れを確認する意味でも、万一犯則調査の対象となってしまった場合には、速やかに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入・輸出に関連する法律は、関税法だけでなく、消費税法、外為法、知的財産法など多岐にわたります。特に課税価格の決定(関税評価)に関する専門知識がないまま税関と交渉することは、自ら不利な状況を作り出すことに他なりません。

具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

弁護士でありながら通関実務の知識を持つことで、税関職員の主張が法的に妥当であるか、不当な権利侵害が行われていないかを的確に判断し、依頼者の正当な権利を守ります。

当事務所が提供できる主なサポート

一 犯則調査への立ち会いおよび質問回答のアドバイス

二 押収された書類やデータの返還交渉

三 税関長による通告処分への誘導、および検察官への告発回避のための交渉

四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て

犯則調査の対象となった場合には、まずはご相談ください。一人で悩まず、早期に専門家の介入を受けることが、ビジネスの継続と個人の自由を守るための唯一の道です。

結びに代えて:適正な通関こそがビジネスの安定を支える

犯則調査という深刻な事態に直面したとき、最も重要なのは「透明性のある対応」と「法的な防御」の両立です。脱税の意図がなかったとしても、客観的な証拠が揃っていれば、税関は淡々と手続きを進めます。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、その法的基盤を盤石にするためのパートナーとして、常に最善の助言を提示いたします。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入貨物の停滞を防ぐための法的対応

2021-04-12

0 相談事例

【相談者】

千葉県内で海外雑貨の輸入販売を手掛ける株式会社Z、物流担当のS部長

【相談内容】

当社ではこれまで、東南アジア諸国から竹細工の工芸品を継続的に輸入してきました。通常、輸入申告から数時間、長くとも翌日には輸入許可が下りていたのですが、今回のコンテナ貨物については申告から三日が経過しても許可の連絡がありません。税関に問い合わせたところ、関税法に基づく検査対象に指定されたため、指定の保税蔵置場にて全部検査を行うとの回答がありました。販売先との契約上、今週末には納品を完了させる必要がありますが、検査を回避する方法や、少しでも早く許可を得るための法的な手段はないでしょうか。また、万が一申告内容と現物に相違があった場合の法的なリスクについても詳しく知りたいと考えております。

貨物を輸入しようとした際、税関検査によって輸入許可が遅れる事態は、輸入者にとって事業継続に関わる重大なリスクとなり得ます。本日は、税関による貨物検査の仕組みとその法的根拠、実務上の対応策について解説いたします。

1 輸出入貨物における税関検査の基本原則

輸入申告があった貨物について、税関は必要に応じて検査を行う権限を有しております。これは日本の水際における安全確保と、適正な関税および消費税の徴収を目的とした公権力の行使です。

(1)検査の法的根拠

税関検査の主要な法的根拠は、関税法第六十七条に規定されております。この条文の内容を要約すると、貨物を輸出しようとする者、または輸入しようとする者は、税関長に対して申告を行い、その申告に係る貨物について必要な検査を経て、その許可を受けなければならないとされております。

輸出入の許可を受けるためには、税関が適正な審査のために必要と判断した検査を完了させることが法的な大前提となります。輸入者がこの検査を任意に拒否することは認められず、検査が完了しない限り輸入許可という行政処分が下されることもありません。

(2)検査の目的と必要性

税関検査が行われる主な目的は、以下の通りです。

①申告された品名、数量、価格が、実際の貨物と一致しているかの確認

②麻薬、拳銃、爆発物などの禁制品や、知的財産を侵害する物品の流入阻止

③食品衛生法や植物防疫法といった、関税法以外の法令への適合性の確認

④適切な関税率を適用するための、品目分類(統計品目番号)の正当性の判断

(3)検査場所に関する規定

税関検査は、原則として税関長が指定した場所で行う必要があります。これは関税法第六十九条第一項に規定されており、実務上は指定地検査と呼ばれております。

ただし、貨物が極めて巨大である場合や、危険物であるために移動が困難な場合、あるいは精密機械のように特定の環境下でしか開梱できない場合などは、例外的に指定された場所以外での検査が認められます。これは関税法第六十九条第二項に基づき、申告者が申請を行い、税関長が許可を与えた場合に限られます。この手続きを、実務上は指定地外検査と呼びます。

2 税関検査の具体的な手法と分類

税関は、すべての貨物に対して一律に検査を行うわけではありません。税関が保有する輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)による自動審査や、過去の取引実績、輸出入者の信頼性などに基づき、検査の要否や方法が決定されます。

(1)検査方法の三区分

実務上、検査の方法は以下の三種類に分類されます。

以下の表は、税関検査の種類とその内容をまとめたものです。

|検査の種類|検査の具体的な内容|主な対象貨物の例|

|見本検査|貨物の一部を少量抜き取り、税関官署に持ち帰って成分分析等を行う手法|化学薬品、食品、医薬品など|

|一部指定検査|梱包されている貨物の中から、税関職員が任意に数個を指定して開梱し、内容を確認する手法|一般的な雑貨、アパレル、工業製品など|

|全部検査|すべての貨物について開梱を行い、内容を網羅的に確認する手法。コンテナごとのX線検査も含む|密輸の疑念がある場合や、初めての取引など|

(2)検査の決定プロセス

税関における審査は、大きく三つの区分に分かれております。

区分一:即時許可(書類審査も検査も不要と判断されたもの)

区分二:書類審査(インボイス等の書類内容の確認が必要と判断されたもの)

区分三:検査(書類確認に加え、現物の検査が必要と判断されたもの)

株式会社Zの事例のように、突如として全部検査の対象となる背景には、ランダム抽出による定期検査のほか、該当する品目の原産国における偽装事例の増加や、過去の申告内容との微細な不整合などが検知された可能性があります。

3 搬入前検査と事前検査制度の活用

輸入手続きの迅速化を図るため、貨物が保税地域に到着する前、あるいは輸入申告の前に行われる検査制度も存在します。

(1)輸出時の搬入前検査

輸出貨物については、再梱包が困難な特殊な貨物などの場合、保税地域への搬入前に検査を受けることで、輸出許可までの時間を短縮できる場合があります。

(2)輸入時の事前検査

輸入申告の前に、輸入者が貨物の内容をあらかじめ確認したい場合に利用される制度です。これにより、誤った申告を防ぎ、結果としてスムーズな通関を実現することが可能となります。ただし、この段階で関税関係書類の提示を求められることも多いため、正確な資料準備が欠かせません。

4 他法令との関連性と税関の役割

税関検査は、関税法のみならず、他の多くの法令(他法令)の遵守状況を確認する役割も担っております。

(1)他法令の証明義務

関税法第七十条には、他の法令の規定により許可や承認、検査などを必要とする貨物については、輸出入申告の際に、それらの手続きを完了していることを税関に対して証明しなければならないと定められております。

(2)証明ができない場合の措置

この証明がなされない限り、税関長は輸出または輸入の許可を下すことができません。例えば、食品を輸入する際の食品衛生法に基づく届出や、植物を輸入する際の植物防疫法に基づく検査などがこれに該当します。税関検査の過程で、これらの他法令への不適合が判明した場合、貨物の廃棄や積戻しを命じられるといった、極めて厳しい事態を招くことになります。

5 不適切な申告や検査拒否に伴う法的リスク

税関検査において、意図的な過少申告や隠蔽が発覚した場合、輸入者は多大な不利益を被ることになります。

(1)行政罰としての加算税

本来納付すべき税額よりも少なく申告していた場合、差額税額に対して十パーセントから十五パーセントの過少申告加算税が課されます。さらに、隠蔽や仮装といった悪質な行為が認められた場合には、関税法第十二条の四に基づき、三十五パーセントから四十パーセントという極めて高い税率の重加算税が課せられることとなります。

(2)刑事罰の適用

虚偽の申告を行い、または検査を妨害して不正に輸入を行った場合には、刑事罰の対象となります。関税法第百十一条には、無許可で貨物を輸出入した者に対し、五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金、またはその両方を科すことが規定されております。

6 トラブル発生時における弁護士の役割と介入のメリット

税関検査によって貨物が長期間留め置かれたり、税関側と見解の相違が生じたりした場合、法律の専門家である弁護士の関与が極めて重要となります。

(1)税関への法的釈明と意見書の提出

税関からの照会に対し、法律的な論点を整理した意見書を作成し、提出いたします。特に関税分類の妥当性や、関税評価額の算定根拠について、過去の裁決例や判例に基づいた専門的な主張を行うことで、不当な不許可処分や課税処分を回避できる可能性が高まります。

(2)不服申立て手続きの代理

税関長の下した処分に対して納得がいかない場合、行政不服審査法および関税法に基づき、再調査の請求や審査請求を行うことが可能です。これは関税法第八十九条などに規定されている正当な権利です。弁護士はこれらの複雑な手続きを代理し、輸入者の権利を守るために尽力いたします。

(3)他法令等に関わる行政調整

輸入トラブルは関税法のみならず、経済産業省や厚生労働省などの管轄法令が絡み合うことが多々あります。複数の官庁にまたがる調整が必要な局面においても、弁護士は包括的な法的アドバイスを提供し、解決策を提示することが可能です。

7 株式会社Zの事例に対する具体的なアドバイス

相談事例の株式会社ZのS部長に対しては、以下の順序での対応を推奨いたします。

①検査の理由と詳細な状況の把握

まずは通関業者を通じて、税関がどのような懸念を持って全部検査を指定したのかを正確に聞き出す必要があります。単なるランダム抽出なのか、それとも品目分類や原産国表示に関する具体的な疑義があるのかによって、対応策は大きく異なります。

②根拠資料の再点検と迅速な提供

税関から資料の提出を求められた際、インボイスや契約書だけでなく、製造工程図や原材料表など、申告の正当性を証明できる書類を速やかに提示してください。提出が遅れるほど、検査の完了は先延ばしになります。

③納期遅延に対する契約上の措置

販売先との関係では、税関検査による遅延が契約上の不可抗力条項に該当するかどうかを確認する必要があります。法的な観点から、取引先への通知内容や賠償責任の有無を精査することが重要です。

④今後のコンプライアンス体制の構築

今回の検査を機に、社内の輸出入管理体制を見直すことをお勧めいたします。継続的な適正申告の実績を積み重ねることで、将来的にAEO制度(認定事業者制度)の承認を受けることができれば、検査率の低減や迅速な通関が可能となります。

8 まとめ:貿易実務における法的備えの重要性

税関検査は、国際貿易に携わる企業にとって避けては通れない手続きの一つです。しかし、その根拠となる法律を正しく理解し、適切に対応することで、ビジネスへの影響を最小限に抑えることが可能です。

関税法第九十四条には、輸入者に対し、輸入貨物に関する帳簿や書類を一定期間保存する義務が課せられております。日頃からの適正な文書管理こそが、いざ検査が行われた際の最大の防波堤となります。

貿易実務は、日々変化する国際情勢や法改正の影響を強く受けます。専門的な知見を持つ弁護士をパートナーに持つことで、不測の事態にも冷静かつ迅速に対応できる体制を整えておくことが、グローバルなビジネスを展開する上での大きな強みとなります。

9 弁護士への相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、通関実務と法務の両面から高度なサポートを提供できる体制を整えております。

税関検査によって貨物が止まってしまい困っている、税関から課税処分の通知を受けて対応に苦慮している、あるいは将来的な通関遅延リスクを低減したいといったご要望に対し、個別の案件に応じた法的アドバイスをご提供いたします。

輸出入や通関に関して、少しでも不安な点や疑問がございましたら、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引における「売手」と「買手」

2021-03-23

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は国内でアパレルショップを経営しております。この度、イタリアのメーカーから直接商品を購入することになりましたが、実際の契約手続きや代金の支払いは、香港にある仲介会社を通じて行っています。貨物はイタリアから日本へ直送されますが、インボイス(仕入書)の発行元は香港の会社です。この場合、税関への輸入申告において、誰を『売手』とし、誰を『買手』として申告すべきなのでしょうか。また、仲介手数料が発生している場合、それも課税価格に含まれるのでしょうか。正しい申告を行わなかった場合、後日税関の事後調査で指摘を受けるのではないかと不安を感じております。専門的な視点から、売手と買手の正確な認定基準について詳しく教えてください」

このような複雑な商流を伴う取引は、現代の国際貿易において決して珍しいものではありません。しかし、輸入通関の土台となる課税価格を決定するためには、まず「誰と誰の間の取引が、法的な輸入取引に該当するのか」を正確に見極める必要があります。

本日は、関税定率法に基づく売手と買手の考え方について、具体例を詳しく解説いたします。

1 原則的な課税価格の決定方法と売手・買手の定義

輸入貨物の課税価格を算出する際の最も基本的なルールは、関税定率法第四条第一項に定められています。

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の輸入取引(買手が本邦に住所、居所、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有しない者であるものを除く。)がされた場合において、買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加算した価格とする」 この条文が示す通り、課税価格は「買手」から「売手」へ支払われる価格がベースとなります。したがって、実務の第一歩として、この両者を正しく特定することが不可欠である点

(1)売手及び買手の本質的な意義

輸入取引における売手及び買手とは、単に書類上に名前が記載されている者ではなく、「実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者」を指します。

具体的には、以下のような役割と責任を負っているかどうかが判定の基準となります。

①自ら輸入貨物の品質、数量、価格、納期などの取引条件を交渉し、決定していること

②貨物の瑕疵(不良品)や数量不足、輸送中の事故、あるいは代金の回収不能といった経済的なリスクを自らの責任で負担していること

典型的な取引では、海外の輸出者が売手、日本の輸入者が買手となりますが、必ずしも「荷送人=売手」「荷受人=買手」とは限らない点に注意が必要です。

(2)具体例:仲介者が介在する場合の判定

冒頭の相談事例のように、メーカーと国内業者の間に仲介者が入る場合、その仲介者が単なる「代理人」なのか、それとも自らリスクを負う「売手」なのかによって、課税価格の計算根拠が変わります。仲介者が在庫リスクを負わず、単に手数料を受け取って取引を仲介しているだけであれば、売手は元のメーカー、買手は国内業者となります。この場合、買手から売手に支払われる代金が課税価格の基礎となります。

2 「輸入(申告)者」と「売手・買手」の関係

実務において混同されやすい概念に「輸入(申告)者」があります。輸入者とは、関税法上の用語であり、一般的には保税地域から貨物を引き取ろうとする者を指します。

(1)輸入者の資格

輸入者には、売手であっても買手であってもなることができます。

例えば、海外の売手が自ら輸入手続きを行い、日本国内の倉庫まで貨物を届ける(DDP条件など)場合、売手が輸入者となることもあります(税関事務管理人等の適正な手続をとる必要はあります。)。しかし、誰が輸入者であるかに関わらず、課税価格の算出の基礎となるのは、常に「輸入取引における売手と買手の間の取引価格」である点には注意が必要です。

(2)連続する転売取引がある場合

貨物が日本に到着するまでの間に、A社(外国)からB社(外国)、さらにB社からC社(日本)へと転売が繰り返されることがあります。この場合、どの取引が「本邦に到着させるために行われた輸入取引」に該当するかを判定しなければなりません。基本的には、日本への輸出を目的として締結された最後の売買契約が輸入取引とみなされます。この判定を誤ると、不当に低い価格や、逆に過大な価格で申告してしまうリスクが生じるため、慎重な検討が求められる点

以下に、売手と買手の認定における主要な確認項目を整理した図表を掲載いたします。

【表1 売手・買手の認定における判断基準】

項目名/具体的な確認内容/判定への影響

取引交渉の主体/価格や数量を誰が決定しているか/主導権を持つ者が当事者となる

代金の支払義務/誰が売手に対して送金を行うか/支払う者が買手となる

貨物の損傷リスク/輸送中の事故の損失を誰が被るか/リスク負担者が当事者となる

瑕疵担保責任/不良品の返品や交換を誰が要求するか/責任を追求する者が買手となる

転売の有無/輸入後に誰が誰に対して販売するか/最終的な輸出目的取引を特定する

3 実務上のトラブル事例と法的リスク

売手や買手の認定を誤った状態で輸入申告を継続すると、後日の税関事後調査において多額の追徴課税を受ける可能性があります。

(1)価格の過少申告リスク

例えば、実際には買手が売手のために別途負担している費用があるにもかかわらず、インボイスに記載された表面上の金額だけで申告してしまった場合、それは過少申告とみなされます。関税法に基づき、不足分の関税・消費税に加え、過少申告加算税や延滞税が課されることとなる点

(2)特殊関係の影響

売手と買手の間に、親子会社のような「特殊関係」がある場合、その関係によって取引価格が恣意的に低く設定されていないかが厳しくチェックされます。関税定率法第四条第二項の規定により、特殊関係が価格に影響を与えていると判断された場合、実際の取引価格を課税価格として認めてもらえないことがあります。

【表2 輸入取引に関連する各主体の役割比較】

呼称/法的な定義や役割/課税価格決定における位置付け

売手/自己の計算とリスクで貨物を販売する者/価格の受領者であり計算の基礎

買手/自己の計算とリスクで貨物を購入する者/価格の支払者であり計算の主体

荷送人/貨物の発送手続きを行う実務上の主体/必ずしも売手とは限らない

荷受人/貨物の受け取りを行う実務上の主体/必ずしも買手とは限らない

輸入(申告)者/税関に対して輸入の申告を行う者/買手または売手等がなり得る

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の決定は、単なる事務的な手続きではなく、複雑な法令が絡み合うプロセスです。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、貿易実務で生じるトラブルに対して、アドバイスを提供することが可能です。

特に、以下のような課題でお困りの際には、お気軽にお問い合わせください。

①複雑な仲介取引や連続取引における「売手」及び「買手」の正確な法制度上の認定

②税関の事後調査に対する立ち会いおよび法的な主張の構成

③特殊関係にある企業間の取引価格の妥当性に関するリーガルオピニオンの作成

④関税法違反等で貨物が差し押さえられた場合の権利救済手続き

⑤国際売買契約書の作成・レビューを通じた、通関リスクの未然防止

輸入手続き上の疑問や不安を放置することは、将来的な経営リスクを抱え続けることと同義です。少しでもご不安な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入事後調査における事前通知と備え

2021-01-26

0 はじめに:相談事例

まずは、当事務所に実際に寄せられた相談をベースにした、典型的な事例をご紹介いたします。

【相談者:中堅輸入商社 C社 物流管理部長】

「当社は長年、家具や雑貨の輸入を行っております。先日、事前の連絡もなく、突然税関の職員が数名、本社に調査にやってきました。『輸入事後調査を実施します』とのことでしたが、通常は事前に電話や書面で通知が来るものだと思っていましたので、非常に驚き、現場は混乱してしまいました。その日は主要な担当者が不在だったこともあり、十分な説明や資料の提示ができませんでした。このように、事前通知なしで調査が始まることは法的に許されるのでしょうか。また、抜き打ち調査が行われる場合にはどのような背景があるのでしょうか。今後の適切な対応方法を知りたいです。」

このような「突然の事後調査」に直面した企業の動揺は計り知れません。

以下では、輸入事後調査における通知の仕組みと、根拠となる法令、そして企業が取るべき対策について詳しく解説いたします。

1 輸入事後調査と事前通知の原則

輸入事後調査とは、貨物の輸入許可後において、税関が輸入者の事業所などを訪問し、申告内容の適正性を帳簿や書類等に基づき確認する手続きです。

【事前通知の運用実態】

一般的に、税関は調査の円滑な遂行と輸入者側の準備期間を考慮し、調査実施の数週間前に電話または書面にて事前通知を行う運用をしています。これにより、輸入者は過去の輸入書類を整理し、担当者のスケジュールを確保することが可能となります。しかし、この事前通知は「絶対的な義務」ではないという点に、実務上の大きな落とし穴があります。

2 事前通知を規定する法令とその例外

輸入事後調査の事前通知については、関税法そのものよりも、行政手続法および税務調査の手続きに準じた運用がなされています。

関税法第105条第1項第6号では税関職員の検査権限が規定されていますが、通知に関しては国税通則法第74条の9第1項の規定が実務上の指針となっています。

「税務署長等は、国税庁等又は税務署の職員に納税義務者に対し実地調査を行う場合には、あらかじめ、当該納税義務者に対し、その旨及び調査を開始する日時、調査を行う場所その他政令で定める事項を通知するものとする。」

【事前通知を要しない場合の例外規定】

しかし、同法第74条の10には、以下のような重要な例外規定が存在します。

「税関長は、申告の内容、過去の調査の結果、事業の内容その他の事情に照らし、事前通知をすることによって、適正な税額等の把握を困難にするおそれ、又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、前三項の規定にかかわらず、事前通知をすることなく調査を行うことができる。」

つまり、税関が「通知をすると証拠隠滅や口裏合わせをされるリスクがある」、あるいは「正確な実態把握ができない」と判断した場合には、法的根拠に基づいて、予告なしの調査(無予告調査)を強行することが認められているのです。

3 事前通知がなされない具体的な判断基準

税関の公式見解や実務指針に基づくと、以下のような状況下では事前通知が行われない可能性が高まります。

①隠蔽・仮装の疑い:過去の申告において意図的な過少申告や書類の偽造が発覚している場合

②事業形態の特殊性:現金取引が主体である、あるいは在庫の流動性が極めて高く、抜き打ちでなければ実数把握が困難な場合

③第三者からの情報提供:脱税や不当申告に関する具体的な情報が税関に寄せられている場合

ただし、冒頭の相談事例のように、特に身に覚えがない企業であっても、税関側の「リスク分析」の結果として無予告調査の対象に選定されるケースは十分にあり得ます。

4 輸入事後調査の形式と通知の有無(比較一覧表)

事後調査の形態と通知の関係を、以下の表にまとめました。

【表:輸入事後調査の種類と運用の比較】

調査の形態 事前通知の有無 主な目的と特徴 輸入者側の対応準備
一般事後調査 原則としてあり(4週間前程度) 申告全体の適正確認、帳簿管理状況の把握。 過去5年分のインボイス、契約書等の整理。
無予告調査 法令に基づきなし(当日訪問) 隠蔽・仮装の防止、現況の即時把握。 弁護士への即時連絡、当日の応接体制の確認。
特別調査 あり、またはなし 特定の重要案件や、大規模な脱税疑念がある場合。 専門チームの編成、徹底した内部調査。
簡易的な照会 なし(電話や書面) 単一の輸入申告に対する疑義の解消。 該当資料の迅速な提出。

5 無予告調査が行われた際の対応の注意点

もし事前通知なしに税関職員が訪問してきた場合、輸入者はどのように振る舞うべきでしょうか。

5-1 身分証の確認と調査目的の把握

まずは、来訪した職員の「税関職員証」の提示を求め、所属部署と氏名を確認します。

また、関税法第105条第1項に基づき、どの範囲(どの貨物やどの期間)についての調査なのかを明確に質問する必要があります。

5-2 専門家(弁護士等)への連絡

無予告調査であっても、弁護士等の立ち会いを求める権利はあります。

職員に対し、「顧問弁護士が到着するまで待機してほしい」と伝えることは正当な要求です。ただし、調査自体を不当に拒否することは、関税法上の罰則(検査拒否罪)の対象となるため、協力姿勢を示しつつも慎重に対応する必要があります。

5-3 書類の提示と預かり証

税関職員が書類の持ち出し(領置)を希望した場合は、必ず「預かり証」の発行を求めてください。どの書類が回収されたかを正確に把握しておかないと、その後の防御活動に支障をきたします。

6 「通知を待つ」ことのリスクと事前対策

「通知が来てから準備すればよい」という考えは、無予告調査の可能性を排除している点において非常に危険です。万が一の抜き打ち調査で不適切な対応をしたり、資料が散逸していたりすると、本来は「過失」であった間違いが「隠蔽」と疑われ、重加算税を課されるリスクが増大します。

【推奨される事前対策】

①自主的な内部監査:年に一度は過去の申告書類を抽出し、実際の送金記録や契約書との整合性をセルフチェックする。

②保存書類のデジタル化と整理:関税法で義務付けられている帳簿等の保存期間(原則7年)を遵守し、誰でもすぐに出せる状態にしておく。

③対応マニュアルの策定:突然の訪問時に、誰が受付をし、誰が対応責任者となるかを決めておく。

7 当事務所が提供する事後調査サポート

輸入事後調査は、事前の通知があってもなくても、輸入者にとって精神的・実務的に大きな負担となります。税関側の意図を正確に汲み取り、不当な不利益を被らないようにするためには、通関と法律の両面を知り尽くしたアドバイザーが必要です。

当事務所の代表弁護士は通関士資格を有しており、数多くの事後調査において輸入者の立ち会いを行ってまいりました。

①調査前のシミュレーション:現状の申告体制の脆弱性を指摘し、是正をサポートします。

②調査当日の立ち会い:税関職員の質問に対し、法的に適切な範囲で回答を補佐し、現場の混乱を防ぎます。

③調査後の交渉と修正申告:指摘事項に対する反論書面の作成や、加算税の減免に向けた交渉を代理します。

8 おわりに

輸入事後調査の通知は、あくまで税関側の「配慮」による運用の一環であり、法的権利として保証されているものではありません。いつ、どのような形で調査が始まっても揺るがない体制を築いておくことこそが、真のコンプライアンス経営といえます。

「もし今、税関が来たらどうなるだろうか」と少しでも不安に感じられた方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。事後調査を恐れるのではなく、適切に受け入れ、乗り越えるためのパートナーとして貴社を支えます。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入事後調査の罰則リスクと正しい対応策

2021-01-07

1 はじめに:輸入事後調査を甘く見てはいけない理由

「税関の輸入事後調査は、強制捜査ではない『任意』の調査だから、適当にあしらっておけば大丈夫だろう」

もし貴社がそのようにお考えであれば、今すぐその認識を改める必要があります。

実際に当事務所に相談に来所された方の中で、稀にですがこのようなことを仰る方がおりますが、非常にリスクの高い認識と言わざるを得ません。

2026年現在、コンプライアンス遵守の機運はかつてないほど高まっており、輸出入実務における「誠実な対応」こそが、あらゆる面で企業を守る最大の防御となります 。

結論から申し上げます。

輸入事後調査は形式上「任意」ではありますが、法令に基づく強力な「質問検査権」に裏打ちされており、不適切な対応には罰金等の刑事罰が科される明確なリスクが存在します 。

本記事では、輸入事後調査で陥りやすい誤解と、実務家(通関士資格を有する弁護士)の視点から見た、不測の事態を避けるための最初に一歩と言える知識を解説していきます。

2 「任意調査」に潜む法的強制力と罰則の真実

輸入事後調査の法的性格は、関税法に基づいています。

確かに輸入事後調査は、税関職員がいきなり土足で踏み込んでくるような強制捜査ではありません(反則調査の場合はこのようなケースもございます)。

しかし、法は調査の有効性を担保するために、以下の厳しいルールを設けています 。

(1)帳簿書類等の提示・提出拒否のリスク

調査の際、税関職員から取引に関する帳簿や書類(インボイス、パッキングリスト、契約書、送金記録など)の提示を求められることがあります。これに対し、「面倒だ」「見せたくない」といった主観的な理由で拒むことはできません。正当な理由なくこれらを拒否、または妨害した場合、「1年以下の懲役(現在は拘禁刑)又は50万円以下の罰金」という刑事罰の対象となる可能性があるのです。

(2)虚偽記載・書類改ざんの代償

最もやってはいけないのが、自社にとって不都合な事実を隠すために書類を「修正」したり、虚偽の回答を行ったりすることです。

「少し数字をいじれば追徴課税を免れられる」といった安易な判断は、前述の刑事罰を招くだけでなく、税関からの社会的信用を完全に失墜させます。一度「不誠実な輸入者」とみなされれば、その後の通関検査が厳格化されるなど、長期的なビジネス上のデメリットは計り知れません。

書類を改ざんすることは絶対に行ってはいけません。

3 「個人の私物」なら隠せるという大きな誤解

実務の現場でたまに聞かれるのが、「会社名義ではない個人のスマホや手帳、私的なノートなどは調査の対象外であり、提示を拒否できるはずだ」という主張です。

しかし、これは大きな誤解です。

税関職員の調査権限は、輸入者の事業に関連する事項に及びます。そのため、たとえ形式上は個人の私物であっても、そこに輸入業務に関するやり取り(SNSのチャット履歴、個人的なメモ書きなど)が含まれている、あるいは含まれていると疑われる合理的な理由がある場合、提示・提出義務が発生することがあります 。

「私物だから」という一点張りで頑なに拒絶し続けることは、かえって「何か隠蔽しているのではないか」という強い疑念を抱かせる結果となり、調査を長期化させる一因となります。このような事態を避けるためにも、日常的な準備をはじめ、輸入事後調査の実施が決まった時点での徹底した準備、調査当日の専門家の立ち会いは非常に重要であり、現場では法的にどこまでが開示範囲かを冷静に見極める必要があります 。

4 専門家が教える:輸入事後調査に向けた「3つの備え」

事後調査の通知が届いてから慌てるのではなく、日頃から以下の管理体制を構築しておくことが、結果として貴社を守ることにつながります 。

①結論先行の説明ができるような備え

調査当日は、税関職員に対して「結論から述べる」回答を徹底した方がスムーズです。

調査において「当時は適当に行っており……」といった世間話や曖昧な前置きは不要ですし、徒に調査を長引かせることにつながります。

「今回の取引価格の根拠は●●契約に基づくもので、資料はこれです」とはっきりと提示することで、調査はスムーズに進みます 。

②一次情報の整備と定期確認

法令は常に変化します。

過去の成功体験に頼るのではなく、常に最新の関税法、関係政省令を確認しておく必要があります。

また、社内の業務マニュアルも、「●年●月の法改正に対応済み」といった形で常にアップデートしておくことが、組織としての信頼性を高めます 。

③「よくある質問」をネタ帳にする

社内で頻繁に発生する「この経費は加算要素になるのか?」、「無償提供品はどう扱うべきか?」といった疑問をリスト化し、専門家のアドバイスを受けて整理しておきましょう。これがそのまま事後調査時に指摘される可能性のある論点となります。

5 通関士資格を有する弁護士によるサポート

輸入事後調査は、単なる事務手続きではありません。

それは「法律の解釈」と「実務の運用」が複雑に絡み合う場です。

当事務所の代表弁護士は、弁護士であると同時に、「通関士」試験に合格しており「通関士」の資格を保有しております。

これは、教科書的な法律論だけでなく、現場での「生の声」や「慣習」を把握していることを意味します 。

輸入事後調査の対応においては、例えば以下のようなサポートを提供しております。

①事前準備:過去数年分の申告書類を精査し、リスク箇所を事前に特定します。

②当日立会:不当な質問や範囲外の検査に対しては、法的根拠に基づき即座に異議を申し立てます。

③事後交渉:万が一の指摘事項に対しても、修正申告の妥当性を精査し、過度なペナルティを防ぎます。

「とりあえず自分で対応してみよう」という判断が、取り返しのつかないデメリットを招く前に、ぜひ一度ご相談ください。

輸入事後調査においては事前にどの程度準備できるかが調査の結果の9割を占めると言っても過言ではありません。

6 お問い合わせ

輸入事後調査に関する不安や、具体的な対策についてのご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法規制に基づき内容を改定

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