Archive for the ‘コラム~税関対応、事後調査対応~’ Category

輸入申告とロイヤルティの扱い

2025-11-12

はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介

本日は、輸入実務において最も盲点となりやすく、かつ税関の事後調査において巨額の追徴課税の引き金となる「ロイヤルティ(権利使用料)の加算申告漏れ」について、その法的構造から実務的な防衛策までを網羅的に解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入価格とロイヤルティ支払いを切り離して考えていたことが、いかに法的な落とし穴となるかを理解する重要な一助となります。

【相談者】

東京都内で海外ブランドのアパレル製品および雑貨の輸入販売を行うC社 物流管理部長 D氏

【相談内容】

「当社は、フランスの有名ブランドE社とライセンス契約を締結し、E社が指定するベトナムの縫製工場から商品を継続的に輸入しております。輸入申告価格は、ベトナムの工場に支払う商品の実単価に基づいて行ってきました。一方で、ブランド使用料であるロイヤルティについては、日本国内での販売数量に応じて、四半期ごとにフランスのE社へ直接送金しております。これはあくまで国内販売活動に伴う費用であり、輸入時の貨物代金とは別物であると認識しておりました。しかし、先日の税関事後調査において、このロイヤルティは関税定率法に基づき課税価格に加算すべき要素であると指摘されました。過去三年分に遡ってロイヤルティ総額に対する関税および消費税、さらには過少申告加算税の納付を求められ、その総額は一億円を超えております。契約書の表現一つで加算の是非が決まると言われましたが、具体的にどのような対策を講じるべきだったのでしょうか」

このような事例は、知的財産権が複雑に絡み合う現代の国際取引において、極めて頻繁に発生いたします。「販売後の利益から支払うのだから関税は無関係」という思い込みは、関税評価の法理から見れば非常に危険な誤解です。本日は、ロイヤルティがなぜ関税の対象となるのか、そしてそのリスクを回避するために契約書にどのような配慮が必要かを解説いたします。

1 ロイヤルティが課税価格に含まれる法的根拠とその構成要素

輸入貨物の関税を計算する基礎となる「課税価格」は、輸入者が売手に対して支払うインボイス価格(貨物の対価)だけで決まるものではありません。関税定率法第四条は、取引価格を基礎として課税価格を決定する際、特定の費用が含まれていない場合には、これを加算しなければならないと定めています。

(関税定率法第四条第一項第四号 使用料等の加算)

「輸入貨物に関連して買手により直接又は間接に支払われる特許権、意匠権、商標権その他これらに類する権利であって政令で定めるものの使用の対価(当該輸入貨物を国内において複製する権利の対価を除く。)のうち、当該輸入貨物の販売の条件として買手により直接又は間接に支払われるもの」

この条文に基づき、ロイヤルティが加算対象となるためには、以下の二つの要件を同時に満たす必要があります。第一に「輸入貨物に関連していること」、第二に「当該輸入貨物の販売の条件として支払われること」です。これらは、関税定率法基本通達4-13(使用料等の取扱い)において、さらに詳細な判断基準が示されています。実務上、多くの企業がこの二つの要件、特に「販売の条件」の解釈を見誤ることで、巨額の申告漏れを指摘されることになります。

2 「輸入貨物に関連している」か否かの判断基準

関連性の判断は、その権利が輸入貨物の製造、意匠、あるいは販売においてどの程度不可欠であるかによって決まります。例えば、輸入されるTシャツにブランドロゴが付されている場合、そのロゴを使用するための商標権料は、明らかに貨物に関連しています。また、輸入される精密機械に特定の特許技術が組み込まれている場合、その特許使用料も関連性を有します。一方で、輸入後に日本国内で行う「製造プロセス」に関する技術料や、国内でのみ使用されるシステムへのアクセス料などは、輸入時の貨物そのものには関連しないと判断される余地があります。しかし、税関は実質的な中身を重視するため、名目が「経営指導料」であっても、その実態が輸入貨物の意匠や商標の対価であれば、関連性ありとみなされます。

3 「販売の条件」という最大の争点

D氏の事例において最も重要なのが、この「販売の条件」です。これは、買手がロイヤルティを支払わなければ、売手がその貨物を販売してくれない、あるいは輸入者が貨物を入手できないという関係にあることを指します。売手(製造工場)と権利者(ライセンサー)が別法人であっても、両者の間に密接な関係がある場合や、ライセンス契約において「ロイヤルティを支払わない場合は商品の供給を停止する」旨の条項がある場合は、販売の条件に該当すると判断されます。税関は、ライセンス契約書と売買契約書の両方を精査し、ロイヤルティの不払いが輸入取引の継続にどのように影響するかを執拗に確認いたします。

4 契約書の表現が関税評価に与える影響とリスク分析

ライセンス契約書における特定の文言は、税関が「販売の条件」に該当するかどうかを判断する決定的な証拠となります。以下の表に、リスクが高い表現と、リスクを低減できる可能性がある表現を整理いたしました。

┌──────────────────────────────────────┐

│       契約書の文言による関税評価リスクの比較対照表         │

├───────┬──────────────────┬───────────┤

│比較項目   │リスクが高い表現(加算の蓋然性高) │リスクが低い表現の例 │

├───────┼──────────────────┼───────────┤

│支払の前提条件│本契約上の支払が履行されない場合、 │本契約は輸入後の国内販│

│       │商品の製造及び出荷を停止する。   │売活動のみを対象とする。│

├───────┼──────────────────┼───────────┤

│製造者の指定 │ライセンサーが指定する工場以外から │ライセンシーは製造者を│

│       │の輸入は一切認めない。       │自由に選択できる。  │

├───────┼──────────────────┼───────────┤

│ロイヤルティの│輸入価格(CIF価格)に一定率を  │国内における純利益額を│

│算出根拠   │乗じて算出する。          │基準として算出する。 │

├───────┼──────────────────┼───────────┤

│権利の性質  │商品の製造に必要なノウハウ及び   │商品の輸入後に行う二次│

│       │商標の一体的な使用許諾。      │的広告・販促のみの対価。│

└───────┴──────────────────┴───────────┘

B氏の事例では、ライセンス契約書の中に「ロイヤルティの支払いが遅延した場合、ライセンサーは製造委託先への製造承認を取り消すことができる」という条項が含まれていました。これが、ロイヤルティの支払いが「輸入のための不可欠な条件」であると認定される直接的な原因となったのです。

5 加算額の計算方法と按分実務

ロイヤルティが加算対象となる場合でも、支払総額のすべてを加算しなければならないとは限りません。一つの契約の中に、加算対象となる「貨物関連の権利」と、加算対象外となる「国内活動(広告宣伝、経営指導、複製権等)」が含まれている場合、その対価を客観的な証拠に基づいて区分(按分)することが認められています。

(関税定率法施行令第一条の四 権利使用料の額の算出方法)

この施行令では、輸入貨物に関連する部分とそうでない部分が混在する場合の計算方法が定められています。しかし、実務上は契約書において一括して「売上の十パーセント」などと定められていることが多く、区分が困難な場合には、税関から全額加算を求められるのが通例です。これを防ぐためには、契約の段階で「商標権料として五パーセント、国内マーケティング指導料として五パーセント」といった形で明確に内訳を規定し、それぞれの業務実態を証明する資料を保存しておく必要があります。

6 「これまで指摘されなかった」が通用しない事後調査の厳しさ

多くの企業が、「過去数年の事後調査では何も言われなかった」あるいは「税関はインボイスを毎回確認しているはずだ」と主張されます。しかし、輸入許可時の審査と、数年に一度の事後調査では、審査の深さが全く異なります。

(一)形式審査と実質審査のギャップ

輸入時の通関審査は、主に貨物の分類(HSコード)や他法令の規制確認に重点が置かれ、ライセンス契約書の中身まで詳細に確認されることは稀です。これに対し、事後調査では、専門の調査官が数日間にわたって企業の経理帳簿、海外送金履歴、そして各種契約書を徹底的に精査いたします。そこで初めてロイヤルティの支払いが発覚し、数年分の申告漏れが一挙に指摘されるという構図です。

(二)自己責任原則と信顧の原則

関税法は申告納税方式を採用しており、適正な申告を行う責任は一義的に輸入者にあります。過去に税関が見逃していたという事実は、法的に「現在の申告が正しい」ことを保障するものではありません。D氏のケースでも、この「自己責任原則」により、過失があったとみなされ、多額の付帯税が課される結果となりました。

7 事後調査で課されるペナルティの法的構造

申告漏れが指摘された場合、納付すべきは不足していた関税と消費税だけではありません。以下のような重い付帯税が課されます。

一 過少申告加算税(関税法第十二条の二):不足税額の十パーセント(または十五パーセント)。

二 重加算税(関税法第十二条の三):事実を隠蔽または仮装したと判断された場合、三十五パーセントから四十パーセント。

三 延滞税(関税法第十二条):本来の納期限からの日数に応じて年利換算で計算される利息的性質の税。

特に、ロイヤルティの支払いは多額かつ継続的であるため、数年分の不足税額にこれらの付帯税が加わると、企業のキャッシュフローに甚大なダメージを与えます。場合によっては、金融機関からの格付けに影響を及ぼし、事業継続そのものが危ぶまれる事態にもなりかねません。

8 ロイヤルティ加算トラブルを未然に防ぐための三つの具体的対策

このようなリスクを管理し、健全な貿易実務を継続するためには、以下の三つのアクションが不可欠です。

(一)評価申告制度(包括評価申告)の活用

ロイヤルティのように、輸入時点で金額が確定しない、あるいは加算の是非が複雑な要素については、事前に税関に対して「包括評価申告」を行うことができます。あらかじめ計算方法を税関に届け出て承認を得ておくことで、事後調査での不意の指摘を回避し、納税額の予見可能性を高めることが可能です。

(二)事前教示制度の利用

具体的な契約書案を税関に提示し、加算の対象になるかどうかの公式な見解を求める制度です。書面による回答を得ていれば、原則として税関はその回答に拘束されるため、将来の追徴リスクに対する強力な保険となります。

(三)ICP(輸入コンプライアンス・プログラム)の整備

物流部門だけでなく、経理部門と法務部門が連携し、海外へのすべての支払いが輸入申告に適切に反映されているかを定期的にチェックする体制を構築してください。特に、新しいライセンス契約を締結する際には、必ず関税評価の視点でのリーガルチェックを通すルール作りが重要です。

9 専門家による高度な法的サポートの重要性

関税評価は、税理士が扱う内国税の知識だけでは対応できません。また、一般的な通関業者は「言われた通りの金額で申告する」のが基本であり、契約書に潜む法的な加算リスクを自発的に指摘してくれることは稀です。当事務所は、関税法に精通した弁護士が、企業の契約実務と通関実務の橋渡しを行い、最適な解決策を提示いたします。

【当事務所の支援内容一覧表】

┌──────────────────────────────────────┐

│        当事務所が提供する関税法務ソリューション         │

├───────┬──────────────────────────────┤

│契約書レビュー│ライセンス契約における加算リスク文言の特定と修正案の提示  │

├───────┼──────────────────────────────┤

│事後調査対応 │税関調査当日の立ち会い、当局との法的見解の調整、主張書面作成│

├───────┼──────────────────────────────┤

│不服申立て  │不当な更正処分に対する再調査の請求、審査請求の代理     │

├───────┼──────────────────────────────┤

│包括評価申告 │煩雑な包括評価申告書の作成代行および税関窓口との折衝    │

├───────┼──────────────────────────────┤

│社内研修   │購買・経理・物流部門を対象とした関税評価リスク管理セミナー │

└───────┴──────────────────────────────┘

最後に、ロイヤルティの関税評価は、一度トラブルになるとその修正には多大な労力とコストを要します。しかし、契約締結前のわずかな配慮と、法令に基づいた適切な申告手続きを行うだけで、そのリスクの大部分はコントロール可能です。

「この支払いは本当に関税に関係ないのか」という疑問を常に持ち、専門家の知見を活用することが、グローバルビジネスを成功させるための鍵となります。

D氏のような苦い経験をしないためにも、貴社の現状の契約内容や申告体制に少しでも不安がある場合は、早急に専門家への相談を検討されることを強くお勧めいたします。

当事務所は、関税法務のスペシャリストとして、貴社の適正な貿易実務を全力でサポートし、不測の税務リスクから企業価値を守り抜くことをお約束いたします。

正確な知識に基づいた健全なコンプライアンス体制こそが、国際競争力を高める真の土台となります。

本稿が、貴社のグローバル展開における一助となれば幸いです。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

不服申立・審査請求の手続と戦略

2025-08-24

はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介

本日は、輸入実務において税関の事後調査や現場での判断に納得がいかない場合に、輸入事業者が取り得る法的な救済手段、すなわち「不服申立て」について詳述いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。行政庁の判断が必ずしも絶対ではないこと、そして正当な主張を行うための準備がいかに重要であるかを理解する一助となります。

【相談者】

神奈川県内で海外製高機能アウトドア用品の輸入販売を行うA社 代表取締役 B氏

【相談内容】

「当社は、北米のメーカーから特殊な防水透湿素材を使用したテントを輸入しております。長年、通関業者と相談の上、素材の特性から『テント』に該当するHSコード(関税率三.二パーセント)で申告してまいりました。しかし先日、税関の事後調査が入り、調査官から『本製品の構造は、テントというよりは簡易建築物に近く、別のHSコード(関税率六パーセント)を適用すべきである』との指摘を受けました。その結果、過去五年分に遡って約四千万円の不足税額と、過少申告加算税の納付を命じる更正処分が行われました。B氏は、製品の用途や業界の常識から見てテントであることは明白だと考えており、税関の解釈には到底納得できません。このような税関の処分を覆す方法はあるのでしょうか。また、どのような証拠を揃えれば、法的に有効な反論ができるのでしょうか。専門的な見地からの詳細な解説を求めています」

このような事例は、HSコードの分類や関税評価の解釈を巡って、輸入者と税関の見解が激しく対立する場面で頻繁に見受けられます。税関からの事後調査の結果、追徴課税や申告内容の否認などの処分を受けた場合でも、必ずしもその判断を受け入れる必要はありません。関税法上、輸入者には「不服申立て」を行う権利が認められており、正当な理由と証拠があれば処分が取り消されることもあります。本日は、税関の判断に対する不服申立手続と、その戦略的な活用法について、関連法令の条文を交えながら解説いたします。

1 不服申立手続の法的構造と行政不服審査法の基本原則

不服申立とは、税関が行った更正、決定、その他の処分に対して不服がある場合に、行政庁に対してその見直しを求める制度です。この根拠は、関税法第八十九条前後の規定および、一般法である行政不服審査法にあります。

(関税法第八十九条 審査請求)

第一項 関税法の規定による税関長の処分に不服がある者は、財務大臣に対して審査請求をすることができる。

輸入者が選択できる手続には、大きく分けて以下の二つがあります。

(一)再調査の請求(旧・異議申立)

処分を行った税関長自身に対して、もう一度判断をやり直すよう求める手続です。処分を下した部署とは別の審査部門が担当しますが、同じ税関内での審理となるため、比較的迅速な回答が期待できる反面、結論が覆りにくい傾向もあります。

(二)審査請求

財務大臣に対して、処分の取り消しを求める手続です。実際には、財務省内の「関税等不服審査会」という専門的な第三者機関が審理に関与するため、税関の判断を客観的に検証する機能が強く働きます。

なお、再調査の請求を経ずに直接審査請求をすることも可能ですし、再調査の請求の却下後に審査請求を行うこともできます。これを「審査請求と再調査の請求の選択制度」と呼びます。

2 不服申立ての対象となる具体的な処分例と法的論点

どのような場合に不服申立てを検討すべきか、実務上争点となりやすい項目を整理いたします。

(一)関税評価の否認(関税定率法第四条関連)

B氏の事例のようにロイヤリティの加算や、関連会社間取引における価格(移転価格)の妥当性が問題となるケースです。税関が「この費用は加算すべきだ」と判断しても、法的に「輸入取引の条件」を満たしていないことを立証できれば、処分を取り消せる可能性があります。

(二)HSコード(税番)の変更

統計品目番号の解釈に関する通則に基づき、税関がより高い税率の区分へ変更を求めてきた場合です。製品の材質、機能、用途について科学的な鑑定結果やカタログスペックを武器に、本来の区分を主張します。

(三)原産地規則の不適用

経済連携協定(EPA)の適用を否認され、特恵税率が受けられなくなった場合です。実質的変更基準を満たしていることを工程図等で再立証いたします。

(四)付帯税(加算税)の賦課。単なる事務ミスであるにもかかわらず、税関が「事実を隠蔽・仮装した」として重加算税(三十五パーセント)を課してきた場合、その認定の妥当性を争います。

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不服申立の検討対象となる主な税関処分一覧表

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処分の種類|争点となる主な法的根拠|不服申立による是正の可能性

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更正処分|関税定率法第四条(課税価格)|価格構成の再定義により還付の余地あり

税番変更|HS条約通則・関税率表注釈|製品特性の科学的立証により是正可能

特恵否認|各EPA原産地規則|原産資格の再証明により免税維持の可能性

重加算税賦課|関税法第十二条の四(隠蔽・仮装)|意図の不在を立証し過少申告加算税へ減免

輸入差止認定|関税法第六十九条の十一(禁制品)|非侵害の鑑定等により輸入許可を勝ち取る

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3 不服申立において勝利するために重視される四つのポイント

不服申立が認められるためには、単なる「納得がいかない」という感情論ではなく、極めて論理的かつ法的な攻撃材料が必要です。ここで、事前準備の重要性が浮き彫りになります。

(一)法令・通達・判例との適合性

税関の処分が、財務省の発出している「関税定率法基本通達」や、過去の裁判例、不服審査会の裁決例に照らして違法または不当であることを指摘します。税関自身が定めたルールに違反していることを突くのが最も効果的です。

(二)事実関係の精緻な再構成

B氏の事例であれば、当該テントの化学組成や製造プロセス、世界各国での分類実績などを証拠として提出します。税関が把握していなかった「新たな事実」を提示することが、判断を覆す鍵となります。

(三)証拠資料の質と量

インボイスや契約書だけでなく、海外メーカーとの交信記録、技術仕様書、業界団体の見解、さらには専門家による鑑定書など、客観性の高い資料をどれだけ揃えられるかが勝負です。

(四)行政庁の裁量権の逸脱・濫用

税関の判断が、合理的な根拠を欠いていたり、他社との比較において著しく公平性を欠いていたりする場合、裁量権の濫用として訴えることができます。

4 不服申立手続の実務フローと期限の厳守

不服申立てには、法律で定められた厳格な期限があります。一日でも過ぎれば、どんなに正当な理由があっても門前払い(却下)となります。

(行政不服審査法第十八条 審査請求期間)

第一項 審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して三箇月を経過したときは、することができない。

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不服申立手続(審査請求)の実務ステップ

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ステップ一:更正通知書の受領

税関から更正通知書(処分)が届く。この翌日から「三箇月」のカウントダウンが開始

ステップ二:処分の理由附記の精査

なぜそのような処分になったのか、税関の論理を徹底的に分析する

ステップ三:証拠の収集と法理論の構築

弁護士と協議し、税関の論理の矛盾を突く証拠(鑑定書等)を準備する

ステップ四:審査請求書の提出

財務大臣宛てに、処分の取り消しを求める理由を記した書面を提出する

ステップ五:反論書・意見書の応酬

税関(処分庁)からの弁明書に対し、再反論を行う。必要に応じて口頭意見陳述を行う

ステップ六:裁決の受領

財務大臣(審査会)による最終判断。認容(勝利)、棄却(敗北)、却下(形式不備)のいずれか

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5 戦略的活用:専門家(弁護士・通関士)による段階的交渉

不服申立にあたっては、弁護士を代理人とし、主張書面や資料を専門的に整備することで、審理側の印象や理解を大きく左右します。また、次のような戦略的な対応が有効です。

(一)更正処分の前段階における「事前折衝」

税関が正式な処分を下す前に、調査結果の「説明」を受ける機会があります。この時点で弁護士が立ち会い、法的な懸念を伝えることで、税関側が処分を断念したり、過少申告の範囲を縮小させたりする「調整」の余地を探ることができます。

(二)代替評価案の提示

税関の評価方法を全否定するだけでな、「法的にはこちらの評価方法を適用すべきである」といった代替案を提示することで、落としどころを見つけやすくします。

(三)行政訴訟への移行を見据えた審理

不服申立てで納得のいく裁決が得られなかった場合、裁判所へ「処分の取消訴訟」を提起することになります。不服申立手続は、いわば訴訟の前哨戦であり、ここでどれだけ証拠を出し尽くし、論点を整理できたかが、裁判の勝敗を決定づけます。

(関税法第九十三条 不服申立てと訴訟との関係)

第百五条(事後調査)の規定による更正、決定(中略)の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない。

これを「審査請求前置主義」と呼びます。裁判で争うためには、必ず不服申立てというプロセスを通過しなければなりません。

6 不適切な管理に伴う二次的被害と不服申立てによる名誉回復

税関の処分を甘んじて受け入れることは、単なる金銭的な損失に留まりません。

(一)社会的信用の失墜

特に重加算税を課された履歴は、税関のシステムにおいて「不適切な輸入者」として永久に記録されます。これにより、以後の全貨物に対する開梱検査や、AEO認定の剥奪を招きます。不服申立てにより処分が取り消されれば、これらの不利益な記録も抹消され、企業のクリーンな状態を回復することが可能です。

(二)他法令への波及

関税法での否認が、法人税や消費税、さらには外国為替及び外国貿易法(外為法)上の違反へと連鎖するリスクがあります。最初のボタンの掛け違いである税関処分を不服申立てで食い止めることは、企業防衛の要です。

7 専門家による法的サポートの重要性と当事務所の役割

不服申立手続は、法的な思考力、関税実務の知識、そして行政庁との粘り強い交渉力の三位一体が求められる、極めてハードルの高い作業です。輸入者が独力で財務省を相手に闘うのは現実的ではありません。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を併せ持っており、書面作成から交渉代理まで、全体をサポートいたします。

【当事務所が提供できる具体的な支援内容】

一 税関事後調査の立ち会いおよび処分回避のための法的助言

二 更正通知書の精査と、不服申立ての勝訴可能性(蓋然性)の鑑定

三 再調査の請求・審査請求における高度な主張書面の起案および提出

四 HSコード分類や関税評価に関する専門家としての法的意見書(リーガルオピニオン)の発行

五 行政不服審査会での口頭意見陳述の代理および当局への反論

六 万が一の敗訴時における、行政訴訟(更正処分取消訴訟)へのスムーズな移行

弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような実務慣行に基づいて判断を下しているのか、その「急所」を見抜き、効果的な一手を打つことができます。

8 まとめ:適正な権利主張こそがビジネスの安定を支える礎

本日は、税関の不当な判断に立ち向かうための「不服申立て」の仕組みと戦略について解説いたしました。B氏のようなケースであっても、当初から専門家と連携し、製品のテントとしての性質を法的に補強し、適切な不服申立手続を履行していれば、四千万円という過大な追徴を回避し、企業の信頼を守り抜くことが可能でした。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手との関係に府心するのは当然ですが、それ以上に「国家権力による処分の妥当性」を監視する視点を失ってはなりません。不適切な処分を不服申立てによって是正することは、一企業の利益を守るだけでなく、適正な通関制度の維持にも貢献するものです。正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

税関事後調査への初動対応

2025-07-25

はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介

本日は、輸入事業を営む上で最も緊張を強いられる局面の一つである「税関事後調査」について、その法的性質と、なぜ事前準備が「すべて」であると言い切れるのかについて、実務的な観点から詳述いたします。まずは、当事務所に寄せられる典型的な相談を模した、以下の架空事例をご覧ください。準備を怠ったことで招いた深刻な結末が、皆様への重要な教訓となるはずです。

【相談者】

神奈川県内で精密機械パーツの輸入卸売業を営むA社 代表取締役 B氏

【相談内容】

「ある日、税関から『税関事後調査実施のお知らせ』が届きました。B氏は、日頃から通関業者に正しく申告を任せているため、やましいことは何もないと考え、特段の準備をせずに当日を迎えました。調査官から、海外メーカーに支払った『技術指導料』や『金型費用』の帳簿提示を求められましたが、B氏はそれらが輸入申告価格に関係するとは夢にも思わず、資料を整理していませんでした。結局、資料の提出に手間取った挙句、本来加算すべきロイヤリティの申告漏れが過去五年分にわたって指摘されました。準備不足から、意図的な隠蔽ではないことを論理的に証明することができず、多額の不足税額に加え、重いペナルティである重加算税を課されてしまいました。B氏は、なぜ事前に専門家へ相談し、社内のデータを精査しておかなかったのかと後悔していますが、後の祭りです。今後どのように立ち直ればよいのか、また、どのような準備があればこの事態を防げたのか、専門的な見地からの詳細な解説を求めています」

このような事例は、輸入実務の現場において決して珍しいことではありません。ある日突然、税関から通知が届く、これは輸入事業者にとっては緊張の走る瞬間ですが、焦って不用意に動くことが、かえってリスクを高める場合もあります。しかし、最も危険なのは「何とかなるだろう」と準備を怠ることです。準備をしなければ、調査において自社の正当性を主張することは不可能であり、その場での対応は何の意味も持ちません。本日は、事後調査の通知を受けた際、輸入事業者として冷静かつ徹底的に取るべき初動対応と、その準備の重要性を解説いたします。

1 税関事後調査の法的根拠と当局の強力な権限

税関事後調査は、関税法に基づき実施される行政調査であり、輸入申告が適正であったかを事後的に確認するものです。

(関税法第百五条 税関職員の権限)

第一項 税関職員は、関税の確定又は徴収(中略)に関する調査のため、輸出入者、通関業者(中略)に対し、その業務に関する帳簿書類その他の物件の提示若しくは提出を求め、又はこれらの物件を検査することができる。

この条文が示す通り、税関職員には強力な調査権限が与えられています。拒否したり虚偽の回答を行ったりすれば、罰則の対象となります。調査は通常、過去三年から五年に遡って行われ、申告価格の妥当性、HSコードの分類、原産地、他法令の遵守状況が精査されます。B氏のように「通関業者に任せているから安心だ」という認識は、法的には通用しません。関税法上、納税義務者はあくまで輸入者であり、申告内容の最終的な責任は輸入者に帰属するからです。

2 事前準備の有無が「運命」を分ける理由

事後調査において、税関が最も注視するのは「事実が客観的な証拠によって裏付けられているか」という点です。準備をしないまま調査に臨むことは、武器を持たずに戦場に出るようなものです。

(一)「沈黙」や「不明」は「隠蔽」とみなされるリスク

調査官の質問に対し、「担当者がいない」「資料がどこにあるか分からない」といった曖昧な対応を繰り返すと、税関は「不当に事実を隠している」と判断し、重加算税の適用を検討し始めます。

(二)修正申告の機会を逸する

自ら誤りを発見し、調査の通知を受ける前に自主的に「修正申告」を行えば、過少申告加算税を免れることができます。しかし、何の準備もせず調査で指摘を受けてからでは、ペナルティは確定してしまいます。

(三)論理的な反論の構築

関税評価(価格決定)には高度な法解釈が伴います。例えば、海外への支払いが「ロイヤリティ」なのか「単なるサービス料」なのかという議論は、契約書の文言一つで結論が変わります。事前に契約書を読み込み、法的な論点を整理しておかなければ、調査官の指摘をそのまま受け入れるしかなくなります。

3 調査対象期間のデータ・帳簿整理の徹底

調査では、膨大な資料が求められます。これらを迅速かつ正確に提示できること自体が、企業のコンプライアンス姿勢をアピールすることに繋がります。

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税関事後調査において必須となる提示資料一覧表

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資料カテゴリー|具体的な書類名称|チェックポイント

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通関関係書類|インボイス、パッキングリスト、B/L|申告した価格とインボイス額の突合

輸送費用書類|運賃明細、海上保険証券、配送費領収書|運賃の加算漏れがないかの確認

契約・決済書類|売買契約書、代理店契約、送金依頼書|加算要素(ロイヤリティ等)の有無

会計帳簿|仕訳帳、総勘定元帳、買掛金台帳|インボイス以外の海外送金の目的確認

製造関連資料|原材料供給リスト、金型製作費、設計図|無償支給品(アシスト)の有無

知的財産資料|ライセンス契約書、商標使用許諾書|権原者と支払先の関係性の把握

他法令関係|承認書、認証書、検疫証明書の写し|関税法第七十条(他法令)の適合性

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電子帳簿保存法への対応も重要です。データを電子保存している場合は、必要な期間のデータを即座に抽出・表示できる閲覧環境を整えておくことが必須条件となります。

4 社内対応体制の構築と「模擬調査」の実施

調査は輸入部門だけの問題ではありません。調査が始まる前に、組織としての一体的な対応体制を整えなければ、矛盾した回答を生む原因となります。

一 調査窓口責任者の決定

輸入実務だけでなく、経理、総務、経営陣が連携する体制を構築してください。

二 過去の担当者との連携

五年前の申告内容について当時の担当者が退職している場合、その経緯を遡れる体制が必要です。

三 過去のトラブル履歴の整理

以前に税関から指摘を受けた事項や、自主的に行った修正申告の経緯を再確認してください。

ここで推奨したいのが、専門家を交えた「模擬調査」です。本番さながらの質問を自社に投げかけることで、資料の不備や説明の矛盾を事前に発見することができます。このプロセスを経ていない対応は、現場の混乱を招くだけです。

5 付帯税(ペナルティ)の恐ろしさと準備による軽減

不適切な申告が指摘された場合、本来の関税・消費税に加え、以下の付帯税が課されます。

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関税法に基づく付帯税(罰則金)の概要表

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付帯税の種類|賦課率(不足税額に対して)|賦課される主な条件

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過少申告加算税|十パーセント(一定額超は十五)|申告価格が不足していた場合

重加算税|三十五パーセント(一部四十)|事実の隠蔽、仮装があった場合

延滞税|年利約七パーセントから九パーセント|納期限から納付までの利息相当

無申告加算税|十五パーセント(一定額超は二十)|申告を行わずに輸入した場合

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B氏の事例のように、重加算税が課されるかどうかの境目は、まさに「適切な管理と準備」の形跡があるかどうかにかかっています。意図的な過失がなく、単なる事務ミスであることを論理的に証明できる資料が準備されていれば、重加算税を回避できる可能性が高まります。

6 してはいけない「致命的な初動対応」

準備不足のまま焦って行動すると、取り返しのつかない事態を招きます。

(一)税関からの通知を軽視し、放置する

通知から実地調査までの期間は限られています。この期間にどれだけ資料を精査できるかが勝負です。

(二)不正確な資料を慌てて作成・提出する

つじつまを合わせるために資料を改ざんすることは、それ自体が犯罪行為であり、関税法第百十一条の虚偽申告罪に問われる恐れがあります。

(三)調査目的を誤解し、「隠す」意識で対応する

隠そうとする姿勢は調査官の不信感を煽ります。

事実を正確に伝え、その上で法的な解釈の相違を主張するのが正しい姿勢です。

(四)関係部署間の連携不足

経理が把握している送金記録と、輸入部門が持っているインボイスの額が違う、といった事態を放置したまま調査に臨むのは自殺行為です。

7 弁護士・専門家への早期相談が「無意味な調査」を回避する

事後調査の結果、申告ミスや誤解に基づく指摘を受けることがあります。

特に以下のようなケースでは、弁護士や貿易専門家の早期関与が有効です。

一 ロイヤリティや無償支給品など、関税評価の解釈が複雑な場合。

二 関連会社間取引(Transfer Pricing)の価格設定が問題になる場合。

三 経済連携協定(EPA/FTA)の原産地資格の立証が必要な場合。

四 既に税関と見解が分かれている論点があり、修正申告を拒絶したい場合。

専門家が調査前から関与し、事前に「自主点検報告書」や「法的意見書」を整理しておくことで、税関への説明がクリアになり、結果として調査時間の短縮や、不当な指摘の回避、軽微な指導に留める可能性が飛躍的に高まります。準備がないままの調査対応は、当局の言いなりになるか、無駄な対立を生むかのどちらかであり、ビジネスの観点からは何の意味もありません。

8 不適切な管理に伴う二次的被害とレピュテーションリスク

法令違反の影響は、金銭的な制裁に留まりません。

(一)全件検査の対象(通関のブラックリスト化)

一度、重大なミスや隠蔽を指摘された企業は、税関のシステムにおいてリスクが高いとマークされます。その後の輸入貨物について、通常であれば数時間で終わる通関が、開梱検査により数日間足止めされるようになります。

(二)社会的信用の失墜

行政処分の事実は公表されることがあり、取引銀行からの融資姿勢や、大手取引先との基本契約の継続に多大な悪影響を及ぼします。

(三)AEO認定の剥奪

特定輸入者(AEO)などの認定を受け、物流の効率化を目指している企業にとって、事後調査での不備は認定の取消事由となります。

9 まとめ:適正な準備こそがビジネスの安定を支える礎

税関事後調査は、冷静に準備し、誠実かつ適切に対応すれば、大きな問題に発展するリスクを最小化することができます。逆に言えば、準備を欠いたままの対応は、いかなる交渉術をもってしても状況を改善することはできず、全くの無意味です。企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや法的権利の確認について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、調査に備えて日頃から証拠を積み上げておく必要があります。正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開や事後調査への万全な備えをサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入事後調査の現状

2025-01-06

本日は、輸入事業者の皆様にとって無視できない『輸入事後調査』についてご説明します。

この調査は、輸入事業者にとって避けて通れないものであり、正しく対応しなければ思わぬペナルティを受けるリスクがあります。以下では、輸入事後調査の概要、よくある指摘事項、また、適切な対応方法についてご説明いたしますので、ご参考となれば幸いです。

 

1 輸入事後調査とは?

輸入事後調査とは、輸入許可後に税関が輸入事業者の取引内容や書類を調査し、輸入申告内容が正確で適切であるかを確認する制度です。主に以下の目的があります。

①関税・消費税の適正な納付確認
輸入申告で申告した課税価格を踏まえて、納付した関税額や消費税額が正確かをチェックします。

②適法な輸入手続きの確保
禁制品や規制対象品が適切に取り扱われているかを確認します。

通常、税関は過去5年以内の輸入取引を対象に調査を行い、不適切な申告が見つかった場合には追加課税やペナルティが科されることがあります。

 

2 よくある指摘事項

輸入税関事後調査では、以下のような点がよく問題とされます。

①課税価格の過少申告
輸入品の価格を意図的または誤って低く申告し、関税や消費税を少なく納めるケースです。

たとえば、運賃や保険料を含めない形で価格を申告している場合や加算要素を適切に加算できていない場合には、課税価格が過少となる可能性があります。

②税率の誤適用
関税分類(HSコード)の誤りによる税率の適用ミスが挙げられます。

例えば、食品と工業用化学品で異なる税率が適用される場合、分類ミスが追加納税の原因となります。

③規制品の適正な取り扱い
輸入品が規制対象である場合、必要な許可や証明書を取得していないと指摘されることがあります。

⑤書類の保存不備
輸入事業者は、輸入取引に関する書類を5年間は保存する義務があります。保存が不十分だと、調査で適正な保存をするように指導される可能性があります。

 

3 税関事後調査への適切な対応

税関事後調査は、突然の通知で輸入事業者にとって大きな負担になることがあります。

しかし、適切に対応すれば負担やリスクを最小限に抑えることが可能です。

税関事後調査は法律的・技術的な知識が必要な場面が多くあります。関税法や輸入手続きに精通した弁護士や税関コンサルタントに相談することで、リスクを軽減できます。

改めてになりますが、輸入事後調査は、輸入事業者にとって避けられないプロセスですが、適切に準備し対応することでリスクを最小限に抑えることができます。不安や疑問を抱えたままでは、事業運営に支障をきたす可能性がありますので、ぜひ専門家にご相談ください。

輸入事業を安心して継続するためのサポートを全力で提供いたします。

お困りの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

輸入事後調査における重加算税の賦課事例

2024-02-12

はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介

本日は、輸入ビジネスを営む上で最も避けるべき深刻な事態の一つである、税関による重加算税の賦課について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務に携わる企業様にとって、法令遵守がいかに重要であるかを示す典型的な局面が示されています。

【相談者】

東京都内で海外製高級ブランド品の輸入卸売業を営むA社 代表取締役 B氏

【相談内容】

当社は長年、欧州のサプライヤーから高級ハンドバッグやアクセサリーを輸入し、国内の店舗へ販売しております。近年の円安による仕入れ価格の高騰に苦しみ、B氏は少しでも納税額を抑えたいという誘惑に駆られました。具体的には、輸出者から送られてくる正規のインボイスの価格を、画像編集ソフトを使用して実際の取引価格の七割程度に書き換え、その偽造した書類を基に通関業者へ輸入申告を依頼しました。通関は問題なく許可されましたが、先日、税関から輸入事後調査の通知が届きました。調査官は銀行の送金記録とインボイスの価格の不整合を鋭く追及しており、B氏は自らの行為が隠蔽又は仮装に該当し、重加算税を課されるのではないかと極度の不安に陥っています。もし重加算税が課された場合、金額的な不利益だけでなく、今後の事業継続にどのような影響が出るのでしょうか。また、意図的な改ざんが認められた場合、刑事事件に発展する恐れはあるのでしょうか。専門的な見地からの詳細な解説を求めています。

このような事例は、輸入ビジネスに従事するすべての事業者にとって、極めて深刻な法的リスクを孕んでいます。輸入を事業として行っている場合には、税関による輸入事後調査の実施は避けて通れない制度として存在します。輸入申告が適切に行われている場合には問題ありませんが、不適切な輸入申告を行っている場合には過少申告加算税や、重加算税が課される場合もありますので、十分注意が必要です。本日は、税関が公表している重加算税が賦課されたケースをご紹介しながら、その法的な重みと対策について解説いたします。

1 重加算税が賦課された具体的なケース

税関の事後調査において、単なる過失による計算ミスや解釈の誤りを超えて、悪質な意図が認められた場合には重加算税が賦課されます。以下に代表的な二つの事例を挙げます。

(一)輸入者が自らインボイスを改ざんしたケース

輸入者は、正規の価格が記載されたインボイスをもとに、自ら正規の価格よりも低い価格に書き換えたインボイスを作成し、課税価格の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装して、当該インボイスに基づき申告しました。このケースでは、輸入者が能動的に証拠書類を偽造しており、極めて悪質性が高いと判断されます。輸入事後調査によって発覚した結果、不足税額は1,846万円、そのうち重加算税として256万円が課されました。

(二)輸入者が輸出者と通謀して虚偽のインボイスを作成したケース

輸入者は、輸入申告前に正規の価格を認識していましたが、輸出者と通謀して、取引価格よりも低い価格を記載した虚偽のインボイスを輸出者に作成させ、課税価格の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装して、当該インボイスに基づき申告しました。いわゆる「アンダーバリュー」と呼ばれる行為を組織的に行った事例です。輸入事後調査によって発覚した結果、不足税額は561万円、そのうち重加算税として142万円が課されました。

なお、重加算税は、単なる記載ミスである場合には課されることはありません。隠蔽又は仮装により、納税申告をしない又は間違った納税申告を行った場合に課されることになります。

2 重加算税の法的根拠とその重み

重加算税の賦課基準は、関税法第十二条の四に明確に規定されています。

(関税法第十二条の四 重加算税)

第一項 納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

(中略)

第三項 第一項又は第二項の規定に該当する場合において、前条第一項(無申告加算税)に規定する納税申告書の提出が、その提出期限までになかつたことについて正当な理由がないときは、第一項又は第二項に規定する重加算税の額に、百分の十の割合を乗じて計算した金額をさらに加算するものとする。

このように、通常の過少申告加算税が十パーセント(一定の場合十五パーセント)であるのに対し、重加算税は三十五パーセント(無申告の場合は四十パーセント)という極めて高い税率が適用されます。さらに、過去五年前から現在までの間に、同一の税目について重加算税を課されたことがあるなど、繰り返して不正を行った場合には、さらに十パーセントが加算されるというペナルティも存在します。

3 隠蔽又は仮装の定義と実務的な判断基準

重加算税を賦課するためには、税関側が輸入者の行為を「隠蔽又は仮装」に該当すると証明する必要があります。

隠蔽とは、課税の基礎となる事実を隠し、あるいは証拠となる書類を破棄・隠匿する行為を指します。

仮装とは、存在しない事実を存在するように見せかけたり、実際の事実とは異なる外形を意図的に作り出したりする行為、例えば二重のインボイスの作成や、架空の契約書の作成などがこれに当たります。

実務上、税関の調査官は、輸入者のパソコン内のメール履歴、海外送金に使用された銀行口座の動き、さらに輸出者側が自国で申告した輸出価格との照合など、多角的な手法を用いてこれらの証拠を収集します。2026年現在の高度なデジタル捜査環境においては、削除したはずのデータや、海外との秘密のやり取りを完全に隠し通すことは実質的に不可能です。

4 輸入事後調査には十分注意が必要です

輸入事後調査は、適正な輸入申告が行われていたかどうかを事後的に調査されるものですが、輸入事業者の多くは、迅速に輸入することが中心的な興味・関心であり、輸入許可が下りている以上は問題ないものと考えてしまっているケースが多くあり、調査の結果予想以上の追徴税額が課される可能性もあります。

知らなかった、よくわからなかった、輸入申告の際に指摘してもらえれば適切に行った、等の反論をしたとしても、法的には意味がなく、輸入事後調査でこのような事態を回避するためには適切に輸入申告を行うことが何よりも重要です。

輸入申告においては、思わぬ費用を課税価格に加算する必要がある等、なかなか正確に把握することが困難な部分もあります。例えば、関税定率法第四条で規定されている「加算要素」が代表的です。

(関税定率法第四条 課税価格の決定の原則)

第一項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

一 当該輸入貨物の輸入港までの運賃及び保険料。

二 当該輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される仲介料その他の手数料。

三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により直接又は間接に、無償で、又は値引きして提供された次に掲げる物品又は役務の費用(中略)金型、原材料等。

四 当該輸入貨物に係る特許権、意匠権、商標権の使用の対価として買手により支払われる費用。

これらの費用を意図的にインボイスから除外して申告することは、たとえ輸出者との合意があったとしても、重加算税の対象となる「仮装」とみなされるリスクが非常に高いのです。

5 輸入者が構築すべき実務管理表

輸入事後調査を乗り切り、重加算税のリスクをゼロにするためには、日常的な文書管理と申告精度の向上が不可欠です。以下に、管理すべき主要項目を整理した実務表を掲載いたします。

【輸入取引適正化・文書管理チェックリスト】

確認項目|具体的な管理内容|法的な重要性

--------|----------------|------------

現実支払価格の確認|銀行の送金総額とインボイス価格が一致しているか|関税定率法第四条第一項

加算要素の有無|ロイヤリティや金型代を別途支払っていないか|関税定率法第四条第一項各号

インボイスの真正性|輸出者が発行した正規の原本をそのまま使用しているか|関税法第十二条の四(隠蔽仮装)

電子データの保存|メール、チャット、送金履歴を七年間保存しているか|電子帳簿保存法、関税法第九十四条

通関業者への指示|すべての取引条件を正確に通関業者に共有しているか|輸入者の納税義務

自主点検の実施|年に一度、過去の申告内容を再確認しているか|修正申告による加算税軽減

6 不適切な申告がもたらすビジネス上の二次被害

重加算税の賦課は、金銭的な損失だけに留まりません。B氏が懸念している通り、企業としての存続に関わる重大な悪影響を及ぼします。

一 社会的信用の失墜

税関による重加算税の賦課事例は、統計資料として公表されるほか、悪質な場合は社名が報道されることもあります。これにより、取引先からの契約解除や、金融機関からの融資停止を招く恐れがあります。

二 全件検査の対象

一度重加算税を課された事業者は、税関のシステム上で「要注意先」として登録されます。その後の輸入において、通常であれば簡易的に許可される貨物であっても、毎回現品検査が行われるようになり、納期の遅延や保管料の増大など、物流のスピードが著しく低下します。

三 AEO認定の剥奪

特定輸入者(AEO)などの優遇措置を受けている場合、その認定は即座に剥奪されます。信頼の回復には数年、あるいはそれ以上の期間が必要となります。

四 刑事告発のリスク

不足税額が多額である場合や、隠蔽工作が組織的で巧妙な場合、税関長は犯則事件として検察官に告発する義務を負います。

刑事罰として懲役刑や、法人に対する多額の罰金が科されることになれば、企業の再起は極めて困難となります。

7 専門家による法的防御とコンプライアンス支援

輸入を事業として行う以上は避けて通れない調査ですので、輸入手続や申告価格の計算方法について不安な点がある場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を併せ持つ強みを活かし、法務と実務の双方向から強力なバックアップを提供しております。

具体的サポートの内容

(一)輸入取引スキームのリーガルチェック

新しい取引を開始する際、その価格構成や加算要素の有無を事前に診断し、適正な申告方法を助言いたします。

(二)内部輸出入管理規定(ICP)の策定

社内の業務フローを可視化し、担当者による不正やミスを防止するための仕組み作りを支援いたします。

(三)税関事後調査への立ち会い

調査の通知が届いた段階から介入し、資料の整理、調査官への法的な説明、不当な指摘に対する抗弁など、一気通貫で対応いたします。

(四)自主的な修正申告の代理

税関の調査が入る前に自ら誤りを発見し、修正申告を行うことで、重加算税の賦課を回避し、過少申告加算税の負担を軽減させる戦略的な対応を行います。

8 まとめ:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道

本日は、輸入事後調査における重加算税の賦課事例と、その背後にある厳格な法規制について解説いたしました。B氏のようなケースであっても、早期に専門家のアドバイスを受け、誠実な対応に切り替えることで、最悪の結果を回避できる可能性があります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入事後調査の準備について

2024-01-03

はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介

ECサイトの利用の拡大、副業の拡大によって、輸入を事業として行う企業、個人は増加傾向にあります。通常の輸入に関しては、日本は申告納税方式が採用されておりますので、問題のある申告を行っていた場合でも輸入許可が下りてしまうことがあるのですが、そのような問題のある申告を取り締まり、事業者間の公平や法秩序を維持するために、輸入事後調査という税関による調査が行われております。まずは、当事務所に実際に寄せられた相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。

【相談者】

千葉県内で海外ブランドの雑貨やアパレルを輸入販売するA社 代表取締役 B氏。

【相談内容】

「当社は数年前から欧州やアジアのメーカーと直接契約し、自社サイトで商品の販売を行っております。これまでは通関業者に書類を渡し、特に問題なく輸入許可を得てきました。しかし先日、税関から輸入事後調査を実施するという通知が届きました。調査官からは、過去三年度分の輸入申告に関わる帳簿や銀行の送金記録、メーカーとの契約書などを準備するように言われています。当社は小規模な組織であり、日々の業務に追われて書類の整理が追いついておらず、一部の古いメールやチャットでのやり取りも削除してしまいました。もし資料が不足していたり、申告価格に誤りがあると判断されたりした場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。また、今からどのような準備をすべきでしょうか。

B氏は、これまでの申告がすべて適正であったと確信していますが、裏付けとなる資料の不備が法的な不利益に繋がることを非常に危惧しています」

このような事態は、輸入ビジネスに従事するすべての事業者にとって、避けては通れないリスクの一つです。適正な輸入申告価格を維持し、税関の調査に冷静に対応するためには、日頃からの法的な備えが不可欠です。以下、輸入事後調査の重要性と実務的な対応策について詳しく解説いたします。

1 輸入通関時の資料等は適切に保管する必要があります

輸入事後調査は、要するに、輸入申告が適切に行われていたかどうか、より具体的には適切な税番や申告価格で申告されていたか、ということを輸入通関時の資料や、送金関連資料、また、契約関連資料を踏まえて判断していくことになります。そのため、仮に適切に申告をしていたとしても裏付けとなる資料を適切に保管していない場合には、調査を行う税関の立場からすると適切な申告を行っていたかどうかを判断することができません。以上を踏まえ、まずは必要な資料を常日頃から保管しておくことが非常に重要です。これは、そもそも輸入事業者は上記の資料を保管する法的な義務がありますので当然のことではありますが、なかなか実現できていない事業者も多く存在する印象です。関税法第九十四条では、輸入者の帳簿備付け義務について以下のように規定されています。

(関税法第九十四条 帳簿の備付け等)

①貨物を輸出し、又は輸入しようとする者(中略)は、当該貨物の品名、数量及び価額その他財務省令で定める事項を記載した帳簿を備え付け、かつ、当該帳簿及び当該輸出入に関し作成し又は受領した書類(中略)を保存しなければならない。

②前項の帳簿及び書類の保存期間は、当該貨物の輸出又は輸入の許可の日(中略)の翌日から七年間(書類にあつては、五年間又は七年間として財務省令で定める期間)とする。

このように、法令上、輸入者には厳格な記録保存義務が課されています。特に、仕入書(インボイス)だけでなく、実際の支払額を証明する送金記録や、価格決定の根拠となる契約書などは、事後調査において最も重視される資料です。資料の不備は、単なる管理不足として片付けられるものではなく、関税法上の義務違反として扱われる可能性がある点に十分注意が必要です。

2 輸入事後調査対応の準備は日常的に行う必要があります

輸入事後調査の準備については、日常的に行うことが非常に重要です。といいますのも、数年間にわたる関連資料を一度に収集整理しようとすると、それだけで大量の時間が必要となり、日常の業務に支障が生じます。また、一部の記録に関しては数年単位の保管しかされていないこともあり、いざ輸入事後調査が入ることになった場合には、既に資料がどこにも存在しないということにもなりかねません。また、通常の取引についても、例外的な取引が発生する場合は相当程度ありますが、都度適切にメモを取っておかないと、事後的になぜそのような例外的な取り扱いをすることになったのか記憶が不明瞭となってしまう場合もあります。日常的に多数の取引を行っていると、例外的な対応といってもそれなりの分量となってしまいますので、記憶を頼りにすることは非常にリスクがある点にはご留意ください。

輸入事後調査において税関が特に注視するのは、関税定率法第四条に基づく課税価格の決定の適正性です。

(関税定率法第四条 課税価格の決定の原則)

第一項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

この加算要素の申告漏れは、事後調査で最も多く指摘されるポイントの一つです。例えば、輸入者が海外のメーカーに対して無償で原材料や金型を提供している場合(アシスト費用)、あるいは商品の販売に関連してロイヤリティを支払っている場合、これらは輸入申告価格に加算しなければなりません。これらの支払いは商品のインボイスには記載されないことが多いため、輸入者が自覚的に管理していないと、意図せずとも過少申告となってしまいます。

3 輸入者が常備すべき資料の一覧

どのような資料をどのように保管すればよいか、ということから漏れがないように整理していく必要があります。

【輸入事後調査対応・保存義務資料チェックリスト】

保存対象資料|法定保存期間|具体的な内容および留意点

--------|--------|--------

仕入書(インボイス)|7年間|数量、単価、決済条件(インコタームズ)が明記されたもの。

契約書|7年間|基本売買契約書、個別契約書、代理店契約書、ライセンス契約書等。

運賃明細書・保険料明細|7年間|輸入港到着までの海上運賃、航空運賃、海上保険料の領収書等。

送金証明書(TT受領書等)|7年間|銀行の海外送金依頼書控え、決済完了を証明する書類。

価格算出根拠書類|7年間|加算要素(アシスト、ロイヤリティ)の計算根拠を示した内部資料。

包装費・仲介手数料領収書|7年間|輸入者が負担した包装費用や、買付代理人以外の仲介者に支払った手数料。

会計帳簿一式|5年間または7年間|総勘定元帳、仕訳帳、現預金出納帳、仕入台帳等。

電子メール・通信記録|要検討|価格交渉や例外的な値引きの経緯が記されたやり取り。

これらの資料を、申告番号(許可番号)ごとに紐付けて整理しておくことが、事後調査を円滑に進めるための鉄則です。資料が散逸していると、調査官に対して適切な説明ができず、本来払う必要のない追徴課税を課されるリスクを招きます。

4 不適切な申告に伴う法的リスクとペナルティ

間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいますので輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。このような検討を経ることなく間違ってしまうと、数十%にのぼる追徴税や、最悪のケースでは刑事事件化されてしまう場合もあります。関税法では、過少申告に対する罰則が厳格に定められています。

(関税法第十二条の二 過少申告加算税)

税関長は、更正(中略)があった場合には、当該納税義務者に対し、不足税額に百分の十(一定額を超える部分は百分の十五)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

さらに、事実を隠蔽したり仮装したりした場合には、極めて重い重加算税が課されることになります。

(関税法第十二条の四 重加算税)

事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額に百分の三十五を乗じた重加算税を課する。

B氏の事例のように、申告価格の根拠を説明できない、あるいは意図的に特定の費用を除外して申告していたとみなされた場合、これらの加算税に加えて延滞税も課されることとなり、企業のキャッシュフローに甚大なダメージを与える結果となります。

5 関税評価における加算要素の具体的な判断基準

輸入事後調査で特に否認されやすい項目について、より専門的な視点で解説いたします。これらは通常の商慣習では費用と認識されていても、関税評価上は貨物の価格の一部とみなされるものです。

(一)買手による無償提供費用(アシスト)

輸入者が海外の製造者に材料、部分品、金型、工具、デザイン、図面などを無償または値引きして提供した場合、その費用は課税価格に加算しなければなりません。特に日本から送った古い金型であっても、その残存価値や輸送費用を加算する必要がある点に注意が必要です。

(二)ロイヤリティ(権利使用料)

輸入貨物の特許権、意匠権、商標権などの使用料を買手が支払う場合、それが輸入取引の条件として支払われるものである限り、課税価格に算入されます。支払先が売手以外の第三者である場合でも、加算が必要となるケースが多く、高度な法的判断が求められます。

(三)仲介手数料および買付手数料

売手と買手の間を仲介する者に支払う手数料は加算要素となります。一方で、専ら買手のために動く「買付代理人」に支払う手数料は、一定の厳しい条件を満たせば加算不要となります。この区分を誤り、本来加算すべき仲介料を加算せずに申告しているケースが非常に多く見受けられます。

(四)運賃および保険料

日本国内の輸入港に到着するまでの運賃と保険料は課税対象です。航空便での緊急輸入の際、その高い運賃を適切に申告に含めているか、あるいは包括的な保険契約を結んでいる場合に、各取引に適切に按分して申告しているかが問われます。

6 輸入事後調査当日の流れと対応のポイント

輸入事後調査は、通常二名から三名の調査官が輸入者の事務所を訪問し、数日間にわたって実施されます。当日の対応を誤ると、不必要な疑念を抱かれる原因となります。

一 誠実な対応と事実関係の説明

調査官の質問に対しては、帳簿等の資料に基づき正確に回答することが基本です。記憶が不明瞭な点については、安易に推測で答えるのではなく、後ほど資料を確認して回答する旨を伝え、正確性を期すべきです。

二 資料の提示

求められた資料は迅速に提示できるよう、前述のチェックリストに基づき整理しておく必要があります。資料の提示を拒否したり、隠蔽したりする行為は、重加算税の賦課や罰則の対象となり得るため、絶対に行ってはなりません。

三 法的根拠に基づく反論

税関の指摘内容が法令の解釈と異なると判断される場合には、関税法や関税定率法の規定に基づき、論理的に反論を行うことが重要です。ここで弁護士や通関士といった専門家の支援があることが、企業の正当な権利を守る鍵となります。

四 修正申告の要否

調査の結果、申告漏れが判明した場合には、修正申告を行うことになります。調査の完了を待たずに自主的に修正申告を行うことで、加算税の負担を軽減できる場合もあるため、早期の検討が推奨されます。

7 弁護士による事後調査対応の有用性

弊事務所では、輸入事後調査の準備から実際の対応まで幅広く対応しております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

【当事務所が提供できる主なサポート】

一 事前の内部監査(プレ・オーディット)

事後調査が行われる前に、貴社の過去の輸入申告をサンプリング調査し、加算要素の漏れや税番の誤りがないかをチェックいたします。潜在的なリスクを事前に把握し、必要であれば自主的な修正申告を指導することで、ペナルティを最小限に抑えます。

二 帳簿保存体制の構築支援

関税法第九十四条に基づく法定書類の整理・保管方法について、貴社の実務に即した具体的なアドバイスを行います。デジタル化への対応や、インボイスと送金記録の紐付けルールの策定などを支援いたします。

三 調査当日の立ち会い

税関職員が事務所を訪問する際、弁護士が立ち会い、調査官との質疑応答をサポートいたします。法的な観点から適切な説明を行い、不当な指摘に対しては即座に法的根拠に基づいた反論を行います。

四 当局との交渉および不服申立て

調査の結果下された更正処分や過少申告加算税の賦課に対し、納得がいかない場合には、税関長に対する再調査の請求や財務大臣に対する審査請求といった不服申立て手続きを代理いたします。

8 まとめ:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道

本日は、輸入事後調査の概要と、輸入者が備えるべき法的な義務について解説いたしました。B氏のようなケースであっても、日頃から透明性の高い記録管理を行い、専門家のアドバイスを受けて体制を整えていれば、事後調査は恐れるべきものではありません。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

キャリアメディアの関税評価

2023-09-05

はじめに:具体的な相談事例のご紹介

本日は、輸入実務において非常に誤解が生じやすいソフトウェア入りメディアの輸入申告について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。IT企業や製造業におけるソフトウェア導入の現場では、日常的に起こり得る重要な問題です。

【相談者】

東京都内で産業用ロボットのシステム開発を手掛ける株式会社テック・イノベーション 代表取締役 佐藤氏

【相談内容】

当社は今回、ドイツのソフトウェア会社から、工場自動化のための制御用計算機プログラムを購入いたしました。このソフトウェア自体のライセンス料は一億円ですが、プログラム自体は三枚のDVDに記録されて日本に送られてきます。DVD自体の価格は一枚数百円程度です。

佐藤氏は、通関業者に対して一億円のライセンス契約書を提示しましたが、輸入申告価格をどのように設定すべきか悩んでいます。一億円として申告すれば多額の消費税が発生しますが、メディア代金の数千円だけで申告すれば、後から税関に脱税を疑われるのではないかと不安に感じています。ソフトウェアという「目に見えない価値」を記録した「目に見えるメディア」を輸入する際、法的に正当な申告価格はどのように算出されるべきでしょうか。また、インボイス(仕入書)にはどのような記載が必要となるのでしょうか。

このような事例は、物理的なメディアを介してソフトウェアを導入する全ての企業にとって、避けては通れない関税評価上の重要論点です。適正な輸入申告価格が何かを把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。そして、関税定率法や基本通達において規定された内容を適切に把握して正確に輸入申告価格を算定することが重要です。本日は、ソフトウェアを記録したキャリアメディアを輸入する場合の考え方をご紹介いたします。

1 キャリアメディアの輸入における原則的規定

例えば、何らかのソフトウェアを記録したDVDを輸入する場合を想定してみてください。この場合、輸入申告価格はどのように考えるべきでしょうか。この点を検討する上において、重要な規定が関税定率法およびその基本通達で定められています。

まず、関税評価の根本となる法律を確認いたします。

関税定率法第四条(課税価格の決定の原則)

第一項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格(以下「取引価格」という。)とする。

この規定によれば、原則として「商品の対価として支払った総額」が課税の基礎となります。佐藤氏のケースでは一億円が「現実に支払われた価格」に該当するため、原則通りであれば一億円が申告価格となります。しかし、ソフトウェアについては、その特殊性に鑑み、国際的な合意に基づく特別なルールが存在します。

次に、基本通達における定義を確認します。

関税定率法基本通達四-一(輸入取引の意義)

(一) 法第四条第一項に規定する輸入取引とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当する。

この「輸入取引」によって持ち込まれるソフトウェア記録メディアについて、基本通達は具体的な算定方法を示しています。

2 ソフトウェアとキャリアメディアの定義

関税定率法基本通達四-五(特殊な貨物に係る課税価格の決定の原則の特例)

(一)イ データ処理機器に使用されるソフトウェア(以下「ソフトウェア」という。)を記録したキャリアメディア(磁気テープ、磁気ディスク、カード、集積回路、半導体等これらに類する物品を含む。以下同じ。)の輸入申告があった場合において、当該キャリアメディアの価格(以下「メディア価格」という。)と当該ソフトウェアの価格(以下「ソフトウェア価格」という。)とが区別されているときは、当該ソフトウェア価格は、メディア価格には含まれないものとして法第四条の規定を適用する。

ここで、同通達が定義する「ソフトウェア」と「キャリアメディア」の内容を精査する必要があります。

【通達上のソフトウェアの定義】

データ処理機器の運用に関係する計算機プログラム、手順、規則またはデータ処理機器に使用されるデータをいう。

キャリアメディアに含まれないもの

集積回路、半導体又はこれらに類する物品で、当該物品の中に計算機プログラム等が組み込まれているもの。

また、以下のものは本特例の対象外であると明記されています。

サウンド、シネマチック及びビデオ・レコーディング

したがって、キャリアメディアに記録されたソフトウェアが、当該通達上のソフトウェアに該当するかどうかを慎重に判断する必要があります。例えば、DVDの中に映画や音楽が記録されている場合は、本ルールの適用はなく、コンテンツの価値を含めた全額が課税対象となります。

3 輸入申告価格の算定実務と条件

通達四-五(一)イの規定によれば、ソフトウェア価格とメディア価格が「区別されている」場合には、ソフトウェアの価値を申告価格から除外することが可能です。これを実務上の計算式で表すと以下のようになります。

輸入申告価格 = キャリアメディア自体の価格 + 日本までの運賃および保険料

ここで重要となるのは「区別されている」という状態の証明です。具体的には、インボイスにおいてメディア代金とソフトウェア代金(ライセンス料)が別々に記載されている必要があります。

【キャリアメディア輸入時の評価判定表】

項目|ソフトウェア(データ処理用)|サウンド・映画・ビデオ

--------|----------------|----------------

課税価格の基礎|メディア自体の価格(条件あり)|コンテンツを含む全額

評価の根拠|定率法基本通達四-五(一)イ|原則的な取引価格の適用

区別の要件|インボイス等で明確に分離|区別の有無にかかわらず全額

対象メディア|DVD、USB、磁気テープ等|すべての記録媒体

算入される費用|メディア代、日本までの運賃等|コンテンツ代、運賃、保険料等

佐藤氏の事例に当てはめると、一億円のライセンス料とメディア代数千円をインボイスで明確に切り分けていれば、数千円(プラス運賃)を輸入申告価格として提示することが法的に認められることになります。これにより、一億円に対して課されるはずだった輸入消費税を一気に圧縮することが可能となります。

4 誤解が生じやすいケースと注意点

ソフトウェア入りのメディア輸入に関しては、実務上で多くの落とし穴が存在します。

(一)組み込まれたソフトウェアの扱い

前述の通り、半導体チップそのものや、ハードウェアに内蔵(プリインストール)された状態で輸入されるソフトウェアについては、この分離ルールは適用されません。これらはハードウェアの一部として評価されるため、ソフトウェアの価値を差し引くことはできません。

(二)メディア代金が不明な場合

インボイスに「一億円」と一括記載されており、メディア代金の詳細が不明な場合には、税関は原則通り総額に対して課税を行います。後から「メディア代は数百円のはずだ」と主張しても、客観的な証拠(別個の領収書や契約書)がない限り、否認されるリスクが極めて高いといえます。

(三)ダウンロード販売との違い

現在主流となっているオンラインでのダウンロードによるソフトウェア購入は、物理的な「貨物」が国境を越えないため、そもそも関税法の対象外となります。しかし、一度物理的なメディア(キャリアメディア)を介して輸入する形態をとる以上、たとえ後でダウンロードが可能であっても、その時点でのメディアの輸入手続は関税法に従わなければなりません。

5 不適切な輸入申告に伴うリスク

間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいますので輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。このような検討を経ることなく間違ってしまうと、数十%にのぼる追徴税や、最悪のケースでは刑事事件化されてしまう場合もあります。

申告漏れが発覚した場合の主なペナルティ

一 過少申告加算税

不足税額の十パーセントから十五パーセントが課されます。

二 重加算税

事実を隠蔽または仮装したとみなされた場合、三十五パーセントから四十パーセントという極めて重い罰則が課されます。

三 延滞税

本来の納期限からの日数に応じて利息相当額が徴収されます。

四 刑事罰

悪質な脱税と判断された場合、関税法第百十条に基づき、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

特にソフトウェアの輸入では、契約書上の金額とインボイス上の金額に大きな開きが生じやすいため、税関の事後調査において「なぜメディア代だけで申告しているのか」という点について、法的な説明ができなければなりません。説明を誤ると、意図的な過少申告(アンダーバリュー)と断定される危険性があります。

6 専門家による事前相談の重要性

データ処理機器に使用されるソフトウェアを記録したキャリアメディアの輸入に関しては誤解も多く、また通達の解釈も非常に専門的であるため、十分注意する必要があります。

当事務所では、輸入ビジネスを開始される企業様に対し、以下の観点からリーガルチェックを行っております。

一 該当するソフトウェアが通達四-五(一)イの定義(データ処理機器用)に合致するか。

二 インボイスの記載が税関の求める「分離・区別」の基準を満たしているか。

三 海外の売手との契約書において、ライセンス料とメディア代の性質が明確に分けられているか。

四 ダウンロード権との併用など、複雑な取引形態における適正な課税価格の算定。

これらの事前の備えにより、輸入時のスムーズな通関を実現し、将来の税関事後調査に対する強力な防御を固めることが可能となります。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

弁護士でありながら通関実務の深い知識を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提供することができます。輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等、少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。

【具体的なサポートメニュー】

一 キャリアメディア輸入に係る課税価格適正化診断。

二 税関事前教示制度の利用手続き代行。

三 税関事後調査への立ち会いおよび当局との法的な交渉。

四 不服申立て、関税還付請求、税関訴訟の代理。

輸入ビジネスを継続的に業として行う場合、関税法や関税定率法の理解不足は、企業の存続を揺るがす甚大なリスクとなります。特に「見えない価値」であるソフトウェアの扱いは、専門家の知見なしには適切な処理が困難です。

結びに代えて:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道

輸入申告は、単なる事務作業ではありません。それは国に対する納税申告であり、法的な義務の履行です。正しい知識を持ち、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

第三国引渡し取引の法的検討

2023-08-22

はじめに:相談事例のご紹介

本日は、グローバルなサプライチェーンにおいて頻繁に問題となる、第三国を経由して貨物を輸入する際の「輸入取引」の該否について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。複雑な物流経路を持つ企業様にとって、非常に重要な視点となります。

【相談者】

東京都内で精密機械の輸入販売を行う株式会社テクノ流通 代表取締役 A氏

【相談内容】

「当社は今回、ドイツのサプライヤーであるB社から高性能なセンサーを輸入することになりました。しかし、物流の効率化を図るため、B社とは「CIF シンガポール条件」で契約を締結し、一旦シンガポールにある当社の提携倉庫に貨物を搬入しました。シンガポールの倉庫では数週間、在庫として保管し、日本の顧客からの注文が入ったタイミングで、当社の指示により日本へ発送しました。

当社としては、ドイツのB社から購入した際の単価(シンガポールまでの運賃込み)を基礎として輸入申告を行えばよいと考えていました。ところが、通関業者から「このケースではドイツB社との契約は関税法上の輸入取引に該当しない可能性がある」と指摘を受け、困惑しております。仕入れ価格が申告価格のベースにならないとなれば、一体どのような価格を申告すべきなのでしょうか。また、申告を誤った場合の法的リスクについても詳しく教えてください。」

このような事例は、ハブ港を活用した在庫管理を行う企業において非常に多く見受けられます。適正な輸入申告価格が何かを把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。そして、関税定率法や基本通達において規定された輸入取引に関するルールを踏まえて正確に検討することが重要です。以下、詳しく解説いたします。

1 第三国において引き渡しがなされた場合の輸入取引該当性について

(1)輸入取引の定義と原則

輸入取引の該否を検討する上で、まずはその法的な定義に立ち返る必要があります。関税定率法第四条第一項において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格(取引価格)とすると規定されています。

ここで重要となるのが、関税定率法基本通達四-一(一)の規定です。

(関税定率法基本通達四-一 輸入取引の意義)

輸入取引とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当する。

この定義には、二つの重要な要素が含まれています。第一に、本邦に拠点を有する者が「買手」であること。第二に、その売買が「貨物を日本に到着させることを目的」として行われ、「現実に到着する原因」となったことです。

(2)第三国引渡しの問題点

設例のように、輸入者が輸入貨物を本邦へ引き取ることを目的として、F国所在のサプライヤーと売買を行ったとします。そして、本件輸入貨物をE国で一時保管することとし、サプライヤーとの間では、CIF(E国港)条件で売買契約を締結したとします。

この場合、以下の理由により、F国サプライヤーと日本輸入者の間の売買は「輸入取引」とは認められない可能性が高くなります。

一 発送目的の断絶

CIF(E国港)条件での売買は、法的には「貨物をE国に到着させること」を目的とした取引です。サプライヤーの義務はE国の港で完了しており、その時点では「日本への輸出」を目的とした発送行為とはみなされません。

二 到着原因の変化

貨物が日本に運び込まれる際、それは既に輸入者がE国内の保税倉庫で保管している「自己所有貨物」となっています。当該貨物の本邦への到着をもたらしているのは、サプライヤーとの売買契約そのものではなく、日本国内の需要に応じた輸入者自身の「出荷計画」や「自社在庫の移動指示」であると認められます。

三 自己所有貨物の引取り行為

以上のことから、本件輸入貨物は、関税定率法第四条第一項に規定する「輸入取引」により輸入されるものとは認められません。つまり、ドイツのメーカーへ支払った価格(現実支払価格)をそのまま申告価格の基礎にすることはできず、同項の規定により課税価格を計算することはできないこととなります。

(3)輸入取引に該当しない場合の価格決定(第四条の二以下)

輸入取引が存在しないと判断された場合、課税価格は法第四条の二以下の規定、いわゆる「逆算方式」や「算定価格方式」等により計算することとなります。

(関税定率法第四条の二 同種の貨物又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定)

(関税定率法第四条の三 国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定)

(関税定率法第四条の四 特殊な貨物に係る課税価格の決定の原則の特例)

実務上は、日本国内での販売価格から国内経費や利益を差し引いて算出する「逆算方式(第四条の三第一項)」などが検討されますが、これは通常の取引価格による申告よりも計算が極めて複雑であり、税関との調整も難航する傾向にあります。

2 実務で役立つ輸入取引該否判定表

どのような場合に輸入取引と認められ、どのような場合に認められないのかを整理した比較表を作成いたしました。ワードデータ等に貼り付けて、社内での取引スキーム検討にご活用ください。

【輸入取引の該当性に関する判定基準一覧表】

取引の形態|日本到着の直接原因|輸入取引の成否|課税価格の計算根拠

--------|----------|--------|----------

直送取引(F国から日本へ)|サプライヤーとの売買契約|成立する|現実支払価格(法四条一項)

経由地での積み替え(B/L直送)|サプライヤーとの売買契約|成立する|現実支払価格(法四条一項)

第三国での転売(洋上転売等)|転売者との売買契約|成立する|転売価格(法四条一項)

第三国引渡し後の自社出荷|輸入者の出荷計画|成立しない|逆算方式等(法四条の二以下)

第三国で加工後の輸入|加工業者との契約または出荷計画|成立しない|算定価格方式等(法四条の二以下)

このように、契約条件が「CIF 日本港」なのか「CIF 第三国港」なのか、あるいは誰の指示で日本への発送が行われたのかによって、法的な扱いは劇的に変化します。

3 輸入申告価格の算定ミスが招く深刻なリスク

間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいます。そのため、輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。

(1)多額の追徴課税と過少申告加算税

「輸入取引」に該当しないにもかかわらず、安易に仕入れ価格で申告し、それが税関事後調査で否認された場合、本来あるべき価格(通常は仕入れ価格より高くなる逆算価格等)との差額分について、関税及び消費税が追徴されます。これに加え、不足税額の十パーセントから十五パーセントにのぼる過少申告加算税が課されることとなります。

(2)重加算税の適用リスク

事実を隠蔽したり、仮装したりしたとみなされた場合、三十五パーセントから四十パーセントという極めて重い重加算税が課されます。第三国を経由させるスキームにおいて、あえて低い仕入れ価格を利用するために虚偽のインボイスを提示したような場合は、この対象となる可能性が非常に高くなります。

(関税法第十二条の四 重加算税)

納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

(3)刑事事件化の恐れ

悪質な脱税行為と判断された場合、最悪のケースでは刑事事件化されてしまう場合もあります。法人の代表者が逮捕されたり、多額の罰金が科されたりすれば、企業の社会的信用は失墜し、ビジネスの継続は困難となるでしょう。

特に輸入取引の該当性については、関税定率法や基本通達において細かく規定されておりますが、万一誤った解釈を行ってしまうと、輸入申告価格が適正な価格から大きく異なるものとなってしまうリスクがあります。

4 関税評価における加算要素の重要性

輸入取引が認められる場合であっても、現実支払価格に加算すべき要素(アシスト費用やロイヤリティ等)を忘れてはなりません。第三国を経由する取引では、特に以下の項目が漏れやすいため注意が必要です。

一 中継地での保管・荷役費用

これらの費用を買手が負担している場合、日本までの運送に関連する費用として課税価格に算入しなければならない場合があります。

二 買付手数料と仲介手数料の混同

現地でパートナーに動いてもらう際、そのパートナーが「買付代理人」として認められる極めて限定的なケースを除き、支払う手数料は加算要素となります。

三 無償提供物品(アシスト)の費用

日本から中継地の工場へ金型や原材料を送っている場合、その費用を製品価格に上乗せして申告しなければなりません。

これらの加算漏れも、税関の事後調査では徹底的に追及されるポイントです。

5 専門家によるリーガルチェックの重要性

グローバルな取引スキームを構築する際には、物流の効率性だけでなく、関税法上の適合性を事前に検証しておくことが不可欠です。

【当事務所が推奨するコンプライアンス対策】

一 取引開始時のスキーム診断

新しいルートでの輸入を開始する前に、その契約条件(インコタームズ)が輸入取引の認定にどのような影響を与えるかを法的に分析すること。

二 事前教示制度の活用

判断が難しい複雑な取引については、税関に対して公式に見解を求める「事前教示制度」を利用し、法的安定性を確保すること。

三 契約書の適正化

実態に即した、かつ関税法上の不利益を被らないような売買契約書や業務委託契約書を作成すること。

四 事後調査への備え

過去の取引を振り返り、もし誤った申告を行っていた場合には、自主的に修正申告を行うことでペナルティを軽減すること。

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。

代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知識を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提供することができます。

輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等、少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。

【当事務所が提供できる具体的なサービス】

一 第三国経由取引における輸入取引該否のリーガルアドバイス

二 法第四条の二以下に基づく課税価格の算定支援

三 税関事後調査への立ち会いおよび当局との交渉

四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て、税関訴訟の代理

結びに代えて:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道

輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引の認定基準と実務的留意点

2023-07-03

はじめに:仮の相談事例のご紹介

本日は、輸入ビジネスにおいて最も基本的でありながら、最も判断が難しいとされる輸入取引の考え方について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務に携わる企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。

【相談者】

東京都内で海外製品の輸入代理店を営む株式会社グローバルエッジ 代表取締役 佐藤氏

【相談内容】

「当社は今回、アメリカの製造メーカーであるA社から、特殊な産業用ドローンを輸入することになりました。しかし、取引の構造は少し複雑です。当社はまず、香港にある商社B社と売買契約を締結し、B社がアメリカのA社に発注をかけるという形をとっています。貨物はアメリカのA社から日本の当社の倉庫へ直送されますが、代金の支払いは香港のB社に対して行います。

佐藤氏は、インボイス(仕入書)の発行元が香港のB社であるため、B社との契約価格を輸入申告価格(課税価格)とすればよいと考えていました。しかし、通関業者からは、実質的な価格決定権がどこにあるのか、また誰が製品の不具合等のリスクを負っているのかによって、輸入取引の該当性が変わる可能性があると指摘されました。

もし申告価格の根拠となる取引を間違えてしまった場合、意図せずとも脱税とみなされるリスクがあるのではないかと不安に感じています。法的な根拠に基づいた、正しい輸入取引の特定方法を教えてください。」

このような事例は、複数の国や企業が介在する現代のサプライチェーンにおいて非常に多く見受けられます。適正な輸入申告価格を把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。特に複数の取引が関係する場合には、輸入取引に該当する取引を正確に把握することは難しく、慎重な検討が必要です。以下、詳しく解説いたします。

1 輸入取引を定義する法的な根拠と必須の規定について

輸入取引を検討する上において、必須となる規定を整理いたします。これらは、税関が事後調査などで申告の妥当性を判断する際の絶対的な基準となります。

(1)課税価格決定の原則

関税定率法(以下「法」といいます。)第四条第一項において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格とすると規定されています。

ここでいう取引価格の基礎となるのが現実支払価格ですが、これについては関税定率法基本通達において詳細に規定されています。

(2)輸入取引の意義

関税定率法基本通達(以下「通達」といいます。)において、「輸入取引」とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当するとされています。

(3)複数取引が存在する場合の判定

通達四-一(二)において、貨物が輸入されるまでに当該貨物について複数の取引が行われている場合には、現実に当該貨物が本邦に到着することとなった売買が「輸入取引」となるとされています。

(4)買手及び売手の実質的な定義

通達四-一(三)において、輸入取引における「買手」及び「売手」とは、実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者をいい、具体的には、自ら輸入取引における輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担する者とされています。

2 実質的な買手と売手の認定における具体的判断要素

通達四-一(三)に規定される自己の計算と危険負担という概念は、実務上極めて重要です。単に契約書に買手として名前が記載されているだけでは不十分であり、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

(一)品質、数量、価格の決定権

誰が海外の輸出者と直接交渉し、商品の仕様や単価を決定したかという点です。代行業者が中間に介在していても、最終的な決定権が日本国内の依頼主にあるならば、その依頼主が実質的な買手となります。

(二)瑕疵担保責任(契約不適合責任)の帰属

届いた商品に不具合があった場合、誰が輸出者に対してクレームを入れ、損害賠償を請求する権利を有しているかという点です。また、その損害を最終的に誰が被るのかというリスクの所在が問われます。

(三)数量不足や輸送事故の危険負担

船積みから到着までの間に貨物が滅失したり損傷したりした場合の損害を、誰が自己の責任として引き受けているかという点です。

(四)代金の支払義務と不良債権のリスク

輸出者に対する送金義務を負い、かつ資金調達の責任を負っているのは誰か。また、転売先が倒産した場合などにその代金回収不能の損害を直接受けるのは誰かという点です。

3 輸入取引を正確に判定するための実務表

以下の表は、複数の当事者が介在する取引において、輸入取引の当事者を特定するためのチェックリストです。ワードデータ等に貼り付けてそのままご活用いただける形式で作成いたしました。

【輸入取引当事者の実質的認定チェック表】

項 目|確 認 す べ き 実 態|判定のポイント

--------|----------------|------------

価格決定権|商品の単価を最終的に合意したのは誰か|計算の主体

品質・仕様の指定|製品のスペックを詳細に指示したのは誰か|計算の主体

瑕疵担保責任|不良品発生時の損害を最終的に負うのは誰か|危険負担

輸送中の事故リスク|保険を付保し、事故の損失を負うのは誰か|危険負担

決済の最終責任|海外への送金原資を負担しているのは誰か|計算の主体

在庫リスク|販売先が決まる前に在庫を抱えるのは誰か|危険負担

これらの要素を検討した結果、中間業者が単に手数料を受け取るだけでリスクを負っていない場合には、その中間業者は買手ではなく、中間業者を飛ばした直接の売買が輸入取引と認定されることになります。

4 複数取引が連鎖する場合の輸入取引の特定

通達四-一(二)に示される複数取引の連鎖は、近年のグローバルな転売ビジネスにおいて頻繁に問題となります。例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

一 海外の製造業者A社が、同じく海外の卸売業者B社に販売する。

二 B社が日本国内の輸入商社C社に転売する。

三 C社が日本国内の小売業者D社に販売し、貨物はA社からD社へ直送される。

この場合、どの売買が日本に貨物を到着させる直接の原因となった輸入取引になるでしょうか。原則として、日本に拠点を有する買手が関与し、その契約によって貨物が日本に向けて発送されることとなった売買が輸入取引となります。

もし、C社がB社から購入した時点で貨物の仕向け地が日本に確定しており、その契約に基づいて日本への輸送が開始されたのであれば、B社とC社の間の売買が輸入取引となります。一方で、C社が輸入者としての名義のみを貸しており、実質的な価格決定やリスク負担をD社が行っている場合には、B社とD社の間の売買、あるいはA社とD社の間の売買が輸入取引と認定される可能性が生じます。

5 輸入申告価格の算定を誤った場合の深刻なリスク

間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいますので輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。このような検討を経ることなく間違ってしまうと、多大な不利益を被ることになります。

(一)過少申告加算税

事後調査等により、本来の課税価格よりも低く申告していたことが発覚した場合、不足税額の十パーセントから十五パーセントにのぼる過少申告加算税が課されます。

(二)重加算税

事実を隠蔽したり、仮装したりしたとみなされた場合には、三十五パーセントから四十パーセントという極めて重い重加算税が課されます。輸入取引の当事者を意図的に偽る行為は、この隠蔽・仮装に該当すると判断されるリスクが非常に高いといえます。

(三)延滞税

本来の納期限から修正申告の日までの期間に応じて、利息に相当する延滞税が徴収されます。

(四)刑事罰

悪質な脱税行為とみなされた場合には、関税法違反として刑事事件化される可能性があります。

(関税法第百十条 関税を免れる罪)

偽りその他不正の行為により、関税を免れ、又は関税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

このように、輸入取引の特定を誤ることは、単なる事務的なミスでは済まされない重大な経営リスクに直結いたします。

6 関税評価における加算要素の重要性

輸入取引を特定した後は、その取引価格に加算すべき要素がないかを精査しなければなりません。取引価格には含まれていないが、買手が別途負担している以下の費用は、課税価格に算入しなければなりません。

一 輸入港までの運賃及び保険料

二 買手により負担される仲介料その他の手数料(買付手数料を除く)

三 輸入貨物の生産に関連して、買手により無償で、又は値引きして提供された物品又は役務の費用(アシスト費用)

四 輸入貨物に係る特許権、商標権等の使用の対価(ロイヤリティ)

特にロイヤリティやアシスト費用は、輸入取引の当事者が誰であるかという問題と密接に関わります。実質的な買手が誰であるかによって、誰が支払っている費用を加算すべきかが変わるため、取引構造の全体像を正確に把握することが不可欠です。

7 輸入代行取引における売手・買手の認定

近年、個人事業主や中小企業が輸入代行業者を利用して海外製品を仕入れるケースが増えています。この場合、税関は誰を輸入者(納税義務者)として見ているのでしょうか。

通達四-二(一)によれば、輸入取引の売手及び買手とは、実質的に自己の計算と危険負担に基づいて当該輸入取引を行う者をいうとされています。

輸入代行業者が、単に注文を取り次ぎ、配送の手配を代行しているだけで、商品の品質不良によるリスクを一切負わず、在庫も持たない場合には、代行業者は買手とは認められません。この場合、実質的な買手は代行業者に依頼した国内の個人や企業であり、その依頼主が輸入申告価格の適正性について全責任を負うことになります。

8 税関事後調査への備えと専門家によるリーガルチェック

税関事後調査は、輸入許可から数年が経過した後に、突然行われることが一般的です。その際、税関職員は契約書、仕入書、銀行の送金記録、電子メールの履歴などを詳細に調査し、申告価格の根拠となった取引の実態を解明しようとします。

当事務所が推奨するコンプライアンス対策は以下の通りです。

一 取引開始時のスキーム診断

新しい商流を構築する際に、誰が実質的な買手・売手であるかを法的に整理し、申告の根拠を明確にしておくこと。

二 契約書の整備

危険負担の所在や、価格の決定方法を契約書に明文化し、実態と契約に齟齬がないようにしておくこと。

三 事前教示制度の活用

判断が難しい複雑な取引については、事前に税関に対して公式な見解を求めること。

四 定期的な自主点検

過去の輸入申告について、加算要素の漏れや取引の特定に誤りがないかを内部監査すること。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。

代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知識を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提供することができます。

輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等、少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。

当事務所が提供できる具体的なサービス

一 輸入取引スキームの適法性診断および関税評価のアドバイス

二 輸入代行契約、売買契約書等のリーガルチェックおよび作成

三 税関事後調査への立ち会い、および当局との法的な交渉

四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て、税関訴訟の代理

結びに代えて:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道

輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引における事前教示制度の活用

2023-06-26

はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、輸入実務において法的安定性を確保するための極めて重要なツールである事前教示制度について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容に基づいた、以下の架空事例をご覧ください。輸出入ビジネスを中長期的に展開される企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっているかと存じます。

【相談者】

東京都内で精密機器の製造販売を行う株式会社ミライ 代表取締役 佐藤氏

【相談内容】

当社は今年から、ベトナムの工場に原材料を無償で提供し、加工を委託して完成品を輸入する委託加工貿易を開始いたしました。この一連の物流手続を円滑に進めるため、国内の物流コンサルティング会社である株式会社エックスに対し、輸出入の事務手続を全面的に委託しております。

佐藤氏は、この株式会社エックスに支払う業務委託手数料が、輸入時の関税申告価格(課税価格)にどのように影響するのかを懸念しています。「海外の工場へ原材料を送る際の手続費用と、完成した製品を日本へ戻す際の手続費用が、それぞれ関税の対象になるのかどうかが分かりません。もし申告漏れがあれば、後の税関事後調査で大きなペナルティを受ける可能性があると聞き、不安に感じています。事前教示制度を利用して、あらかじめ税関の見解を確認したいと考えていますが、どのような点に留意すべきでしょうか」

このような事例は、サプライチェーンが複雑化する現代の貿易実務において頻繁に発生いたします。輸入や輸出を業として行われている方は、事前教示制度という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

事前教示制度とは、税番(統計品目番号)や関税評価について実際の輸出入を行う前に税関に対して照会を行い、税関側の判断を確認するための制度です。

税関のホームページにおいては、事前教示制度における実際の回答内容が公表されております。本日は、その中から実務の参考となる一例をご紹介いたします。

1 事案の概要:委託加工貿易における手数料の取扱い

今回の事案は、委託加工貿易という特殊な取引形態における、第三者への業務委託手数料の算入要否が主な争点となっています。

(1)取引の具体的な構造

日本所在のA社はE国所在の製造者であるB社との間で委託加工貿易を締結いたしました。日本から無償で提供した材料を加工させ、当該加工によって出来上がった製品である機器をCIF条件(運賃・保険料込み条件)にて輸入しています。

そして、A社は輸出及び輸入の手続を日本国内のX社に業務委託をしています。

(2)照会者(A社)による法的見解

照会者の見解は以下の通りです。

輸入者と輸出者は、輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵や数量不足等の危険を負担する者であることから、輸入者と輸出者による取引となります。そして、当該取引においてX社は、輸入者と締結した業務委託契約に基づき、輸入者の指示により輸入者の代理として当該取引に関する通関業務を行う手助けをしている者であることから、当該契約のうち輸入業務に関して支払われる対価の額は、関税定率法第4条第1項第2号イの仲介料その他の手数料に該当せず、課税価格に算入する必要はないものと考えます。他方で、輸出に関してX社に支払う手数料は、関税定率法第4条第1項第3号イの無償提供材料に係る費用の一部として、課税価格に算入する必要があると考えます。

2 税関による回答内容と法的帰結

税関による回答内容は、照会者の見解を補完し、関税定率法の規定に則った明確な区分を示しています。

(1)輸出に係る手数料の算入

輸入者がX社に支払う業務委託手数料のうち、E国への無償支給材料の輸出に係る業務に対する手数料については、輸入者が関税定率法第4条第1項第3号イに規定されている「輸入貨物に組み込まれている材料、部分品又はこれらに類するもの」を輸出者に提供するために要した運賃等の費用であって買手により負担されるものに該当することから、輸入貨物の課税価格に算入されます。

(2)輸入に係る手数料の不算入

他方で、E国からの輸入貨物の輸入に係る業務に対する手数料については、関税定率法第4条第1項第2号に規定されている「輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料又は費用」には該当しないことから、輸入貨物の課税価格に算入されません。

この判断のポイントは、その手数料が原材料の提供という加算要素に関連するものか、それとも単なる輸入手続の代行であるかという点にあります。

3 関税評価の適正化に向けた専門的な解説

ここで、今回の判断の根拠となった関税定率法の具体的な条文を確認していきます。

(1)無償提供材料(アシスト)に関する規定

関税定率法第4条第1項第3号は、輸入貨物の生産に関連して買手が無償または値引きして提供した材料等の費用を加算要素として定めています。

関税定率法第4条(課税価格の決定の原則)第1項第3号
三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により直接又は間接に、無償で又は値引きして提供された次に掲げる物品又は役務の費用(当該費用に、当該物品又は役務を提供するために要した運賃、保険料その他運送に関連する費用が含まれていないときは、これらの費用を加えた費用)
イ 当該輸入貨物に組み込まれている材料、部分品又はこれらに類するもの

今回のケースで、X社に支払った輸出事務手数料は、この「材料を提供するために要した費用」の一部であるとみなされました。つまり、原材料そのものの価格だけでなく、それを海外の工場へ届けるための付随費用(事務手数料を含む)もすべて、最終製品の価値を構成するものとして課税価格に算入しなければならないという厳格なルールが適用されています。

(2)手数料の区分に関する規定

一方で、輸入の際の手数料がなぜ算入されないのかについては、同法第4条第1項第2号の解釈が重要です。

関税定率法第4条第1項第2号
二 当該輸入貨物に係る輸入取引のために買手により負担される仲介料その他の手数料(買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるものを除く)及び容器の費用

関税評価上、加算すべき手数料とは、売手のために支払われる販売手数料や、売手と買手の双方を媒介する仲介手数料を指します。今回のX社は、あくまで買手の代理人として輸入事務を代行しているに過ぎないため、ここで言う加算対象の手数料には該当しないという判断がなされました。

4 実務で活用できる手数料の課税判断一覧表

以下に、今回の事前教示の事例を踏まえた実務的な判断基準をまとめました。

【業務委託手数料の課税価格算定判定基準一覧表】

確認対象となる業務の内容|課税価格への算入の要否|法的な判断の根拠

------------|-----------|------------

無償提供材料の輸出事務費|算入する(課税対象)|関税定率法第4条第1項第3号

無償提供材料の海外運賃|算入する(課税対象)|同上(アシスト費用の一部)

完成品の輸入事務手数料|算入しない(非課税)|定率法第4条第1項第2号対象外

買付業務の代理人手数料|算入しない(非課税)|同条第1項第2号カッコ書き

販売を仲介する者への報酬|算入する(課税対象)|同条第1項第2号(仲介料)

輸入港までの海上運賃|算入する(課税対象)|同条第1項第1号(運賃等)

このように、一口に手数料と言っても、その目的が材料の提供に関わるものか、それとも輸入手続きに関わるものかによって、全く異なる取扱いとなります。

5 事前教示制度の活用における戦略的意義

事前教示制度は、単に税関に質問をするだけの手続きではありません。この制度には、以下のような極めて大きな実務的メリットが存在します。

(1)法的拘束力の確保

事前教示に対して書面による回答を受けた場合、その回答内容は原則として実際の通関において尊重されます。これにより、輸入後の事後調査において申告価格が不当であると指摘されるリスクを劇的に低減させることが可能です。

(2)予見可能性の向上によるコスト計算の適正化

輸入を開始する前に正確な税率や課税価格が判明することで、販売価格の決定や収益予測をより精緻に行うことができます。予期せぬ追徴課税による経営へのダメージを未然に防ぐことが、グローバルビジネスの安定に繋がります。

(3)社内コンプライアンス体制の証明

税関に対して自ら照会を行う姿勢は、企業のコンプライアンス意識の高さを証明する材料となります。これは将来的に、AEO(認定事業者)の資格取得を目指す際などにもプラスの評価として働きます。

6 不適切な情報提供が招く深刻な法的リスク

事前教示制度を利用する際には、正確な情報を税関に対して伝えることが非常に重要です。間違った情報を踏まえた税関からの回答では何らの意味もありません。

【間違った申告が行われた場合のペナルティ】

もし事前教示の結果を誤解したり、事実と異なる前提条件で回答を得ていたりした場合、実際の輸入時に以下のような処分を受ける可能性があります。

一 過少申告加算税の賦課
不足していた税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)の加算税が課されます。

二 重加算税の賦課
事実を隠蔽または仮装して申告したと判断された場合、35パーセントという極めて重い重加算税が課されます。

(関税法第12条の4 重加算税)

納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

三 回答の効力喪失
照会内容と実際の取引実態に相違があることが判明した場合、せっかく得た事前教示の回答はその効力を失います。税関からの回答を盾に身を守ることができなくなり、過去数年分の全取引を遡って追徴されるという最悪の事態を招きかねません。

7 事前教示制度を利用する際の専門家によるサポート

税関に対してどのような情報をどのように伝え理解してもらうかということはなかなか難しいところでもあり、慎重に執り行う必要があります。

当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。事前教示制度の利用をご検討いただいている場合には、まずはご相談ください。

代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

【弁護士による具体的な支援内容】

一 照会内容の適法性および妥当性の精査

二 税関へ提出する説明書類および契約書のリーガルチェック

三 複雑な取引スキーム(委託加工貿易、多国間貿易等)の図解と整理

四 回答を得た後の運用マニュアルの策定支援

事前教示制度においては、単に形式的な申請書を書くのではなく、関税定率法等の法令や過去の判例、通達に基づいた論理的な主張を組み立てることが、望ましい回答を得るための鍵となります。

8 まとめ:適正な関税評価が企業の未来を安定させる鍵

輸入ビジネスを中長期的に成功させるためには、その背後にある法的リスクを正確にコントロールすることが不可欠です。今回ご紹介した委託加工貿易における手数料の事例は、氷山の一角に過ぎません。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、事前教示制度を賢く活用すること。その一歩が、貴社のグローバルな信頼を勝ち取り、予期せぬリスクから会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

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