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ご注意ください!~その時間、実は労働時間に該当するかもしれません!~

2021-02-09

1 労働基準法上の労働時間とは

労働基準法上、労働時間については、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない」(32条1項)と規定されております。
他方で、具体的に労働時間とはどのような時間が該当するのかについては、定義されておりません。

一般的には、労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間をいい、必ずしも現実に業務目的で作業等をしていることを要件とは考えられず、業務に即応すべき体制にある状態下で労働から解放されず待機している時間と評価される時間も含めて、使用者の指揮命令下にあるとして、労働時間に該当する、と考えられています(前者を実作業時間、後者を手待時間等と呼ぶ場合もあります。)。

 

2 使用者の指揮命令下にある状態とは

労働時間の要件とされる使用者の指揮命令下に置かれている、については、一般的に、次の①から⑤の各要素を総合的に検討し、業務又は一定の使用者の事業のための行為を直接拘束下において行っていると評価される時間かどうかを判断することになります。

①一定の場所的な拘束下にあること(どこで業務や作業等の行為を行うか)

②一定の時間的な拘束下にあること(何時から何時まで行うか、どのようなスケジュールで行うのか)

③一定の態度又は行動上の拘束下にあること(どのような態度、秩序、規律等を守って行うか)

④一定の業務の内容又は遂行方法上の拘束下にあること(どんな行為・業務をどのような方法、手順でどのようにして行うか)

⑤一定の労務に基づく支配又は監督的な拘束下にあること(上司の現実の監督下や服務支配下にあるかどうか、又そこから逸脱する場合には懲戒処分や上司からの叱責、または賃金・賞与等の取扱い上不利益等を受けるものであるか)。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

労働基準法上の労働時間に該当するかどうかは、様々な事情を客観的に検討、判断する必要があり、労働時間に該当するかどうかの検討は専門家にご相談いただくことがお勧めです。

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員の活動が労働時間に該当するかどうかについてご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

インターンシップの取扱いにはご注意ください!

2021-02-08

「インターンシップ」との用語は多義的に用いられることがありますが、以下では、文部科学省が公表している、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」中で規定されている定義である、「産学連携による人材育成の観点から、学生に就業の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられる」という意味で用いることとします。

皆様ご存知のとおり、学生によるインターンシップ(以下、インターンシップを利用して企業で活動する学生を「インターンシップ生」といいます。)は、業界を問わず、幅広く行われております。
このような学生によるインターンシップについては、様々な法的問題が議論されているところですが、本日はインターンシップ生の法的地位の考え方をご紹介します。

 

1 インターンシップ生は、法令上、労働者に該当する可能性があります!

インターンシップ生の法的地位については、
①インターンシップは教育活動の一環であるので、インターンシップ生は労働者とは判断されない場合、
②実習の態様等から判断して労働基準法上の労働者とみなされる場合、
があります。

仮に、インターンシップ生が労働基準法上の労働者と判断される場合、企業は、インターンシップ生の取扱いについて、労働基準法や最低賃金法等の労働関連の法令を遵守する必要が生じるため、注意が必要です。

 

2 労働基準法上の労働者性の判断枠組み

労働基準法上の労働者性の判断は、①仕事の依頼への諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督権の有無、③勤務時間・勤務場所の拘束性の有無、④他人による代替性の有無、⑤報酬が時間単位で計算される等の報酬の労務対償性の有無、⑥事業者性の有無、⑦公租公課の負担等、を総合的に考慮して判断されますので、ケースバイケースで判断していくしかありません。

また、インターンシップ生に関するこの判断について、労働省(現在の厚生労働省)の行政通達(平成9年9月18日基発636号)では、以下のとおり説明しておりますので、当該説明も踏まえて、インターンシップ生の労働者性について個別具体的に判断することが必要となります。

「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる」。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、インターンシップ生の取扱い等に関してご不安な点やご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくお問合せください。

ご注意ください!~インターネット上の表現面でのトラブルは、現在ではだれでも巻き込まれうる問題です~

2021-02-07

1 インターネット上の誹謗中傷は無視すべきでしょうか?そんなことはありません!

インターネットの発達、社会全体への浸透に関しては改めて言及する必要もないほど周知のものとなっております。
そのような中、企業からは、「企業に対する誹謗中傷がインターネット上に書き込まれることがあるので、削除させることはできないか?」といったご相談が、また一般の方からも、「自分のプライバシーを侵害するような書き込みがインターネット上でなされているようなので、何とか削除させることはできないか?」といったご相談が非常に多くなっております。

「単にインターネット上の書き込みなんて、ほっとけばいいではないか?」とお考えの方もいらっしゃるものと思いますが、インターネットの利用者の中には、インターネット上の情報をそのまま信用する方も多くいらっしゃいますので、事実無根の誹謗中傷を放置することは、企業イメージの非常に大きなマイナスとなりますし、一般の方にとっても、平穏な日常を送る上での大きな障害になっていると言えます。

また、インターネット上の誹謗中傷や事実とは異なる内容に関して放置しておくと、それが真実であるかのようにインターネット上で拡散していくリスクもありますので、早急な対応が非常に重要となります。

 

2 インターネット上の書き込みの削除等には高いハードルがありますが、まずは対応を開始することが非常に重要です!

インターネット上の誹謗中傷や事実とは異なる内容の書き込みに関して削除をさせることや、書き込んだ者を特定して損害賠償請求等を行うことは、弁護士に相談いただいた場合でも非常に難しい、というのが実情です。
しかしながら、そのような状況でも、諦めて何も対応しないよりはまずは対応をした方がよいことは間違いありません。対応することで、例えば、書き込んだ者の特定まではできなかったが、書き込み自体を削除させることができた、とうことも十分考えられるからです。
そのため、インターネット上の誹謗中傷や事実とは異なる内容の書き込みでお困りの方は、まずは弁護士までご相談いただくことをお勧めいたします。

当事務所のHPでも、不定期ではありますが、インターネット上の表現面でのトラブルへの対応等に関して、コラム記事を掲載していく予定ですので、引き続きご参照いただけますと幸いです。

ご注意ください!~貨物の輸入申告価格、間違っていませんか?~

2021-02-06

貨物を輸入する際の輸入申告価格の決定方法をご存知でしょうか。
多くの方は、「貨物を購入した価格を申告すればいいのでは?」とお考えではないでしょうか。
そのようなお考えとなるのももっともなのですが、貨物の輸入申告価格の決定方法には、「現実支払価格」にその含まれていない限度において「加算要素」の額を加えるという特別なルール(関税定率法4条1項)が存在いたしますので、注意が必要です。
そこで、本日は、「現実支払価格」の考え方の概要をご紹介いたします。

 

1 「現実支払価格」の考え方の概要

「現実支払価格」とは、輸入貨物について、輸入取引(買手が日本に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所等を有しない者である場合を除きます。以下同様です。)がされた場合において、買手により売手に対し又は売手のために行われた又は行われるべき支払(間接的な支払を含みます。)の総額をいいます。
そして、この「現実支払価格」は、輸入取引に係る仕入書又はこれに代わる書類に当該取引の価格その他の条件が正当に表示されている場合には、当該仕入書等により認定することになります。

もっとも、以下の2で列挙した費用等の額は「現実支払価格」に含みませんので、注意が必要です。
なお、この場合、当該輸入貨物につき、以下の2で列挙した費用等の内、その額を明らかにすることができないものがあることにより、当該明らかにすることができない費用等の額を含んだものとしてでなければ当該支払の総額を把握することができない場合においては、本来含める必要のない当該費用等の額を含んだ当該支払の総額を「現実支払価格」として取り扱うこととなります。

 

2 「現実支払価格」に含まれない費用等

以下の①から⑤で列挙する費用等は、現実支払価格に含みません。

①輸入貨物の輸入申告等の時の属する日以後に行われる当該輸入貨物に係る据付け、組立て、整備又は技術指導に要する役務の費用

②輸入港到着後の運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用

③本邦において課される関税その他の公課

④延払条件付取引である場合の延払金利

⑤輸出国において輸出の際に軽減又は払戻しを受けるべき関税その他の課徴金

なお、買手が自己のために行う活動のうち、加算要素に該当する加算の対象となる活動以外の活動に係る支払いは、例えそれが売手の利益になると認められる活動に係るものであっても、売手に対する間接的な支払とはなりませんので、当該活動に係る費用は「現実支払価格」に含まれないことになります。このような費用としては、買手が自己のために行う広告宣伝費、販売促進、アフターサービス等に係る支払があります。
また、配当金の移転その他の支払であって、輸入貨物と関係のないもの(例えば、売手から受けた融資に対する金利の支払)は、当該輸入貨物の課税価格には算入されません。

 

3 弁護士にご相談をご希望の方へ

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入トラブルや税関対応等を幅広く取り扱っております。
貨物の輸入申告価格でトラブルが発生した場合はもちろんのこと、貨物の輸出入に関してトラブルが発生した場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。

消費者契約法4条で規定する「不当勧誘」にはご注意ください!

2021-02-05

本日は、消費者契約法4条で規定されている不当勧誘による取消しの内容をご紹介します。
消費者契約法4条は、消費者が、事業者の不当な勧誘により誤認または困惑する等して締結した消費者契約を取り消すことができる旨を規定しおります。

1 不当勧誘の類型

この不当勧誘の類型は、誤認類型(消費者契約法4条1項及び2項)、困惑類型(消費者契約法4条3項)、過量契約の取消類型(消費者契約法4条4項)、に分類することができます。
このうち、困惑類型に該当する事項については、消費者保護の観点から、2018年の改正によって大幅に内容が拡充されました(従前は、事業者が消費者の住居等から退去しない場合や、勧誘を行っている場所から消費者を退去させない場合に限定されておりました。)。

 

2 困惑類型の拡充内容

困惑類型の拡充内容の概要は、以下の①から⑤のとおりです。

①事業者が、消費者の社会生活上の経験不足を利用して、消費者が次のイ、ロに掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、物品その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。
イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

②事業者が、消費者の社会生活上の経験不足を不当に利用して、当該消費者の恋愛感情等に乗じた人間関係を濫用する場合

③事業者が、消費者の加齢又は心身の故障による判断力の著しい低下を利用する場合

④事業者が、消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げる場合

⑤当該消費者が、当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にする場合及び損失補償請求等を告知する場合

 

3 弁護士にご相談をご希望の方へ

消費者契約法に関する問題は、様々なものがあり、企業側の立場、消費者側の立場のいずれにおいても、適切な対応を行うことは非常に重要です。

当事務所では、消費者契約法に関する問題に関して、企業側の立場、消費者側の立場のいずれの立場からのご相談もお受けしておりますので、ご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

労働関連の法令は多岐にわたりますので、注意が必要です!

2021-02-04

企業は、そのビジネスを行うためには従業員による業務の遂行が必要不可欠です。
そして、企業と従業員の間の関係性が常に良好であれば問題はないのですが、残念ながら、実際には、労使関係には紛争がつきものです。
紛争が発生した際には、話し合いで双方が納得した上で解決できることが最善ではありますが、話し合いでの解決が困難であることも多く、そのような場合には、法令の規定に則った解決を図ることとなります。
もっとも、労使関係をめぐる法令は多岐にわたり、その全部を正確に把握することは困難と言わざるを得ません。
ただ、このような状況であっても、代表的な法令の概要だけでも把握しておくことは有益です。
そこで、本日は、企業が人を雇用する際に注意する必要がある代表的な労働関連の法令をご紹介いたします。

代表的な労働関連の法令は以下のとおりです。

①労働基準法

労働基準法において、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならないと規定されており(1条1項)、労働基準法で規定する基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります(13条)。
そのため、企業としては、労働基準法に違反しない労働条件を労働契約に盛り込むことが必要となります。

 

②労働契約法

労働契約法は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的として規定されております(1条)。
労働契約の成立、変更、継続、終了等、労働契約に関する内容が規定されております。

 

③最低賃金法

最低賃金法は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として規定されております(1条)。
最低賃金額は全国一律ではなく、各都道府県ごとにその金額が定められますので、注意が必要です。

 

以上、本日は、代表的な労働関連の法令をご紹介いたしました。
当事務所は人事労務を幅広く取り扱っておりますので、人事労務に関してご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

従業員への転勤命令には限界がありますのでご注意ください!

2021-02-03

従業員は企業の一員として業務を行っている以上、企業側の都合に応じて従業員を転勤させることは企業側の自由であると勘違いされているケースが時折ございます。
そこで、本日は、企業が従業員に対して行う転勤命令権の限界についてご紹介いたします。

まず、前提として、企業がある従業員に転勤を命令する場合、労働契約や就業規則上、企業が従業員に対して転勤を命令することができる旨の規定が存在することが必要です。
例えば、労働契約や就業規則の規定内容として、「会社は、業務上必要がある場合、従業員に対して職場もしくは職務の変更、転勤、出向、転籍及びその他人事上の異動を命じることができる」といった内容の規定が設けられている場合も多いのではないでしょうか。

このような規定が存在することを前提にすると、企業は、従業員に対して転勤を命令することが出来ますが、最判昭和61・7・14(判時1198・149)では、転勤命令権の限界、すなわち転勤命令が違法となる場合として、
「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等」
と判示しました。

では、ここでいう「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる」ということは具体的にどのような場合かというと、当該転勤の必要性の程度、従業員が受ける不利益の程度、 企業側がなした従業員への配慮およびその程度等の諸事情を総合的に検討して判断されることになります。
要するに、ケースバイケースで各企業における具体的な事情を踏まえて判断することとなりますので、企業としては従業員の転勤にあたっては十分な注意を払うことが必要です。なお、違法な転勤命令を受けた従業員が、企業に対して不法行為に基づく慰謝料請求を行い、認められた例もありますので(大阪地判平成19・3・28労判946・130等)、企業側としては、転勤命令が違法無効となった場合には、そのような損害賠償義務を負担することになるリスクも踏まえた対応が必要となります。

当事務所では、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員への転勤命令に関して、ご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

ご存知ですか?~企業には従業員に対する安全配慮義務が課される場合があります!~

2021-02-02

企業側がその従業員に対して負う安全配慮義務というものをご存知でしょうか。
なんとなく聞いたことはある方もいらっしゃるものと思われますが、企業にとっては重要な義務となっておりますので、本日は、安全配慮義務の概要をご紹介いたします。ご参照いただけますと幸いです。

 

1 安全配慮義務の概要

企業側は、従業員が生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。
当該義務を安全配慮義務といいますが、最高裁判所も、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が 過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」を負うと判示しています(最判平成12・3・24民集54・3・1155)。

 

2 安全配慮義務が問題となった事案の例

より具体的には、安全配慮義務に関して、以下のような裁判例があります。
①神戸地判(姫路支部)平成7・7・31判タ958・200
従業員が健康を害した場合において、当該従業員が当該業務にそのまま従事すると健康を保持する上で問題がある、又は健康を悪化させるおそれがあると認められるときは、企業側は、従業員からの申出の有無に関係なく、当該業務から離脱させて休養させるか、他の業務に配転させるなどの措置を取る契約上の義務を負うと判示しました。

②東京地判平成10・3・19判時1641・54
従業員が高血圧に罹患している事案において、企業側は、持続的な精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにすることや、業務を軽減するなどの配慮をするべき義務があると判示しました。

以上、本日は、安全配慮義務の概要をご紹介いたしました。
安全配慮義務の具体的な内容は、あくまでも、企業と労働者の個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきものですが、企業にとっては、常に企業側がどのような安全配慮義務を負うかを認識しておくことが非常に重要です。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、安全配慮義務に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

輸入貨物の課税価格はこのように決定されます!

2021-02-01

本日は、貨物を輸入する場合の課税価格の決定方法の原則の概要をご紹介いたします。
課税価格の決定方法の原則に関する法令上の規定は、非常にテクニカルなものとなっている部分があり、理解が難しいものといえます。
もっとも、貨物を輸入する方には是非ご理解いただきたい内容となりますので、本日ご説明する内容をご参照いただけますと幸いです。輸入する貨物の課税価格の考え方を確認したい等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

1 課税価格の決定方法の原則について

課税価格の決定方法については、関税定率法4条から4条の9までの規定で定められております。
そして、課税価格の決定方法の原則は、関税定率法4条で規定されております。
具体的には、同条では、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の取引価格(現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において、輸入港までの運賃等の加算要素を加えた価格)とする旨を規定しています。
しかしながら、この原則的な課税価格の決定方法は、輸入貨物に係る輸入取引に特別な事情がある場合(買手による輸入貨物の処分又は使用の制限、輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が輸入取引に付されている場合等)には適用されませんので、注意が必要です。
以上の原則的な方法を利用することが出来ない場合は、課税価格の決定方法の例外として、関税定率法4条の2以下の規定に従って課税価格の決定を行うこととなります。

 

2 課税価格の決定方法の例外について

課税価格の決定方法の例外は、以下の①から③のとおり規定されております。
基本的には、①を優先利用することとなり、①の方法を利用できない場合には、②の方法を利用することになります。そして、①及び②の方法のいずれも利用することが出来ない場合には、③の方法を利用することになります。このように、課税価格の決定方法の例外が適用となる順番等についても法令上規定されておりますので、注意が必要です。
①関税定率法4条の2:同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定
②関税定率法4条の3:国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定
③関税定率法4条の4:特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定

 

課税価格の決定方法の概要は上記のとおりですが、輸入申告等の時までに変質又は損傷があった貨物の場合等、一定の場合には、上記で説明した課税価格の決定方法ではなく、それぞれの貨物に関して、特別な方法により課税価格を決定することとなりますので、この点についても注意が必要です。

繰り返しとなりますが、課税価格の決定方法は非常にテクニカルな内容となっている一方で、貨物を輸入する場合には、是非理解しておいていただきたい内容となりますので、ご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

従業員による兼業(副業)の禁止・制限には注意が必要です!

2021-01-31

昨今の社会情勢の下、副業を行っている方も増加していると言われていますが、企業によっては、そのような兼業を禁止・制限している場合もあります。
そこで、本日は、従業員による兼業の禁止・制限に関してご説明いたします。

1 従業員による兼業の禁止・制限

まず、前提として、私企業の労働者が行う兼業を直接規制する法令はありません。
また、厚生労働省は、平成30年1月に、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の策定および兼業(副業)を原則容認するモデル就業規則改正を行っており、社会一般的にも兼業を許容する流れができつつあるとも言えます。
しかしながら、企業は、従業員の自社での労務提供への支障等を懸念して、従業員の兼業を就業規則等で明確に禁止・制限し、その違反を懲戒事由としている場合も多くあるのが実情です。

2 裁判例の動向

こうした従業員による兼業の禁止・制限の可否に関して、裁判で争った場合に、裁判所は、職場外・就業時間外は従業員の私生活上の自由や職業選択の自由があることを踏まえ、兼業を全面的に禁止する就業規則は合理性(労働契約法7条)を欠くと判断する傾向にあります。
しかしながら、長時間の兼業等で自社での労務提供に具体的な支障が生じたり、兼業の内容により自社の信用等が損なわれると考えられる場合等には、兼業を禁止することも許容されるとの判断を示した裁判例もあります(小川建設事件(東京地決昭和57・11・19労判397・30)。
また、兼業が競業に該当する場合等に備えて許可制とすることには合理性があるとの判断を示した裁判例もあります(橋元運輸事件(名古屋地判昭和47・4・28判時680・88等)。
このように、裁判例を踏まえますと、兼業を一律に全面的に禁止することは合理性を欠くと判断される可能性があるものの、企業側が合理的な理由に基づき、兼業を禁止、制限することは認められる場合も十分あるものと考えられます。

以上のご説明のとおり、兼業の禁止・制限の可否に関しては、各企業毎の個別の事情等も踏まえて具体的に判断されるものですので、実際に、兼業の禁止や制限を新たに設けることを検討されている場合や、既に存在する兼業の禁止や制限に関して従業員との間で紛争が発生したという場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員による兼業の禁止・制限に関してご不安な点等ありましたらお気軽にご相談ください。

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