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税関から「輸入差止」の通知が届いたら?認定手続の流れと商標権侵害を疑われた際の対抗策

2026-01-27

「中国から輸入した商品が税関で止まった」、「『認定手続開始通知書』という書類が届いたが、どうすればいいのか」、当事務所には、こうした輸入トラブルに関する相談が多く寄せられます。

これは、商標権や意匠権などの知的財産権を侵害する物品(いわゆるコピー商品や模倣品)の水際取締りが強化されているためでもあります。

もし、あなたが真正品(本物)を輸入したつもりであるにもかかわらず、税関で止められてしまった場合、適切な対応を取らなければ商品は没収・廃棄され、最悪の場合は刑事罰の対象となる可能性もあります。

 

1 「認定手続」とは何か

税関が、輸入貨物の中に「知的財産権を侵害している疑いがある」ものを発見した場合、輸入者と権利者の双方に通知を出し、本当に侵害しているかどうかを判断する手続きを開始します。これを「認定手続」と呼びます。

この通知を無視してはいけません。何もしなければ、権利者の主張が通り、貨物は侵害品と認定され、廃棄等の処分が下されることになります。

 

2 輸入者がとるべき対応

真正品を並行輸入している場合や、権利侵害をしていないと確証がある場合、輸入者はまずは意見書・証拠の提出を行う必要があります。

具体的には、「指定された期間内」に、税関長に対して「侵害品ではない」旨の意見書と、それを裏付ける証拠を提出します。

ここでは、正規の流通ルートで購入したことを示すインボイス、販売ライセンス契約書、商品の詳細な写真、真正品であることを証明する鑑定書などが有効です。

 

3 弁護士に依頼するメリット

認定手続は非常にタイトなスケジュールで進行します。

限られた期間内に、説得力のある法的文書(意見書)を作成し、証拠を揃える必要があります。

例えば、『並行輸入の抗弁』では、日本の商標法上、適法な並行輸入として認められるための「三要件(真正性の保証、同一人性の保証、品質管理性の保証)」を満たしていることを、法的に論証する必要があります。これは一般的な輸入業者では対応が難しい場合が多いです。

また、『権利者との交渉』においては、場合によっては、権利者側と直接交渉を行い、輸入の承諾を得る等の解決策を探ることもあります。

「たかが数箱の輸入だから」と放置すると、今後の輸入すべてが厳格な検査対象になるリスクもあります。

輸入差止の通知が届いたら、直ちに貿易・知財に強い弁護士へご相談ください。迅速な初動が、あなたの商品とビジネスを守ることにつながります。

「非原産品」と「加工工程」:EPA適用で税関から非違指摘を受けないためのリスク回避法

2026-01-22

EPA(経済連携協定)に基づく特恵関税を適用する際、最も難解で、かつ税関から非違指摘を受けやすいのが、貨物が協定上の「原産地規則」を満たしているかという問題です。

多くの輸入貨物は、単一の国で最初から最後まで作られているわけではなく、協定域外の国(非原産国)から仕入れた原材料や部品(非原産材料)を使用して製造されています。特恵関税の適用を受けるためには、この非原産材料に対し、最終製品の輸出国内で「実質的な変更」を与える加工や製造が行われていることを証明しなければなりません。

この「実質的な変更」の証明が不十分であると、税関調査で原産性が否定され、追徴課税という重いペナルティが課されます。リスクを回避するための法的・実務的アプローチを解説します。

1 実質的な変更の証明に必要な2つの基準

実質的な変更がされたことを証明するためには、主に以下の2つの基準のいずれかを満たす必要があります。どの基準が適用されるかは、HSコードごとに協定の付属書で定められています。

(1)関税分類変更基準

非原産材料を加工・製造した結果、最終製品のHSコードが、使用した非原産材料のHSコードから、協定で定められた一定のレベル(類、項、号)以上変更されていることを要件とします。

(2)付加価値基準

最終製品の価格に占める、原産国・地域で生じた付加価値(原産材料、人件費、製造経費など)の割合が、協定で定められた水準(例:40%以上)を満たしていることを要件とします。

2 非違指摘を避けるための加工工程管理のポイント

税関が原産地規則を検証する際、最も重視するのは製造工程のトレーサビリティと、原価計算の正確性です。

(1)製造工程の記録と証明

CTC基準を適用する場合、非原産材料がどのように変化して最終製品になったのか、加工・製造の実態を明確に記録することが必須です。

記録すべき事項: 使用した非原産材料のHSコードと数量、具体的な製造工程(切断、溶接、組立、化学反応など)、加工が原産国で行われたことの証明(工場の記録、作業指示書)。

(2)付加価値計算の正確性と継続的な監視

VA基準を適用する場合、計算方法の誤り、特に「非原産材料費」の算入漏れなどが非違指摘の主要な原因となります。

非原産材料の正確な特定: 使用された全ての原材料について、原産性の証明を求め、非原産と判断された材料のFOB価格(またはそれに準ずる価格)を正確に把握し、計算に含めます。

計算方法の統一: 協定ごとの計算ルール(控除方式/積み上げ方式)を厳守し、計算に必要なすべての証憑(会計記録、仕入インボイスなど)を7年間保管します。

3 リスクの高い「軽微な加工」の取扱い

多くのEPAでは、単なる「軽微な加工」(Minor Processes)だけでは、たとえHSコードが変わったとしても、「実質的な変更」とは認められず、原産性が付与されないと定めています。

これらの加工のみを原産国で行っている場合、原産性を主張することは非常に困難です。加工工程に、製品の本質的な特性を与えるような製造工程が含まれていることを、客観的に立証できなければなりません。

4 弁護士による予防的コンプライアンス監査

原産地規則の遵守は、高度な専門知識と緻密な実務管理が求められます。当事務所は、以下のサポートを通じて貴社のリスクを回避を図ります。

①原産性判定の法的レビュー: 貴社の製造プロセスを検証し、どの基準が適用可能で、最も安全かつ有利な原産性を証明できるかをアドバイスします。

②監査体制の構築: 輸出者からの情報収集体制や、社内での原価計算・文書管理体制を、税関調査に耐えうるレベルに整備します。

EPAの活用は関税削減の大きなチャンスですが、その裏にあるリスクを正しく管理することが、企業の持続的な成長を支えます。

税関事後調査 輸入コストに含まれる意外な「加算要素」

2026-01-17

輸入ビジネスを行っている企業にとって、税関による「事後調査」は避けて通れないリスクの一つです。多くの企業が「インボイス通りの価格を申告しているから大丈夫」と考えていますが、実はここに大きな落とし穴があります。

事後調査で指摘され、多額の課税(関税+消費税+加算税)がなされるケースの相当程度は、単価の誤りではなく「加算要素」の申告漏れに起因しています。

1 インボイス価格=課税価格ではない

関税法上の「課税価格」は、単に貨物の代金(インボイス価格)だけではありません。

「現実に支払われる価格」に加えて、輸入貨物に関連して買手が負担する費用を加算する必要があります。これを「加算要素」と呼びます。

通関業者(乙仲)は、輸入者から提供されたインボイス等の書類に基づいて申告書を作成しますが、インボイスに記載されていない「別払いの費用」までは把握できません。そのため、輸入者自身が正しく理解し、通関業者に情報を伝えなければ、意図せず「脱税(過少申告)」の状態になってしまうのです。

2 事後調査で指摘されやすい「加算要素」

税関の調査官は、会計帳簿(総勘定元帳など)と輸入申告書を突き合わせ、以下の費用が課税価格に含まれているかをチェックします。

①ロイヤルティ(特許権使用料等)

輸入貨物に関連して、海外のライセンサー等に支払うロイヤルティは、原則として課税価格に加算する必要があります。「貨物代金とは別の契約書で支払っているから関係ない」という誤解が非常に多く、注意が必要です。

② 金型代・無償提供資材

海外の工場で製品を作らせる際、日本側で金型を作成して送ったり、原材料を無償で提供したりしていませんか?これらの費用も、輸入貨物の価値を構成するものとして加算対象となります。

③買付手数料と販売手数料の違い

海外のエージェントに支払う手数料については、「買付手数料」であれば非加算ですが、「販売手数料」等であれば加算対象となるなど、契約の実態に応じた高度な判断が求められます。手数料は基本的に加算対象となる点には注意が必要です。

3 重加算税、刑事事件化のリスクと弁護士の役割

これらの申告漏れが発覚した場合、不足していた関税・消費税に加え、原則として10%(または15%)の「過少申告加算税」が課されます。

さらに、事実を隠蔽・仮装していたと認定されれば、35%~40%もの「重加算税」が課される可能性があります。また、場合によっては刑事事件に発展する可能性もあります。

そのため、事後調査の通知が来た段階、あるいは調査中に指摘を受けた段階で、早期に弁護士へ相談することをお勧めします。

事後調査は、単なる税務処理ではなく「法解釈の争い」でもあります。予期せぬ課税を防ぐためにも、貿易実務に精通した専門家のサポートをご検討ください。

EPA活用は諸刃の剣:メリットの裏にある追徴リスク

2026-01-12

EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)は、締結国・地域の間の貿易において、特定の商品に関税を撤廃または大幅に引き下げる特恵関税を適用するための強力なツールです。これにより、輸入事業者は大幅なコスト削減と競争力強化を実現できます。

しかし、特恵関税の適用は、その貨物が協定で定められた厳しい原産地規則を満たしていることが条件です。この規則の解釈や運用を誤ると、税関の事後調査で特恵適用が遡及的に否認され、過去数年分の関税差額が一括で追徴されるという重大なリスクを負います。

EPAのメリットを安全に享受するために、輸入事業者が理解し、実行すべき原産地規則に関する重要チェックリストと注意点を解説します。

 

1 原産地規則の基礎知識と主要な判定基準

原産地規則とは、「その貨物がどの国で生産されたか」を特定するためのルールです。輸入者がEPAの特恵税率を適用する場合、以下の主要な判定基準を満たす必要があります。

(1)完全生産品

その国・地域で完全に獲得または生産された貨物(例:鉱物、農産物、漁獲品など)に適用されるシンプルな基準です。

(2)実質的な変更基準

輸入された非原産材料を使用して生産された貨物に適用されます。以下のいずれかの基準を満たすことが求められます。

①関税分類変更基準(CTC): 最終製品のHSコードと、製造に使用された非原産材料のHSコードが、協定で定められたレベル(類、項、号)で変更されていること。

②付加価値基準(VA): 最終製品の価格に占める、原産国・地域での**付加価値(原産材料費+人件費など)**の割合が、協定で定められた基準(例:40%以上)を満たしていること。

2 EPA適用を確実にするためのチェックリスト 5項目

税関調査で原産地規則の不備を指摘されないために、以下の5つの事項を確認・準備しておく必要があります。

No.

チェック項目

対応のポイント

1

適用する協定と規則の特定

輸入貨物のHSコードに基づき、適用すべき判定基準を協定の付属書から正確に特定しているか。

2

原産性の証明文書の確保

輸出者から特定原産地証明書(または自己証明)を受け取っているか。また、その証明の根拠となる書類(部品表、原価計算書、製造工程資料など)も確保しているか。

3

付加価値計算の正確性

付加価値基準を適用する場合、協定ごとの原価計算方法(控除方式、積み上げ方式)に従って、計算が正確に行われ、証明書発行時点の根拠資料があるか。

4

輸出者による保証の確保

輸出者との契約書に、原産地情報の正確性に関する輸出者の保証、および税関調査時の資料提供協力義務を明記しているか。

5

事前教示制度の活用

原産性の判断が複雑でリスクが高い貨物について、事前に税関の事前教示制度を利用し、原産地認定に関する回答を得ているか。

 

3 弁護士による監査と予防法務の重要性

原産地規則の適用は、HSコードの分類、会計処理、製造実務のすべてに関わる複雑な作業です。弁護士によるサポートを受けることで、例えば、

①原産性判断の法的レビュー: 貴社のサプライチェーンと製造プロセスに基づき、最も有利かつ安全な原産地規則の適用方法を提案します。

②輸出者のサポート: 輸出者から提出される原産地証明の根拠資料が、協定の要件を確実に満たしているか、弁護士の視点で検証します。

③追徴課税への防御: 事後調査で原産地適用の誤りを指摘された場合、法的根拠に基づき、原産性の正当性を主張・立証し、追徴リスクの回避・軽減を交渉します。

EPAの活用は、企業の成長に不可欠です。しかし、リスク管理なくして利益の最大化はありえません。特恵関税の適用については、必ず専門家のサポートを得て、盤石な体制を構築しましょう。

 

サプライヤーリスクの管理:輸出者の「無申告」や「虚偽申告」への備え

2026-01-07

1 輸入者の知らないところで発生する関税リスク

輸入事業者は、日本の関税法に基づき、自らが輸入者として関税・輸入消費税の申告納税責任を負います。しかし、実際問題として輸入申告の基となる情報(貨物の価格、構成、原産地など)は、海外の輸出者やサプライヤーから提供される情報に大きく依存しています。

これは、輸出者側のリスクが、日本の輸入者に転嫁されてしまう構造的な問題です。

本日は、輸入者がコントロールできないサプライヤーリスクに対し、どのように備えるべきか、弁護士的視点から解説します。

2 輸出者のミスが引き起こす追徴課税のメカニズム

輸出者の申告や提供情報に誤りがあった場合、日本の輸入者にリスクが及ぶ主なケースは以下の通りです。

(1)価格(関税評価)の誤り

輸出者が日本の輸入者以外にも請求すべき費用(例:ロイヤルティ、金型費用の一部負担など)を、インボイス価格に含めずに請求した場合、日本の税関は「課税価格の過少申告」*と認定します。

リスク:輸入者はインボイス通りに申告していても、輸出者が他の名目で支払いを受けていた事実が発覚すれば、追徴課税の対象となります。

(2)原産地の虚偽記載(EPA/特恵関税の適用否認)

EPA(経済連携協定)の適用を受けるために、輸出者が「特定原産地証明書」を発行しますが、この証明書が輸出者側の計算ミスや虚偽に基づいていた場合、税関調査でEPAの適用が否認されます。

リスク:低い特恵税率が遡って否定され、本来の関税率に基づいた差額の関税が一括で追徴されます。

(3)貨物情報の不正確さ(HSコードの誤り)

輸出者が提供した製品仕様書や構成情報が不十分であったために、輸入者が誤ったHSコードで申告し、税関調査でより高い関税率のコードに訂正された場合。

3 サプライヤーリスクを最小限に抑える3つの防御策

輸入者がサプライヤーに依存するリスクを管理するためには、契約と監査の仕組みが必要です。

(1)防御策1:契約書による義務の明確化(予防法務)

海外の輸出者との契約書(売買契約、代理店契約など)に、関税コンプライアンスに関する以下の条項を必ず盛り込む必要があります。

①関税情報提供義務:輸出者は、HSコード分類、原価計算、製造プロセス、ロイヤルティなど、関税評価に必要なすべての情報を、正確かつタイムリーに提供する義務を負うこと。

②原産性に関する保証:EPA適用を前提とする場合、輸出者は「貨物が規定の原産地規則を満たしている」ことを保証し、輸入者が税関調査で不利にならないよう、協力義務を負うこと。

③補償条項(インデムニティ):輸出者の提供した情報に虚偽または誤りがあり、その結果として輸入者が追徴課税やペナルティを受けた場合、輸出者がその損害全額を輸入者に補償する義務を負うこと。

 

(2)防御策2:定期的な監査(デューデリジェンス)

重要なサプライヤー、特にEPAを適用するサプライヤーに対しては、契約に基づき、定期的な現地監査(関税デューデリジェンス)を実施することも有効です。

 

(3)防御策3:複数サプライヤー戦略と文書管理の強化

リスクを特定のサプライヤーに集中させないため、可能であれば、複数の国・地域のサプライヤーと取引を行う「複数調達戦略」を検討します。

また、サプライヤーから提供された関税関連の書類(インボイス、価格根拠資料、原産地証明関連書類)は、関税評価の正当性を示す最重要証憑として、厳重に保管・管理します。

サプライヤーリスクは、輸入ビジネスの避けて通れない課題です。しかし、弁護士による適切な契約設計と予防的なリスク管理を組み合わせることで、その影響を最小限に抑えることは可能です。

「事前教示制度」を賢く活用する:税関からの回答を最大限に活かす

2026-01-02

1 事後調査のリスクを低下させる防御策

輸入事業者が抱える関税評価やHSコード(品目分類)に関する不確実性は、数年後の事後調査で多額の追徴課税という形で顕在化するリスクを常に伴います。

この不確実性を低減させるための方法の一つが、税関の「事前教示制度」です。

事前教示制度とは、輸入申告を行う前に、輸入者が具体的な取引や貨物について税関に照会し、その取り扱い(HSコード分類、関税評価など)に関する文書による回答を事前に得ておくことができる制度です。税関は、この回答に従って実際の申告を取り扱うため、追徴課税のリスクを低下させることができます。

2 事前教示制度の最大のメリット:法的拘束力

事前教示制度の回答は、回答から3年間、税関の実務においてその内容が遵守されます。

これは、企業が獲得できる強固な防御手段の一つです。

特に以下のようなケースで活用すべきでしょう。

①複雑な複合品・新製品のHSコード:関税率表の解釈通則や類注の適用が難しく、複数のコードに該当しうる場合。

②複雑な取引構造の関税評価:ロイヤルティ、金型提供、仲介手数料など、加算要素の有無が論点となる複雑な取引の場合。

③EPA/特恵の原産地規則:「実質的な変更」の要件を満たすかどうか、加工工程が複雑な場合。

3 税関の判断を導く「照会文書」作成の3つのコツ

税関が事前教示の回答を出す際、その判断材料となるのは、提出された照会文書と添付資料のみです。税関が正確な判断を下せるよう、以下の点に留意して文書を作成する必要があります。

(1)事実関係の完全な開示と明確化

照会対象となる取引や貨物の事実関係は、一切隠さず、かつ明確に記載する必要があります。不確実な点や不足がある場合、税関は「回答不能」とするか、事実誤認に基づいた回答を出してしまうリスクがあります。

①関税評価の場合:契約の全体図、当事者間の関係図(資本関係、取引関係)、貨物代金以外の全ての支払い(ロイヤルティ、手数料、サポート費用など)の流れと使途を、証憑に基づき図示することが有効です。

②HSコードの場合:貨物の材質、機能、用途を詳細に記載し、カタログや図面を添付するだけでなく、製造工程や原理まで技術的に解説することが求められます。

(2)企業側の「法的見解」と論拠の提示

単に「このHSコードで合っていますか?」と質問するだけでは、税関任せの回答になりがちです。賢い活用法は、「企業側はこう考える」という主張と、その法的根拠を提示し、税関の判断を正確に導くことです。

(3)税関が疑問に思う点を先回りして伝えておく

税関職員がどこに疑問や懸念を持つかを予測し、照会文書の中で先回りしてその疑問を解消しておくことが重要です。

例えば、ロイヤルティの件であれば、「このロイヤルティは貨物の販売とは独立した技術指導の対価であり、関税評価上加算が不要とされる非加算要素であると考えます。その根拠として、ライセンス契約書と売買契約書を添付し、支払い条件が異なることを示します。」など、税関が最も問題視する論点を明確にする資料と主張を用意します。

4 弁護士によるサポートの必要性

事前教示は行政手続きであり、その照会文書は「法的文書」としての正確性が求められます。関税法、関税評価、HSコードの解釈に精通した弁護士(通関士)のサポートを得ることで、回答の取得可能性を高め、かつその回答が最大限に有利になるよう導くことができます。

当事務所は、予防法務としての事前教示制度の活用を最も重視しています。曖昧な通関手続は、貴社の将来の収益を脅かします。

複雑な輸入を始める際は、必ず事前教示制度をご活用ください。

輸入貨物が税関で留められた!「検査通知書」が届いた時の冷静な対処法と弁護士への相談タイミング

2025-12-27

1 「税関留置」はなぜ起きる?緊急時の正しい初動

輸入手続の過程で、税関が特定の貨物に対して「検査」を行うことを決定し、輸入者のもとに「検査通知書」やその旨の連絡が届くことがあります。

この通知は、単なる通関の遅延ではなく、貨物の輸入が許可されないかもしれないという深刻なトラブルの始まりを示すサインともいえます。

貨物が税関で留め置かれる(留置される)主な理由は、以下のいずれかに該当する疑いがあるためです。

①輸入禁制品・規制貨物:覚醒剤、武器、ワシントン条約対象物、食品衛生法、薬機法などの他法令に違反する疑い。

②知的財産権侵害の疑い:商標権、著作権などを侵害する模倣品(ニセモノ)である疑い(水際取締り)。

③申告内容の確認:申告されたHSコード(品目分類)や関税評価(価格)が適正であるか、現物を検査して確認する必要がある場合。

 

2 検査通知書が届いた時の冷静な対処法

輸入貨物に関する検査通知書を受け取ったら、まずは焦らず以下のステップで対応を進める必要があります。

ステップ1:通知内容の確認と事実把握

通知書には、どの法律(関税法、知財法、他法令など)に基づいて留置されているのか、そして留置の理由(疑い)が記載されています。
これらの情報を正確に把握することが、その後の対応方針を決定する出発点となります。

ステップ2:税関への情報提供と主張の準備

税関は、輸入者に対し、貨物に関する追加資料の提出や質問への回答を求めてきます。この情報提供が、最終的な税関の判断を左右します。

①知財侵害の疑いの場合:貨物が真正品であり、適法な並行輸入であることを裏付ける、海外の正規ルートからの仕入れを証明する書類(契約書、インボイス、ライセンス証など)を迅速かつ論理的に整理します。

②品目分類・価格の疑いの場合:申告したHSコードや価格の妥当性を裏付ける、製品仕様書、製造工程資料、価格決定の根拠となる契約書などを提出します。

3 弁護士への相談タイミングと役割

「検査通知書」が届いた時点、または税関から検査を予告する連絡があった時点こそ、弁護士に相談すべき最適なタイミングです。

(1)知的財産権侵害の疑いの場合

知財侵害の判断は、特許法や商標法といった専門的な法律知識が必要です。弁護士は以下の役割を担います。

①迅速な意見書作成:税関の定める短い意見提出期間内に、知的財産権の解釈に基づいた法的根拠のある意見書を作成し、輸入が適法である旨を主張します。

(2)品目分類や評価額の確認の場合

弁護士(通関士)は、関税評価やHSコードの専門知識に基づき、申告内容の正当性を主張します。

①法的論点の整理:貨物の特性や取引条件について、関税法上の解釈通則や規定を引用しながら、税関の疑問を解消する法的・技術的な説明を行います。

②今後の行政処分への備え:検査の結果、税関が輸入許可を与えない処分(関税法上の違法審査や事後調査への移行など)を下した場合に備え、後の再調査の請求や行政訴訟を見据えた戦略的な対応を行います。

 

輸入貨物の留置は、ビジネスの機会損失に直結します。不安な状況で単独で対応するのではなく、関税法、知財法、そして実務に精通した弁護士を「水際の防御壁」として活用し、迅速かつ最善の解決を目指しましょう。

関税評価の重要な争点:輸入貨物の「買付手数料」と「仲介手数料」を区別する

2025-12-22

1 手数料の違いが追徴課税を招く:複雑な関税評価の論点

輸入取引において、海外の第三者に支払う手数料は、関税評価(課税価格の算出)において最も頻繁に争点となる項目のひとつです。

この手数料が「買付手数料」と認定されるか、「仲介手数料(販売手数料)」と認定されるかによって、企業の関税・消費税の納税額が大きく変動するからです。

①買付手数料:原則として、輸入貨物の課税価格に加算する必要がない

②仲介手数料:原則として、輸入貨物の課税価格に加算する必要がある

この区別を誤って申告すると、事後調査で仲介手数料が加算要素として指摘され、多額の追徴課税を受けるリスクがあります。この二つの手数料を区別するための法的視点を把握することが必要です。

2 関税法上の「買付手数料」の定義

関税法における「買付手数料」とは、輸入者の計算において輸入貨物を買うために役務を提供する輸入者側の右腕として働く代理人に支払われる手数料と定義されています。

簡単に言えば、輸入者(買手)のために動いている代理人に支払う費用です。

税関が買付手数料と認定するかどうかは、契約書の存在を前提として実態も踏まえて厳しく判断されます。

買付手数料として認められるためには、契約書、メールのやり取り、報告書、会計処理などの客観的な証拠が必要です。

3 加算要素となる「仲介手数料(販売手数料)」

一方で、実態として、輸入者と輸出者の間を取り持ち、販売を促進する役割を担っていると判断された場合、その名称が「買付手数料」であっても、税関は「仲介手数料」として加算を求めます。

法律上は、手数料については原則として課税価格に加算する必要があり、買付手数料が例外的な建付けとなっておりますので、基本的には手数料という表現が使われている場合にはこちらの課税価格に加算する必要がある仲介手数料として処理することになります。

手数料に関する論点は、名称ではなく実態、そしてその実態を裏付ける証拠によって判断されます。曖昧な契約や運用は、すべて追徴課税リスクに繋がります。

当事務所は、関税評価における複雑な加算要素の解釈について、豊富な経験と法的知識に基づき、貴社の取引実態に合わせた最適な契約構造と文書管理体制を構築し、貴社の法的リスクの解消に努めます。

「並行輸入」と「模倣品対策」:知的財産権侵害で税関に差止・没収されないための事前準備

2025-12-17

1 水際で止められるリスク:知的財産権侵害と税関

貿易において、商品が海外から日本に到着したとしても、輸入者が自由に引き取れるわけではありません。
税関は、関税の徴収や輸入規制のチェックに加え、知的財産権(知財)の侵害物品が日本国内に入り込むのを阻止する重要な役割を担っています。いわゆる「水際取締り」です。
輸入しようとした商品が、商標権や著作権などを侵害する「模倣品(ニセモノ)」と判断されると、税関により輸入が差し止められ、最終的に没収される可能性があります。
特に並行輸入を行う事業者は、この知財侵害のリスクを常に意識し、万全の対策を講じる必要があります。

(1)「真正品」と「侵害品」の判断基準

税関が取締る対象は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などを侵害する物品です。

一番侵害しやすいものとしては、商標権侵害でしょう。

①並行輸入と「真正商品の輸入」

並行輸入とは、正規代理店ルートとは別のルートで、商標権者またはその許諾を受けた者が製造・販売した「真正商品」を輸入することです。真正商品の輸入自体は、特定の条件を満たせば適法とされています。

しかし、税関が差し止めを行うのは、その商品が「真正商品ではない」、すなわち模倣品である疑いがある場合です。

②税関による差止めのプロセス

税関は、輸入貨物に模倣品の疑いがあると、輸入者に対して「意見提出の機会の通知」を行います。この通知を受けた場合、輸入者は、輸入商品が真正品であり、知的財産権を侵害していないことを税関に対して立証しなければなりません。

この立証が不十分であると、権利者側からの輸入停止申立てが認められ、商品の没収や廃棄という最悪の結果につながります。

(2)並行輸入事業者が取るべき3つの事前準備

合法的に並行輸入事業を行うためにも、税関による差止めのリスクを最小限に抑える事前準備が必要です。

①事前の権利調査と真正品の証明準備

権利情報収集:輸入を予定している商品の商標権が、日本国内で誰に、どのような商品・役務(サービス)で登録されているかを正確に調査します。

取引履歴の確保:輸入する商品が、商標権者またはその許諾を受けた者によって製造・販売された真正商品であることを証明できる取引書類(仕入先の正規性を示す証明書、売買契約書など)を事前に確保しておきます。

②「認定手続き」の活用(権利者側対策)

知的財産権を侵害されるリスクを持つ権利者側は、税関に対してあらかじめ「輸入差止申立て」を行っておくことができます。この申立てが税関に受理され、取締りの対象として登録されると、税関はより積極的に水際取締りを行います。

(3)差し止め通知を受けた際の迅速な対応

もし輸入者として差止め通知を受けた場合、時間との勝負となります。

①弁護士への相談:通知を受けたら、直ちに関税法と知財法に精通した弁護士に相談します。

②立証資料の準備:弁護士は、輸入者が提出すべき真正品の証明資料を精査・補強し、法的・論理的な意見書を作成して税関に提出します。この意見書を通じて、商品が真正品であり、輸入が適法である旨を強力に主張します。

2 まとめ

知的財産権侵害をめぐるトラブルは、商品の没収だけでなく、企業イメージの失墜にも繋がりかねません。輸入を計画する段階から、関税法と知財法の両面からリスクを検証し、防御体制を構築することが重要です。当事務所は、輸入者が安心してビジネスを展開できるよう、知財リスクを含めた包括的なコンプライアンスをサポートします。

【輸入者のためのリスク管理】海外業者との契約書で確認すべき関税・通関に関する重要条項

2025-12-12

1 トラブルは「契約書」から始まる:輸入者視点での関税リスク管理

輸入トラブルや事後調査での問題点の指摘の多くは、海外の売主や製造委託先との契約書の不備、あるいは関税・通関に関する条項の認識不足に起因します。

契約書は、取引が円滑に進んでいる時には大して問題になりませんが、トラブルが発生した際、または税関調査が入った際の「企業の防御壁」となります。

輸入事業者が自己のリスクを最小限に抑えるため、海外業者との売買契約書や製造委託契約書で特に確認し、明確化しておくべき重要条項を、弁護士の視点から解説します。

(1)課税価格決定の根拠:「支払いの全容」の明確化

関税評価における最大の論点は、輸入者が海外に支払った費用のうち、どこまでが輸入貨物の課税価格に算入されるか(加算要素)という点です。これを曖昧にしておくと、事後調査で追徴課税を招きます。

①ロイヤルティ(ライセンス料)に関する条項:契約書内で「ロイヤルティの支払いが、輸入貨物とは無関係であることを明確にする」ことが重要です。関税評価上、ロイヤルティが貨物の「輸入販売の条件」であると認定されると、課税価格に加算されることになります。支払いの根拠を明確に分離する記述が必要です。

②手数料に関する条項:支払う手数料が、関税評価上加算不要とされる「買付手数料」に当たるのか、加算が必要な「仲介手数料」に当たるのか、その業務内容と対価を明確に区別して記述します。

(2)HSコードと原産地:情報の提供義務

関税率やEPA適用に直結するHSコードや原産地証明書の情報は、輸入者が申告責任を負うにもかかわらず、その情報源は海外業者に依存しています。

①HSコードの提供義務:輸出者が輸出時に適用するHSコード(輸出国のコード)を、輸入者に対して事前に提供する義務を契約書に明記します。また、輸入者側でのHSコード分類(輸入国のコード)を海外業者に通知し、その相違点に関する認識を共有しておくことが望ましいです。

②原産地規則関連の協力義務:EPA(経済連携協定)を適用する場合、輸出者に対し、原産地証明書の発行および原産性を証明するための製造工程やコストに関する資料の提供に協力する義務を明確に負わせます。この資料提供が滞ると、特恵関税の適用が否認され、多額の追徴リスクに繋がります。

2 弁護士による契約書レビューの必要性

海外業者との契約書は、取引開始前の予防法務の最前線です。

関税法や関税定率法は国内法であり、その解釈は海外業者には理解されにくいものです。当事務所のような関税・通関実務に精通した弁護士(通関士資格保有)は、海外の契約書を日本の関税法、関税評価ルール、および事後調査の実務経験に基づきレビューし、輸入者のリスクを最小限に抑えるための修正案を提案します。

契約前のわずかな手間で、将来発生しうる数億円規模の追徴リスクを回避することができます。海外との取引を始める際は、必ず契約書を精査しましょう。

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