『関税逃れ』の疑いをかけられたケース~意図がなくても不正と判断されるリスクとは?~

「関税を逃れるつもりなんてなかったのに、『脱税の疑いがある』として調査を受けてしまった…」

これは、悪意はなかったにもかかわらず、税関から「関税逃れのスキームではないか」と疑われてしまった企業の実例です。

今回は、結果的に不正とみなされかねない輸入形態や申告の誤りと、その防止策を解説します。

 

1 実例:二段階輸入が「価格操作」と指摘された

ある企業は、海外の親会社から製品を仕入れ、それを国内で組立・販売していました。

当初は完成品を一括で輸入していたのを、コスト削減のために、部品単位で輸入→国内組立に切り替えたところ、税関の事後調査で次のような指摘を受けました。

①「一体の商品を意図的に分割輸入することで、関税率の低い品目として申告している」

②「輸入価格が実態よりも著しく低く、不自然」

③「関連会社間での取引で、移転価格調整が疑われる」

企業側は「コスト管理と製造工程の都合」と説明しましたが、税関は過少申告の疑いがあるとして調査を継続、修正申告を求めました。

 

2 意図がなくても「不正」とされることがある

税関は、輸入取引について次のような視点で評価します。

①実態として取引価格が正当か(取引価格主義の要件)

②商品の性質に比べて価格が極端に低くないか

③関係者間取引で、価格が恣意的に調整されていないか

意図的な不正でなくても、「説明責任を果たせなければ不適正と判断される」のが、関税実務の現実です。

 

3 誤解されやすい取引形態の例

①関連会社間の取引で相場よりも安い価格設定

②サンプル品・試作品を有償として輸入し、価格根拠が不明

③部品を複数回に分けて輸入し、セット品としての一体性が見えにくい

④ロイヤルティや役務提供の支払いが別建てで、申告価格に反映されていない

これらは悪意がなくても、税関から「不正の疑いがある」と見なされやすいパターンです。

 

4 実務対応と説明のコツ

①インボイス、契約書、取引条件など価格根拠となる書類を整備

②価格算定の基準(コスト構成、利益率、比較取引等)を明示的に記録

③関係会社間取引については移転価格税制とも整合的な説明を用意

④商品分割の理由や、工程ごとの実態を図解・写真で説明

⑤税関とのやりとりには論理的かつ冷静なトーンで対応

 

5 税関とのトラブルを最小限に抑えるために

税関は、「納得できる説明と証拠」があれば柔軟に判断してくれる場合もあります。

逆に、「よくわからない」、「説明が不明瞭」という状態では、不正の疑いが深まり、追徴・加算税・調査拡大につながる可能性があります。

疑念を招かないよう、日頃からの取引の透明性と記録の整備が最も効果的な防衛策です。

 

「関税逃れの意図はない」という主張だけでは足りず、『なぜその価格や取引形態が妥当なのか」を説明できる体制が求められます。

税関からの調査に備え、説明責任を果たせる書類・体制・意識づけが企業のリスク対策となります。

当事務所では、関税評価や価格設定に関する税関対応、課税価格の説明文書の作成支援も行っております。疑義を抱かれる前に、ぜひご相談ください。

 

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