「ロイヤルティは販売後に支払う契約だから、関税評価には関係ないと思っていました…」これは、技術ライセンス契約に基づくロイヤルティの支払いが、課税価格の加算要素の対象になるか否かをめぐって問題となった実例です。
今回は、ロイヤルティ(使用料)の加算が問題となったケースを通じて、契約書の表現が関税実務に与える影響と、防止策を解説します。
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1 実例:ライセンス契約が評価加算の根拠に?
ある企業は、海外ブランドのライセンスを取得し、OEM製造された商品を輸入・販売していました。
製造元とは通常の売買契約を結んでいましたが、別途、ブランドホルダーと商標使用契約を締結し、販売数量に応じたロイヤルティを支払っていました。
ところが税関は、以下の点を理由に、ロイヤルティを課税価格に加算すべきと判断しました。
①輸入商品の販売に不可欠なブランドであること
②ロイヤルティ支払が商品の販売条件とみなせる契約内容であったこと
③ライセンス契約が輸入者と第三者(ブランド権者)との間にあり、「間接的な対価」と解釈可能であったこと
その結果、過去3年分のロイヤルティ総額が関税評価に加算され、追徴課税と加算税の対象となったのです。
2 ロイヤルティが加算対象となる基準
関税法第4条および関税評価に関する通達では、ロイヤルティが加算されるか否かの判断基準として、次のような要素が挙げられています。
①商品の販売・輸入に不可欠な条件となっているか
②ロイヤルティの支払い先が製造者またはその関係者かどうか
③支払が、輸入者が商品を入手するための前提とされているか
加算対象とされる場合、ロイヤルティの全額または一部を、輸入価格に加えて関税を算定する必要があります。
3 なぜ契約書の文言が問題になるのか?
加算対象かどうかは、ロイヤルティの「実質的性格」だけでなく、契約書の条項がどのように書かれているかに大きく左右されます。
①「ロイヤルティは商品の製造・販売に対する対価とする」
②「支払がなければ商品の使用・販売を禁ずる」
といった表現である場合、 税関は「販売条件に該当」と判断しやすくなるでしょう。
他方で、
①「ロイヤルティは販売後の広告利用等に基づくものとする」
②「輸入時には支払義務が発生しない」
といった表現を使用している場合、 加算対象外とする余地が生まれるでしょう。
ロイヤルティの取り扱いは、契約当事者がどのような意図で締結したかだけでなく、「契約書の条文」がそのまま関税評価に影響を及ぼします。
関税法務の視点から契約内容を整備することが、評価加算トラブルを未然に防ぐ鍵です。
当事務所では、ロイヤルティ契約の評価リスク診断、税関対応、契約書レビュー、不服申立て対応まで幅広く対応しております。ぜひお気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

