「同じ商品なのに、税関から『これは別の分類になる』と指摘され、関税率が3倍に引き上げられました…」
これは実際にあった、HSコード(関税分類)のミスによって大きな追徴課税を受けた事例です。
今回は、関税分類の誤りが招くリスクと、トラブルを未然に防ぐ「事前教示制度」の活用法を解説いたします。
このページの目次
1 HSコードとは?
HSコード(Harmonized System Code)は、国際的な商品の分類番号です。
日本では「関税率表」に基づき、6桁(国際共通)+3桁(国内)=合計9桁で構成され、これにより関税率・輸入規制の対象が決まります。
輸入申告の際には、正確なHSコードを付けて申告しなければなりません。
2 なぜ分類ミスが起きるのか?
①商品が技術的に複雑で、分類基準が曖昧
②類似商品との線引きが難しい
③過去の申告を踏襲しており、根拠の再確認がされていない
④通関業者に任せきりで、社内で分類根拠を把握していなかった
分類は、税関がインボイスやカタログだけで判断するとは限らず、実物の構造や機能に基づくため、申告者側の理解と準備が重要です。
3 事前教示制度の活用
税関では、申告前に「この商品はどのHSコードに該当するのか?」を確認できる事前教示制度を提供しています。
申請時には以下の情報を添付します。
①製品写真・仕様書・図面・カタログ
②用途・構成部品・販売方法等の説明
③必要に応じてサンプルの提出
教示の内容は文書で通知され、一定期間有効な税関の判断として活用可能です。これにより、申告時のリスクを大きく下げられます。
4 実務対応のポイント
①商品ごとに社内で分類根拠台帳(HSコード、関税率、過去申告実績)を整備
②新製品や仕様変更時には、必ず再確認を実施
③通関業者任せにせず、輸入者として自ら分類を把握・理解
④分類が不明確な場合は、早めに事前教示を依頼
⑤誤りが判明した場合は、修正申告の要否とリスクを弁護士等に相談
HSコードの誤りは、関税額の大幅な変動や加算税の対象となるリスクを含んでいます。
「なんとなくこれでいいだろう」という感覚的な申告ではなく、分類の根拠とルールに基づく判断を徹底することが、税関トラブルを防ぐ第一歩です。
当事務所では、HSコードの分類判断、事前教示の申請支援、税関との見解対立時の対応など、幅広くご支援しております。分類に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。