輸入ビジネスでは、インターネットを通じて簡単に海外業者と取引ができるようになった反面、詐欺的な業者との取引による被害も増加しています。
「代金を支払ったのに商品が届かない」、「粗悪品や全く異なる商品が送られてきた」などのケースでは、損害回収が可能なのかどうかが大きな関心事となります。
今回は、詐欺的業者との輸入取引において、法的にどのような対応が可能か、そして損害回収の現実的な可能性について解説します。
このページの目次
1 詐欺的取引の典型例
以下のようなケースは、実務上しばしば確認される詐欺的な取引パターンです。
①海外のB2Bサイトで見つけた業者に前金を振込後、音信不通になる
②契約書を交わさず口頭やメールだけで取引開始し、商品が届かない
③正規ブランド品と信じて注文したら、粗悪な模倣品だった
④インボイスと異なる品物が届いたが、返品も交換も応じてもらえない
特に、中国・東南アジア・中東などの業者との初回取引において、このようなトラブルが多く報告されています。
2 詐欺被害に該当するかの判断基準
日本の刑法上の「詐欺罪」に該当するためには、以下の要件が必要です(刑法第246条)。
①相手方に虚偽の事実を述べさせるなどして錯誤に陥らせた
②その錯誤により財産的利益を得た(例:代金を騙し取った)
③故意(騙す意図)が認められる
ただし、民事上の「契約不履行」や「債務不履行」に該当する場合も多く、詐欺であることを立証するのは難しい場合もあるため、実務では損害賠償請求との併用が検討されます。
3 被害発生時の対応と証拠保全
被害に気づいた時点で、以下の対応を速やかに行いましょう。
①メール・チャット履歴、契約書、インボイス、支払証明書などを保存
②発送されなかった商品について、運送会社・税関への確認を行う
③海外業者との連絡内容を記録し、再交渉の試みを文書で残す
④可能であれば、現地代理人や大使館・JETRO等を通じた現地調査も検討
証拠を的確に収集しておくことが、損害回収や訴訟提起の際に極めて重要となります。
4 予防策:契約・調査・決済方法の工夫を
①契約書に管轄裁判所・準拠法・仲裁条項を必ず明記する
②初回取引では信用調査(過去実績、口コミ、JAPANブランド登録等)を行う
③決済は信用状(L/C)やエスクローサービス、後払条件などリスク分散を図る
④少額サンプル取引を経てから本格的な取引に進む
海外業者との取引で詐欺被害に遭った場合、損害回収の道は簡単ではありませんが、証拠保全と専門家の助言によって可能性を広げることはできます。
また、契約段階からのリスク管理が最大の防止策となります。
当事務所では、海外取引の契約チェック、トラブル発生時の交渉・訴訟、詐欺対応の相談まで幅広く対応しております。ご不安な点がある方は、早めにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。