海外から輸入した商品が到着したものの、一部が破損していた、または全体的に損傷していたというケースは少なくありません。
このような事態に直面したとき、輸入者として「誰に、どのように責任を求めるべきか」、「はたして損害補償は受けられるのか」といった問題に直面することになります。
そこで、本日は、輸入品の破損が発生した場合の法的整理と実務上の対応策について解説いたします。
このページの目次
1 輸入品破損の主な原因
輸入品の破損は、以下のような複数の原因が考えられます。
①輸送中の物理的衝撃・振動
②荷役作業中の事故(積み下ろしミスなど)
③梱包不良(海外メーカー側の原因)
④通関・検査時の取り扱い不備
⑤保管中の湿気・温度管理の不備
原因の特定が不明確な場合もありますが、損害の責任の所在を巡って複数の関係者(輸出者、輸送業者、保険会社等)が絡むため、法的・契約上の整理が必要です。
2 インコタームズによる危険負担の分担
国際取引における「インコタームズ(Incoterms)」により、商品の損傷に対する危険負担の所在が定められます。
①FOB(Free on Board):本船積込時点で買主にリスクが移転
②CIF(Cost, Insurance and Freight):保険付き、港到着時点でリスク移転
③DDP(Delivered Duty Paid):輸入者の手元に届くまで売主が責任を負う
契約書でどのインコタームズが適用されているかにより、どの時点で破損が発生したかが責任を判断する際の出発点になります。
3 輸送保険(貨物海上保険)の確認
多くの輸入取引では、万一の破損に備え「貨物海上保険」が付保されています。
この保険によって補償される場合、以下の手続きが必要となります。
①到着時にすぐに破損の有無を確認(写真・動画記録)
②船会社やフォワーダーに「事故報告書」提出
③保険会社に「損害証明書(サーベイレポート)」を依頼
④補償請求に必要な書類(B/L、インボイス、保険証券等)を準備
破損品を廃棄・転売する前に、保険会社の指示を受けることが重要です。
4 契約相手への責任追及
破損の原因が海外メーカー側(梱包不備等)にあると判断される場合、売主に対して契約上の瑕疵担保責任(契約不適合責任)、債務不履行責任を追及することを検討することになります。
交渉が難航する場合には、弁護士による通知書送付や、仲裁・訴訟手続を視野に入れる必要もあります。
輸入品の破損は、放置すれば大きな損失となり、トラブルの長期化にもつながります。
契約内容・保険・インコタームズなどを正確に把握し、原因ごとに適切な対応を取ることが必要です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。