輸入手続きにおいて提出が求められる代表的な書類のひとつが「インボイス」です。
インボイスは、輸入申告時に貨物の価格・数量などを示す最も重要な資料の一つですが、記載ミスや情報不足があると、通関手続きの遅延、課税評価の誤り等の問題につながります。
今回は、インボイスの誤記がもたらすリスクと、その修正手続きの実務について解説いたします。
このページの目次
1 インボイスに盛り込むべき基本項目
インボイスには、以下のような情報が盛り込まれている必要があります。
①輸出者名・輸入者名
②商品の品名・数量・単価・総額
③原産地(Country of Origin)
④輸送条件(FOB、CIFなど)
⑤発行日
これらの情報は、課税価格の算定を行うための重要な情報となりますので、誤った情報が記載されると脱税等の自体が発生する可能性がありますのでくれぐれも注意が必要です。
2 インボイス誤記の典型例
以下は、実務でよく見られる誤記例です。
①数量・単価・通貨の記載ミス
②原産地の誤表示(例:実際は中国製だがベトナム製と記載)
③商品名の不明瞭な記載(例:”accessory” のみではHSコード判定が困難)
④実際の支払い金額とインボイス金額が異なる(値引きや無償提供の未記載)
こうした誤記があると、輸入事後調査で過少申告(アンダーバリュー)と判断され、過少申告加算税や重加算税の対象となることがあります。
誤記が判明した場合には資料の差し替えを行うことが考えられますが、仮に申告手続きが終了していた場合には、修正申告を行う必要があります。
3 輸入事後調査でのチェックポイント
税関の輸入事後調査では、インボイスの記載の正確性が厳しくチェックされます。
特に以下のような点がある場合には注意が必要です注目されます。
①継続的に不自然な価格での取引がある
②関連会社との間で価格が恣意的に設定されている
③サンプル品・ノベルティ等が未申告になっている
適正な価格・内容でインボイスを発行してもらうことが重要であり、輸入者としては各データ(発注書・見積書・送金証明など)を保存しておく体制が求められます。
インボイスは単なる「送り状」ではなく、関税申告の根拠となる法的文書です。
誤記や説明不足は税関とのトラブルの原因となり、追徴課税や信用低下にもつながります。
当事務所では、インボイスや通関書類の法務チェック、税関からの照会対応などのご相談を総合的に対応しております。ミスのない体制づくりをサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。