本日は、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)の概要と、「該非判定」の重要性について、経済安全保障の視点を交えてご説明いたします。
このページの目次
1 そもそも外為法とは?
外為法は、日本の国家安全保障や国際的な平和維持、経済的安定を目的として、外国為替や貿易を規制する法律です。特に、戦略物資や軍事転用が可能な技術・製品の輸出には厳しい管理が求められます。
外為法に基づく輸出管理制度では、輸出者に対して、自社の商品や技術が規制対象に該当するかどうかを確認する「該非判定」の義務が課されています。この判定を誤ると、重大な法的リスクが発生します。
2 該非判定とは?
該非判定とは、輸出しようとする製品や技術が、国際的な規制リストや日本独自の規制に該当するか否かを確認する手続きです。例えば、以下の2つの規制が代表的なものとなります。
①リスト規制
兵器転用可能な製品や技術を対象とした規制
②キャッチオール規制
特定の用途やユーザーに対する輸出規制
これらの判定が適切に行われないと、意図せず国家安全保障上のリスクを生じさせたり、国際社会からの信頼を損ねたりする可能性がありますので、慎重に行う必要があります。
3 具体的な事例
①事例1『技術輸出の誤判定による経済制裁』
ある企業が新型材料の輸出を行った際、該非判定を誤り、実際にはリスト規制に該当する製品を輸出していました。この製品は軍事用途への転用が可能であり、輸出先の国は国際的な制裁対象国でした。その結果、企業は罰則を受けたうえ、経済制裁違反として国際的な非難を浴び、取引先からの信用を失いました。
典型的なケースではありますが、該非判定が適切に行われないと、日本国内での法的責任だけでなく、そもそも将来的な事業継続にも大きな影響を及ぼすことがあります。
②事例2『技術提供の不適切な管理』
日本の企業が、海外の研究機関と共同研究を行う際、該非判定を怠り、規制対象の技術データを提供してしまいました。
その結果、当該技術が第三国の軍事計画に転用される可能性が浮上し、企業は日本政府から指導を受けました。
たまに勘違いをされている事業者の方がおりますが、外為法では物品の輸出だけでなく、技術情報の提供も規制対象ですので、技術に関しても慎重な確認が必要です。
4 該非判定を適切に行うためのポイント
①社内体制の整備
輸出管理に関する社内規程を整え、担当者の教育・訓練を徹底する必要があります。
②専門家の活用
該非判定は複雑なプロセスを伴うため、法律や技術の専門家によるサポートを活用することが有効です。
③最新の規制動向の把握
国際情勢や法改正に伴い規制内容は変化します。常に最新情報を入手し、適切に対応することが求められます。
5 適切な体制を整えることが重要です
外為法とそれを踏まえた該非判定は、企業が国際的な責任を果たし、事業を継続的に発展させるための重要な柱です。
経済安全保障の観点からも、該非判定を正確かつ慎重に行うことが求められます。このためには上記のとおり、輸出管理に関する社内体制の強化と最新情報の収集が不可欠です。
該非判定や外為法に関する疑問が少しでもある場合は、専門家にご相談いただくことを強くお勧めいたします。
何か問題が発生してからでは手遅れとなる場合も多く、事前の対応が非常に重要です。