ご注意ください!~兼業(副業)と労働時間の考え方~

従業員の労働時間について、労働基準法等において様々な規制が存在することはご存知の方も多いのではないでしょうか。
昨今、従業員の兼業(副業)(以下、単に「兼業」といいます)を認める企業が増えてきておりますが、従業員が兼業する場合の労働時間の算定方法、考え方については明確に理解できていない方も多いのが実情であるように思われます。
そこで、本日は、従業員が兼業する場合の労働時間の考え方をご紹介いたします。

 

1 労働基準法38条1項について

労働基準法38条1項は、事業場を異にする場合の労働時間の通算を規定しております。
そして、通達を踏まえますと、労働基準法の労働時間に関するすべての規定が、通算した労働時間に基づいて適用されることとなります(昭和61・6・6基発第333号等)。

 

2 労働基準法38条1項の「事業場を異にする場合」について

労働基準法38条1項における「事業場を異にする場合」の意義については、行政解釈(昭和23・5・14基発第769号)および通説によると、同一使用者に属する複数事業場で労働する場合だけでなく、異なる使用者の下で労働する場合を含むと考えられております。
そのため、例えば、事業主Aの下で所定労働時間1日5時間として勤務している従業員Xが、新たに、事業主Bとの間で、所定労働時間1日4時間として勤務を開始する場合には、1時間が法定時間外労働となりますので(労働基準法32条2項)、労働基準法33条や36条等の手続と割増賃金の支払(労働基準法37条)が必要となります。

注意すべき点としては、これらの法定時間外労働に関する義務を負うのは、実労働時間を最初から起算して法定労働時間を超えた時刻の使用者ではなく、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した使用者(すなわち、事業主B)とされます。
すなわち、1日の中で、先に事業主Bの下で4時間勤務をし、その後事業主Aの下で5時間勤務をした場合には、法定時間外労働となるのは、事業主Aの下での勤務ですが、あくまでも法定時間外労働に関する義務を負うのは、従業員Xとの間で後から労働契約を締結した事業主Bとなるということです。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

兼業と労働時間の考え方については、わかりづらい面がありますが、使用者側として是非正確に理解いただきたい内容となります。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、労働時間に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくお問合せください。

 

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