事後調査でチェックされる3つの重要論点

1 税関事後調査の核心:3つの論点

税関による輸入事後調査は、過去の申告の適正さを検証する手続きですが、その焦点はある程度絞られています。

追徴課税のリスクを最小限に抑えるためには、チェックされる3つの中心的な論点を事前に把握し、対策を講じることが不可欠です。

弁護士としての経験から、申告漏れや誤りが指摘されやすい、特に注意すべき論点を解説します。

(1)関税評価:ロイヤルティ、金型費、仲介手数料の「加算漏れ」

事後調査で最も追徴課税が発生しやすいのが、関税評価(課税価格の決定)に関する問題です。買手が海外の売手に支払った「貨物代金」だけでなく、輸入取引に関連して支払われた特定の費用を、輸入申告の際に課税価格に加算(上乗せ)しなければならないというルールがあります。

税関が特に注視するのは、以下の「加算要素」が申告から漏れていないかという点です。

①ロイヤルティ(商標使用料など)

輸入貨物と関連して、輸入者が商標権者などに支払うロイヤルティやライセンス料は、原則として課税価格に加算する必要があります。

ただし、「貨物の販売条件として支払うこと」など、加算が必要となる要件は複雑です。契約書や支払条件を精査し、加算の要否を判断しなければなりません。

②無償または低額提供した費用(金型、設計図など)

輸入者が、輸入貨物を製造するために必要な金型、設計図、技術援助などを輸出者へ無償、または非常に安価に提供した場合、その費用(提供費用)を貨物の課税価格に加算する必要があります。この費用の算出方法や配分方法が複雑で、申告漏れが頻繁に起こります。

③買付手数料と仲介手数料の区別

第三者に支払った手数料のうち、「買付手数料」は加算不要ですが、「仲介手数料(販売手数料)」は加算が必要です。この区別は非常に難しく、関税定率法や通達を踏まえて慎重に判断されます。企業が「買付手数料だ」と考えていても、税関により「仲介手数料」と認定されれば、過去に遡って追徴されます。

(2)HSコード:高額な関税率の「適用逃れ」

HSコードは、輸入貨物の種類を世界共通のルールで分類し、適用される関税率を決定する最も重要な情報です。HSコードの分類を誤ると、本来とは異なった関税率を適用することになり、誤った申告となります。

税関は、高額な関税率が適用されるはずの貨物や、複雑な製品(複合機械、化学製品など)について、意図的または誤って低率のHSコードを適用していないかをチェックします。

HSコードの誤りを指摘された場合、その修正は過去5年間の全輸入分に及ぶため、追徴額が膨大になるリスクがあります。

(3)特恵/EPA(経済連携協定):原産地規則の「証明不備」

近年、関税削減のためにEPA(経済連携協定)の特恵関税率を適用する企業が増加していますが、これに伴い、原産地規則の誤りによる非違指摘も増加しています。

特恵関税を適用するためには、「その貨物が協定相手国で完全に生産されたもの」または「十分な加工が行われたもの」等原産地規則に沿った原産性を証明しなければなりません。

証明書類の不備や、原産地規則の誤った解釈による適用は、特恵関税率の適用が否定され、本来の税率との差額が追徴されることになります。

2 まとめ:事前の対策と専門家の活用

これらの重要な論点は、通関実務と関税法の専門知識がなければ正確に対応することが難しい分野です。事後調査の通知を待つのではなく、日常の内からこれらの論点について社内チェック体制を確立することが最善の防御策です。

当事務所は、関税評価、HSコード分類、原産地規則の全てにおいて、弁護士と通関士の専門知識を融合させ、貴社のコンプライアンス強化と事後調査への対策をサポートいたします。ご不安な点がある場合は、まずはご相談ください。

 

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