事後調査で3年分の価格修正を求められた~継続取引の落とし穴~

「毎回同じ条件で輸入していたはずなのに、『過去3年分の価格が過少だ』と指摘され、追徴課税されました…」

これは、長年同じサプライヤーからの輸入を続けていた企業が、税関の事後調査で価格評価に問題があるとされ、遡及して修正を求められた実例です。

今回は、継続取引ゆえに見過ごされがちな関税評価の見直しポイントと、調査対応の注意点を解説します。

 

1 実例:割引条件の見落としで課税価格を否定

ある企業は、特定の海外メーカーから3年以上にわたって部品を継続輸入していました。

インボイスの単価は常に一定で、過去に税関から指摘を受けたこともありませんでしたが、事後調査の際、以下の点が問題視されました。

①継続取引の中で、リベート(事後的値引き)が付与されていた

②無償提供された部品の存在が一部確認された

③サプライヤーとの契約に「支払調整条項」が含まれていた

これにより、実際に支払うべき価格が申告価格より高かったとして、税関は3年分の申告価格を修正し、追徴課税および過少申告加算税を課しました。

 

2 「実際に支払うべき価格」とは?

関税評価においては、「実際に支払った又は支払うべき価格」が評価の基本です。

この「支払うべき価格」には、次のような要素も含まれます。

①リベートの取消し

②支払義務があるが申告に反映されていない費用

③無償供与品や技術指導などの加算要素

つまり、単に「インボイスに書かれた価格」だけでなく、実質的に取引の対価として支払うものはすべて評価対象になるという考え方です。

 

3 継続取引こそ『定期見直し』が必要

継続的な輸入であっても、以下のような変化があると、評価の見直しが必要です。

①支払条件や割引制度の変更

②販売インセンティブや目標達成ボーナスの追加

③関連会社間での価格調整

④サプライヤーとの契約改定(役務・ライセンス追加など)

こうした変更があっても、申告価格を据え置いたままだと、「過少評価」として税関に指摘される可能性が高まります。

 

4 調査対応のポイントと対策

①継続取引でも年1回は契約書・価格条件・実際の支払記録を点検

②会計記録と輸入申告データの整合性をチェック

③サプライヤーとの価格調整・リベート等のやり取りを明文化

④調査時には、税関に先回りして資料を提示・説明

⑤不安な点があれば、弁護士や通関士のレビューを受ける

 

継続的な輸入取引こそ、見直しや点検を怠ると大きなリスクにつながります。

税関は“これまで指摘されなかった”ではなく、“現在が適正かどうか”を見ているという視点を持ち、取引条件の変化に対応できる体制を構築しましょう。

当事務所では、契約・価格構成・税関評価のレビュー、調査対応支援も行っております。長期的な輸入管理に不安がある方は、ぜひご相談ください。

 

 

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