税関事後調査とは何か?輸入事業者が知るべき基礎知識
輸入事業を継続していると、いつか必ず経験する可能性があるのが税関による事後調査です。これは、輸入貨物の許可後に、過去の輸入申告が関税定率法その他の法令に基づき適正に行われていたかをチェックするための「税関による税務調査」のようなものです。
この調査の目的は、単に過去の申告ミスを指摘し追徴課税を行うことだけではありません。むしろ、適正な課税の確保と、輸入者に対する適切な申告指導を行うことにも重点があります。
このページの目次
1 調査の対象となる「期間」と「項目」
税関の事後調査は、原則として過去5年間の輸入申告を対象とします。
調査で重点的に見られる項目は、主に以下の3点です。
①関税評価(課税価格)
輸入貨物の代金だけでなく、輸入者が海外に支払ったロイヤルティ(商標使用料)、無償提供した金型や設計図の費用、仲介手数料などが加算要素として課税価格に正しく算入されていたかどうか。
②HSコード(品目分類)
輸入貨物の関税率を決めるコードが正しく適用されていたか。
誤分類は関税率の誤り、申告価格の間違いに直結します。
③原産地規則
EPA(経済連携協定)や特恵関税を適用した場合、その貨物が本当に適用国の原産品であるか。原産地証明書や製造工程の書類が検証されます。
これらの項目について、税関は契約書、インボイス、会計帳簿、送金記録、メールのやり取りなど、多岐にわたる資料の提出を求めてきます。
2 事後調査の基本的な流れ
事後調査は、突然訪問されることはまれで、通常は以下の流れで進行します。
①事前通知
税関から企業に対して、調査を実施する日時、場所、対象期間、対象税目などが電話または文書で通知されます。
②実地調査(立ち会い)
税関職員が企業を訪問し、帳簿や書類の確認、担当者へのヒアリングを行います。この際、関税法には立ち会いの義務はありませんが、弁護士(通関士)の立会いも有効です。専門家が同席することで、企業側の主張を整理し、法的根拠に基づかない回答を行うことを防ぐことができます。
③調査結果の通知と修正申告の検討
実地調査後、税関は指摘事項を提示します。
企業側はこれを確認し、指摘に同意できる場合は修正申告を行い、不足分の関税・消費税と過少申告加算税などを納付します。
3 調査における「真のゴール」は何か?
事後調査における真のゴールは、企業の「コンプライアンス体制の確立」です。
調査で指摘された点について、
①なぜミスが発生したのか?
②そのミスを二度と起こさないためにどのような仕組みを導入したのか?
③担当者への教育をどう行うのか?
これらを明確にし、実行に移すことが、将来的に取引先や税関からの信頼を得る上で非常に重要です。弁護士は、単なる過去の申告の正誤だけでなく、将来にわたって適正な通関が行えるよう、社内体制の構築までサポートします。
事後調査の通知に不安を感じたら、すぐに専門知識と実務経験を持つ当事務所にご相談ください。適切な初動が、調査の早期終結と追徴リスクの低減に繋がります。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

