海外から商品を仕入れる場合、海外業者との間で売買契約を締結することになりますが、その際に非常に重要となるのが、ウィーン売買条約の規定の理解です。
ウィーン売買条約の規定を理解した上で必要に応じて海外業者との間で個別の合意を的確に締結しておかないと、想定していない事態に陥る可能性がありますので注意が必要です。
以下では、ウィーン売買条約の概要をご紹介いたします。
このページの目次
1 ウィーン売買条約について
(1)概要
ウィーン売買条約(「CISG」と略されることがあります。)は、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)が制定した国際物品売買契約に関する条約で、1988年に発行されました。
日本は2008年8月に加盟し、2009年8月1日から、本条約が発効しております。
本条約は、前文と本文101条からなる4部構成となっており、貿易取引における売場契約成立の有無と売主・買主の権利義務について定めております。
それ以外の事項、例えば所有権の移転時期などについては売買契約の準拠法に規律されます。
(2)ウィーン売買条約の適用の排除
ウィーン売買条約は、企業間の物品の売買契約に適用されますので、貿易取引の相手国が本条約の加盟国である場合には、条約が適用されます。
一方で、この条約は強行法規ではなく任意法規に該当しますので、契約当事者が合意することによって、本条約の適用を排斥又は変更することが出来ます。すなわち、契約当事者がインコタームズの適用を契約書で合意すれば、インコタームズ規定が本条約に優先して適用されるということです。
ただし、本条約が規定している範囲はインコタームズよりも広いので、契約成立の要件や契約違反に関わる事項等インコタームズの規定外の事項は本条約が適用される点には注が必要です。
(3)日本の国内法との関係性
ウィーン売買条約と日本の国内法との関係性についていえば、本条約の規定には日本の民法や商法と異なる点があります。
たとえば、契約成立の時期は、日本の民法では承諾の意思表示が発信された時ですが、その他、本条約では承諾の意思表示が申込者に到達した時と規定されております。
その他、瑕疵担保(契約不適合責任)や契約解除等の規定にも違いがあります。
これらの相違点は当事者間の契約で明確に排除しない限り、本条約の規定が適用されることになる点には十分注意する必要があります。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
ウィーン売買条約の規定は、日本の国内法との関係性とともに理解する必要がありますので、海外業者との間で売買契約を締結する場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。