「通関は全部、通関業者に任せていたのに、なぜ自社が重加算税を課されるのか…」
これは、通関業務を外部委託していた輸入者が、税関から“故意の過少申告”とされ、重加算税(35%)の対象とされた実例です。
今回は、通関業者任せにしたことでトラブルが拡大したケースをもとに、輸入者としての法的責任と体制整備の必要性を解説します。
このページの目次
1 実例:業者の申告ミス → 税関は輸入者の責任を指摘
ある中堅企業が、海外から定期的に化学製品を輸入していました。
通関はすべて業者に任せており、インボイスと簡単な商品説明を渡すだけの運用でした。
ある日、税関の事後調査で、HSコードの選定ミスと評価漏れが発覚。
税関は、「輸入者は適正な価格や分類で申告すべき注意義務を怠った」として、重加算税(35%)を含む追徴処分を課しました。
2 通関業者は『代行者』であり『免責装置』ではない
輸入申告において最終的な責任を負うのは、輸入者自身です。
誤った申告に対する責任は「申告者」にあり、たとえ通関業者が実務を担っていたとしても、輸入者が内容を確認・管理していなければ責任を免れません。
つまり、「業者が勝手にやったこと」としても、税関側は「輸入者の指示・確認が不十分だった」と判断するのです。
3 重加算税の適用基準とは?
税関が重加算税(35%)を課すには、以下の要件があるとされています:
①明らかに過少である価格・分類で申告した
②故意に申告価格を低く操作した
③虚偽の資料を提出した、または事実を隠蔽した
④過去に指摘を受けていたにもかかわらず再発している
このケースでは、社内で申告内容の確認体制が存在せず、同様の誤りが繰り返されていたことが重く評価されました。
4 実務での防止策
①通関業者との契約に申告内容の確認フローや責任範囲を明記
②インボイス・契約書・仕様書と、申告内容(HSコード・価格)を突き合わせる社内体制の整備
③通関データを一定期間ごとに定期監査・レビュー
④商品ごとに分類台帳を作成し、通関士と共有
⑤トラブル時の社内報告・改善フローの明文化
また、輸入者責任に関する教育や研修を定期的に実施することも、リスク管理上極めて有効です。
通関業者に申告を任せていても、最終的な責任は輸入者にあります。
通関ミスによる追徴課税を避けるためには、輸入者としてのチェック体制・契約管理・記録保存が不可欠です。
当事務所では、通関業務の委託契約レビュー、申告体制の構築支援、税関対応のサポートも行っております。業者任せに不安がある方は、ぜひご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

