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飲食店のメニューの表示と景品表示法
10年ほど前、ホテル等の料理メニューの記載に偽りがあったことが社会問題となり、料理メニューの表示方法に関して、消費者庁が「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」というガイドラインを平成26年頃に公表しました。
本日は、当該ガイドラインの概要をご紹介いたします。
1 「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」の概要
ガイドラインの内容を端的に表している部分として、優良誤認表示の該当性が論じられた部分がある。そこでは、「メニュー等における料理名だけでなく,そのほかの文言,写真等表示媒体としてのメニュー等全体から一般消費者が受ける印象、認識を基準に判断する。この場合,その料理等が提供される飲食店等の種類や料理等の価格の高低等の事情も考慮して,一般消費者がどのような印象・認識を抱くかを個別事案ごとに判断される」、また、「景品表示法は,特定の用語,文言等の使用を一律に義務付けたり,禁止したりするものではなく,景品表示法上問題となるか否かは,あくまで個別の事案ごと,具体的な表示ごとに判断される」と規定しております。
そして、具体例としては、例えば、禁止する表示として、①クルマエビと表示しつつブラックタイガーを使用すること、②ステーキと表示しつつ、牛の成形肉を焼いた料理を提供すること、③シャンパンと表示しつつ、スパークリングワインを提供すること、④フレッシュジュースと表示しつつ、既製品のオレンジジュースや紙パックのジュースを提供すること等が列記されております。
2 広告のリーガルチェックは弁護士にご相談ください
飲食店のメニューについてはなかなか判断が難しいものも多く、また、広告のリーガルチェックは様々な法規制を網羅的に検討する必要があります。
違法な広告である旨の判断をされてしまうと、措置命令や課徴金納付命令等の行政処分が下される可能性がありますし、また民事上の不法行為責任を負うリスクもあります。
また、企業の評判にも悪影響が生じ、ビジネス上大きなデメリットとなります。
例えば、googleの口コミや飲食店の紹介サイトなどで悪い口コミを記載されるだけで大きく売上に影響する可能性があります。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告法務を幅広く取り扱っておりますので、広告のリーガルチェックを含めてお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
外部委託業者による不正を原因とする不当表示
A社が出力100の機械の製造をB社に委託したところ、B社が不正を行い、出力80の機械の出力100としてA社に納入し、A社が出力100の機械として販売した場合、A社は意図せず商品について虚偽表示をしていることとなってしまいます。
では、このような場合のA社とB社の法的責任はどうなってくるのでしょうか。
1 A社の法的責任について
結果的に商品の虚偽表示を行った主体はA社となりますので、A社に景品表示法違反が成立し、措置命令の対象となります。
もっとも、A社が、虚偽表示について知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でない場合には、課徴金納付命令までは行われません。
また、当該商品によって購入者が何らかの損害を被った場合には、製造物責任をB社とともに負う可能性はあります。
2 B社の法的責任について
B社は実際に商品表示を行っていませんので景品表示法違反にはなりません。
もっとも、A社との間の契約違反であることは間違いありませんので、A社との間の契約内容次第ではありますが、基本的には債務不履行責任を負うこととなります。
また、出力80の結果、購入者が何らかの損害を被った場合には、製造物責任をA社とともに負う可能性はあります。
3 広告のリーガルチェックの重要性
以上のとおり、自社としては十分広告表示に注意を払っていたとしても、委託先等が原因で結果として景品表示法違反となってしまう場合はあります。
そして、消費者から見れば細かな事情は分かりませんので、意図的に不当表示を行った悪質な会社である等のレッテルを貼られるリスクすらあります。
また、広告のリーガルチェックは、様々な法規制を踏まえて行う必要がありますので、様々なリスクを低減させるという身でも、継続的に弁護士にご相談いただくことが重要です。
広告上のトラブルが発生した場合には、行政上の責任、刑事罰、民事上の責任、一般消費者からの信頼の低下等様々なデメリットがありますので、可能な限りそれらのデメリットの発生は避けた方がビジネスにとって望ましいことは間違いありません。 当事務所は、企業法務、インターネットトラブル、広告法務等を幅広く取り扱っておりますので、広告上のトラブルなど広告に関してお困りの場合にはまずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
事業者間取引と景品表示法
時折、「景品表示法は消費者保護の観点から設けられた法律ですよね。そうであれば、事業者間取引における広告表示に関しては、一切景品表示法を気にしないで大丈夫なんですよね。」というご質問をいただくことがあります。
結論としては、このような考えは一部正しく一部誤っていることとなりますので、十分注意する必要があります。
以下、ご説明いたしますので、ご参考となれば幸いです。
1 事業者間取引と景品表示法
景品表示法において不当表示として主として禁止される優良誤認表示や有利誤認表示に関しては、景品表示法5条において、一般消費者に対する広告表示と規定されております。
そのため、事業者に対する広告表示は景品表示法の対象ではないと考えられております。
もっとも、これはあくまでも、最終的な商品、役務のユーザーが事業者である場合の話であり、最終的な商品、役務の受け手が一般消費者である場合には、事業者間取引であっても、広告表示には景品表示法の規制が及びます。
例えば、事業用機械の部品を事業者間で取引する場合には、景品表示法の規制対象外となります。
他方で、一般人が使用する商品を、メーカーが卸業者と取引する際の広告表示については、最終的な商品の受け手が一般消費者となりますので、景品表示法の規制が及ぶこととなるので注意が必要です。
実際の事例として、事業者間取引であったものの、最終的な商品の受け手が一般消費者である場合に、景品表示法の規制が行われたものもございます(平成20年4月25日公正取引委員会排除命令等)。
2 広告のリーガルチェックについては弁護士にご相談ください
ある広告が違法な広告である旨の判断をされてしまうと、措置命令や課徴金納付命令等の行政処分が下される可能性があります。また民事上の不法行為責任等を負うリスクもあります。
加えて、昨今のインターネットやSNSの利用環境を踏まえると、「悪徳業者」等のレッテルが拡散されてしまうリスクもあり、そうなってしまうと企業の評判にも悪影響が生じ、ビジネス上大きなデメリットとなります。
広告に関しては、事前に詳細なリーガルチェックを行うことで、トラブルが起こるリスクを把握したり、そもそものトラブルの発生を回避することができる場合も相当程度あります。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告法務を幅広く取り扱っておりますので、広告のリーガルチェックを含めてお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
景品表示法上の「表示」について
時折、「景品表示法といいますが、表示って、どのようなものが該当するのですか。通常の語感だと、非常に広い概念であると思うのですが。」というご質問をいただく場合があります。
非常に基本的は論点ではありますが、本日は、景品表示法における「表示」についてご説明いたします。
1 景品表示法における「表示」について
まず、景品表示法2条4項において「表示」の定義が設けられています。
具体的には、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」と規定されています。
このとおり、景品表示法における「表示」とは、通常の意味での表示に様々な限定を付したものであり、一般の方が考える表示よりは狭い意味で用いられています。
ただし、当該規定は、あくまでも景品表示法で規制される「表示」の外枠を規定したものに過ぎず、実際にどのような内容であれば、「表示」に該当するかは、一つ一つ判断していくほかありません。
一連の要件の中で、よく質問いただくのが、「顧客を誘引するための手段」という部分の解釈についてです。
「これまで取引している相手に対して行う広告は、顧客を誘引するためのものではないといえるのではないか」、とのご質問をいただくことがありますが、継続的に取引している相手に対する広告も取引を継続させるという意味で「顧客を誘因する」に該当する考えられておりますので、注意が必要です。
2 広告のリーガルチェックの重要性
ある広告が違法な広告である旨の判断をされてしまうと、措置命令や課徴金納付命令等の行政処分が下される可能性がありますし、また民事上の不法行為責任等を負うリスクもあります。
また、昨今のインターネットやSNSの利用環境を踏まえると、「悪徳業者」等のレッテルが拡散されてしまうリスクもあり、そうなってしまうと企業の評判にも悪影響が生じ、ビジネス上大きなデメリットとなります。
広告に関しては、事前に詳細なリーガルチェックを行うことで、トラブルが起こるリスクを把握したり、そもそものトラブルの発生を回避することができる場合も相当程度あります。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告法務を幅広く取り扱っておりますので、広告のリーガルチェックを含めてお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
指定不当表示
1 指定不当表示について
景品表示法5条3号では、「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」と規定されております。
これは、優良誤認表示や有利誤認表示に該当しない広告表示についても、消費者保護の観点から規制を図るものです。
指定不当表示は「誤認されるおそれがある表示」と規定されており、優良誤認表示や有利誤認表示よりも要件が緩やかですので、より厳格な規制となっている点には注意が必要です。
また、指定不当表示に該当した場合、措置命令の対象とはなるものの、課徴金納付命令の対象とはならないとされています。
2 指定告示の具体的な内容
現在指定されているものは、以下の6種類です。
①無果汁の清涼飲料水等についての表示(昭和48・3・20公取委告示第4号)
②商品の原産国に関する不当な表示(昭和48・10・16公取委告示第34号)
③消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55・4・12公取委告示第13号)
④不動産のおとり広告に関する表示(昭和55・4・12公取委告示第14号)
⑤おとり広告に関する表示(昭和57・6・10公取委告示第13号、改正:平成5・4・28公取委告示17号)
6有料老人ホームに関する不当な表示(平成16・4・2公取委告示第3号)
3 広告のリーガルチェックは弁護士にご相談ください
現代社会では、インターネットやSNSの幅広い利用によって、広告表示が生み出すメリットは非常に大きなものがあります。例えば、インターネット上で話題になれば当該商品は爆発的なヒットとなります。
その一方で、一度炎上してしまうと、少なくとも短期的には挽回することは非常に困難であり、ビジネスに大きな悪影響を生じさせてしまいます。
そのため、たかが広告規制等と高を括った対応を取ることはリスクが高いものと言わざるを得ません。
広告表示に関しては、事前に慎重にリーガルチェックを行うことでトラブルを回避することができる場合もあることは十分に念頭におく必要があります。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告法務を幅広く取り扱っております。
広告のリーガルチェックを含めて何かご不安な点等ありましたらご遠慮なくお問い合わせいただけますと幸いです。
優良誤認表示と有利誤認表示
本日は、景品表示法で禁止されている代表的な不当表示である優良誤認表示(景品表示法5条1号)及び有利誤認表示(景品表示法5条2号)についてご説明いたします。
1 優良誤認表示
景品表示法5条1号では、優良誤認表示について、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」と規定しています。
ここで、「実際のものよりも著しく優良であると示し」とは、例えば、自動車会社が、本来は時速150kmが最高速度であるにもかかわらず、時速200kmまで出ると表示するようなケースです。
また、「事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示」とは、例えば、自動車会社が、裏付けがないにもかかわらず、他の会社に比べて燃費が一番良い等と広告表示をする場合です。
2 有利誤認表示
景品表示法5条2号では、有利誤認表示について、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」と規定されております。
例えば、通常の商品価格を記載せずに、「今なら50%OFF」と表示したものの、実際には、50%割引とは認められない商品価格となっていた場合です。
3 広告のリーガルチェックは弁護士にご相談ください
広告が景表法に違反する等の事態となった場合、一般消費者からは「悪徳業者」等のレッテルを貼られてしまい、少なくとも短期的にはビジネスに大きな悪影響を生じさせてしまいます。
転ばぬ先の杖と言いますが、広告に関しては、事前に慎重にリーガルチェックを行うことでトラブルが発生することを回避することができる場合もございます。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告関連法務を幅広く取り扱っておりますので、広告に関してご不安な点等ありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
不表示が問題となる場合
1 不表示が問題となる場合
景表法においては、優良誤認表示や有利誤認表示が不当表示であるとして禁止されております。
通常は広告表示に記載した内容が問題となりますが、重要な事実を記載しない不表示の場合においてもこれらの禁止される不当表示に該当する場合があります。
「聞かれなかったから答えなかった。嘘はいっていない」というような方便は通用しませんので十分注意する必要があります。
以下では、不表示が違法な広告表示に該当すると判断された事例をご紹介いたします。
2 不表示が違法な広告表示であると判断された事例
①ダイヤル104に関して、接続手数料が実際にはかかるにも関わらず、これを適切に広告表示をすることなく、通話料が割高になる場合があることを広告表示をしなかった事例について、適切な広告表示をしなかったことで、あたかもダイヤル104の利用には料金が発生せず従来と同様の金額で通話できるかのように表示していることは、禁止される有利誤認表示(景表法5条2号)に該当するとしては排除命令が課された事例があります(平成20年3月13日公正取引委員会による排除命令)。
②中古自動車の販売に関して、「保証付き」の表示を広告で行ったものの、実際には保証は有償にて付帯しているものであった事例について、一般消費者に対して無償で保証がついているかのように誤信させるものであるため、景表法で禁止される有利誤認表示(景表法5条2号)に該当するとして措置命令が課された事例があります(平成29年12月8日消費者庁による措置命令)。
3 広告のリーガルチェックは弁護士にご相談ください
広告表示に関しては様々な法規制がありますので、慎重にリーガルチェックを行う必要があります。
単なる広告規制違反にとどまるので、大事にはならないだろうと高を括る方も稀にいらっしゃいますが、非常に危険な対応であると言わざるを得ません。
広告規制違反の場合には、措置命令や課徴金納付命令といった行政処分が課される場合もあるほか、刑事罰が科される場合もあります。
また、広告規制に違反したことについて、「消費者をだまして商品を売っていた悪徳業者」等のレッテルをインターネット上の評判として定着してしまうと、短期的に信用を回復することは困難であり、ビジネスに大きな悪影響が発生することになります。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告法務を幅広く取り扱っておりますので、お困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
強調表示と打消表示
1 強調表示と打消表示
広告表示に関しては、事業者にとっては、消費者やユーザーに対して、自社の商品や役務の素晴らしさを伝える主要な方法となりますので、できるだけ、自社の製品や商品の良い部分を強調して伝えようとすることが多いのが実情です。
それ自体は、悪いことではなく、営利活動の一環ではありますが、行き過ぎた広告表示がなされてしまうと、消費者に悪影響となりますので、景表法等で規制されることになります。
また、強調して表示している内容に例外がある場合には、消費者に分かりやすいように打消表示を行うことが必要であり、打消表示が十分でない場合には、景表法上禁止される不当表示に該当すると判断される場合があるため、十分注意する必要があります。
以下では、打消表示が十分ではないとして景表法上の不当表示に該当すると判断された事例を紹介いたします。
2 打消表示が不十分であると判断された事例
令和元年9月20日付け消費者庁の措置命令に係る事例
(1)事例
女性用下着に関して、「人間工学に基づいた設計により履くだけでダイエットを実現!」、「自宅で簡単に脚ヤセ、理想的なクビレを手に入れるならヴィーナスカーブ」等と広告表示をしていた。
なお、広告表示においては、「効果の感じ方には個人差があります。効果効能を保証するものではありません。」との打消表示が記載されていた。
(2)判断内容
消費者庁が、販売会社に対して、景表法7条2項に基づき、当該広告表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料は提出されたものの、資料としては当該広告表示の裏付けとなる合理的なものとまでは認められなかった。
そして、打消表示は不十分であると判断し、景表法5条1号に該当する優良誤認表示に該当すると判断した。
3 広告のリーガルチェックは弁護士にご相談ください
強調表示と打消表示のように、判断が難しいものも含め、広告のリーガルチェックは様々な法規制を網羅的に検討する必要があります。
違法な広告である旨の判断をされてしまうと、措置命令や課徴金納付命令等の行政処分が下される可能性がありますし、また民事上の不法行為責任を負うリスクもあります。
また、企業の評判にも悪影響が生じ、ビジネス上大きなデメリットとなります。
当事務所は、企業法務やインターネットトラブル、広告法務を幅広く取り扱っておりますので、広告のリーガルチェックを含めてお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
広告に登場する芸能人等が民事上の責任を負うと判断される場合
1 広告に登場する芸能人が民事上の責任を負うと判断されるかどうか
広告に登場する芸能人は、広告の内容に影響を与えるべき地位にはないことから、広告を信じた結果損害を被った人がいた場合でも、損害賠償責任を負うことは基本的にはないのではないか、というご質問をいただくことがあります。
結論としては、一定の場合には、単に広告に登場していた芸能人であっても民事上の損害賠償責任を負うこともあり、実際にそのような責任が認められた事例もございます。
本日は、この事例をご紹介いたします。
2 広告に登場する芸能人が民事上の責任を負うと判断された事例
大阪地判昭62年3月30日判タ638号85頁
(1)事例
事例としては、不動産の売買に関する虚偽の広告を信用して不動産を購入した結果損害を被った原告が、当該不動産の広告ビデオやパンフレットなどで不動産の優良性を強調していた芸能人に対して民事上の損害賠償請求を行った、というものです。
(2)判旨
裁判所は、被告が原告に販売した土地は利殖の対象となりえないものであり、利殖対象物件として売ること自体詐欺に該当すると判断しました。
その上で、広告に登場した芸能人についても、不動産のパンフレットに掲載した推薦文は、著名な芸能人である同人の立場から土地を推薦しており、これにより不法行為を容易にしたことは明らかであり、しかも同人はその推薦を裏付ける調査を行っていない以上過失も認められるとして、推薦文の交付を受けた上で土地を購入した原告の当該芸能人に対する民法719条2項に基づく損害賠償請求を認めました。
3 広告のリーガルチェックは非常に重要です
インターネットやSNSの普及により、広告は多種多様な態様で掲載され、また、その量も膨大なものとなっています。
広告主だけが責任を負うのだから、出演する分には特に問題ないだろうと考える方もいらっしゃいますがこれは非常に危険な考えであると言わざるを得ません。
上記の事例のとおり、広告に出演するだけで民事上の責任が認められてしまう場合がありますし、また、法的な責任だけではなく、違法な広告に登場していたということだけで、インターネットやSNS上で「悪質な人間」である旨のレッテルを貼られてしまい、一般人からの信頼性が失墜してしまいます。
このような状態になってしまうと、その後のビジネスや様々な活動に大きな支障となってしまいます。
そのため、広告のリーガルチェックは、単に広告を掲載する広告主だけではなく、出演する芸能人等にとっても非常に重要なものといえます。
当事務所は、企業法務、インターネットトラブル、広告法務等を幅広く取り扱っております。
何かお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
広告媒体者や広告代理店が責任を負うと判断された事例
1 広告関連法規に違反した場合に雑誌社や広告代理店が責任を負うかどうか
景品表示法上で禁止される優良誤認表示や有利誤認表示を行った場合に、措置命令や課徴金納付命令の対象となるのは、あくまでも広告主です。
また、特商法や健康増進法等その他の法律上も、広告規制違反をした場合に行政処分の対象となるのは、基本的には広告主です。
しかしながら、広告媒体者や広告代理店が違法な広告表示に関して民事上の責任を負うと判断された事例もありますので、本日はその内の一つの事例をご紹介いたします。
2 広告媒体者や広告代理店が責任を負うと判断された事例
大阪地判平成22年5月12日判時2084号37頁
(1)事例の紹介
事例としては、原告が、被告A社が発行するパチンコ情報を掲載する雑誌を購入し,当該雑誌に掲載されていたパチンコの「打ち子」の募集、及び高確率でパチンコに勝つ攻略法を提供するという2件の公告を見て,それぞれの広告主に電話したところ、虚偽の話に騙されて、結局、保証金等の名目で金員を詐取されたとして,被告A社及び本件各広告を雑誌に提供した広告代理店B社に対して、不法行為による損害賠償請求をした事案です。
(2)判旨の紹介
裁判所は、「雑誌広告は,雑誌上への掲載行為によって初めて実現されるものであり,その広告に対する読者らの信頼は,当該雑誌やその発行者に対する信頼と全く無関係に存在するものではなく,広告媒体業務にも携わる雑誌社及びその広告の仲介・取次をする広告代理店としては,雑誌広告の持つ影響力の大きさに照らし,広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって,読者らに不測の損害を及ぼすことを予見し,又は予見し得た場合には,真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務があり,その限りにおいては雑誌広告に対する読者らの信頼を保護する必要があると解され,その義務に違反した場合は不法行為が成立すると解される。」と判示し、雑誌の広告主の詐欺行為を認定した上で、被告らの過失による不法行為責任を肯定しました。
もっとも、原告側にも過失があるとして過失相殺も認めました。
この判例は、「広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情」があるかどうかを判断の前提としておりますので、必ずしも、広告媒体者や広告代理店に対して広告内容の真実性の調査確認義務を幅広く認めたとまでは言い切れません。
しかしながら、広告媒体者や広告代理店が責任を負う場合があることを判示した点は非常に参考となる裁判例であることは間違いないものと考えられます。
3 広告のリーガルチェックに関しては、まずは弁護士にご相談ください
広告のリーガルチェックは、様々な法規制を踏まえて行う必要がありますので、継続的に弁護士にご相談いただくことが重要です。
広告上のトラブルが発生した場合には、行政上の責任、刑事罰、民事上の責任、一般消費者からの信頼の低下等様々なデメリットがありますので、可能な限りそれらのデメリットの発生は避けた方がビジネスにとって望ましいことは間違いありません。
当事務所は、企業法務、インターネットトラブル、広告法務等を幅広く取り扱っておりますので、広告上のトラブルなど広告に関してお困りの場合にはまずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
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