輸入ビジネスを営む際、意匠権侵害のリスクは避けて通れない問題です。意
匠権は商品のデザインに関する独占的権利を保護するものであり、これを侵害する貨物を輸入してしまうと、差止請求や損害賠償請求といった法的トラブルに発展する可能性があります。
そこで、本日は、具体例を交えつつ、意匠権侵害のリスクをご説明いたします。
このページの目次
1 そもそも意匠権侵害とは?
日本の意匠法は、意匠(デザイン)を独占的に使用する権利を保護するための法律です。
意匠法第2条では「意匠」を「物品の形状、模様または色彩若しくはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義しています。
さらに、意匠法第23条では、意匠権者が登録意匠を独占的に実施できる権利を有し、第37条には意匠権侵害に関する具体的な行為が規定されています。特に重要なポイントとして、「登録意匠と同一または類似の意匠を無断で使用する行為」が意匠権侵害に該当します。
2 具体例『海外製品の輸入と意匠権の問題』
例えば、ある輸入業者が海外の市場で人気のある家電製品を大量に仕入れ、日本で販売しようとしました。その家電製品は海外メーカーが独自にデザインしたものですが、日本では別の企業が同様のデザインを登録意匠として意匠権を取得していました。
この場合、輸入業者が販売を目的として商品を輸入した行為が、意匠法第37条に基づく「登録意匠と同一または類似の意匠を実施する行為」に該当し、次のような法的トラブルが生じる可能性があります:
①差止請求
意匠権者が輸入品の販売差止めを請求し、在庫が販売できなくなる恐れがあります。
②損害賠償請求
輸入品の販売により意匠権者に損害が生じた場合、その損害を賠償する責任を負う可能性があります。
③税関での差止め
税関での意匠権侵害申告により、輸入時点で商品が差し止められる場合もあります。
3 意匠権侵害を防ぐための対応策
輸入業者として意匠権侵害リスクを回避するためには、以下のポイントを押さえることが重要です:
①慎重な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で意匠権を侵害しないかどうか、特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用して事前に確認しましょう。
②デザインのライセンス確認
海外メーカーや仕入先に対し、輸入予定の商品のデザインが合法的に使用されているか確認し、必要であればライセンス契約書を入手することが必要です。
③税関への事前確認
輸入品が意匠権を侵害していないか税関に相談することで、輸入時点での差止めリスクを軽減できます。
④弁護士への相談
意匠権侵害は専門的な知識が求められるため、疑わしい場合は意匠法に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
⑤契約の整備
輸入元との契約書に、意匠権侵害が発覚した場合の責任分担や返品対応について明確に記載しておくことで、リスクを軽減できます。
4 意匠権侵害貨物にはご注意ください
意匠権侵害は、輸入ビジネスにおける深刻なリスクです。たとえ海外で合法的に購入した商品であっても、日本国内で意匠権を侵害する場合、輸入業者が法的責任を問われる可能性があります。
輸入業者は、事前調査と適切な契約管理を徹底し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、このリスクを効果的に回避できます。法律を遵守し、安全なビジネス運営を実現しましょう。