労災として認定される業務上疾病といえるためには、業務と疾病との間に因果関係が認められることが必要です。
そして、この因果関係は、業務遂行性と業務起因性の2段階に分けて考えることが一般的です。
様々な論点があるトピックではありますが、本日は、業務遂行性及び業務起因性の概要をそれぞれご説明いたします。
このページの目次
1 業務遂行性について
業務上疾病の場合において、業務遂行性の判断は、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配管理下にある状態であったかどうかが分水嶺となります。
すなわち、業務上疾病は、労働者が労働の場において、業務に内在する様々な有害因子に暴露して引き起こされるものといえる必要があり、これらの有害因子を受ける危険にさらされている状態が認められる場合には、業務遂行性が認められることになります。
よく勘違いされやすいところなのですが、この業務遂行性は、労働者が事業主の支配管理下にある状態において疾病が発症することを意味しているものではなく、事業主の支配管理下にある状態において有害因子に暴露していることを意味しております。
したがって、例えば、労働者が事業主の支配管理下において心筋梗塞を発症した場合、その発症原因と認められるような業務上の理由が認められない限り、当該心筋梗塞と業務との間には業務遂行性が認められないということになります。
また、この点の裏返しの話ではありますが、事業主の支配管理下を離れた場合における発症であっても、業務上の有害因子への暴露によるものと認められる限り、当該疾病と業務との間には業務遂行性が認められる点にも注意が必要です。
2 業務起因性について
労働者が発症した疾病について、①労働場所における有害因子の存在、②有害因子への暴露条件、③発祥の経過及び病態、の3要件が充足される場合には、原則として業務起因性が認められることになります。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
労災申請は、申請の検討段階において専門的な判断を踏まえて慎重に行う必要がある他、申請の手続き面も相当程度の煩雑さがある等、相当程度のハードルがある作業といえます。
特に疾病と業務との間の因果関係が認められるかどうかは、労災が認定されるかどうかの中核ともいえますので、様々な資料、場合によっては類似事案の裁判例等も踏まえて詳細に検討することが必要です。
労災に関してお悩みの場合は、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。