外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」といいます)は、国際的な平和と安全を維持するための重要な法律です。
特に、日本から貨物を輸出するに際しては、輸出する貨物が戦略物資や軍事転用可能な技術に該当しないかどうか等を適切に判断(いわゆる、該非判定)する必要があります。しかしながら、この該非判定を軽視し、誤った輸出行為を行った場合、単なる法的リスクだけでなく、昨今話題となっている経済安全保障の観点からも深刻な影響を及ぼします。
そこで本日は、外為法の規定の順守を疎かにすることのリスクについて、概要とはなりますがご説明いたします。
このページの目次
1 該非判定を怠る場合の様々なリスク
該非判定を適切に行わずに輸出を行う場合、以下のようなリスクが発生します。
(1) 法的リスク
外為法違反に該当すると、例えば、以下の厳しい罰則が科される可能性があります。
①刑事罰
外為法第70条では、無許可輸出が判明した場合、最高で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は5億円以下)が科されます。
②行政処分
経済産業省から事業停止命令や輸出許可の取り消しを受けるリスクがあります。
(2) 経済的リスク
罰金や事業停止による直接的な経済的損失だけでなく、取引先からの信頼を失い、契約の破棄や市場からの排除といった二次的な損害も生じます。
(3) 国際社会での信用失墜
外為法違反が国際的に報じられると、日本全体の信頼を損ねる可能性があります。
特に輸出先国が敏感な技術や資材を輸入した場合、外交問題に発展する危険性すら存在することは改めて強調しておきます。
2 経済安全保障の観点からのリスク
経済安全保障は、近年注目を集めている分野です。
特に以下の点で、該非判定を怠る行為は日本の安全保障に直結する問題となります。
(1) 軍事転用のリスク
一見無害に見える技術や部品が、軍事目的で使用されるケースがあります。
たとえば、半導体や高精度機械は、ミサイルや監視技術の開発に利用される可能性があります。
(2) テロリストや制裁対象国への流出
該非判定を怠ると、意図せずにテロリストや国際的な制裁対象国に戦略物資を供与する結果を招きかねません。これにより、国際的な制裁や報復措置を受けるリスクがあります。
3 該非判定を怠らないための対策
輸出者としては、以下の対策を徹底することが求められます。
①適切な該非判定
対象物品や技術が輸出貿易管理令に定められた「リスト規制」に該当するかを確認し、必要に応じて専門家や弁護士の助言を受けること。
②社内コンプライアンス体制の整備
社内で輸出管理の専門部署を設け、該非判定を二重・三重にチェックする体制を整えること。
③定期的な教育と研修
社員に外為法の重要性を理解させ、違反行為を未然に防ぐための教育を徹底すること。
4 外為法のルールは非常に難しく、専門家も交えた体制作りが重要です
外為法に基づく該非判定を軽視する行為は、単なる法律違反にとどまらず、経済安全保障や国際的な信頼に深刻な影響を及ぼします。
輸出者は「知らなかった」「確認不足だった」という言い訳が通用しないことを認識し、法令遵守を最優先に行動すべきです。
万が一、該非判定に関する疑問や不安がある場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。違法行為を未然に防ぎ、健全なビジネス活動を維持するために、法令の遵守を徹底していきましょう。