輸入ビジネスにおいて、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を活用することで、関税の減免や関税フリーの恩恵を受けることができます。
しかし、制度の内容や証明方法を正しく理解していないと、原産地証明の不備などにより関税免除が無効となり、追徴課税の対象となるリスクもあります。
今回は、FTA/EPAの活用における実務のポイントと、原産地証明に関する注意点を解説いたします。
このページの目次
1 FTA/EPAとは?
FTAやEPAは、特定の国・地域間で締結される協定であり、協定対象国からの輸入品については、一定の条件を満たせば関税が減免またはゼロになる制度です。
2 原産地要件を満たさないと適用不可
関税の特恵を受けるためには、原産地要件を満たす必要があります。
これは、「その商品が本当に協定対象国で生産されたものかどうか」を示す要件であり、主に以下のような方式があります。
①完全生産品(該当国ですべて生産されたもの)
②原材料の一定割合が域内産であること(原産割合基準)
③関税分類の変更(CTCルール)
④加工工程の実質的変更(付加価値基準)
原産地要件は商品ごとに異なり、HSコードや協定内容に応じた確認が不可欠です。
3 原産地証明書の形式と注意点
協定により、原産地証明書の取得方法が異なります。
第三者証明方式、自己申告方式等、協定に基づいた証明書が必要となります。
記載ミス、期限切れ、不備があると特恵関税は適用されません。
4 税関調査での指摘事例
FTA/EPAを利用した輸入については、後日、税関の事後調査により次のような指摘を受けることがあります。
①証明書の内容と実際の商品仕様が一致していない
②原産地規則に照らして条件を満たしていない
③証明書の発行者が認定されていない(偽証明)
④製造工程の説明資料がなく、原産性を証明できない
これにより、追徴課税+過少申告加算税が発生する場合もあります。
5 実務対応のポイント
①協定ごとの適用要件・証明書式を事前に確認
②輸出者からの製造工程表・原材料構成の入手
③原産地証明書の写し・作成経緯を保存(5年間以上)
④自己申告方式の場合は、社内での原産地判定手順を文書化
⑤不明な点は、税関で事前確認を実施する
特に、初めてFTA/EPAを活用する場合は、専門家のレビューを受けることがリスク回避に有効です。
FTA/EPAを活用することで、関税コストを大幅に削減できますが、適用要件や原産地証明に対する理解不足は、却って追徴リスクを招くおそれがあります。
正確な制度理解と証明書の整備を通じて、安心して制度を活用しましょう。
当事務所では、FTA/EPAの活用支援、原産地証明のレビュー、税関対応まで一括で対応可能です。ぜひご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。