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カスタマーハラスメント防止条例について
東京都が推進する「カスタマーハラスメント防止条例」は、従業員を保護し、企業の健全な業務運営を支えるために策定された重要な取り組みです。
現代の職場環境において、顧客や取引先からの過剰な要求や暴言、脅迫的な言動は深刻な問題となっています。従業員がこうしたカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」といいます。)を受け続ければ、精神的・肉体的な負担が重くなり、結果として業務への支障や離職、メンタルヘルス問題の悪化を引き起こしますので、企業としては注意が必要です。
1 条例の意義:従業員保護と企業の責務
まず、この条例の最大の意義は「従業員の保護」です。
これまで多くの現場では、顧客の要求が正当か不当かを明確に区別せず、従業員が耐え忍ぶことで場を収めるケースが少なくありませんでした。「顧客第一主義」の価値観が浸透していることも、問題の根深さにつながっています。しかし、この条例は「従業員も守られるべき存在である」という当たり前の価値観を明確に打ち出しています。
2 企業の責務
さらに、条例では企業側に対して以下のような義務が求められています:
①相談窓口の設置
被害を受けた従業員が相談しやすい窓口を整えること。
②内部対応マニュアルの整備
カスハラの定義や対応フローを明確にし、従業員が毅然とした対応を取れるよう教育すること。
③企業全体の意識改革
管理職や従業員教育を通じて、カスハラを許さない企業文化を浸透させること。
企業がこれらの対策を講じることによって、従業員の安心・安全を確保するだけでなく、企業自体が社会的信頼を高める効果も期待できます。
3 条例の実効性を高めることが今後の日本社会で求められています
条例の実効性を高めるためには、企業、行政、そして社会全体が連携することが不可欠です。
東京都が推進する条例は、あくまで「第一歩」に過ぎません。
具体的な事例の蓄積や、企業間での情報共有、弁護士や警察との連携強化が今後の課題となるでしょう。
例えば、悪質なカスハラに対しては法的措置を厭わない姿勢を示すことで、従業員を守ると同時に企業ブランドを守ることができます。また、行政が企業向けに対策ガイドラインや成功事例を提供することで、取り組みの実効性がさらに高まるでしょう。
東京都のカスタマーハラスメント防止条例は、従業員の権利を守り、企業と顧客の健全な関係を築くための重要な取り組みです。今後、企業や行政、そして社会全体が一体となってこの問題に取り組むことが求められています。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
カスハラへの具体的な対応
カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます)問題は、今や社会問題の一つとなっており、その対応は企業にとって急務となっております。
2025年4月1日には、東京都のカスハラ防止条例が施行されますので、企業としてはカスハラ問題に迅速に対応することが求められており、具体的には。以下のポイントを押さえることが重要です。
1 カスハラの定義を企業として明確化する
カスタマーハラスメントの判断基準が曖昧だと、現場での対応が混乱しがちです。
そのため、企業はカスハラ対策の出発点として「正当なクレーム」と「不当な言動」の線引きを明確にする必要があります。
例えば、暴言や威圧的な態度、誹謗中傷などを具体的に示し、社内に周知することで従業員も安心して、かつ自信をもって対応できるようになります。
ここを不透明にしてしまうと、現場によっては問題を表面化させることを防ぐため、直接顧客に対応する従業員に全てを押し付けてしまうといった事態にもなりかねませんので注意が必要です。
2 相談窓口の設置と報告体制
従業員がカスハラ被害に遭った際、すぐに相談できる窓口がなければ問題が放置されてしまいますし、問題が顕在化することもありません。
企業は専用の相談窓口を設置し、報告から対応までのフローを整備することが求められます。さらに、現場の管理職にも「カスハラ事案への適切な初期対応」を教育することが重要です。
3 法的対応の準備
SNSやインターネットでの個人に対する誹謗中傷は、従業員の名誉や企業ブランドを大きく傷つけます。
万一このような被害が発生した場合には、弁護士等の専門家と連携し、発信者情報の開示請求や損害賠償請求を検討することが重要です。
また、悪質な脅迫行為があった場合は、警察への通報も視野に入れた対応が必要です。
4 顧客への啓発活動
企業は顧客にも「過剰な要求や暴言はハラスメント行為にあたる」という理解を促す活動を行うべきです。
ポスターや自社のウェブサイトで啓発するほか、サービスの場面でも「従業員を守る姿勢」を示すことで、カスハラの抑止につながります。
正当なクレームはきちんと受けてビジネスの改善につなげる必要がありますが、不当なクレームには毅然とした対応をする必要があります。
企業がカスハラ問題に真摯に向き合うことは、従業員の安心・安全を守るだけでなく、企業の信頼とブランド価値を守ることにもつながります。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
カスハラへの対応について
近年、企業や行政の間で「カスタマーハラスメント」、通称「カスハラ」が大きな問題となっています。
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先からの不当・過剰な要求や暴言、脅迫的言動のことを指し、働く従業員に対して精神的・肉体的負担を与える行為です。
東京都では、2025年4月1日からカスタマーハラスメント防止条例が施行され、その他の自治体でも同様の条例が制定される風潮となっております。
事業者にとって顧客は非常に重要な存在ではありますが、だからといってカスハラを放置することは事業にとって大きな悪影響となりますので、対策は急務といえます。
1 代表的なカスハラ
例えば、以下のような行為が代表的なカスハラとされます。
①長時間のクレーム対応や不当な罵声
②従業員の人格を否定する発言や誹謗中傷
③SNSやネット掲示板への事実無根の書き込み
④脅迫的言動や威圧的態度
このような行為が横行する背景には、「顧客は絶対である」という価値観が根強く残っている点がよく指摘されています。
しかしながら、企業に働く従業員にも当然ながら守られるべき権利があります。
過度な要求や罵声を受け続ければ、従業員のメンタルヘルスは悪化し、職場環境も不安定になり、事業に大きな悪影響を及ぼしかねません。
そもそも、顧客もどこかでは従業員となっていることも多いわけですので、このような行為は、顧客が自分自身の職場環境を悪化させているのと等しい行為とすら考えられます。
2 東京都の対応
東京都は、このようなカスハラに関する問題に対して積極的な姿勢を示し、企業に対してカスタマーハラスメント対策の強化を求める条例やガイドラインを策定しています。
例えば、以下の具体的な取り組みがあげられます。
①相談窓口の設置
被害を受けた従業員が迅速に相談できる体制づくり。
②社内マニュアルの整備
正当な苦情とカスハラを区別し、適切な対応フローを確立する。
③従業員教育・研修
毅然とした対応ができるよう、具体的なケーススタディを通じた教育。
このように、東京都の取り組みは、従業員を守りつつ、企業全体として適切な対応を促すものです。さらに、カスハラを社会的な問題として取り上げることで、「顧客と企業の健全な関係性の再構築」を目指しています。
今後、企業は東京都の条例に基づいて従業員を保護する体制を強化することが求められます。同時に、顧客側にも「過剰な要求はハラスメントになる」という意識を広げることが、非常に重要であり、カスハラを減らす第一歩と言えるでしょう。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
会社の商号について
起業を検討されている方から、「会社の商号は、自由に決めていいのでしょうか。何かルールがあるのであれば事前に確認した上で商号を決めたいのですが。」というご相談をお受けすることがあります。
商号については、原則として自由に決めることができるのですが、様々な規律がありますので、注意が必要です。
本日は、会社の商号についてご説明いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 商号の意義
商号とは、商人が事故の営業を表示する者として用いる名称のことを指します(会社法(以下法名略)6条1項)。
このような商号は、定款で規定する必要があります(27条2号、576条1項2号)。
また、会社は、その種類に従い、商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の文字を用いる必要があります(6条2項)。
加えて、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いることも認められておりません(6条3項)。
なお、個人事業主など、会社ではない者は、その名称または商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いることも禁止されております(7条、978条2号)。
また、個人商人は、会社とは異なり、複数の営業を営む場合には営業毎に異なる商号をもつことができます。
以上に加え、商号に関する規律で注意すべき点としては、以下の2点です。
①不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用することは禁止されております(8条1項)。
②自社の商号を使用して事業を行うことを他社に許諾する、いわゆる名板貸については、商号を信じて取引をするものを保護するための一定の規律があります(9条等)。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、契約書の作成・レビュー、労働問題、輸出入トラブルへの対応をはじめ、企業法務を幅広く取り扱っております。
日々のビジネスの中でご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。