Archive for the ‘コラム~人事労務・労使トラブル~’ Category
労働基準監督署について
「労働基準監督署による調査があるとの連絡があったのですが、どのように対応すればいいでしょうか」、「労働基準監督署って何をする機関なんですか」というご質問をいただくことがあります。
そこで、本日は、労働基準監督署の権限等の概要をご紹介いたします。
以下でご説明する内容は、あくまでも一般的な内容となります。実際に労働基準監督署が問題視している内容に応じて、企業としては適切な対応を行う必要がありますので、専門家にご相談をいただくことを含めて慎重にご対応いただくようご注意ください。
1 労働基準監督署について
まず、厚生労働大臣の下に労働基準局が、各都道府県には国の機関たる都道府県労働局、そして現場で監督に当たる労働基準監督署が置かれています。
各企業に対して調査等を行う主体は基本的には労働基準監督署ということになります。
労働基準監督署長には、臨検・書類提出要求・尋問(労働基準法101条)、許可(同33条1項等)、認定(同19条2項等)、審査・仲裁(85条)の権限が付与されています(99条3項)。
また、労働基準監督官には、臨検、書類提出要求、尋問、労基法違反について司法警察員の職務、すなわち、逮捕、逮捕の際の令状によらない差押え、創作、懸賞、令状による差押え、創作、検証等の権限が付与されています(102条)。
なお、労働基準監督署法の実効性を確保するため、使用者には次のような義務が課せられている点にも留意が必要です。
具体的には、法令、就業規則、労使委員会決議の周知義務(106条)、労働者名簿の調整義務(107条)、賃金台帳の調整義務(108条)、記録の保存義務(109条)、報告・出頭義務(104条の2)等です。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
労働基準監督署への対応に関するご相談等もお受けしておりますので、労働基準監督署への対応に関してご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ご注意ください!~労働基準法違反には付加金が課される可能性があります!~
本日は、付加金(労働基準法114条)の概要について、ご紹介いたします。
使用者が労働基準法に違反した場合にはこの付加金を課される可能性がありますが、付加金の存在自体を知らない使用者の方も多くいらっしゃいますので、十分ご注意ください。
1 付加金の概要について
裁判所は、労働基準法20条(解雇予告手当)、26条(休業手当)、37条(割増賃金)、39条7項(年休手当)等で支払義務のある金員を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、支払義務のある未払金に加えて、上限として同一額までの付加金の支払いを命じることが出来ます。
なお、労働者は、この請求を2年以内に行う必要があります(労働基準法114条ただし書)。
また、使用者に対して付加金を支払わせるかどうかは裁判所の裁量によるものなので、裁判所は使用者の行為の悪質性を勘案して、同一額の一部のみの支払いを命じる場合もあります。
2 付加金に関する裁判例
裁判所が使用者に対して付加金を課した裁判例としては以下のようなものがあります。
①日本マクドナルド事件(東京地判平成20・1・28労判953・10)
この裁判例は、いわゆる名ばかり店長の管理監督者性が問題となった事案ですが、結論として、付加金として未払割増賃金の半額の支払いを命じました。
②オフィステン事件(大阪地判平成19・11・29労判956・16)
この裁判例は、解雇された従業員が時間外労働、深夜労働に伴う割増賃金の請求をした事案ですが、結論として、41万円の未払賃金に対して25万円の付加金の支払いを命じました。
このように、付加金は、使用者の未払によって当然に発生するものではなく、労働者が請求することにより裁判所が支払いを命じることにより発生するというところに特色があります。
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付加金に関してご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ご存知ですか?~解雇予告手当について~
「今日で君はクビだから、明日からは会社に来ないでいい」、等と社長が部下に言っている場面を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしながら、解雇に関しては、ある日突然従業員に対してその旨伝え、その日に効力が発生するというものではなく、一定の規制がありますので注意が必要です。
そこで、本日は、当該規制の概要をご紹介いたします。
なお、本事務所HPの別の記事では、従業員を解雇する場合の注意点等も整理しておりますので、併せてご参照いただけますと幸いです。
1 解雇予告手当について
労働基準法20条では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない」と規定されております。
ここからわかる通り、労働基準法上は、企業側は従業員を解雇する場合、解雇に際して30日前の予告を要求しています。
もっとも、この解雇予告期間は、企業が従業員に対して予告手当の支払いをすることにより短縮することができます。例えば、解雇予告を10日間短縮して20日前にする場合には、平均賃金10日分の予告手当支払いが必要となります(労働基準法20条1項、2項)。また、解雇予告手当として30日分を支給した場合には、解雇予告をすることなく対象の従業員を解雇することも可能となります。
2 即時解雇が可能な場合について
上記1の解雇予告手当に関する規定の適用がなく、即時解雇が可能な場合としては、以下の①から⑤の場合が規定されております(労働基準法20条、21条)。
特に、①の場合は、行政官庁の認定を受ける必要がある点には注意が必要です。
①天災事変その他のやむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合等で行政官庁の認定を受けた場合
②日々雇入れられる者
③2か月以内の有期契約で使用される者
④季節的業務に4ヶ月以内の有期契約で雇用される者
⑤試用期間中の者
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従業員の解雇に関してご不明な点等ございましたら、お気軽にご連絡ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
従業員へのお祝い金、賃金に該当する可能性があることをご存知ですか?
賃金は、従業員の業務への対価であるため、例えば、従業員が結婚したことに対して、会社が当該従業員に対してお祝い金を給付したとしても、当該お祝い金は従業員の業務への対価ではないため賃金に該当するはずはない、とお考えの方は非常に多いものと思います。
しかしながら、お祝い金を含めて、直接的には従業員の業務への対価ではないように思われるものに関しても、労働基準法上、賃金と扱う必要がある場合もありますので、注意が必要です。
そこで、本日は、このような場合として、①慶弔禍福の給付金、②退職金、③賞与に関してご紹介いたします。
なお、賃金に関しては、別のコラムでもご紹介しておりますので、併せてご参照いただけますと幸いです。
1 慶弔禍福の給付金について
結婚祝い金、災害見舞金、弔慰金等のいわゆる恩恵的給付は、原則として従業員の労働の対価とはいえず、基本的には、その給付の法的性格は、贈与に該当するものと考えられております。
もっとも、これらの給付であっても、労働協約、就業規則、労働契約等でその支給基準が明確化され、かつ、当該基準に従って企業側に支払義務が存在する場合には、労働の対価として賃金に該当すると考えられています(昭和22・9・13発基17等)。
2 退職金について
退職金は、支給基準が就業規則等で規定されておらず、その支払が企業側の裁量に依存する場合は、労働基準法上の賃金には該当しないと考えられております。
他方で、退職金について就業規則等に規定があり、その支給基準が明記され、それに従って企業側に支払義務が生じている場合は、賃金に該当します。
3 賞与について
退職金同様に、就業規則等で支給基準が規定されておらず、その支払が企業側の裁量に依存する場合は、賃金には該当しないと考えられております。
他方で、労働協約、就業規則等に規定があり、その支給基準が明記され、それに従って企業側に支払義務が生ずる場合は、賃金に該当します。
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従業員に対して支給する金員に関の賃金該当性が不明確な場合も含めて、賃金に関してご不明な点等ありましたら、お気軽にご連絡ください。

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ご注意ください!~兼業(副業)と労働時間の考え方~
従業員の労働時間について、労働基準法等において様々な規制が存在することはご存知の方も多いのではないでしょうか。
昨今、従業員の兼業(副業)(以下、単に「兼業」といいます)を認める企業が増えてきておりますが、従業員が兼業する場合の労働時間の算定方法、考え方については明確に理解できていない方も多いのが実情であるように思われます。
そこで、本日は、従業員が兼業する場合の労働時間の考え方をご紹介いたします。
1 労働基準法38条1項について
労働基準法38条1項は、事業場を異にする場合の労働時間の通算を規定しております。
そして、通達を踏まえますと、労働基準法の労働時間に関するすべての規定が、通算した労働時間に基づいて適用されることとなります(昭和61・6・6基発第333号等)。
2 労働基準法38条1項の「事業場を異にする場合」について
労働基準法38条1項における「事業場を異にする場合」の意義については、行政解釈(昭和23・5・14基発第769号)および通説によると、同一使用者に属する複数事業場で労働する場合だけでなく、異なる使用者の下で労働する場合を含むと考えられております。
そのため、例えば、事業主Aの下で所定労働時間1日5時間として勤務している従業員Xが、新たに、事業主Bとの間で、所定労働時間1日4時間として勤務を開始する場合には、1時間が法定時間外労働となりますので(労働基準法32条2項)、労働基準法33条や36条等の手続と割増賃金の支払(労働基準法37条)が必要となります。
注意すべき点としては、これらの法定時間外労働に関する義務を負うのは、実労働時間を最初から起算して法定労働時間を超えた時刻の使用者ではなく、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した使用者(すなわち、事業主B)とされます。
すなわち、1日の中で、先に事業主Bの下で4時間勤務をし、その後事業主Aの下で5時間勤務をした場合には、法定時間外労働となるのは、事業主Aの下での勤務ですが、あくまでも法定時間外労働に関する義務を負うのは、従業員Xとの間で後から労働契約を締結した事業主Bとなるということです。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
兼業と労働時間の考え方については、わかりづらい面がありますが、使用者側として是非正確に理解いただきたい内容となります。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、労働時間に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくお問合せください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
会社のパソコンを従業員が私的に利用していた場合
「会社が従業員に対して業務用に貸与したパソコンを、当該従業員が私的利用していたことが発覚したのだが、会社としては懲戒等の処分を行ってよいか?」というご相談をいただくことがあります。
結論として懲戒等の処分を行うことは可能ですが、手続等注意が必要な点がありますので、以下、ご紹介いたします。
1 懲戒処分について
パソコンの私的利用を禁止する社内規程が存在する場合には、規程違反を理由とした懲戒処分を行うことを検討することになります。
仮に、そのような規程が会社に存在しない場合には、懲戒処分を行うことが出来ないかというと、一概にそのようなことはありません。
そもそも従業員は、会社との間の労働契約上、就業時間中は職務に専念すべき職務専念義務を負っています。
就業時間中に、会社が従業員に対して業務用に貸与したパソコンを私的に利用することはこのような職務専念義務に違反する行為と考えられます。
したがって、仮に、会社に上記のような社内規程が存在しない場合でも、職務中にパソコンを指摘に利用することが、原則許されないものと考えられ、そのような行為をした従業員に対して懲戒処分を行うことは可能であると考えられます。
2 裁判例
パソコンの私的利用が問題となった裁判例を2つご紹介いたします。
①グレイワールドワイド事件(東京地判平15・9・22労判870・83)
1日に2通程度の私用メールを従業員が行っていたケースにおいて、職務遂行の支障とはなっておらず、かつ、会社側に対して過度の経済的負担を掛けないといった社会通念上相当と認められる程度であることから、従業員が職務専念義務に違反したものとまでは認められないと判断されました。
②K工業技術専門学校事件(福岡高判平17・9・14判タ1223・188)
学校の教員が、業務用のパソコンおよび業務用のメールアドレスを使用して、出会い系サイトに登録し、当該サイトで知り合った女性たちとの間で約5年間に約800通のメールのやり取りを行っていた事案において、当該教員に対する懲戒解雇が有効と判断されました。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
社内規程が存在しない場合、パソコンの私的利用に対する懲戒処分等が有効であると判断されるかどうかは、当該私的利用が業務の妨げとなっているかどうかなどを総合的に判断し、社会通念上相当といえるかどうかという視点で判断されます。
そのため、パソコンの私的利用に対して一律に懲戒処分をすることにはリスクがあり、慎重な対応が必須です。
当事務所では人事労務を幅広く取り扱っておりますので、ご不明な点、ご不安な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

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ご注意ください!~その時間、実は労働時間に該当するかもしれません!~
1 労働基準法上の労働時間とは
労働基準法上、労働時間については、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない」(32条1項)と規定されております。
他方で、具体的に労働時間とはどのような時間が該当するのかについては、定義されておりません。
一般的には、労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間をいい、必ずしも現実に業務目的で作業等をしていることを要件とは考えられず、業務に即応すべき体制にある状態下で労働から解放されず待機している時間と評価される時間も含めて、使用者の指揮命令下にあるとして、労働時間に該当する、と考えられています(前者を実作業時間、後者を手待時間等と呼ぶ場合もあります。)。
2 使用者の指揮命令下にある状態とは
労働時間の要件とされる使用者の指揮命令下に置かれている、については、一般的に、次の①から⑤の各要素を総合的に検討し、業務又は一定の使用者の事業のための行為を直接拘束下において行っていると評価される時間かどうかを判断することになります。
①一定の場所的な拘束下にあること(どこで業務や作業等の行為を行うか)
②一定の時間的な拘束下にあること(何時から何時まで行うか、どのようなスケジュールで行うのか)
③一定の態度又は行動上の拘束下にあること(どのような態度、秩序、規律等を守って行うか)
④一定の業務の内容又は遂行方法上の拘束下にあること(どんな行為・業務をどのような方法、手順でどのようにして行うか)
⑤一定の労務に基づく支配又は監督的な拘束下にあること(上司の現実の監督下や服務支配下にあるかどうか、又そこから逸脱する場合には懲戒処分や上司からの叱責、または賃金・賞与等の取扱い上不利益等を受けるものであるか)。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
労働基準法上の労働時間に該当するかどうかは、様々な事情を客観的に検討、判断する必要があり、労働時間に該当するかどうかの検討は専門家にご相談いただくことがお勧めです。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員の活動が労働時間に該当するかどうかについてご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
インターンシップの取扱いにはご注意ください!
「インターンシップ」との用語は多義的に用いられることがありますが、以下では、文部科学省が公表している、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」中で規定されている定義である、「産学連携による人材育成の観点から、学生に就業の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられる」という意味で用いることとします。
皆様ご存知のとおり、学生によるインターンシップ(以下、インターンシップを利用して企業で活動する学生を「インターンシップ生」といいます。)は、業界を問わず、幅広く行われております。
このような学生によるインターンシップについては、様々な法的問題が議論されているところですが、本日はインターンシップ生の法的地位の考え方をご紹介します。
1 インターンシップ生は、法令上、労働者に該当する可能性があります!
インターンシップ生の法的地位については、
①インターンシップは教育活動の一環であるので、インターンシップ生は労働者とは判断されない場合、
②実習の態様等から判断して労働基準法上の労働者とみなされる場合、
があります。
仮に、インターンシップ生が労働基準法上の労働者と判断される場合、企業は、インターンシップ生の取扱いについて、労働基準法や最低賃金法等の労働関連の法令を遵守する必要が生じるため、注意が必要です。
2 労働基準法上の労働者性の判断枠組み
労働基準法上の労働者性の判断は、①仕事の依頼への諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督権の有無、③勤務時間・勤務場所の拘束性の有無、④他人による代替性の有無、⑤報酬が時間単位で計算される等の報酬の労務対償性の有無、⑥事業者性の有無、⑦公租公課の負担等、を総合的に考慮して判断されますので、ケースバイケースで判断していくしかありません。
また、インターンシップ生に関するこの判断について、労働省(現在の厚生労働省)の行政通達(平成9年9月18日基発636号)では、以下のとおり説明しておりますので、当該説明も踏まえて、インターンシップ生の労働者性について個別具体的に判断することが必要となります。
「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる」。
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労働関連の法令は多岐にわたりますので、注意が必要です!
企業は、そのビジネスを行うためには従業員による業務の遂行が必要不可欠です。
そして、企業と従業員の間の関係性が常に良好であれば問題はないのですが、残念ながら、実際には、労使関係には紛争がつきものです。
紛争が発生した際には、話し合いで双方が納得した上で解決できることが最善ではありますが、話し合いでの解決が困難であることも多く、そのような場合には、法令の規定に則った解決を図ることとなります。
もっとも、労使関係をめぐる法令は多岐にわたり、その全部を正確に把握することは困難と言わざるを得ません。
ただ、このような状況であっても、代表的な法令の概要だけでも把握しておくことは有益です。
そこで、本日は、企業が人を雇用する際に注意する必要がある代表的な労働関連の法令をご紹介いたします。
代表的な労働関連の法令は以下のとおりです。
①労働基準法
労働基準法において、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならないと規定されており(1条1項)、労働基準法で規定する基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります(13条)。
そのため、企業としては、労働基準法に違反しない労働条件を労働契約に盛り込むことが必要となります。
②労働契約法
労働契約法は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的として規定されております(1条)。
労働契約の成立、変更、継続、終了等、労働契約に関する内容が規定されております。
③最低賃金法
最低賃金法は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として規定されております(1条)。
最低賃金額は全国一律ではなく、各都道府県ごとにその金額が定められますので、注意が必要です。
以上、本日は、代表的な労働関連の法令をご紹介いたしました。
当事務所は人事労務を幅広く取り扱っておりますので、人事労務に関してご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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従業員への転勤命令には限界がありますのでご注意ください!
従業員は企業の一員として業務を行っている以上、企業側の都合に応じて従業員を転勤させることは企業側の自由であると勘違いされているケースが時折ございます。
そこで、本日は、企業が従業員に対して行う転勤命令権の限界についてご紹介いたします。
まず、前提として、企業がある従業員に転勤を命令する場合、労働契約や就業規則上、企業が従業員に対して転勤を命令することができる旨の規定が存在することが必要です。
例えば、労働契約や就業規則の規定内容として、「会社は、業務上必要がある場合、従業員に対して職場もしくは職務の変更、転勤、出向、転籍及びその他人事上の異動を命じることができる」といった内容の規定が設けられている場合も多いのではないでしょうか。
このような規定が存在することを前提にすると、企業は、従業員に対して転勤を命令することが出来ますが、最判昭和61・7・14(判時1198・149)では、転勤命令権の限界、すなわち転勤命令が違法となる場合として、
「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等」
と判示しました。
では、ここでいう「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる」ということは具体的にどのような場合かというと、当該転勤の必要性の程度、従業員が受ける不利益の程度、 企業側がなした従業員への配慮およびその程度等の諸事情を総合的に検討して判断されることになります。
要するに、ケースバイケースで各企業における具体的な事情を踏まえて判断することとなりますので、企業としては従業員の転勤にあたっては十分な注意を払うことが必要です。なお、違法な転勤命令を受けた従業員が、企業に対して不法行為に基づく慰謝料請求を行い、認められた例もありますので(大阪地判平成19・3・28労判946・130等)、企業側としては、転勤命令が違法無効となった場合には、そのような損害賠償義務を負担することになるリスクも踏まえた対応が必要となります。
当事務所では、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員への転勤命令に関して、ご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽にご相談ください。

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