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不服申立・審査請求の手続と戦略

2025-08-24

税関からの事後調査の結果、追徴課税や申告内容の否認などの処分を受けた場合でも、必ずしもその判断を受け入れる必要はありません。

関税法上、輸入者には「不服申立て」を行う権利が認められており、正当な理由と証拠があれば処分が取り消されることもあります。

今回は、税関の判断に対する不服申立手続と、その戦略的な活用法について解説いたします。

 

1 不服申立とは何か?

不服申立とは、税関の処分(追徴課税、関税評価の決定など)に対して異議を申し立て、再検討を求める制度です。

関税法に基づき、以下の2つの手続があります。

①異議申立:税関長に対して処分の見直しを求める手続。

②審査請求:財務大臣に対して再度の判断を求める行政審査手続。

なお、異議申立を経ずに直接審査請求をすることも可能です。

 

2 不服申立の対象となる処分例

①関税評価の否認(価格構成の加算等)

②HSコードの変更(関税率引上げ)

③原産地規則の不適用(FTA特恵税率の否認)

④過少申告加算税・重加算税の賦課

⑤ロイヤルティ・役務提供費用の加算処理

これらについて、合理的な反論が可能な場合には、不服申立によって是正が図られる可能性があります。

 

3 不服申立で重視されるポイント

不服申立が認められるかどうかは、主に以下の観点から判断されます。

①法令・通達・判例に照らして処分が違法であるか

②実務的な処理との整合性があるか

③具体的な事実・証拠に基づいて主張がなされているか

④税関の評価方法に合理性がないと認められるか

単なる感情的な異議ではなく、論理的・法律的に整理された主張が不可欠です。

 

4 実務上の戦略:専門家の活用と段階的交渉

不服申立にあたっては、弁護士を代理人とし、主張書面や資料を専門的に整備することで、審理側の印象や理解を大きく左右します。

また、次のような戦略的な対応が有効です。

①処分の前段階で税関と見解を共有し、調整・妥協の余地を探る

②不服申立書に「代替評価案」や「修正スキーム」を提示する

③必要に応じて、国税不服審判所への再審査請求、行政訴訟へのステップを見据える

事前の税関交渉と、後日の不服申立の準備を並行して進める体制が、結果に大きな差を生みます。

 

税関による処分に納得がいかない場合、正当な根拠があれば不服申立によって判断の見直しを求めることができます。

申立は期限や形式に厳格なルールがあり、内容も法的に精緻であることが求められるため、専門家と連携した対応が効果的です。

当事務所では、税関処分への異議申立・審査請求の書面作成・証拠整理・交渉代理まで、専門的に対応しております。判断に疑問を感じた際は、ぜひ一度ご相談ください。

 

税関事後調査における弁護士の役割

2025-08-19

税関事後調査が入ることに決まった際、「自社だけで対応すべきか」、「専門家に依頼するべきか」と悩む企業も多いことでしょう。

実際、輸入申告内容に関する指摘や追徴課税が発生する可能性がある調査では、対応経験のある弁護士の役割が非常に重要です。

今回は、税関調査における弁護士の具体的な役割や使い分け、専門家を活用するメリットについて解説します。

 

1 調査対応における3つのフェーズ

税関事後調査は、大まかに次のようなフェーズに分かれます。

①通知~事前準備(書類整理・体制構築)

②調査当日の対応(税関職員との質疑応答・資料提出)

③調査後の対応(指摘事項への反論・修正申告・不服申立て)

これら各段階において、弁護士が果たす役割は少しずつ異なります。

 

2 弁護士の役割

弁護士は主に、法的な観点からのリスク分析と交渉・争訟対応を担います。

①関税評価やHSコード等に関する法解釈の検討

②原産地規則の解釈、FTA・EPAの適用判断

③税関職員との交渉・説明(補足意見書の作成を含む)

④修正申告内容の精査とリスクコントロール

⑤不服申立(審査請求・訴訟)の代理人業務

税関対応において、弁護士が法的な正当性を根拠づけて反論を行うことで、追徴リスクの軽減や、調査の早期収束に貢献できます。

 

3 税理士の役割

一方、税理士は会計・帳簿・税務処理の専門家として以下のような場面で活躍します。

①仕訳帳・会計データと申告内容の整合性確認

②移転価格・ロイヤルティ等の価格構成の確認

③調査資料の整理・提出対応

④消費税との関係整理(仕入税額控除との整合性等)

特に、輸入価格に関連する社内原価や関係会社取引の説明において、税理士の支援は非常に有効です。

 

4 弁護士と税理士の連携による相乗効果

税関調査の現場では、会計・税務・法務が密接に絡み合います。

たとえば、ある契約が「ロイヤルティに該当するかどうか」という論点では、契約解釈(弁護士)と金額算定(税理士)の両方の視点が必要です。

このため、弁護士と税理士が連携して対応することで、以下のようなメリットがあります。

①税関への説得力ある説明資料の作成

②調査資料の精度向上と漏れの防止

③修正申告の範囲・方法の最適化

④将来的なリスクへの法務・税務的アドバイス

 

5 専門家を活用すべきタイミング

次のようなケースでは、早期に専門家の関与を検討することが望ましいです。

①調査通知を初めて受けたが、対応経験がない

②関税評価やHSコードの根拠に不安がある

③FTA利用に関して複雑な条件を抱えている

④税関と見解が対立している、または指摘内容が納得できない

⑤修正申告や不服申立ての可能性がある

調査の後半になるほど対応が限定されるため、初期段階での関与がもっとも有効です。

 

税関事後調査は、単なる書類確認にとどまらず、輸入ビジネス全体の信頼性が問われる重要な局面です。

弁護士・税理士といった専門家のサポートを受けることで、調査対応の質を高め、不要な追徴課税やリスク拡大を防ぐことが可能となります。

当事務所では、税関対応に特化した弁護士と連携する税理士とともに、輸入事業者の皆さまを全面的にサポートしております。お気軽にご相談ください。

 

会計帳簿との整合性が問われる場面とは?

2025-08-14

税関からの事後調査や価格申告の場面では、会計帳簿との整合性が問われることがあります。

輸入申告書に記載した課税価格と、実際の会計処理・帳簿記載内容にズレがあると、過少申告の疑いを招いたり、価格評価が否認されるリスクが高まります。

本記事では、税関が会計帳簿をチェックする理由と、整合性が問題になる典型的なケース、そして対策について解説いたします。

 

1 税関が帳簿を確認する目的とは?

税関は「帳簿書類等の閲覧・提出要求」を行う権限を持っています。

これにより、単に輸入申告書類(インボイスやパッキングリスト)だけでなく、次のような社内の会計帳簿・会計システム上の記録が調査対象となり得ます。

①仕訳帳・総勘定元帳

②輸入仕入台帳

③原価計算書

④月次・年次財務諸表

⑤経費精算・支払明細書 等

税関の目的は、「申告された課税価格が、企業の実態としての取引価格と一致しているか」を確認することにあります。

 

2 整合性が問われる典型的な場面

①インボイス価格と仕訳金額の不一致

例えば、インボイスでは1万ドルと記載されているのに、帳簿には1万2000ドルと記録されている場合、差額の説明を求められます。

②会計処理上の「後日値引き」や「リベート」

会計上では値引きや割戻しが記録されていても、申告価格に反映されていなければ、追徴課税の対象になる可能性があります。

③無償供与品や役務提供費用の見落とし

原材料や技術支援が実質的に提供されているにもかかわらず、関税評価上加算していない場合、帳簿からの指摘で問題化します。

④関連会社との価格乖離(移転価格の論点)

グループ会社間で価格が意図的に低く設定されていた場合、帳簿の記録と実際の輸入価格の不一致が重視されます。

 

3 整合性が崩れるとどうなるか?

税関から見て、帳簿と申告内容の整合性に問題があると判断された場合、以下のような対応が取られることがあります。

①取引価格の否認(関税評価方法の変更)

②加算要素の追徴(ロイヤルティ、役務費用等)

③過少申告加算税の課税

④継続的な監視対象(リスク先リスト入り)

つまり、帳簿のズレが「意図的な操作」と誤解される可能性があるのです。

 

4 整合性を保つための実務対応

①インボイスと支払記録・仕訳帳の照合をルール化

②輸入申告価格と会計処理との差異がある場合は、その理由を文書で記録

③値引き・ロイヤルティ・サービス料等は社内チェックリストに含める

④会計ソフトのコードと通関データを紐づけて管理する

⑤移転価格税制対応との整合性も検討

税関から帳簿の提出を求められたとき、即時に説明できる体制を整えておくことが、最大の防御策となります。

 

税関調査では、「何を申告したか」だけでなく、「申告内容が企業の帳簿と合っているか」が厳しくチェックされます。

帳簿との整合性を保つことは、輸入ビジネスの信頼性を支える基礎であり、トラブル防止に直結します。

当事務所では、会計処理と通関申告の整合性確認、税関調査時の資料提出支援、加算税対応などを総合的にサポートしています。調査対応や事前チェックでお悩みの方は、ぜひご相談ください。

 

税関事後調査の際の資料提出~どこまで準備する必要があるか?

2025-07-30

税関事後調査では、申告の正確性を確認するために、多くの資料提出が求められます。

しかし、輸入事業者からすると「どこまで出す必要があるのか」、「資料を準備するには非常に手間があるので出来るだけ手間を省きたいが」といった不安も少なくありません。

今回は、税関に対する資料提出の範囲と対応上の注意点について、実務と法的視点の両面から解説いたします。

 

1 資料提出の根拠と調査の目的

税関は事後調査の一環として輸入者に対し、輸入に関係する帳簿・書類等の提出を求めることができます。

提出を求められるのは、輸入申告に用いた資料だけでなく、価格設定・原産地・契約関係に関する社内資料等も含まれる場合があります。

税関の目的は、主に以下の3点です。

①適正な関税額が申告・納付されているかの確認

②原産地申告(FTA・EPA利用含む)の正確性の検証

③過少申告や不正申告の有無の調査

 

2 提出を求められる代表的な資料

調査通知時に「提出をお願いしたい資料一覧」が提示されます。一般的には以下のような資料が該当します。

①インボイス、パッキングリスト、B/L(船荷証券)

②契約書(売買契約、委託製造契約など)

③支払明細、送金証明(TT送金書等)

④関税評価計算書・価格根拠資料

⑤原産地証明書、製造工程表(FTA関連)

⑥関連会社間の取引価格設定の社内資料

⑦会計帳簿(仕訳帳・元帳・総勘定元帳)

その他、税関から追加的にメールや社内資料の提示を求められることもあります。

 

3 任意提出であっても協力義務はある

税関調査は任意の行政調査であり、強制調査ではありませんが、調査への協力を拒否したり、資料の提出を怠った場合、好ましくない状況となる可能性があります。

そのため、合理的な範囲で協力しつつ、自社の立場を明確にし、誤解を避ける書面作成が重要です。

 

4 弁護士を介した対応のメリット

①提出範囲が妥当かを法的に精査

②誤解を防ぐための説明文の作成

③税関との交渉(口頭説明・書面やり取り)の代理

④自社に不利な主張に対する法的反論の構築

税関対応は「専門用語」「法律論」「税務知識」が複雑に絡むため、弁護士が資料整理のアドバイザーとして関与することは、実務上非常に有効です。

 

税関への資料提出は、「何でも出せばよい」というわけではありません。

提出範囲を明確に整理し、必要に応じて補足説明や弁護士の関与を通じて、誤解のない対応を行うことが、調査結果を左右する鍵となります。

当事務所では、事後調査対応の総合的サポートを行っております。事前準備や初動対応でお困りの際は、ぜひご相談ください。

 

税関事後調査の通知が届いたときにすべき初動対応

2025-07-25

ある日突然、税関から「税関事後調査実施のお知らせ」が届いた、輸入事業者にとっては緊張の走る瞬間ですが、焦って不用意に動くことが、かえってリスクを高める場合もあります。

本記事では、税関事後調査の通知を受けた際に、輸入事業者として冷静に取るべき初動対応について、実務の流れと法的観点から解説いたします。

 

1 税関からの通知内容を正確に確認する

まず最初にすべきことは、「税関からの通知文書」の内容をしっかり確認することです。
通知書には以下のような情報が記載されています。

①調査対象期間(通常は過去5年間)

②調査対象貨物(すべての輸入か、特定品目か)

③調査予定日(訪問日またはオンライン調査の日程)

④提出を求められる資料の一覧

この時点で、不明点や曖昧な記載がある場合は、税関担当官に確認を取ることが重要です。

 

2 調査対象期間のデータ・帳簿を整理する

調査では、主に以下の資料が求められます。

①インボイス、パッキングリスト、B/L、契約書

②輸入申告書(NACCS記録)、課税価格計算資料

③会計帳簿(仕訳帳、元帳など)

④関連会社間取引の価格設定根拠

⑤原産地証明書(FTA利用がある場合)

これらを調査対象期間分、迅速かつ正確に提示できる体制が求められます。

電子保存している場合は、検索性や閲覧環境の確認も行いましょう。

 

3 社内での対応体制を整える

調査は輸入部門だけの問題ではありません。調査が始まる前に、次のような体制整備を行っておくことが重要です。

①調査窓口担当者の決定(輸入実務・経理・総務などの連携)

②資料提出・回答の社内フローを明確化

③過去の申告・契約の担当者と連絡が取れる体制を構築

また、過去の修正申告や税関とのやり取りがある場合は、その経緯も事前に整理しておきましょう。

 

4 弁護士や専門家への相談を検討する

事後調査の結果、申告ミスや誤解に基づく指摘を受けることがあります。

特に、以下のようなケースでは弁護士や貿易専門家の早期関与が有効です。

①FTAの適用要件が複雑な場合

②関連会社取引での価格設定が問題になりそうな場合

③既に税関と見解が分かれている論点がある場合

④修正申告や争いの可能性がある場合

専門家が調査前から関与していることで、税関への説明も整理され、結果的に調査の円滑化・軽微な指摘に留める可能性が高まります。

 

5 してはいけない「初動対応」

①税関からの通知を無視・放置する

②不正確な資料を慌てて提出する

③調査目的を誤解し、「隠す」意識で対応してしまう

④関係部署間の連携が不十分なまま担当者任せにする

これらは、調査が長期化・深刻化する要因となるため、避けなければなりません。

 

税関事後調査は、冷静に準備し、誠実かつ適切に対応すれば、大きな問題に発展するリスクを大きく下げることができます。

通知を受けたらまずは落ち着いて、社内体制の整備と資料準備を進め、必要に応じて専門家の助言を仰ぐことが重要です。

当事務所では、調査通知への対応支援、税関との折衝サポート、修正申告や異議申立てまで幅広く対応可能です。お困りの際はお気軽にご相談ください。

税関事後調査とは?対象企業になる条件と頻度

2025-07-20

「税関から事後調査実施の通知が届いた」、「過去3年分の帳簿を提出するよう求められた」、こうした連絡を受けた輸入事業者の中には、突然のことに戸惑う方も少なくありません。

税関事後調査は、輸入ビジネスを行う企業にとって避けられないリスク管理の一環です。本記事では、税関事後調査の概要と、どのような企業が調査対象となるのか、調査の頻度や傾向について解説いたします。

 

1 税関事後調査とは何か?

税関事後調査とは、輸入申告の内容が正確であったかどうかを、輸入通関後に税関が企業を訪問して確認する調査です。

税関は、申告時点でのインボイス・契約書・価格資料の内容だけでなく、企業が保有する帳簿、会計資料、メールなどの実態をもとに申告の正確性を検証します。

調査対象となるのは、法人・個人事業主を問わず、一定の輸入実績があるすべての事業者です。

 

2 調査の目的

税関が事後調査を行う主な目的は以下のとおりです。

①関税の適正な納付状況を確認すること

②過少申告・申告漏れ・不正申告の有無を把握すること

③FTA・EPA等の原産地申告の適正性を確認すること

調査の結果、申告ミスや法令違反が判明した場合、追徴課税(関税・消費税)や加算税、場合によっては刑事処分がなされる可能性があります。

 

3 調査対象となる企業の特徴

税関は、全事業者を一律に調査するわけではなく、リスクに応じて優先度を判断しています。

以下のような特徴のある企業は調査対象となりやすいとされています。

①輸入金額が一定規模以上(年間数千万円以上)

②同種商品の申告価格が著しく安い

③HSコードが不安定、または頻繁に変更されている

④FTA・EPAの利用申告が多い

⑤過去に申告ミスや修正申告歴がある

⑥関連会社取引(移転価格)の比率が高い

また、近年はデータ分析によるスクリーニングの精度が高まっており、初めての調査でも詳細な調査が行われる傾向にあります。

 

4 調査頻度と実施の流れ

税関事後調査は、数年に一度のペースで実施されるケースが一般的です。

調査は次のような流れで進行します。

①調査実施通知書の送付(1〜2か月前)

②事前ヒアリング(調査対象期間・業務内容など)

③税関職員による訪問調査(通常1〜3日)

④追完資料の提出依頼・質疑応答

⑤調査結果通知(指摘事項と是正内容の提示)

 

5 調査対象期間とリスクの広がり

原則として、調査対象期間は過去5年間ですが、重大な不正が見つかった場合には最大7年間に遡って追徴課税されることがあります(重加算税の対象)。

また、一度の調査で問題が発覚した企業は、その後も継続的にチェック対象となる傾向があります。

 

税関事後調査は、輸入ビジネスにおける納税義務の適正性を確認する重要な行政調査です。

突然の通知に慌てないよう、日頃から帳簿や契約書の管理体制を整備しておくことが極めて重要です。

当事務所では、税関事後調査の初動対応、調査準備、対応支援、追徴課税への対応、異議申立てまで幅広く対応しております。ご不安な方は、ぜひ早めにご相談ください。

輸出事後調査の現状

2025-01-11

近年、経済安保の関係で外為法(外国為替及び外国貿易法)の重要性が高まる中で、輸出事後調査が注目されています。この調査は、過去に行われた輸出取引の適正性を確認し、法令違反のリスクを未然に防ぐための重要な手続きです。本記事では、輸出事後調査の概要とその意義についてご説明いたします。

 

1 輸出事後調査とは?

輸出事後調査とは、過去の輸出取引について、外為法や関連する輸出規制への適合性を検証するために行う内部的または外部的な調査です。特に以下の点を確認します:

①規制対象の確認(該非判定)
輸出した製品や技術が、輸出規制リストやキャッチオール規制に該当していないかを再確認します。

②輸出許可手続きの適正性
該当する場合、必要な輸出許可や申請が適切に行われていたかを確認します。

③輸出先や用途の妥当性
輸出先や最終用途が適正であり、軍事転用や不正利用のリスクがなかったかを調査します。

 

2 調査で確認対象となる主なポイント

輸出事後調査では、以下の項目が重点的に確認されます。

①該非判定の記録
輸出前に行われた該非判定が正確であり、その記録が適切に保存されているかを確認します。

②輸出先の調査
取引先が規制対象の国や人物ではないか、また再輸出のリスクがないかを確認します。

③輸出許可の取得状況
規制対象の場合、輸出許可が適切に取得されていたか、またその手続きが法的要件を満たしているかを検証します。

④関連文書の保存状況
輸出に関する契約書や申請書類、取引記録などが適切に保存されているかを確認します。

 

3 輸出事後調査の意義と専門家に依頼するメリット

輸出事後調査は、外為法や関連規制に基づいて輸出取引の適正性を確認し、法令違反や経済安全保障上のリスクを防ぐために欠かせない制度です。

輸出事後調査は単なる過去の問題点の洗い出しにとどまらず、企業のコンプライアンス体制の向上や信頼性の確保に直結しますので、輸出事後調査を機にしっかりとした輸出管理体制を維持することで、将来的に行政や取引先からの信頼を得るだけでなく、事業の安定と成長を支えることにもつながります。

輸出事後調査は、外為法をはじめとした様々な法規制を踏まえて行われることになりますので、専門的な知識が必要となるため、なかなか初回の調査の際にスムーズに対応することは難しい場合が多いのが実情です。

適切な対応や確認を行うために、日常的に専門家のアドバイスを受けることが有益です。

輸出管理や外為法の遵守に不安を感じている企業の方は、ぜひ弁護士などの専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入事後調査の現状

2025-01-06

本日は、輸入事業者の皆様にとって無視できない『輸入事後調査』についてご説明します。

この調査は、輸入事業者にとって避けて通れないものであり、正しく対応しなければ思わぬペナルティを受けるリスクがあります。以下では、輸入事後調査の概要、よくある指摘事項、また、適切な対応方法についてご説明いたしますので、ご参考となれば幸いです。

 

1 輸入事後調査とは?

輸入事後調査とは、輸入許可後に税関が輸入事業者の取引内容や書類を調査し、輸入申告内容が正確で適切であるかを確認する制度です。主に以下の目的があります。

①関税・消費税の適正な納付確認
輸入申告で申告した課税価格を踏まえて、納付した関税額や消費税額が正確かをチェックします。

②適法な輸入手続きの確保
禁制品や規制対象品が適切に取り扱われているかを確認します。

通常、税関は過去5年以内の輸入取引を対象に調査を行い、不適切な申告が見つかった場合には追加課税やペナルティが科されることがあります。

 

2 よくある指摘事項

輸入税関事後調査では、以下のような点がよく問題とされます。

①課税価格の過少申告
輸入品の価格を意図的または誤って低く申告し、関税や消費税を少なく納めるケースです。

たとえば、運賃や保険料を含めない形で価格を申告している場合や加算要素を適切に加算できていない場合には、課税価格が過少となる可能性があります。

②税率の誤適用
関税分類(HSコード)の誤りによる税率の適用ミスが挙げられます。

例えば、食品と工業用化学品で異なる税率が適用される場合、分類ミスが追加納税の原因となります。

③規制品の適正な取り扱い
輸入品が規制対象である場合、必要な許可や証明書を取得していないと指摘されることがあります。

⑤書類の保存不備
輸入事業者は、輸入取引に関する書類を5年間は保存する義務があります。保存が不十分だと、調査で適正な保存をするように指導される可能性があります。

 

3 税関事後調査への適切な対応

税関事後調査は、突然の通知で輸入事業者にとって大きな負担になることがあります。

しかし、適切に対応すれば負担やリスクを最小限に抑えることが可能です。

税関事後調査は法律的・技術的な知識が必要な場面が多くあります。関税法や輸入手続きに精通した弁護士や税関コンサルタントに相談することで、リスクを軽減できます。

改めてになりますが、輸入事後調査は、輸入事業者にとって避けられないプロセスですが、適切に準備し対応することでリスクを最小限に抑えることができます。不安や疑問を抱えたままでは、事業運営に支障をきたす可能性がありますので、ぜひ専門家にご相談ください。

輸入事業を安心して継続するためのサポートを全力で提供いたします。

お困りの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

関税等脱税事件に係る犯則調査の現況

2024-12-02

日本に貨物を輸入(ハンドキャリーを含む)する場合には、様々な法規制が存在します。

自分としては悪いことをしている認識がなかったとしても、法規制に違反してしまうとペナルティが発生することもありますので、十分注意する必要があり、軽い気持ちで行ったことが思わぬ重大な犯罪につながることもあります。

本日は、令和5事務年度(令和5年7月から令和6年6月)における関税等脱税事件に係る犯則調査の統計情報(税関公表)をご説明致します。

 

1 犯則調査の現状

処分件数は157件であり、その内、告発まで進んだケースは6件、通告処分で終了した件数は151件、でした。

処分件数自体は、令和4事務年度から微減(前事務年度比93%)となりましたが、告発件数は増加し(前事務年度比200%)ており、悪質な事案が増加したことが窺われます。

 

2 犯則調査のうちの金地金の件数の現状

処分件数157件の内、金地金は102件、告発まで進んだケース6件の内、金地金は6件、通告処分で終了した件の内、金地金は96件でした。

令和4事務年度よりも件数自体は減少しているものの、告発まで進んだケースが令和4事務年度では2件だったにもかかわらず、6件に増加したことから前事務年度比300%の増加となっております。

 

いわゆるコロナの影響で海外との往来が制限されていた期間は当然件数自体は少ない物でしたが、それ以前は、年間300件近い処分件数だった時もありましたので、以前に比べると半分近くとまでは言えないものの大幅に処分件数が減少していることは間違いありません。これが、実際に違法行為の試みが減少したからであれば問題ありませんが、違法行為の試みが巧妙化しており、発覚を免れているだけということであれば大問題です。

今後の処分件数の推移や、内容については注視していく必要があるところです。

 

3 貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルにはご注意ください

貨物の輸入、持ち込みに伴うトラブルには様々な種類がありますが、要するに、持ち込みが禁止されているもの(いわゆる禁制品)の持ち込みを試みるケースと、脱税目的で密輸するケースが大半です。

これらはいずれも重大な犯罪ですので、絶対に行ってはいけないことは言うまでもありませんが、軽い気持ち(バイト感覚)で知り合いから頼まれたから等の理由で行ってしまう人も一定程度存在します。

行ってしまったことは取り消せませんので、もしこれらの輸入におけるトラブルに巻き込まれてしまった場合には、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入事後調査において重加算税が賦課されたケース

2024-02-12

輸入を事業として行っている場合には、税関による輸入事後調査の実施は避けて通れない制度として存在します。

輸入申告が適切に行われている場合には問題ありませんが、不適切な輸入申告を行っている場合には過少申告加算税や、重加算税が課される場合もありますので、十分注意が必要です。

本日は、税関が公表している重加算税が賦課されたケースについてご紹介いたします。

 

1 重加算税が賦課されたケース

①輸入者が自らインボイスを改ざんしたケース

輸入者は、正規の価格が記載されたインボイスをもとに、自ら正規の価格よりも低い価格に書き換えたインボイスを作成し、課税価格の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装して、当該インボイスに基づき申告した。

輸入事後調査によって発覚した結果、不足税額は1,846万円、内重加算税256万円が課された。

 

②輸入者が輸出者と通謀して虚偽のインボイスを作成したケース

輸入者は、輸入申告前に正規の価格を認識していたが、輸出者と通謀して、取引価格よりも低い価格を記載した虚偽のインボイスを輸出者に作成させ、課税価格の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装して、当該インボイスに基づき申告した。

輸入事後調査によって発覚した結果、不足税額は561万円、内重加算税142万円が課された。

 

なお、重加算税は、単なる記載ミスである場合には課されることはありません。隠蔽又は仮装により、納税申告をしない又は間違った納税申告を行った場合に課されることになります。

 

2 輸入事後調査には十分注意が必要です

輸入事後調査は、適正な輸入申告が行われていたかどうかを事後的に調査されるものですが、輸入事業者の多くは、迅速に輸入することが中心的な興味・関心であり、輸入許可が下りている以上は問題ないものと考えてしまっているケースが多くあり、調査の結果予想以上の追徴税額が課される可能性もあります。

知らなかった、よくわからなかった、輸入申告の際に指摘してもらえれば適切に行った、等の反論をしたとしても、意味がなく、輸入事後調査でこのような事態を回避するためには適切に輸入申告を行うことが何よりも重要です。

輸入申告においては、思わぬ費用を課税価格に加算する必要がある等、なかなか正確に把握することが困難な部分もあります。

輸入を事業として行う以上は避けて通れない調査ですので、輸入手続や申告価格の計算方法について不安な点がある場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

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