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通関業者に任せきりで重加算税対象に!?~輸入者の責任と管理体制~

2025-10-28

「通関は全部、通関業者に任せていたのに、なぜ自社が重加算税を課されるのか…」

これは、通関業務を外部委託していた輸入者が、税関から“故意の過少申告”とされ、重加算税(35%)の対象とされた実例です。

今回は、通関業者任せにしたことでトラブルが拡大したケースをもとに、輸入者としての法的責任と体制整備の必要性を解説します。

 

1 実例:業者の申告ミス → 税関は輸入者の責任を指摘

ある中堅企業が、海外から定期的に化学製品を輸入していました。

通関はすべて業者に任せており、インボイスと簡単な商品説明を渡すだけの運用でした。

ある日、税関の事後調査で、HSコードの選定ミスと評価漏れが発覚。

税関は、「輸入者は適正な価格や分類で申告すべき注意義務を怠った」として、重加算税(35%)を含む追徴処分を課しました。

 

2 通関業者は『代行者』であり『免責装置』ではない

輸入申告において最終的な責任を負うのは、輸入者自身です。

誤った申告に対する責任は「申告者」にあり、たとえ通関業者が実務を担っていたとしても、輸入者が内容を確認・管理していなければ責任を免れません。

つまり、「業者が勝手にやったこと」としても、税関側は「輸入者の指示・確認が不十分だった」と判断するのです。

 

3 重加算税の適用基準とは?

税関が重加算税(35%)を課すには、以下の要件があるとされています:

①明らかに過少である価格・分類で申告した

②故意に申告価格を低く操作した

③虚偽の資料を提出した、または事実を隠蔽した

④過去に指摘を受けていたにもかかわらず再発している

このケースでは、社内で申告内容の確認体制が存在せず、同様の誤りが繰り返されていたことが重く評価されました。

 

4 実務での防止策

①通関業者との契約に申告内容の確認フローや責任範囲を明記

②インボイス・契約書・仕様書と、申告内容(HSコード・価格)を突き合わせる社内体制の整備

③通関データを一定期間ごとに定期監査・レビュー

④商品ごとに分類台帳を作成し、通関士と共有

⑤トラブル時の社内報告・改善フローの明文化

また、輸入者責任に関する教育や研修を定期的に実施することも、リスク管理上極めて有効です。

 

通関業者に申告を任せていても、最終的な責任は輸入者にあります。

通関ミスによる追徴課税を避けるためには、輸入者としてのチェック体制・契約管理・記録保存が不可欠です。

当事務所では、通関業務の委託契約レビュー、申告体制の構築支援、税関対応のサポートも行っております。業者任せに不安がある方は、ぜひご相談ください。

 

税関事後調査を踏まえた輸入コンプライアンス体制の構築法

2025-10-03

税関事後調査に直面すると、多くの企業が「帳簿や申告がこのままで良かったのか」「再発防止の体制は必要か」といった課題に向き合うことになります。

調査は単なる「指摘の場」ではなく、企業の輸入体制を見直す契機として活用することが重要です。

今回は、税関調査をきっかけに、どのように輸入コンプライアンス体制を構築・強化すべきかを解説いたします。

 

1 税関事後調査で問われるのは『仕組み』です

税関は、単に帳簿の形式や価格の妥当性を確認しているだけではありません。

特に税関事後調査では、「どういった管理体制のもとで輸入申告が行われているか」という組織的な内部管理の有無が評価対象となります。

指摘があった場合でも、「明確な体制があり、ミスは例外的なもの」と判断されれば、課税や加算税においても一定の軽減や配慮が得られる可能性があります。

 

2 構築すべきコンプライアンス体制の主な要素

以下のような仕組みを整備することが、コンプライアンス強化の基本です。

①通関申告内容のチェックフローの整備

HSコード、課税価格、原産地などの事前レビュー

②社内規程やマニュアルの整備

インボイス対応、FTA活用、照会対応のルール化

③関係部門の役割分担と連携体制の構築

輸入部門、経理、法務、営業、倉庫部門などの横断的連携

④記録・証拠資料の保存ルールの整備

原産地証明、価格根拠、契約書、支払証憑などの保管ルール

⑤税関対応の窓口・エスカレーションルートの設定

 

3 内部監査・自己点検の実施

税関が好意的に評価するポイントの一つが、「自社で定期的に点検を行っているかどうか」です。特に次のような内部監査項目があると、信頼性の高い体制と評価されやすくなります。

①過去の申告価格・税額と帳簿の整合性確認

②FTA/EPA活用状況の点検と原産地証明の保存状況

③加算要素(ロイヤルティ、無償供与等)の有無と計上確認

④関税法違反リスクの洗い出しと改善状況の記録

 

4 教育・研修の継続実施

法令や運用通達は頻繁に改正されるため、担当者の教育が継続的に行われているかどうかも重要です。

次のような取り組みが推奨されます。

①新任担当者向けの通関基礎研修

②年1回の関税・FTA・税関対応に関する社内研修

③税関との意見交換会・説明会への参加

④弁護士・税理士等専門家を招いたセミナーの実施

 

5 弁護士の関与による体制構築支援

コンプライアンス体制の構築は、実務面だけでなく、法的リスクと制度的理解の両面からの整備が必要です。

弁護士を関与させることで、以下のようなメリットが得られます:

①税関事後調査の結果を踏まえた再発防止策の立案

②社内マニュアル・規程類の法的観点からのレビュー

③原産地証明、ロイヤルティ契約、価格決定プロセスの整備

④トラブル発生時の初動対応体制の整備支援

 

税関調査を「行政からの監視」として捉えるのではなく、自社の輸入体制を見直し、強化するチャンスとする視点が重要です。

継続的な体制整備と記録・教育を通じて、持続可能で信頼性の高い輸入ビジネスを実現しましょう。

当事務所では、税関事後調査対応後の体制構築、コンプライアンスマニュアル作成、従業員研修の実施などもご支援可能です。お気軽にご相談ください。

 

税関からの照会対応~誤解を防ぐ説明方法とは?

2025-09-18

輸入申告後、税関から「照会書」、「確認依頼書」などの形で連絡を受けることがあります。

これは、申告内容に関して税関が確認・補足を求める手続きであり、対応を誤ると差止や追徴の対象になりかねません。

今回は、税関照会に対する適切な対応方法と、誤解を防ぐ説明のコツについて解説いたします。

 

1 税関からの照会はなぜ届くのか?

税関は、輸入申告の内容に不明点や疑義がある場合、通関業者や輸入者に対して「照会」を行います。

主な目的は、関税評価・原産地・HSコード・規制対象かどうかの確認です。

典型的な例としては、

①商品名が抽象的で、HSコードの分類が判断できない

②原産地証明書の記載に不備がある

③無償供与や値引きの事実が疑われる

④FTA特恵税率の適用可否に関する裏付けが不十分

こうしたケースで、税関からの照会が行われます。

 

2 照会を受けた際の基本対応

照会に対しては、できるだけ速やかに、かつ明確に回答することが原則です。

対応の流れは次のとおりです。

①照会内容を正確に把握する

何が問題視されているのかを的確に読み取ります。

2社内関係者と情報を整理する

仕入先、経理、通関業者などと連携し、事実を確認します。

3証拠資料とともに文書で回答する

口頭ではなく、書面またはメールで、説明と裏付け資料を提出します。

税関側は公的な立場で手続きを行っているため、誠実で明確な回答を行えば、スムーズな対応が得られる可能性もあります。

 

3 誤解を防ぐ説明のポイント

照会対応では、「事実は正しいが、説明が足りずに誤解されてしまう」ことが多くあります。以下の点に注意しましょう。

①使い慣れない専門用語は避け、平易な日本語で記載する

②「~のため、~の取引となっております」など、因果関係を明示する

③「これは~ではなく、~に該当します」といった対比説明を加える

④証拠資料には、ハイライトや注釈を加えると理解されやすくなります

⑤不明点や懸念点については、あえて補足することで信頼性を高める

 

4 回答期限・対応ミスのリスク

照会には通常期限が設けられており(3〜5営業日程度)、これを過ぎると申告が「不備あり」と判断され、通関保留、ペナルティ、追徴課税の対象になる場合があります。

また、照会対応を通関業者に任せきりにしてしまうと、実際の取引実態と異なる説明がされてしまうリスクもあるため、輸入者自身の関与が重要です。

 

5 弁護士の活用が有効なケース

①内容が複雑で、文書化に自信がない場合

②税関と見解が分かれており、専門的な法解釈が必要な場合

③照会が繰り返されており、リスクを感じている場合

弁護士が関与することで、説得力ある説明文の作成や、税関との交渉支援が可能となります。

 

税関からの照会は、輸入申告がスムーズに通過するかどうかを左右する重要な局面です。

誠実かつ明快な説明、事実と根拠に基づいた回答を心がけ、誤解のないコミュニケーションを図ることがポイントです。

当事務所では、照会対応の文案作成、資料整備、税関との交渉支援まで幅広く対応しております。ご不安な場合は、お気軽にご相談ください。

不服申立・審査請求の手続と戦略

2025-08-24

税関からの事後調査の結果、追徴課税や申告内容の否認などの処分を受けた場合でも、必ずしもその判断を受け入れる必要はありません。

関税法上、輸入者には「不服申立て」を行う権利が認められており、正当な理由と証拠があれば処分が取り消されることもあります。

今回は、税関の判断に対する不服申立手続と、その戦略的な活用法について解説いたします。

 

1 不服申立とは何か?

不服申立とは、税関の処分(追徴課税、関税評価の決定など)に対して異議を申し立て、再検討を求める制度です。

関税法に基づき、以下の2つの手続があります。

①異議申立:税関長に対して処分の見直しを求める手続。

②審査請求:財務大臣に対して再度の判断を求める行政審査手続。

なお、異議申立を経ずに直接審査請求をすることも可能です。

 

2 不服申立の対象となる処分例

①関税評価の否認(価格構成の加算等)

②HSコードの変更(関税率引上げ)

③原産地規則の不適用(FTA特恵税率の否認)

④過少申告加算税・重加算税の賦課

⑤ロイヤルティ・役務提供費用の加算処理

これらについて、合理的な反論が可能な場合には、不服申立によって是正が図られる可能性があります。

 

3 不服申立で重視されるポイント

不服申立が認められるかどうかは、主に以下の観点から判断されます。

①法令・通達・判例に照らして処分が違法であるか

②実務的な処理との整合性があるか

③具体的な事実・証拠に基づいて主張がなされているか

④税関の評価方法に合理性がないと認められるか

単なる感情的な異議ではなく、論理的・法律的に整理された主張が不可欠です。

 

4 実務上の戦略:専門家の活用と段階的交渉

不服申立にあたっては、弁護士を代理人とし、主張書面や資料を専門的に整備することで、審理側の印象や理解を大きく左右します。

また、次のような戦略的な対応が有効です。

①処分の前段階で税関と見解を共有し、調整・妥協の余地を探る

②不服申立書に「代替評価案」や「修正スキーム」を提示する

③必要に応じて、国税不服審判所への再審査請求、行政訴訟へのステップを見据える

事前の税関交渉と、後日の不服申立の準備を並行して進める体制が、結果に大きな差を生みます。

 

税関による処分に納得がいかない場合、正当な根拠があれば不服申立によって判断の見直しを求めることができます。

申立は期限や形式に厳格なルールがあり、内容も法的に精緻であることが求められるため、専門家と連携した対応が効果的です。

当事務所では、税関処分への異議申立・審査請求の書面作成・証拠整理・交渉代理まで、専門的に対応しております。判断に疑問を感じた際は、ぜひ一度ご相談ください。

 

税関事後調査における弁護士の役割

2025-08-19

税関事後調査が入ることに決まった際、「自社だけで対応すべきか」、「専門家に依頼するべきか」と悩む企業も多いことでしょう。

実際、輸入申告内容に関する指摘や追徴課税が発生する可能性がある調査では、対応経験のある弁護士の役割が非常に重要です。

今回は、税関調査における弁護士の具体的な役割や使い分け、専門家を活用するメリットについて解説します。

 

1 調査対応における3つのフェーズ

税関事後調査は、大まかに次のようなフェーズに分かれます。

①通知~事前準備(書類整理・体制構築)

②調査当日の対応(税関職員との質疑応答・資料提出)

③調査後の対応(指摘事項への反論・修正申告・不服申立て)

これら各段階において、弁護士が果たす役割は少しずつ異なります。

 

2 弁護士の役割

弁護士は主に、法的な観点からのリスク分析と交渉・争訟対応を担います。

①関税評価やHSコード等に関する法解釈の検討

②原産地規則の解釈、FTA・EPAの適用判断

③税関職員との交渉・説明(補足意見書の作成を含む)

④修正申告内容の精査とリスクコントロール

⑤不服申立(審査請求・訴訟)の代理人業務

税関対応において、弁護士が法的な正当性を根拠づけて反論を行うことで、追徴リスクの軽減や、調査の早期収束に貢献できます。

 

3 税理士の役割

一方、税理士は会計・帳簿・税務処理の専門家として以下のような場面で活躍します。

①仕訳帳・会計データと申告内容の整合性確認

②移転価格・ロイヤルティ等の価格構成の確認

③調査資料の整理・提出対応

④消費税との関係整理(仕入税額控除との整合性等)

特に、輸入価格に関連する社内原価や関係会社取引の説明において、税理士の支援は非常に有効です。

 

4 弁護士と税理士の連携による相乗効果

税関調査の現場では、会計・税務・法務が密接に絡み合います。

たとえば、ある契約が「ロイヤルティに該当するかどうか」という論点では、契約解釈(弁護士)と金額算定(税理士)の両方の視点が必要です。

このため、弁護士と税理士が連携して対応することで、以下のようなメリットがあります。

①税関への説得力ある説明資料の作成

②調査資料の精度向上と漏れの防止

③修正申告の範囲・方法の最適化

④将来的なリスクへの法務・税務的アドバイス

 

5 専門家を活用すべきタイミング

次のようなケースでは、早期に専門家の関与を検討することが望ましいです。

①調査通知を初めて受けたが、対応経験がない

②関税評価やHSコードの根拠に不安がある

③FTA利用に関して複雑な条件を抱えている

④税関と見解が対立している、または指摘内容が納得できない

⑤修正申告や不服申立ての可能性がある

調査の後半になるほど対応が限定されるため、初期段階での関与がもっとも有効です。

 

税関事後調査は、単なる書類確認にとどまらず、輸入ビジネス全体の信頼性が問われる重要な局面です。

弁護士・税理士といった専門家のサポートを受けることで、調査対応の質を高め、不要な追徴課税やリスク拡大を防ぐことが可能となります。

当事務所では、税関対応に特化した弁護士と連携する税理士とともに、輸入事業者の皆さまを全面的にサポートしております。お気軽にご相談ください。

 

会計帳簿との整合性が問われる場面とは?

2025-08-14

税関からの事後調査や価格申告の場面では、会計帳簿との整合性が問われることがあります。

輸入申告書に記載した課税価格と、実際の会計処理・帳簿記載内容にズレがあると、過少申告の疑いを招いたり、価格評価が否認されるリスクが高まります。

本記事では、税関が会計帳簿をチェックする理由と、整合性が問題になる典型的なケース、そして対策について解説いたします。

 

1 税関が帳簿を確認する目的とは?

税関は「帳簿書類等の閲覧・提出要求」を行う権限を持っています。

これにより、単に輸入申告書類(インボイスやパッキングリスト)だけでなく、次のような社内の会計帳簿・会計システム上の記録が調査対象となり得ます。

①仕訳帳・総勘定元帳

②輸入仕入台帳

③原価計算書

④月次・年次財務諸表

⑤経費精算・支払明細書 等

税関の目的は、「申告された課税価格が、企業の実態としての取引価格と一致しているか」を確認することにあります。

 

2 整合性が問われる典型的な場面

①インボイス価格と仕訳金額の不一致

例えば、インボイスでは1万ドルと記載されているのに、帳簿には1万2000ドルと記録されている場合、差額の説明を求められます。

②会計処理上の「後日値引き」や「リベート」

会計上では値引きや割戻しが記録されていても、申告価格に反映されていなければ、追徴課税の対象になる可能性があります。

③無償供与品や役務提供費用の見落とし

原材料や技術支援が実質的に提供されているにもかかわらず、関税評価上加算していない場合、帳簿からの指摘で問題化します。

④関連会社との価格乖離(移転価格の論点)

グループ会社間で価格が意図的に低く設定されていた場合、帳簿の記録と実際の輸入価格の不一致が重視されます。

 

3 整合性が崩れるとどうなるか?

税関から見て、帳簿と申告内容の整合性に問題があると判断された場合、以下のような対応が取られることがあります。

①取引価格の否認(関税評価方法の変更)

②加算要素の追徴(ロイヤルティ、役務費用等)

③過少申告加算税の課税

④継続的な監視対象(リスク先リスト入り)

つまり、帳簿のズレが「意図的な操作」と誤解される可能性があるのです。

 

4 整合性を保つための実務対応

①インボイスと支払記録・仕訳帳の照合をルール化

②輸入申告価格と会計処理との差異がある場合は、その理由を文書で記録

③値引き・ロイヤルティ・サービス料等は社内チェックリストに含める

④会計ソフトのコードと通関データを紐づけて管理する

⑤移転価格税制対応との整合性も検討

税関から帳簿の提出を求められたとき、即時に説明できる体制を整えておくことが、最大の防御策となります。

 

税関調査では、「何を申告したか」だけでなく、「申告内容が企業の帳簿と合っているか」が厳しくチェックされます。

帳簿との整合性を保つことは、輸入ビジネスの信頼性を支える基礎であり、トラブル防止に直結します。

当事務所では、会計処理と通関申告の整合性確認、税関調査時の資料提出支援、加算税対応などを総合的にサポートしています。調査対応や事前チェックでお悩みの方は、ぜひご相談ください。

 

税関事後調査の際の資料提出~どこまで準備する必要があるか?

2025-07-30

税関事後調査では、申告の正確性を確認するために、多くの資料提出が求められます。

しかし、輸入事業者からすると「どこまで出す必要があるのか」、「資料を準備するには非常に手間があるので出来るだけ手間を省きたいが」といった不安も少なくありません。

今回は、税関に対する資料提出の範囲と対応上の注意点について、実務と法的視点の両面から解説いたします。

 

1 資料提出の根拠と調査の目的

税関は事後調査の一環として輸入者に対し、輸入に関係する帳簿・書類等の提出を求めることができます。

提出を求められるのは、輸入申告に用いた資料だけでなく、価格設定・原産地・契約関係に関する社内資料等も含まれる場合があります。

税関の目的は、主に以下の3点です。

①適正な関税額が申告・納付されているかの確認

②原産地申告(FTA・EPA利用含む)の正確性の検証

③過少申告や不正申告の有無の調査

 

2 提出を求められる代表的な資料

調査通知時に「提出をお願いしたい資料一覧」が提示されます。一般的には以下のような資料が該当します。

①インボイス、パッキングリスト、B/L(船荷証券)

②契約書(売買契約、委託製造契約など)

③支払明細、送金証明(TT送金書等)

④関税評価計算書・価格根拠資料

⑤原産地証明書、製造工程表(FTA関連)

⑥関連会社間の取引価格設定の社内資料

⑦会計帳簿(仕訳帳・元帳・総勘定元帳)

その他、税関から追加的にメールや社内資料の提示を求められることもあります。

 

3 任意提出であっても協力義務はある

税関調査は任意の行政調査であり、強制調査ではありませんが、調査への協力を拒否したり、資料の提出を怠った場合、好ましくない状況となる可能性があります。

そのため、合理的な範囲で協力しつつ、自社の立場を明確にし、誤解を避ける書面作成が重要です。

 

4 弁護士を介した対応のメリット

①提出範囲が妥当かを法的に精査

②誤解を防ぐための説明文の作成

③税関との交渉(口頭説明・書面やり取り)の代理

④自社に不利な主張に対する法的反論の構築

税関対応は「専門用語」「法律論」「税務知識」が複雑に絡むため、弁護士が資料整理のアドバイザーとして関与することは、実務上非常に有効です。

 

税関への資料提出は、「何でも出せばよい」というわけではありません。

提出範囲を明確に整理し、必要に応じて補足説明や弁護士の関与を通じて、誤解のない対応を行うことが、調査結果を左右する鍵となります。

当事務所では、事後調査対応の総合的サポートを行っております。事前準備や初動対応でお困りの際は、ぜひご相談ください。

 

税関事後調査の通知が届いたときにすべき初動対応

2025-07-25

ある日突然、税関から「税関事後調査実施のお知らせ」が届いた、輸入事業者にとっては緊張の走る瞬間ですが、焦って不用意に動くことが、かえってリスクを高める場合もあります。

本記事では、税関事後調査の通知を受けた際に、輸入事業者として冷静に取るべき初動対応について、実務の流れと法的観点から解説いたします。

 

1 税関からの通知内容を正確に確認する

まず最初にすべきことは、「税関からの通知文書」の内容をしっかり確認することです。
通知書には以下のような情報が記載されています。

①調査対象期間(通常は過去5年間)

②調査対象貨物(すべての輸入か、特定品目か)

③調査予定日(訪問日またはオンライン調査の日程)

④提出を求められる資料の一覧

この時点で、不明点や曖昧な記載がある場合は、税関担当官に確認を取ることが重要です。

 

2 調査対象期間のデータ・帳簿を整理する

調査では、主に以下の資料が求められます。

①インボイス、パッキングリスト、B/L、契約書

②輸入申告書(NACCS記録)、課税価格計算資料

③会計帳簿(仕訳帳、元帳など)

④関連会社間取引の価格設定根拠

⑤原産地証明書(FTA利用がある場合)

これらを調査対象期間分、迅速かつ正確に提示できる体制が求められます。

電子保存している場合は、検索性や閲覧環境の確認も行いましょう。

 

3 社内での対応体制を整える

調査は輸入部門だけの問題ではありません。調査が始まる前に、次のような体制整備を行っておくことが重要です。

①調査窓口担当者の決定(輸入実務・経理・総務などの連携)

②資料提出・回答の社内フローを明確化

③過去の申告・契約の担当者と連絡が取れる体制を構築

また、過去の修正申告や税関とのやり取りがある場合は、その経緯も事前に整理しておきましょう。

 

4 弁護士や専門家への相談を検討する

事後調査の結果、申告ミスや誤解に基づく指摘を受けることがあります。

特に、以下のようなケースでは弁護士や貿易専門家の早期関与が有効です。

①FTAの適用要件が複雑な場合

②関連会社取引での価格設定が問題になりそうな場合

③既に税関と見解が分かれている論点がある場合

④修正申告や争いの可能性がある場合

専門家が調査前から関与していることで、税関への説明も整理され、結果的に調査の円滑化・軽微な指摘に留める可能性が高まります。

 

5 してはいけない「初動対応」

①税関からの通知を無視・放置する

②不正確な資料を慌てて提出する

③調査目的を誤解し、「隠す」意識で対応してしまう

④関係部署間の連携が不十分なまま担当者任せにする

これらは、調査が長期化・深刻化する要因となるため、避けなければなりません。

 

税関事後調査は、冷静に準備し、誠実かつ適切に対応すれば、大きな問題に発展するリスクを大きく下げることができます。

通知を受けたらまずは落ち着いて、社内体制の整備と資料準備を進め、必要に応じて専門家の助言を仰ぐことが重要です。

当事務所では、調査通知への対応支援、税関との折衝サポート、修正申告や異議申立てまで幅広く対応可能です。お困りの際はお気軽にご相談ください。

税関事後調査とは?対象企業になる条件と頻度

2025-07-20

「税関から事後調査実施の通知が届いた」、「過去3年分の帳簿を提出するよう求められた」、こうした連絡を受けた輸入事業者の中には、突然のことに戸惑う方も少なくありません。

税関事後調査は、輸入ビジネスを行う企業にとって避けられないリスク管理の一環です。本記事では、税関事後調査の概要と、どのような企業が調査対象となるのか、調査の頻度や傾向について解説いたします。

 

1 税関事後調査とは何か?

税関事後調査とは、輸入申告の内容が正確であったかどうかを、輸入通関後に税関が企業を訪問して確認する調査です。

税関は、申告時点でのインボイス・契約書・価格資料の内容だけでなく、企業が保有する帳簿、会計資料、メールなどの実態をもとに申告の正確性を検証します。

調査対象となるのは、法人・個人事業主を問わず、一定の輸入実績があるすべての事業者です。

 

2 調査の目的

税関が事後調査を行う主な目的は以下のとおりです。

①関税の適正な納付状況を確認すること

②過少申告・申告漏れ・不正申告の有無を把握すること

③FTA・EPA等の原産地申告の適正性を確認すること

調査の結果、申告ミスや法令違反が判明した場合、追徴課税(関税・消費税)や加算税、場合によっては刑事処分がなされる可能性があります。

 

3 調査対象となる企業の特徴

税関は、全事業者を一律に調査するわけではなく、リスクに応じて優先度を判断しています。

以下のような特徴のある企業は調査対象となりやすいとされています。

①輸入金額が一定規模以上(年間数千万円以上)

②同種商品の申告価格が著しく安い

③HSコードが不安定、または頻繁に変更されている

④FTA・EPAの利用申告が多い

⑤過去に申告ミスや修正申告歴がある

⑥関連会社取引(移転価格)の比率が高い

また、近年はデータ分析によるスクリーニングの精度が高まっており、初めての調査でも詳細な調査が行われる傾向にあります。

 

4 調査頻度と実施の流れ

税関事後調査は、数年に一度のペースで実施されるケースが一般的です。

調査は次のような流れで進行します。

①調査実施通知書の送付(1〜2か月前)

②事前ヒアリング(調査対象期間・業務内容など)

③税関職員による訪問調査(通常1〜3日)

④追完資料の提出依頼・質疑応答

⑤調査結果通知(指摘事項と是正内容の提示)

 

5 調査対象期間とリスクの広がり

原則として、調査対象期間は過去5年間ですが、重大な不正が見つかった場合には最大7年間に遡って追徴課税されることがあります(重加算税の対象)。

また、一度の調査で問題が発覚した企業は、その後も継続的にチェック対象となる傾向があります。

 

税関事後調査は、輸入ビジネスにおける納税義務の適正性を確認する重要な行政調査です。

突然の通知に慌てないよう、日頃から帳簿や契約書の管理体制を整備しておくことが極めて重要です。

当事務所では、税関事後調査の初動対応、調査準備、対応支援、追徴課税への対応、異議申立てまで幅広く対応しております。ご不安な方は、ぜひ早めにご相談ください。

輸出事後調査の現状

2025-01-11

近年、経済安保の関係で外為法(外国為替及び外国貿易法)の重要性が高まる中で、輸出事後調査が注目されています。この調査は、過去に行われた輸出取引の適正性を確認し、法令違反のリスクを未然に防ぐための重要な手続きです。本記事では、輸出事後調査の概要とその意義についてご説明いたします。

 

1 輸出事後調査とは?

輸出事後調査とは、過去の輸出取引について、外為法や関連する輸出規制への適合性を検証するために行う内部的または外部的な調査です。特に以下の点を確認します:

①規制対象の確認(該非判定)
輸出した製品や技術が、輸出規制リストやキャッチオール規制に該当していないかを再確認します。

②輸出許可手続きの適正性
該当する場合、必要な輸出許可や申請が適切に行われていたかを確認します。

③輸出先や用途の妥当性
輸出先や最終用途が適正であり、軍事転用や不正利用のリスクがなかったかを調査します。

 

2 調査で確認対象となる主なポイント

輸出事後調査では、以下の項目が重点的に確認されます。

①該非判定の記録
輸出前に行われた該非判定が正確であり、その記録が適切に保存されているかを確認します。

②輸出先の調査
取引先が規制対象の国や人物ではないか、また再輸出のリスクがないかを確認します。

③輸出許可の取得状況
規制対象の場合、輸出許可が適切に取得されていたか、またその手続きが法的要件を満たしているかを検証します。

④関連文書の保存状況
輸出に関する契約書や申請書類、取引記録などが適切に保存されているかを確認します。

 

3 輸出事後調査の意義と専門家に依頼するメリット

輸出事後調査は、外為法や関連規制に基づいて輸出取引の適正性を確認し、法令違反や経済安全保障上のリスクを防ぐために欠かせない制度です。

輸出事後調査は単なる過去の問題点の洗い出しにとどまらず、企業のコンプライアンス体制の向上や信頼性の確保に直結しますので、輸出事後調査を機にしっかりとした輸出管理体制を維持することで、将来的に行政や取引先からの信頼を得るだけでなく、事業の安定と成長を支えることにもつながります。

輸出事後調査は、外為法をはじめとした様々な法規制を踏まえて行われることになりますので、専門的な知識が必要となるため、なかなか初回の調査の際にスムーズに対応することは難しい場合が多いのが実情です。

適切な対応や確認を行うために、日常的に専門家のアドバイスを受けることが有益です。

輸出管理や外為法の遵守に不安を感じている企業の方は、ぜひ弁護士などの専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

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