Archive for the ‘コラム~税関対応、事後調査対応~’ Category
「ある日突然、税関から電話が…」事後調査の通知が来た時の初動対応マニュアル。無視や虚偽回答は命取りです
「●●税関の調査第●部門の●ですが、、、」
ある日突然、会社にかかってくる税関からの電話。
多くの経営者や担当者の方の中には、「何か悪いことをしたのか?」、「逮捕されるのか?」とパニックに陥る方もいらっしゃると思います。
しかし、事後調査は定期的に行われる行政調査であり、必ずしも犯罪の嫌疑があるわけではありません。重要なのは、最初の電話から実地調査当日までの「初動対応」です。
1 税関からの連絡:それは「調査」かどうか
税関からのアプローチには段階があります。
単なる電話での照会なのか、資料の提出要請なのか、あるいは日程を決めて会社に来る「実地調査(事後調査)」なのかを確認しましょう。
「来月、2日間ほどお時間をいただけますか?」と言われた場合は、本格的な事後調査です。この時点で、日程調整を即答する必要はありません。
「担当者の予定を確認して折り返します」と伝え、きちんと対応できるように時間を調整することが鉄則です。
2 調査当日までに準備すべき資料と心構え
調査官は「輸入許可書」と「インボイス」だけでなく、それらが正しいかを裏付ける「契約書」、「決済送金明細」、「会計帳簿(総勘定元帳)」などをチェックします。
特に整合性が問われるのは以下の点です。
①インボイスの決済額と、実際の海外送金額が一致しているか?
②インボイスに記載のない支払いが、他の名目(技術指導料、金型代など)で送金されていないか?
資料が整理されていない状態で調査を受けると、調査官の心証が悪くなるだけでなく、本来説明できるはずの取引についても疑いを持たれてしまいます。
3 やってはいけない「NG対応」
最も避けるべきは、「分からないことを適当に答える」こと、「不都合な書類を隠す・捨てる」といったことです。
記憶が曖昧な点は「確認して後日回答します」と答えれば問題ありません。しかし、その場しのぎの嘘をつくと、後で帳簿との矛盾が発覚した際に「仮装・隠蔽」とみなされ、重加算税の対象となるリスクが激増します。
4 弁護士に依頼するタイミング
「通知が来た直後」がベストです。
弁護士は、調査当日に立ち会い、調査官の質問の意図を汲み取って適切な助言を行ったり、万一不当な指摘があった場合には法的な反論を行ったりすることができます。
何も準備せずに丸腰で調査に臨むのと、事前に専門家のリーガルチェックを受けてから臨むのとでは、大きな差が出ることも珍しくありません。
ご不安な方は、日程が決まった段階ですぐにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
越境EC事業者が注意すべき「個人輸入」と「小口輸入」の違い。アンダーバリューのリスクとは?
近年、海外のECサイトから商品を仕入れ、日本国内で販売する「越境EC」や「転売ビジネス」が急速に拡大しています。しかし、手軽に始められる一方で、関税法などのルールを正しく理解していないために、知らず知らずのうちに違法行為に手を染めてしまっているケースが後を絶ちません。
特に多いのが、「個人輸入」と「小口輸入(商用)」の混同、そして「アンダーバリュー(低価申告)」の問題です。
1 「個人使用」か「商売目的」かで税率が変わる
海外から貨物を輸入する場合、原則として関税と輸入消費税がかかります。
しかし、個人が「自分自身で使用する目的」で輸入する場合(個人輸入)は、商品価格の60%に対して課税されるという特例(減免措置)があります。
一方、他人に販売する目的で輸入する場合(小口輸入・商用輸入)は、この「60%特例」は適用されず、商品価格の100%(送料・保険料含む)に対して課税されます。
よくある間違いは、「販売目的で仕入れているのに、個人使用のフリをして輸入する」ことです。これは明確な脱税行為であり、税関もEC事業者に対する監視を強化しています。宛先が個人名であっても、数量や頻度、過去の履歴から商用であることは容易に見抜かれます。
2 アンダーバリュー(低価申告)の誘惑とリスク
海外のセラー(販売者)によっては、気を利かせて(あるいは悪意を持って)、インボイスの価格を実際よりも安く記載したり、「GIFT(贈り物)」として発送したりすることがあります。これをそのまま「ラッキー」と思って輸入申告してしまうと、「アンダーバリュー(不当な低価申告)」という犯罪になります。
「海外の業者が勝手にやったことだ」という言い訳は通用しません。
輸入者(あなた)には、正しい価格で申告する義務があります。もしインボイスの価格が実際の決済額より低いことに気づいたら、速やかに通関業者に正しい決済画面のキャプチャ等を提出し、修正申告をする必要があります。
3 アカウント凍結や刑事罰のリスクも
悪質な脱税行為が発覚した場合、以下のようなペナルティが課されます。
①重加算税の賦課
②輸入許可の取消し
③関税法違反としての刑事告発
また、ECプラットフォーム(Amazon、楽天等)側でもコンプライアンス順守が厳格化しており、税関トラブルを起こした事業者はアカウント停止処分を受けるリスクが高まっています。
「みんなやっているから大丈夫」は通用しません。ビジネスとして継続的に輸入を行うのであれば、適正な輸入申告体制を構築することが、将来の利益を守るための投資となります。税関対応に不安があるEC事業者様は、一度専門家のリーガルチェックを受けることをお勧めします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
税関から「輸入差止」の通知が届いたら?認定手続の流れと商標権侵害を疑われた際の対抗策
「中国から輸入した商品が税関で止まった」、「『認定手続開始通知書』という書類が届いたが、どうすればいいのか」、当事務所には、こうした輸入トラブルに関する相談が多く寄せられます。
これは、商標権や意匠権などの知的財産権を侵害する物品(いわゆるコピー商品や模倣品)の水際取締りが強化されているためでもあります。
もし、あなたが真正品(本物)を輸入したつもりであるにもかかわらず、税関で止められてしまった場合、適切な対応を取らなければ商品は没収・廃棄され、最悪の場合は刑事罰の対象となる可能性もあります。
1 「認定手続」とは何か
税関が、輸入貨物の中に「知的財産権を侵害している疑いがある」ものを発見した場合、輸入者と権利者の双方に通知を出し、本当に侵害しているかどうかを判断する手続きを開始します。これを「認定手続」と呼びます。
この通知を無視してはいけません。何もしなければ、権利者の主張が通り、貨物は侵害品と認定され、廃棄等の処分が下されることになります。
2 輸入者がとるべき対応
真正品を並行輸入している場合や、権利侵害をしていないと確証がある場合、輸入者はまずは意見書・証拠の提出を行う必要があります。
具体的には、「指定された期間内」に、税関長に対して「侵害品ではない」旨の意見書と、それを裏付ける証拠を提出します。
ここでは、正規の流通ルートで購入したことを示すインボイス、販売ライセンス契約書、商品の詳細な写真、真正品であることを証明する鑑定書などが有効です。
3 弁護士に依頼するメリット
認定手続は非常にタイトなスケジュールで進行します。
限られた期間内に、説得力のある法的文書(意見書)を作成し、証拠を揃える必要があります。
例えば、『並行輸入の抗弁』では、日本の商標法上、適法な並行輸入として認められるための「三要件(真正性の保証、同一人性の保証、品質管理性の保証)」を満たしていることを、法的に論証する必要があります。これは一般的な輸入業者では対応が難しい場合が多いです。
また、『権利者との交渉』においては、場合によっては、権利者側と直接交渉を行い、輸入の承諾を得る等の解決策を探ることもあります。
「たかが数箱の輸入だから」と放置すると、今後の輸入すべてが厳格な検査対象になるリスクもあります。
輸入差止の通知が届いたら、直ちに貿易・知財に強い弁護士へご相談ください。迅速な初動が、あなたの商品とビジネスを守ることにつながります。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
税関事後調査 輸入コストに含まれる意外な「加算要素」
輸入ビジネスを行っている企業にとって、税関による「事後調査」は避けて通れないリスクの一つです。多くの企業が「インボイス通りの価格を申告しているから大丈夫」と考えていますが、実はここに大きな落とし穴があります。
事後調査で指摘され、多額の課税(関税+消費税+加算税)がなされるケースの相当程度は、単価の誤りではなく「加算要素」の申告漏れに起因しています。
1 インボイス価格=課税価格ではない
関税法上の「課税価格」は、単に貨物の代金(インボイス価格)だけではありません。
「現実に支払われる価格」に加えて、輸入貨物に関連して買手が負担する費用を加算する必要があります。これを「加算要素」と呼びます。
通関業者(乙仲)は、輸入者から提供されたインボイス等の書類に基づいて申告書を作成しますが、インボイスに記載されていない「別払いの費用」までは把握できません。そのため、輸入者自身が正しく理解し、通関業者に情報を伝えなければ、意図せず「脱税(過少申告)」の状態になってしまうのです。
2 事後調査で指摘されやすい「加算要素」
税関の調査官は、会計帳簿(総勘定元帳など)と輸入申告書を突き合わせ、以下の費用が課税価格に含まれているかをチェックします。
①ロイヤルティ(特許権使用料等)
輸入貨物に関連して、海外のライセンサー等に支払うロイヤルティは、原則として課税価格に加算する必要があります。「貨物代金とは別の契約書で支払っているから関係ない」という誤解が非常に多く、注意が必要です。
② 金型代・無償提供資材
海外の工場で製品を作らせる際、日本側で金型を作成して送ったり、原材料を無償で提供したりしていませんか?これらの費用も、輸入貨物の価値を構成するものとして加算対象となります。
③買付手数料と販売手数料の違い
海外のエージェントに支払う手数料については、「買付手数料」であれば非加算ですが、「販売手数料」等であれば加算対象となるなど、契約の実態に応じた高度な判断が求められます。手数料は基本的に加算対象となる点には注意が必要です。
3 重加算税、刑事事件化のリスクと弁護士の役割
これらの申告漏れが発覚した場合、不足していた関税・消費税に加え、原則として10%(または15%)の「過少申告加算税」が課されます。
さらに、事実を隠蔽・仮装していたと認定されれば、35%~40%もの「重加算税」が課される可能性があります。また、場合によっては刑事事件に発展する可能性もあります。
そのため、事後調査の通知が来た段階、あるいは調査中に指摘を受けた段階で、早期に弁護士へ相談することをお勧めします。
事後調査は、単なる税務処理ではなく「法解釈の争い」でもあります。予期せぬ課税を防ぐためにも、貿易実務に精通した専門家のサポートをご検討ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
関税評価の重要な争点:輸入貨物の「買付手数料」と「仲介手数料」を区別する
1 手数料の違いが追徴課税を招く:複雑な関税評価の論点
輸入取引において、海外の第三者に支払う手数料は、関税評価(課税価格の算出)において最も頻繁に争点となる項目のひとつです。
この手数料が「買付手数料」と認定されるか、「仲介手数料(販売手数料)」と認定されるかによって、企業の関税・消費税の納税額が大きく変動するからです。
①買付手数料:原則として、輸入貨物の課税価格に加算する必要がない
②仲介手数料:原則として、輸入貨物の課税価格に加算する必要がある
この区別を誤って申告すると、事後調査で仲介手数料が加算要素として指摘され、多額の追徴課税を受けるリスクがあります。この二つの手数料を区別するための法的視点を把握することが必要です。
2 関税法上の「買付手数料」の定義
関税法における「買付手数料」とは、輸入者の計算において輸入貨物を買うために役務を提供する輸入者側の右腕として働く代理人に支払われる手数料と定義されています。
簡単に言えば、輸入者(買手)のために動いている代理人に支払う費用です。
税関が買付手数料と認定するかどうかは、契約書の存在を前提として実態も踏まえて厳しく判断されます。
買付手数料として認められるためには、契約書、メールのやり取り、報告書、会計処理などの客観的な証拠が必要です。
3 加算要素となる「仲介手数料(販売手数料)」
一方で、実態として、輸入者と輸出者の間を取り持ち、販売を促進する役割を担っていると判断された場合、その名称が「買付手数料」であっても、税関は「仲介手数料」として加算を求めます。
法律上は、手数料については原則として課税価格に加算する必要があり、買付手数料が例外的な建付けとなっておりますので、基本的には手数料という表現が使われている場合にはこちらの課税価格に加算する必要がある仲介手数料として処理することになります。
手数料に関する論点は、名称ではなく実態、そしてその実態を裏付ける証拠によって判断されます。曖昧な契約や運用は、すべて追徴課税リスクに繋がります。
当事務所は、関税評価における複雑な加算要素の解釈について、豊富な経験と法的知識に基づき、貴社の取引実態に合わせた最適な契約構造と文書管理体制を構築し、貴社の法的リスクの解消に努めます。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
追徴課税は避けられない?「過少申告加算税」と「重加算税」の負担
1 追徴課税だけではない:加算税という重いペナルティ
税関の事後調査で関税や輸入消費税の申告漏れが指摘された場合、輸入事業者は本来納めるべき税額との差額を追徴されます。
しかし、真に企業にとって大きな負担となるのは、この追徴税額に加えて賦課される「加算税」です。
加算税は、申告義務の履行を促す行政罰的な側面を持ち、その種類と税率によって企業の財務に与える影響が大きく変わります。特に、「過少申告加算税」と「重加算税」のいずれが適用されるかで、ペナルティの重さが決定的に異なります。
(1)過少申告加算税:税率10%(原則)
過少申告加算税は、納税者が自ら申告した税額が、本来納めるべき税額よりも少なかった場合に課されます。
(2)重加算税:税率35%(最も重いペナルティ)
最も恐れるべきは重加算税です。これは、単なる申告ミスではなく、納税者が脱税のために事実を隠蔽したり、仮装したりして、意図的に過少申告を行ったと認められた場合に課される最も重いペナルティです。
重加算税の適用要件を満たさないことを疎明するためには、以下の要素が重要です。
①故意性の否定:申告漏れは、関税評価やHSコード分類の複雑な法解釈や計算ミスによるものであり、意図的な隠蔽ではないことを、具体的な書類やメールのやり取りを通じて主張します。
②合理的な理由の提示:輸入者が専門知識を持たない中で、通関業者や海外業者との連携ミスなど、やむを得ない理由でミスが発生したことを説明し、「納税義務を不当に免れようとする積極的な行為」ではないことを立証します。
③証拠の整理と選別:調査時に提出する書類を精査し、税関に誤解を与えかねない曖昧な記述や表現を事前に整理・説明することで、「隠蔽」と解釈されるリスクを排除します。
2 まとめ:初動と専門性が鍵
加算税の負担を最小限に抑える鍵は、事後調査の通知を受けた直後の「初動」と、関係法令を熟知した「専門性」です。不安な状況で焦って不適切な対応を取る前に、当事務所のような弁護士(通関士資格を保有)に相談することで、事後調査をスムーズに対応し、将来的に万全の体制を構築していくことが継続的なビジネスの発展の観点からは非常に重要と言えます。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
事後調査でチェックされる3つの重要論点
1 税関事後調査の核心:3つの論点
税関による輸入事後調査は、過去の申告の適正さを検証する手続きですが、その焦点はある程度絞られています。
追徴課税のリスクを最小限に抑えるためには、チェックされる3つの中心的な論点を事前に把握し、対策を講じることが不可欠です。
弁護士としての経験から、申告漏れや誤りが指摘されやすい、特に注意すべき論点を解説します。
(1)関税評価:ロイヤルティ、金型費、仲介手数料の「加算漏れ」
事後調査で最も追徴課税が発生しやすいのが、関税評価(課税価格の決定)に関する問題です。買手が海外の売手に支払った「貨物代金」だけでなく、輸入取引に関連して支払われた特定の費用を、輸入申告の際に課税価格に加算(上乗せ)しなければならないというルールがあります。
税関が特に注視するのは、以下の「加算要素」が申告から漏れていないかという点です。
①ロイヤルティ(商標使用料など)
輸入貨物と関連して、輸入者が商標権者などに支払うロイヤルティやライセンス料は、原則として課税価格に加算する必要があります。
ただし、「貨物の販売条件として支払うこと」など、加算が必要となる要件は複雑です。契約書や支払条件を精査し、加算の要否を判断しなければなりません。
②無償または低額提供した費用(金型、設計図など)
輸入者が、輸入貨物を製造するために必要な金型、設計図、技術援助などを輸出者へ無償、または非常に安価に提供した場合、その費用(提供費用)を貨物の課税価格に加算する必要があります。この費用の算出方法や配分方法が複雑で、申告漏れが頻繁に起こります。
③買付手数料と仲介手数料の区別
第三者に支払った手数料のうち、「買付手数料」は加算不要ですが、「仲介手数料(販売手数料)」は加算が必要です。この区別は非常に難しく、関税定率法や通達を踏まえて慎重に判断されます。企業が「買付手数料だ」と考えていても、税関により「仲介手数料」と認定されれば、過去に遡って追徴されます。
(2)HSコード:高額な関税率の「適用逃れ」
HSコードは、輸入貨物の種類を世界共通のルールで分類し、適用される関税率を決定する最も重要な情報です。HSコードの分類を誤ると、本来とは異なった関税率を適用することになり、誤った申告となります。
税関は、高額な関税率が適用されるはずの貨物や、複雑な製品(複合機械、化学製品など)について、意図的または誤って低率のHSコードを適用していないかをチェックします。
HSコードの誤りを指摘された場合、その修正は過去5年間の全輸入分に及ぶため、追徴額が膨大になるリスクがあります。
(3)特恵/EPA(経済連携協定):原産地規則の「証明不備」
近年、関税削減のためにEPA(経済連携協定)の特恵関税率を適用する企業が増加していますが、これに伴い、原産地規則の誤りによる非違指摘も増加しています。
特恵関税を適用するためには、「その貨物が協定相手国で完全に生産されたもの」または「十分な加工が行われたもの」等原産地規則に沿った原産性を証明しなければなりません。
証明書類の不備や、原産地規則の誤った解釈による適用は、特恵関税率の適用が否定され、本来の税率との差額が追徴されることになります。
2 まとめ:事前の対策と専門家の活用
これらの重要な論点は、通関実務と関税法の専門知識がなければ正確に対応することが難しい分野です。事後調査の通知を待つのではなく、日常の内からこれらの論点について社内チェック体制を確立することが最善の防御策です。
当事務所は、関税評価、HSコード分類、原産地規則の全てにおいて、弁護士と通関士の専門知識を融合させ、貴社のコンプライアンス強化と事後調査への対策をサポートいたします。ご不安な点がある場合は、まずはご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
税関事後調査の弁護士による立会いは必要か?
1 税関事後調査への対応:弁護士による立会いの重要性
税関による輸入事後調査は、企業の関税・消費税の申告の適正さを確認するための重要な手続きです。しかし、企業の担当者にとっては、税関職員の訪問は大きなプレッシャーとなります。この際、弁護士の立会いを得ることは、単なる安心感の提供にとどまらず、調査の結果と企業の将来に良い影響を与えます。
それではなぜ弁護士の立会いが必要なのでしょうか?それは、税関事後調査が「法律に基づく行政調査」であり、その対応には専門的な「法律知識」と「交通整理」が不可欠だからです。
具体的には、事実関係の整理と主張の明確化を図ることが重要です。
企業の担当者が混乱した状態になったり、不用意な発言をしたりすることを防ぐ必要があります。客観的な根拠に基づく正確な事実関係のみを伝え、企業側の法的・論理的な主張、認識を明確に整理して提示します。
これにより、調査がいたずらに長期化したり、不必要な指摘を受けたりするリスクを最小限に抑えることができます。
2 「税理士」ではなく「弁護士」が必要な理由
輸入事後調査は「税務調査」に似ていますが、決定的に異なる点があります。それは管轄する法律が異なるということです。
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項目 |
税関事後調査 |
税務調査 |
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根拠法 |
関税法、関税定率法など |
国税通則法、法人税法など |
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専門家 |
弁護士(通関士資格を持つ) |
税理士 |
税理士法により、税理士が関与できるのは国税に関する税務書類の作成や相談、国税当局への対応に限られます。関税は税理士の独占業務に含まれていません。
一方で弁護士は、法律に関する全ての業務を取り扱うことができます。関税法も法律であるため、弁護士は関税法に基づく調査への立会い、主張・交渉、そして万が一の行政処分への対応まで一貫して行うことができます。
特に弁護士資格と通関士資格を併せ持つ専門家は、関税法の知識だけでなく、通関実務の深い理解に基づき、税関職員と同じ目線で論点を把握し、スムーズな対応を講じることが可能です。
3 将来のリスクまで見据えた戦略的サポート
弁護士の立会いは、単に調査当日を乗り切るためだけのものではありません。
調査で明らかになった問題点に基づき、二度と非違が発生しないよう、社内の通関体制や文書管理体制を構築・強化するサポートを提供します。
事後調査の通知を受け取ったとき、企業が最も犯しやすいのは「自力で何とかしよう」と焦ってしまうことです。しかし、その初動の対応が、将来の大きな失敗を決定づけてしまうことが多々あります。
事後調査の通知は、専門家と協力し、企業のコンプライアンスを強化する絶好の機会と捉えるべきです。不安を感じたら、まずは当事務所にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
税関事後調査の基礎知識:調査の対象、流れ、そして「調査のゴール」とは?
税関事後調査とは何か?輸入事業者が知るべき基礎知識
輸入事業を継続していると、いつか必ず経験する可能性があるのが税関による事後調査です。これは、輸入貨物の許可後に、過去の輸入申告が関税定率法その他の法令に基づき適正に行われていたかをチェックするための「税関による税務調査」のようなものです。
この調査の目的は、単に過去の申告ミスを指摘し追徴課税を行うことだけではありません。むしろ、適正な課税の確保と、輸入者に対する適切な申告指導を行うことにも重点があります。
1 調査の対象となる「期間」と「項目」
税関の事後調査は、原則として過去5年間の輸入申告を対象とします。
調査で重点的に見られる項目は、主に以下の3点です。
①関税評価(課税価格)
輸入貨物の代金だけでなく、輸入者が海外に支払ったロイヤルティ(商標使用料)、無償提供した金型や設計図の費用、仲介手数料などが加算要素として課税価格に正しく算入されていたかどうか。
②HSコード(品目分類)
輸入貨物の関税率を決めるコードが正しく適用されていたか。
誤分類は関税率の誤り、申告価格の間違いに直結します。
③原産地規則
EPA(経済連携協定)や特恵関税を適用した場合、その貨物が本当に適用国の原産品であるか。原産地証明書や製造工程の書類が検証されます。
これらの項目について、税関は契約書、インボイス、会計帳簿、送金記録、メールのやり取りなど、多岐にわたる資料の提出を求めてきます。
2 事後調査の基本的な流れ
事後調査は、突然訪問されることはまれで、通常は以下の流れで進行します。
①事前通知
税関から企業に対して、調査を実施する日時、場所、対象期間、対象税目などが電話または文書で通知されます。
②実地調査(立ち会い)
税関職員が企業を訪問し、帳簿や書類の確認、担当者へのヒアリングを行います。この際、関税法には立ち会いの義務はありませんが、弁護士(通関士)の立会いも有効です。専門家が同席することで、企業側の主張を整理し、法的根拠に基づかない回答を行うことを防ぐことができます。
③調査結果の通知と修正申告の検討
実地調査後、税関は指摘事項を提示します。
企業側はこれを確認し、指摘に同意できる場合は修正申告を行い、不足分の関税・消費税と過少申告加算税などを納付します。
3 調査における「真のゴール」は何か?
事後調査における真のゴールは、企業の「コンプライアンス体制の確立」です。
調査で指摘された点について、
①なぜミスが発生したのか?
②そのミスを二度と起こさないためにどのような仕組みを導入したのか?
③担当者への教育をどう行うのか?
これらを明確にし、実行に移すことが、将来的に取引先や税関からの信頼を得る上で非常に重要です。弁護士は、単なる過去の申告の正誤だけでなく、将来にわたって適正な通関が行えるよう、社内体制の構築までサポートします。
事後調査の通知に不安を感じたら、すぐに専門知識と実務経験を持つ当事務所にご相談ください。適切な初動が、調査の早期終結と追徴リスクの低減に繋がります。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
『関税逃れ』の疑いをかけられたケース~意図がなくても不正と判断されるリスクとは?~
「関税を逃れるつもりなんてなかったのに、『脱税の疑いがある』として調査を受けてしまった…」
これは、悪意はなかったにもかかわらず、税関から「関税逃れのスキームではないか」と疑われてしまった企業の実例です。
今回は、結果的に不正とみなされかねない輸入形態や申告の誤りと、その防止策を解説します。
1 実例:二段階輸入が「価格操作」と指摘された
ある企業は、海外の親会社から製品を仕入れ、それを国内で組立・販売していました。
当初は完成品を一括で輸入していたのを、コスト削減のために、部品単位で輸入→国内組立に切り替えたところ、税関の事後調査で次のような指摘を受けました。
①「一体の商品を意図的に分割輸入することで、関税率の低い品目として申告している」
②「輸入価格が実態よりも著しく低く、不自然」
③「関連会社間での取引で、移転価格調整が疑われる」
企業側は「コスト管理と製造工程の都合」と説明しましたが、税関は過少申告の疑いがあるとして調査を継続、修正申告を求めました。
2 意図がなくても「不正」とされることがある
税関は、輸入取引について次のような視点で評価します。
①実態として取引価格が正当か(取引価格主義の要件)
②商品の性質に比べて価格が極端に低くないか
③関係者間取引で、価格が恣意的に調整されていないか
意図的な不正でなくても、「説明責任を果たせなければ不適正と判断される」のが、関税実務の現実です。
3 誤解されやすい取引形態の例
①関連会社間の取引で相場よりも安い価格設定
②サンプル品・試作品を有償として輸入し、価格根拠が不明
③部品を複数回に分けて輸入し、セット品としての一体性が見えにくい
④ロイヤルティや役務提供の支払いが別建てで、申告価格に反映されていない
これらは悪意がなくても、税関から「不正の疑いがある」と見なされやすいパターンです。
4 実務対応と説明のコツ
①インボイス、契約書、取引条件など価格根拠となる書類を整備
②価格算定の基準(コスト構成、利益率、比較取引等)を明示的に記録
③関係会社間取引については移転価格税制とも整合的な説明を用意
④商品分割の理由や、工程ごとの実態を図解・写真で説明
⑤税関とのやりとりには論理的かつ冷静なトーンで対応
5 税関とのトラブルを最小限に抑えるために
税関は、「納得できる説明と証拠」があれば柔軟に判断してくれる場合もあります。
逆に、「よくわからない」、「説明が不明瞭」という状態では、不正の疑いが深まり、追徴・加算税・調査拡大につながる可能性があります。
疑念を招かないよう、日頃からの取引の透明性と記録の整備が最も効果的な防衛策です。
「関税逃れの意図はない」という主張だけでは足りず、『なぜその価格や取引形態が妥当なのか」を説明できる体制が求められます。
税関からの調査に備え、説明責任を果たせる書類・体制・意識づけが企業のリスク対策となります。
当事務所では、関税評価や価格設定に関する税関対応、課税価格の説明文書の作成支援も行っております。疑義を抱かれる前に、ぜひご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
