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輸入税関事後調査の事前準備チェックリスト~通関士資格を有する弁護士が教える防衛策

2026-03-11

「税関から事後調査の通知が届いたが、何をどう準備すればいいのかわからない」

「過去数年分の申告にミスがあった場合、どのくらいの追徴課税が発生するのか不安だ」

輸入ビジネスを展開する企業にとって、数年に一度訪れる「輸入税関事後調査」は、経営を揺るがしかねない重大なイベントです。

しかし、多くの企業が「調査官が来てから対応すればいい」と誤解しています。

実は、税関事後調査の成否は、調査官が足を踏み入れる前の「事前準備」と、日常的な「コンプライアンス体制」で9割が決まるといっても過言ではありません。

本記事では、通関士資格を有する弁護士の視点から、事後調査で申告漏れの指摘を受けないための具体的な準備方法と、日常から備えておくべき実務対応について、解説します。

 

1 税関事後調査とは何か?なぜ「事前準備」がすべてなのか?

税関事後調査とは、輸入申告が適正に行われているかを確認するため、税関の調査官が輸入者の事業所を直接訪れ、帳簿や書類を確認、検査する手続きです。

通常、過去3年〜5年分の取引が対象となります。

なぜ「その場の対応」では限界があるのでしょうか。

調査当日に調査官から「この費用の計上漏れはありませんか?」と問われた際、根拠となる資料が手元になければ、往々にしてその場しのぎの説明をすることになります。不用意な発言や矛盾した説明は、「隠蔽・仮装」の疑いを招き、重いペナルティ(重加算税)の対象となるリスクを高めます。

「事前の自主点検」でミスを発見し、調査前に修正申告を行えば、過少申告加算税が免除されるケースもあります。つまり、事前準備こそが最大の防御なのです。

 

2 調査官が必ずチェックする「3つの急所」

事前準備を行うにあたり、まずは調査官が「どこをみてくるのか」を理解する必要があります。主な論点は以下の3点です。

(1)関税評価(加算要素の算入漏れ)

関税は「商品の価格」だけに課されるものではありません。以下の費用(加算要素)が申告価格に含まれているかが厳密にチェックされます。

①ロイヤリティ:商標権や特許権の使用料を別途支払っている場合。

②無償提供資材(アシスト):輸入者が海外メーカーに無償・安価で提供した金型、デザイン、材料費。

③運賃・保険料:インコタームズ(FOB等)に基づき、輸入者が負担した運賃が正しく加算されているか。

(2)品目分類(HSコード)の妥当性

同じ商品でも、どのHSコードを適用するかで関税率は大きく変わります。

①「解釈の違い」による過少申告がないか。

②過去の教示回答(事前教示)と矛盾していないか。

③EPA(経済連携協定)の適用要件

関税をゼロにするEPAを利用している場合、「原産地規則」を満たしている証拠書類が保存されているかが焦点となります。

 

3 事前準備で揃えるべき「証拠書類」リスト

通知が届いてから調査当日までの期間(通常数週間)で、以下の書類を整理・点検してください。

(1)通関関係書類(できれば1セットずつファイリング)

①輸入許可書

②インボイス(商業送り状)

③パッキングリスト(梱包明細書)

④B/L(船荷証券)またはAWB(航空貨物運送状)

⑤運賃・保険料の請求書

(2)売買・契約関係書類

①基本売買契約書:取引条件、支払条件の確認。

②ライセンス契約書:ロイヤリティの支払い有無。

③無償供与に関する覚書:金型や原材料の提供実態。

(3)会計・決済書類(ここが最も重要)

調査官は「お金の流れ」から「貨物の流れ」の矛盾を突いてきます。

①総勘定元帳:海外送金の記録。インボイス価格以外の送金がないか。

②外国送金依頼書の控え:送金名目と輸入申告価格の照合。

 

4 弁護士が推奨する「日常の予防法務」とコンプライアンス

事後調査で「問題なし」と判定される企業の共通点は、日常業務の中に「チェック機能」が組み込まれていることです。

①自主点検(内部監査)の習慣化

半年に一度、無作為に抽出した輸入案件について、通関書類と会計帳簿を照合する「セルフチェック」を推奨しております。もしミスが見つかっても、「事後調査の通知が来る前」に自主的に修正申告を行えば、ペナルティ(加算税)はかかりません。

②通関業者との「指示書」による連携

通関業者に「丸投げ」するのは危険です。通関業者は輸入者から提供された書類に基づいて申告するため、裏側の契約関係(金型無償提供など)までは把握できません。

「この取引にはロイヤリティが含まれる」、「このHSコードで申告してほしい」といった具体的な指示書を日常から残しておくことが、法的な善意(過失がないこと)の証明になります。

帳簿保存の徹底(関税法第105条)

関税法では、輸入許可の翌日から5年間(一部は7年間)、帳簿や書類の保存を義務付けています。これが不十分なだけで、信用を失い、調査が長期化する原因となります。

 

5 調査当日の立ち合い:弁護士×通関士の役割

いざ調査が始まった際、専門家が同席するメリットは計り知れません。

①不用意な発言を防ぐ:調査官の指摘が法的に正しいのか、単なる「行政指導レベルの解釈」なのかをその場で判断します。

②質問応答記録書の精査:調査官が記録書を作成する場合に、事実と異なるニュアンスが含まれていないかチェックし、署名押印の是非をアドバイスします。

③論理的な反論:HSコードの分類や関税評価について、判例や過去の審判所裁決等に基づいた法的反論を組み立てます。

 

6 まとめ:事後調査を「経営改善」のチャンスに変える

税関事後調査は、正しく備えれば決して恐れるものではありません。むしろ、自社の貿易コンプライアンスを強化し、将来的な巨額追徴リスクをゼロにする絶好の機会です。

当事務所では、通関士の資格を有する弁護士が、事前準備から当日の立ち合い、その後の是正指導まで一貫してサポートしております。

「通知が届いたばかりで何をすればいいかパニックになっている」、「過去の申告に不安があるが、どう修正すればいいかわからない」

そのような方は、まずは一度ご相談ください(お問合せフォームはこちらです https://aog-partners.com/inquiry/)。

事前の準備次第で、結果は大きく変えられます。

電気用品安全法と輸入ビジネス。EC事業者が陥りやすい「届出漏れ」と「検査義務」違反

2026-03-08

中国などの海外工場から、安価でデザイン性に優れた家電製品やモバイルバッテリー、ACアダプター等を輸入し、Amazonや楽天といったECプラットフォームで販売するビジネスが活況を呈しています。しかし、近年、Amazon等のプラットフォーム側もコンプライアンス監視を劇的に強化しており、適切な表示や書類が揃わない商品は即座に出品停止、さらにはアカウント閉鎖に追い込まれるケースが後を絶ちません。

 

1 「輸入者=国内製造者」という重い法的責任

まず認識すべきは、日本の法律における輸入者の立ち位置です。

海外メーカーから製品を仕入れて国内で販売する者は、単なる「小売店」ではなく「製造事業者等」とみなされます。

つまり、設計上の欠陥や製造ミスによる事故が発生した場合、たとえ海外メーカー側に原因があったとしても、日本国内では輸入者がメーカーと同等の全責任を負わなければなりません。

「海外の工場が安全だと言っているから大丈夫」という理屈は法的に一切通用しません。輸入者自らが日本の技術基準(JIS規格等)に照らし合わせ、その安全性を主体的に担保する義務があるのです。

 

2 輸入者が履行すべき「4つの義務」

PSEマークを貼付して製品を販売するためには、輸入者は以下の4つの義務を完遂しなければなりません。

①事業届出の義務

輸入開始から30日以内に、経済産業省(各経済産業局)へ事業届出を行う必要があります。

②基準適合確認の義務

製品が日本の「技術基準」に適合していることを確認します。工場から提出された試験結果(テストレポート)が日本の規格を網羅しているか精査する必要があります。

③自主検査の義務

これが最も見落とされやすい点ですが、輸入者はロット(輸入)ごとに検査を行い、その記録を3年間保存しなければなりません。外観検査だけでなく、絶縁耐力試験(通電テスト)などが必要になる場合もあります。

④表示の義務

製品の目につきやすい場所に、PSEマーク、届出事業者名、定格電圧等を正しく表示します。

 

特に、ACアダプターなどの「特定電気用品(ひし形PSE)」に該当する場合、登録検査機関による「適合性検査証明書」の取得が必須となり、ハードルはさらに高まります。

 

3 違反が招く「倒産リスク」とペナルティ

手続きの不備や事故が発覚した場合、経済産業省から「販売停止命令」や「回収命令(リコール)」が下されます。回収費用、廃棄費用、顧客への返金対応は、中小企業にとって致命的なキャッシュアウトを招きます。また、違反が悪質な場合は、法人に対して「1億円以下の罰金」という重い刑事罰も規定されています。

さらに、製品事故で消費者が負傷した場合、製造物責任法(PL法)に基づき、多額の損害賠償を請求されるリスクも忘れてはなりません。モバイルバッテリー等のリチウムイオン電池による火災事故は年々増加しており、ひとたび火災が発生すれば、賠償額は数千万円から億単位にのぼることもあります。

 

「知らなかった」という過失が、せっかく築き上げた会社を倒産させる引き金になりかねません。

家電輸入ビジネスへの参入や新製品の取り扱いを検討される際は、必ず事前に専門家へご相談ください。正しい法令遵守こそが、あなたのビジネスを守る唯一の手段です。

食品・化粧品・輸入器具の輸入販売における法的障壁とリスク管理

2026-03-03

海外の魅力的な製品を国内で販売しようとする際、関税などの税関手続き以上に大きな障壁となるのが、厚生労働省(検疫所)による厳しい審査です。

以下に、特に注意すべき大きな「壁」と、その対策について詳説します。

1 「食品衛生法」が立ちはだかる成分規制の壁

販売または営業上使用する目的で食品や食器、乳幼児向け玩具を輸入する場合、検疫所へ「食品等輸入届出書」を提出し、審査を受けなければなりません。ここで最大のハードルとなるのが、日本独自の添加物規制や残留農薬基準です。

①指定外添加物のリスク: 海外では一般的に使用されている着色料や保存料であっても、日本で認可されていない「指定外添加物」が含まれている場合、その製品は一点たりとも国内に持ち込むことはできません。

②規格基準の厳格さ: 基準値を超える農薬、カビ毒、あるいは器具の材質から溶け出す有害物質(重金属など)が検出されれば、検疫所から「全量廃棄」または「積み戻し(返送)」の厳しい命令が下されます。

輸入に際しては、製造工程表の確認や、登録検査機関による「試験成績書」の提出を求められることが一般的です。事前の成分分析や法令照合が不十分なまま貨物を日本に到着させてしまうと、商品代金の没収に等しい損失に加え、高額な廃棄費用や保管料が発生し、事業継続を揺るがす大赤字を招くことになります。

2 「薬機法」によるライセンスと定義の壁

化粧品やサプリメント、健康器具の輸入販売において、食品衛生法以上に複雑で厳しいのが「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」です。

①業許可の必須性: 化粧品や医療機器を輸入販売するには、単なる「輸入業」ではなく、「化粧品製造販売業」や「医療機器製造販売業」といった特定のライセンス(業許可)を保持している必要があります。無許可での輸入は明白な法令違反です。

②「みなし」規制の落とし穴: 最も頻発するトラブルは、事業者が「ただの雑貨」だと判断した製品が、法的には「医療機器」や「医薬品」に該当してしまうケースです。例えば、単なるマッサージ器であっても「血行を促進する」といった効能を謳えば医療機器とみなされます。また、サプリメントにおいても、含有成分やその形状、広告表現一つで「未承認医薬品」と判定され、税関で差し止められる事例が頻発しています。

これらは意図せぬ違反であっても容赦なく取り締まりの対象となり、通関不能によるビジネスの頓挫を招きます。

3 リスク管理の徹底と弁護士が果たす役割

これらの法令に抵触した場合の代償は、金銭的な損失に留まりません。
行政処分による「製品回収(リコール)」の公表、最悪の場合は刑事罰としての逮捕、そしてそれらに伴う実名報道は、企業の信頼を一瞬で失墜させます。SNSが普及した現代において、一度ついた「不適切輸入」のレッテルを拭い去ることは極めて困難です。

当事務所では、輸入ビジネスを志す事業者様に対し、以下のリーガルサポートを提供しております。

①事前適合性チェック(リーガルチェック)
輸入予定の商品が、日本の食品衛生法や薬機法の規格に適合しているか、成分表や現地の資料を基に精査します。

②広告・表示の監修
パッケージの表示や販促物の表現が、薬機法や景品表示法に抵触しないよう、代替案を含めてアドバイスいたします。

③行政対応・トラブル解決
万が一、検疫所や自治体から行政指導を受けた際の窓口となり、適切な釈明や事後対応をサポートします。

専門的な法的知見に基づき、貴社の健全な事業展開を強力にバックアップいたします。

ワシントン条約違反のリスク。「知らなかった」では済まされない、革製品や楽器輸入の落とし穴

2026-02-26

「海外旅行のお土産に買ったバッグが税関で没収された」、「輸入販売しようとしたギターに、規制対象の木材が使われていた」

輸入ビジネスにおいて、関税法等と並んで注意が必要なのが「ワシントン条約」です。

これは絶滅のおそれのある野生動植物の保護に関する国際条約ですが、生きている動物だけでなく、「それらを使用した製品(加工品)」も規制対象となる点が、多くのトラブルを生んでいます。

 

1 意外なものが規制対象に

象牙や毛皮がダメなことは有名ですが、以下のようなものも規制対象となることをご存知でしょうか?

①爬虫類の革製品:ワニ革(クロコダイル、アリゲーター)、トカゲ革、ニシキヘビなど。

②木材・楽器:ローズウッド(紫檀)などの高級木材を使用したギターや家具。

③漢方薬・化粧品:ジャコウ、アロエ、キャビアエキス(チョウザメ)などが配合された製品。

これらは、条約の付属書(I, II, III)のどのランクに該当するかによって、輸入禁止なのか、輸出国の許可書(CITES Export Permit)があれば輸入できるのか等が異なります。

 

2 「事後提出」は認められない

ワシントン条約の最大の特徴は、手続きの厳格さです。

輸入申告の時点で、輸出国政府が発行した正規の許可書等を日本の税関に提出しなければなりません。「許可書を家に忘れました」「後で送ってもらいます」という言い訳は一切通用しません。申告時に書類が揃っていなければ、その貨物は輸入許可が下りず、原則として「積み戻し(返送)」か「任意放棄(廃棄)」を迫られます。

 

3 刑事罰のリスク

許可なく輸入しようとした場合、関税法上の「輸入してはならない貨物」に該当する可能性があり、悪質な場合は「関税法違反(無許可輸入)」や「種の保存法違反」等として刑事罰(懲役や罰金)の対象となります。

「安く仕入れられる」という理由で、正規の書類がない革製品を並行輸入しようとするのは非常に危険です。

 

4 弁護士による事前チェック

商品を輸入する前に、「その素材がワシントン条約に該当するか」、「書類は完備されているか」を経済産業省や税関に事前確認することが重要です。

万が一、税関で止められてしまった場合でも、弁護士が介入し、該当性に関する法的な意見書を提出したり、減刑に向けた交渉を行ったりすることで、ダメージを最小限に抑えられるケースがあります。

並行輸入は違法か?「真正品」なのに税関で止められる理由と、輸入差止を回避するための方法

2026-02-21

「正規代理店ではないルートで輸入したら、税関で『商標権侵害の疑い』として止められた」 いわゆる「並行輸入」を行う事業者から、このような相談が後を絶ちません。

結論から言えば、並行輸入自体は原則として適法です。

しかし、通関手続の現場では「偽物(模倣品)」の水際対策が強化されており、本物(真正品)であっても、正しい手続きを踏まなければ没収されてしまうリスクがあります。

 

1 並行輸入が「適法」とされる3つの条件

日本の最高裁判例(フレッドペリー事件等)に基づき、以下の3つの要件(真正商品の並行輸入の要件)をすべて満たす場合、商標権侵害にはならず、適法に輸入できます。

①真正性の保証

輸入商品に付された商標が、外国の商標権者等により適法に付されたものであること(=本物であること)。

②同一性の保証

外国の商標権者と日本の商標権者が同一、または法的・経済的に密接な関係にあり、実質的に同一視できること。

③品質管理の保証

日本の商標権者が管理する商品と、輸入する商品の品質に実質的な差異がないこと。

2 なぜ税関で止まるのか?

税関職員は、商品を見ただけでは「適法な並行輸入品」か「精巧なコピー」か、あるいは「違法なライセンス品(流出品)」かを即座に判断できません。

商標権者(ブランド側)から「輸入差止申立て」が出ているブランドの場合、税関は一旦輸入をストップし、「認定手続」を開始します。ここで輸入者側が「これは適法な並行輸入である」ことを証明できなければ、侵害品として処理されてしまいます。

3 税関に対する「証明」のポイント

認定手続開始通知が届いた場合、輸入者は速やかに「意見書」と「証拠」を提出しなければなりません。特に重要な証拠は、「真正な流通ルートを辿ったことを示す書類」です。

①正規店からのレシートやインボイス

②商品カタログやタグの写真

③仕入先とのメールのやり取り

④(可能であれば)鑑定書

単に「ネットの信頼できるショップで買った」という主張だけでは通りません。

サプライチェーン(商流)を遡って証明する必要があります。

4 弁護士によるサポート

並行輸入のトラブルでは、「適法性の3要件」に当てはまることを法的に論証することができるかが重要です。また、権利者(ブランド側)が過剰に権利を主張してきている場合には、弁護士名で対応を行うことで、権利者が取下げに応じるケースもあります。

並行輸入ビジネスは利益率が高い反面、常に知的財産権リスクと隣り合わせです。ビジネスを継続させるためにも、トラブル発生時は即座に専門家へご相談ください。

税関事後調査における弁護士と通関業者の役割の違い。「通関業者に任せているから安心」が危険な理由とは?

2026-02-16

「うちはベテランの通関業者(乙仲)にお願いしているから、税関対応も任せておけば大丈夫だろう」

多くの経営者がそう考えがちですが、いざ事後調査でトラブルになった際、通関業者だけでは対応しきれないケースが多々あります。

なぜなら、通関業者と弁護士では、その「役割」と「守るべき利益」が根本的に異なるからです。

 

1 通関業者の立場と限界

通関士は、通関業法に基づく国家資格者であり、税関への申告手続きを代行するプロフェッショナルです。

しかし、彼らの業務はあくまで「荷主から提供された情報に基づいて、正しく申告書を作ること」です。また、通関業者は税関の許可を受けて営業しているため、税関との関係悪化を極端に恐れる傾向があります(もちろん、会社によってその程度は大きく異なりますが)。そのため、事後調査で税関から厳しい指摘を受けた際、「税関の言う通りにしておきましょう」と、会社側の意向を一切踏まえずに安易に修正申告を勧めてくるケースが少なくありません。彼らには、税関と法的に争ってまで顧客(あなた)を守るインセンティブが非常に弱いのです。

2 弁護士の役割:100%依頼者の味方

一方、弁護士の役割は「依頼者の権利と利益を守ること」です。

税関の指摘が法的に正しいかどうかをゼロベースで検討し、もし解釈に疑義があれば、徹底的に反論します。いたずらに税関と争うことは逆効果ですが、きちんとした法理論に基づいて考え方が異なる場合には徹底的に調整していくことが重要です。

また、弁護士には「守秘義務」があり、調査対応に関する相談内容が外部に漏れることはありません。

3 どのような時に弁護士が必要か?

以下のようなケースでは、通関業者ではなく弁護士の出番です。

①見解の相違がある場合:税関の主張する「課税価格の決定方法」や「品目分類」に納得がいかない場合。

②重加算税が示唆された場合:「隠蔽・仮装」の認定をめぐる攻防は、事実認定と証拠評価という純粋な法律論争です。

③刑事事件化のリスクがある場合:関税法違反の疑いをかけられた場合、もはや行政手続きではなく刑事弁護の領域です。

4 理想は「通関業者+弁護士」のタッグ

もちろん、日常の通関実務や細かなHSコードの知識においては、通関業者の方が詳しいことも多いです。

最適なのは、通関士の持つ現場知識と、弁護士の持つ法的知識を組み合わせることです。

適切な協力体制を整えつつ、企業のダメージを極力小さくするように試みていくことが重要です。

過少申告加算税と重加算税の違いとは?修正申告を行うタイミングでペナルティが変わる仕組み

2026-02-11

税関の事後調査で申告漏れが指摘された場合、単に不足分を支払えば終わりではありません。ペナルティとして「過少申告加算税」や、悪質な場合は「重加算税」が課されます。

しかし、このペナルティは、「いつ修正申告をするか」によって税率が大きく変わることをご存知でしょうか?

1 ペナルティの税率構造

原則として、当初の申告額が少なかった場合、以下の加算税が課されます。

①過少申告加算税

原則:増差税額の10%(増差税額が当初申告額等を超える部分は15%)

調査通知「前」に自主的に修正した場合:0%(免除)

調査通知「後」~調査による更正の予知「前」に修正した場合:5%(軽減措置)

②重加算税

隠蔽・仮装があった場合:35%~40%

つまり、税関から「調査に行きますよ」という通知が来る前に、自らミスに気づいて修正申告をすれば、加算税はかからないのです(延滞税はかかります)。

2 「更正の予知」とは何か?

実務上、非常に重要なのが「更正の予知」という概念です。

調査が始まり、税関職員から具体的な指摘(例:「このロイヤルティは加算すべきですね」)を受けた後に修正申告をしても、それは「指摘されることを予知して行った」とみなされ、原則通りの10%(またはそれ以上)の加算税がかかります。

しかし、調査通知が来てから実地調査が始まるまでの間に、自主的に再点検を行い、「指摘される前に」修正申告を行えば、5%に軽減される可能性があります。このわずかな期間の対応が大きな影響を与えることになるのです。

3 重加算税を回避するために

最も恐ろしいのは「重加算税(35%以上)」です。

これは、二重帳簿の作成、インボイスの改ざん、虚偽答弁など、「事実を隠蔽または仮装」したと認定された場合に課されます。

単なる計算ミスや法令の解釈誤りであれば、重加算税は課されません。
しかし、調査官は厳しく追及してきます。「知っていて隠したのではないか?」と疑われた際、弁護士がいれば「これは法解釈の相違であり、隠蔽工作ではない」と論理的に主張し、重加算税の賦課を阻止できる可能性があります。

事後調査での指摘事項に納得がいかない場合や、重加算税のリスクがある場合は、まずは弁護士へご相談いただくことをお勧めします。
どのような対応が可能であるかどうかを慎重に検討し、極力会社にとってダメージのない形での解決を模索しましょう。

「ある日突然、税関から電話が…」事後調査の通知が来た時の初動対応マニュアル。無視や虚偽回答は命取りです

2026-02-06

「●●税関の調査第●部門の●ですが、、、」

ある日突然、会社にかかってくる税関からの電話。

多くの経営者や担当者の方の中には、「何か悪いことをしたのか?」、「逮捕されるのか?」とパニックに陥る方もいらっしゃると思います。

しかし、事後調査は定期的に行われる行政調査であり、必ずしも犯罪の嫌疑があるわけではありません。重要なのは、最初の電話から実地調査当日までの「初動対応」です。

1 税関からの連絡:それは「調査」かどうか

税関からのアプローチには段階があります。

単なる電話での照会なのか、資料の提出要請なのか、あるいは日程を決めて会社に来る「実地調査(事後調査)」なのかを確認しましょう。

「来月、2日間ほどお時間をいただけますか?」と言われた場合は、本格的な事後調査です。この時点で、日程調整を即答する必要はありません。

「担当者の予定を確認して折り返します」と伝え、きちんと対応できるように時間を調整することが鉄則です。

2 調査当日までに準備すべき資料と心構え

調査官は「輸入許可書」と「インボイス」だけでなく、それらが正しいかを裏付ける「契約書」、「決済送金明細」、「会計帳簿(総勘定元帳)」などをチェックします。

特に整合性が問われるのは以下の点です。

①インボイスの決済額と、実際の海外送金額が一致しているか?

②インボイスに記載のない支払いが、他の名目(技術指導料、金型代など)で送金されていないか?

資料が整理されていない状態で調査を受けると、調査官の心証が悪くなるだけでなく、本来説明できるはずの取引についても疑いを持たれてしまいます。

3 やってはいけない「NG対応」

最も避けるべきは、「分からないことを適当に答える」こと、「不都合な書類を隠す・捨てる」といったことです。

記憶が曖昧な点は「確認して後日回答します」と答えれば問題ありません。しかし、その場しのぎの嘘をつくと、後で帳簿との矛盾が発覚した際に「仮装・隠蔽」とみなされ、重加算税の対象となるリスクが激増します。

4 弁護士に依頼するタイミング

「通知が来た直後」がベストです。

弁護士は、調査当日に立ち会い、調査官の質問の意図を汲み取って適切な助言を行ったり、万一不当な指摘があった場合には法的な反論を行ったりすることができます。

何も準備せずに丸腰で調査に臨むのと、事前に専門家のリーガルチェックを受けてから臨むのとでは、大きな差が出ることも珍しくありません。

ご不安な方は、日程が決まった段階ですぐにご相談ください。

越境EC事業者が注意すべき「個人輸入」と「小口輸入」の違い。アンダーバリューのリスクとは?

2026-02-01

近年、海外のECサイトから商品を仕入れ、日本国内で販売する「越境EC」や「転売ビジネス」が急速に拡大しています。しかし、手軽に始められる一方で、関税法などのルールを正しく理解していないために、知らず知らずのうちに違法行為に手を染めてしまっているケースが後を絶ちません。

特に多いのが、「個人輸入」と「小口輸入(商用)」の混同、そして「アンダーバリュー(低価申告)」の問題です。

1 「個人使用」か「商売目的」かで税率が変わる

海外から貨物を輸入する場合、原則として関税と輸入消費税がかかります。

しかし、個人が「自分自身で使用する目的」で輸入する場合(個人輸入)は、商品価格の60%に対して課税されるという特例(減免措置)があります。

一方、他人に販売する目的で輸入する場合(小口輸入・商用輸入)は、この「60%特例」は適用されず、商品価格の100%(送料・保険料含む)に対して課税されます。

よくある間違いは、「販売目的で仕入れているのに、個人使用のフリをして輸入する」ことです。これは明確な脱税行為であり、税関もEC事業者に対する監視を強化しています。宛先が個人名であっても、数量や頻度、過去の履歴から商用であることは容易に見抜かれます。

2 アンダーバリュー(低価申告)の誘惑とリスク

海外のセラー(販売者)によっては、気を利かせて(あるいは悪意を持って)、インボイスの価格を実際よりも安く記載したり、「GIFT(贈り物)」として発送したりすることがあります。これをそのまま「ラッキー」と思って輸入申告してしまうと、「アンダーバリュー(不当な低価申告)」という犯罪になります。

「海外の業者が勝手にやったことだ」という言い訳は通用しません。

輸入者(あなた)には、正しい価格で申告する義務があります。もしインボイスの価格が実際の決済額より低いことに気づいたら、速やかに通関業者に正しい決済画面のキャプチャ等を提出し、修正申告をする必要があります。

3 アカウント凍結や刑事罰のリスクも

悪質な脱税行為が発覚した場合、以下のようなペナルティが課されます。

①重加算税の賦課

②輸入許可の取消し

③関税法違反としての刑事告発

また、ECプラットフォーム(Amazon、楽天等)側でもコンプライアンス順守が厳格化しており、税関トラブルを起こした事業者はアカウント停止処分を受けるリスクが高まっています。

「みんなやっているから大丈夫」は通用しません。ビジネスとして継続的に輸入を行うのであれば、適正な輸入申告体制を構築することが、将来の利益を守るための投資となります。税関対応に不安があるEC事業者様は、一度専門家のリーガルチェックを受けることをお勧めします。

税関から「輸入差止」の通知が届いたら?認定手続の流れと商標権侵害を疑われた際の対抗策

2026-01-27

「中国から輸入した商品が税関で止まった」、「『認定手続開始通知書』という書類が届いたが、どうすればいいのか」、当事務所には、こうした輸入トラブルに関する相談が多く寄せられます。

これは、商標権や意匠権などの知的財産権を侵害する物品(いわゆるコピー商品や模倣品)の水際取締りが強化されているためでもあります。

もし、あなたが真正品(本物)を輸入したつもりであるにもかかわらず、税関で止められてしまった場合、適切な対応を取らなければ商品は没収・廃棄され、最悪の場合は刑事罰の対象となる可能性もあります。

 

1 「認定手続」とは何か

税関が、輸入貨物の中に「知的財産権を侵害している疑いがある」ものを発見した場合、輸入者と権利者の双方に通知を出し、本当に侵害しているかどうかを判断する手続きを開始します。これを「認定手続」と呼びます。

この通知を無視してはいけません。何もしなければ、権利者の主張が通り、貨物は侵害品と認定され、廃棄等の処分が下されることになります。

 

2 輸入者がとるべき対応

真正品を並行輸入している場合や、権利侵害をしていないと確証がある場合、輸入者はまずは意見書・証拠の提出を行う必要があります。

具体的には、「指定された期間内」に、税関長に対して「侵害品ではない」旨の意見書と、それを裏付ける証拠を提出します。

ここでは、正規の流通ルートで購入したことを示すインボイス、販売ライセンス契約書、商品の詳細な写真、真正品であることを証明する鑑定書などが有効です。

 

3 弁護士に依頼するメリット

認定手続は非常にタイトなスケジュールで進行します。

限られた期間内に、説得力のある法的文書(意見書)を作成し、証拠を揃える必要があります。

例えば、『並行輸入の抗弁』では、日本の商標法上、適法な並行輸入として認められるための「三要件(真正性の保証、同一人性の保証、品質管理性の保証)」を満たしていることを、法的に論証する必要があります。これは一般的な輸入業者では対応が難しい場合が多いです。

また、『権利者との交渉』においては、場合によっては、権利者側と直接交渉を行い、輸入の承諾を得る等の解決策を探ることもあります。

「たかが数箱の輸入だから」と放置すると、今後の輸入すべてが厳格な検査対象になるリスクもあります。

輸入差止の通知が届いたら、直ちに貿易・知財に強い弁護士へご相談ください。迅速な初動が、あなたの商品とビジネスを守ることにつながります。

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